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AI分析でわかったトップ5%社員の習慣 越川慎司 著

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AI分析でわかったトップ5%社員の習慣 [ 越川 慎司 ]
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1.はじめに

「5%社員」とは、著者が代表を務めるクロスリバー社が605社の働き方改革の支援を行ってきた過程において調査した、各社の人事評価の「上位5%」に入る集団のことです。 

あとがきにもあるように、その人が「上位5%」であることを知らせずに、ICレコーダーやWebカメラを使って、行動パターンを分析した結果がまとめられています。

ただ、この読書の目的は、その結果を「知ること」ではなく、適用できる行動パターンを試して「行動すること」とも記されています。

また、シリーズ化もされていて、”リーダーの習慣”や”時間分析”についても出版されています。

2.内容

(1)序章 AIで18,000人分析してわかったずば抜けた結果を出す人の5原則

原則1:「目的」のことだけを考える
  • 5%社員が大切にしているのは達成感。達成のためには目標が必要で、目標を自分で設定して、最短距離で達成しようとしている。一方、一般社員は、目標を明確にしないで仕事をする人が少なくない。よって、達成に近づいていないにもかかわらう、その作業時間で充実感を覚えてしまう。
原則2:「弱み」を見せる
  • 5%社員は、「自分がわからないことがある」「まだ学べていないことがある」という前提に立っており、他者から自分が持っていない知見を獲得しようとする。
  • 5%社員は、自分の弱みを出すことに抵抗がない。心構えとして不要なプライドに引っ張られることなく自分のできないことや弱点を相手に見せてしまう。決して弱い部分を見せることが目的ではなく、弱い部分を見せるという手段を通じて、相手の懐に入るという目的を持っている
原則3:「挑戦」を「実験」と捉える
  • 失敗の原因を責任転嫁していたは、スキルアップにつながらず、いつまで経っても結果を出すことはできない。失敗してもそれを改善の材料と捉え、次の行動を修正していけば成長できるし、成功にも近づいていく
  • そもそも5%社員は、失敗をさほど悪いものだと思っていない。むしろ成功しても学びがないことをネガティブにとらえる。
原則4:「意識改革」はしない
  • 意識を変えて行動するのではなく、行動を変えることによって意識が変わる。そうやって行動を継続していくと、行動変容が習慣に変わる。
  • 「~すべき」と正論をかざしても、抵抗勢力は動かないこと5%社員は理解している
原則5:常に「ギャップ」から考える
  • 5%社員は、自分の判断が100%正しいとは思っていないので、途中でしっかりと振り返り、柔軟に行動を修正していく姿勢でのぞんでいる。結果として、この修正力が無駄な作業を生まないようにしている。
  • 優秀なリーダーは、途中経過として「うまくいっているところ」と「うまくいっていないところ」を包み隠さずに顧客や上司に報告する。最後の最後になって「できませんでした」や「遅れます」と相手が言われたら困ることを理解している。

(2)良かれと思ってやってしまう「95%社員」の行動

  • 作業していることに満足しているだけでは、目標達成はできない。何より働いた時間に対して評価されることはなくなっていく。95%の一般社員は作業が終わった充実感に満たされ、5%社員は成果を残した時の達成感を目指している。
  • 作業の目的を必ず確認し、まず目的を明確にして、何が達成されたら成功かをイメージする。資料が完成して終わりではなく、提案書を提出したり説明会が終わったりして完結するのではなく、その後に相手が動いてくれたかを確認する。
  • 何とか時間を生み出して、緊急度は低いが重要度が高いものに時間を割り当てられることができるか、というのが成果を出し続けるうえでのポイント。重要度が高ければ、緊急度にかかわらずにやらなくてはいけない。
  • 5%社員の特筆すべき点は、上司やチームメンバー、顧客への連絡の迅速さ。小さなことでも、すぐに報告の連絡をして、自分の中で閉じることをしない。5%社員は周囲から、「あの人は複数いるのではないか」と噂されるほど、反応が早くそしてマルチタスクでこなしていく。
  • 5%社員の課題解決方法を調査すると、「デザイン思考」と似ていることがわかった。「デザイン思考」とは、ユーザの痛みや悩みを理解し、その発生原因を定義して仮説を立て、それを外部のヒアリングをもとに解決策を改良していく問題解決の「型」。「どうやって」解決するかの前に、「なぜ」その問題が発生したのかを追求する

(3)トップ5%社員のシンプルな思考と行動

  • 5%社員は、自分でコントロールしにくい「相手からの承認」に依存することなく、自分が成長することを目指している。相手にどう評価されるかではなく、自分の目指すべき姿にどれくらい近づいたかが重要。
  • 何も挑戦しないことに対して、失敗のリスクがないとはいえ、「失敗を成功へのステップと捉えるならデメリットとは言い難い」と捉えている。
  • 挑戦には必ずデメリットが含まれていることも理解する。このデメリットばかりに目がいって、リスクをゼロにしようとすると時間も費用もかかり結果的に行動をしにくくなっていく。5%社員は、デメリットありきで、メリットの方が大きければ行動する習慣を持っている。見えないリスクをいくら論じていても前に進めないから、まず小さく始めて修正しながらリスクを最小化していくことで、結果的に成功に近づいていく
  • 100%完璧を目指して計画を立てると、準備に大量の時間をかけ、行動すら起こさずに終わってしまうこともある。「より短い時間でより大きな成果を残す」というルールの中では、完璧を目指さずにやめるべきことを決めないといけない
  • 本質的な価値とは、なぜそれがうまくいったのか、その構造やプロセスを解き明かし再現できること。成功にも必ず要因がある。それをしっかり把握すれば、成功までの道のりがわかるようになり、安定して高い成果を出し続けることにつながる。
  • 5%社員のように「さらに良くなりたい」という改善の欲求がないと、成長は止まる。こういった行動実験を続けていかないと、「再現性を持った人」ではなく、「同じことしかできない人」になりかねない
  • 1人が笑顔になればつられて周りも笑顔になる。会議の冒頭2分でくだらない雑談をすると、笑顔の人が増え、結果として心理的安全性が確保されて、会議で出されるアイデアが増える。相手を笑わせようとする必要はなく、「自分が笑顔でいること」が大切。自分が笑顔になれば、それが伝播して相手も笑顔になる

(4)トップ5%社員の強いチームをつくる発言

  • 組織内で円滑なコミュニケーションを取るためには、特段の用がなくても同僚に話しかけて相手に関心を持ち、良好な関係を構築する必要がある。5%社員は「今ちょっといい?」をよく使う。このカジュアルなコミュニケーションを組織に浸透させると、働きがいや満足度が増し、業務にプラスの影響が出る。
  • 上位20%ぐらいの若手エースに多い「これ絶対におかしい、こうすべき」と「べき論」を一方的に主張したところで意見は通りにくい。5%社員は意見をするときに、他者への配慮や感謝を当然忘れない。「メンバーがどうしたら気持ちよく協力する気になってくれるか」を考えて発言する
  • 5%社員が一般社員と異なるのは、自分に対する自信と強い信念があるから。これと決めたらブレずに突っ走る。5%社員は絶えず内省を繰り返して、自分だけの価値観を磨いていく。その価値観を元に、一般的に信じられている常識や道徳を疑っていく
  • 5%社員は会議の最後でアクションを決めないと成果につながらないことを知っている。会議は、①情報共有、②意思決定、③アイデア出しの3種類に分類される。その中で意思決定では才数的にアクションを決めなくてはいけないことを5%社員は理解している。最終的にYesかNoか、そして誰が何をやるかを決まらないと前へは進めない
  • 5%社員はダ行(だけど、でも、ですから、どうしても)を使って話す頻度が少ない。ダ行は断定しているように聞こえるため、聞き手にとって耳障りが悪く、言い訳に聞こえてしまう。ダ行の代わりに、サ行(そうですか、そうしたら、しかし、失礼しました、承知しました)を使うと相手の感情を逆なでしない。

(5)トップ5%社員のすぐやる習慣

  • 5%社員は、時給を上げるためには「信頼を築くこと」が極めて重要であることを知っている。相手が動くのは、自分の主張を「伝えた」からではなく「伝わった」から。「伝わる」には、その人に伝える資格がなくてはいけない。相手は「この人の話なら」といって聞いてくれる。
  • 5%社員は、日ごろから重要なメールを送る相手と密なコミュニケーションを取っており、メールに「お疲れ様です」の一言がないくらいではどうこう言われる関係ではない。5%社員のメールは非常にコンパクトでありながら、受け取る側に冷たい印象を与えない。メールの文章が短いということは、打つ時間も短くて済むため、他の時間に仕事を充てられる。
  • 「それはできません」と言うことも非常に重要。仕事ができるがゆえに5%社員には多くの仕事や相談が降ってくる。これをすべて受けていては、自分が本当にやるべきことに費やす時間が少なくなる。自分が何をやるべきで、何をやるべきでないかを明確にして、「できないことはできない」と断ってしまう
  • 研修の目的は、学ぶことではなく、学びを業務に活かすこと。研修で重要なのは、動機付けをして自らが学ぶという気持ちを持たせること。学習意欲が高い状態で研修に参加すれば、吸収することも多く結果的に業務に活かすことができる。
  • 仕事の期限が守れない人は、仕事を受けた時点で不明確な見積りと曖昧な目標を持っている。この状態で仕事をスタートさせると、途中で不測の問題が起きてもセンサーが働かずにスルーしてしまう。発生して問題は処理も報告もされずに大きくなっていき、納期間際になって間に合う可能性がゼロになってから、「すいません、間に合いません」と報告する。これでは周囲も協力できない。
  • 5%社員は、インプットとアウトプットの時間差を縮めようとする。アウトプットとの時差を縮めるインプット方法とは、まず目的が明確であること。何をするにも、すべては「これによって自分は何を得ようとしているのか」という目標がクリアになっていることが前提。アウトプットが決まっていれば、インプットの後にすぐに準備に取り掛かれる

3.教訓

おそらく、既にマネジメント職についている人たちは、本書で紹介されている習慣のうち、既にいくつかは実践していると思います。

逆にそうしないと、本当に時間が足りなくなります。私自身、決して上位5%に入って出世しているわけではありませんが、「自分もそうしている」ということはいくつかありました。

また、今回引用した内容以外にも多くの習慣が紹介されていて、その人その人で参考になる項目は異なるかと思います。

ただし、自分がデキる人に思われたくて形から入ろうとするとおそらく失敗し、周りから「痛い人」に思われかねません。手段と目的をはき違えることなく、真摯な気持ちで向上を目指すことが何より重要だと考えています。

どちらかというと若手向けの内容と感じており、以下の「コンサル一年目が学ぶこと」とセットで読むと、一段上の考え方ができるようになるのではと思います。

bookreviews.hatenadiary.com