サラリーマン課長がおすすめする、あなたの仕事に役立つ本100冊

40代のサラリーマン課長が身銭を切って買って読む価値のあるおすすめの本だけを紹介するページです

FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 ハンス・ロスリングほか著

 

1.はじめに

言わずと知れた、ミリオンセラー本です。

いつかは読みたいと思っていましたが、あまりの売れ方に少しアンチに傾いていました。

それでも、ここまで売れているには理由があると思い、ようやく手に取りました。

まず冒頭に、13個の3択クイズが用意されています。私の正解数は3問で、本書にあるように、サルが無作為に選ぶよりも低い正答率です。(ちなみに娘は4問、嫁さんは2問)

以下に1例を出します。

Q.世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどれくらいいるでしょう?

A.20%  B.50%  C.80%

正解は、本を買って確認いただければと思いますが、どれだけ自分の頭の中が古く、ドラマチックなイメージで占有され、事実を知らないかを認識できる良本です。

以下で、10個の思い込みの中から、印象的な部分を引用します。

2.内容

(1)分断本能:「世界は分断されている」という思い込み

  • 「極端な数字の比較」に注意しよう。人や国のグループには必ず、最上位層と最下位層が存在する。2つの差が残酷なほど不公平なときもある。しかし多くの場合、大半の人や国はその中間の、上でも下でもないところにいる
  • 「上からの景色」であることを思い出そう。高いところから低いところを正確に見るのは難しい。どれも同じくらい低く見えるけれど、実際は違う

(2)ネガティブ本能:「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

  • 暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目も厳しくなった。昔に比べたら大きな進歩だ。しかし監視の目が厳しくなったことで、悪いニュースがより目につくようになり、皮肉なことに「世界は全然進歩していない」と思う人が増えてしまった。
  • 思い出や歴史は美化されやすい。みんな1年前にも、5年前にも、50年前にも、いま以上に悪い出来事が起きたことを忘れてしまう。「世界はどんどん悪くなっている」と考えれば不安になり、希望も失いがちになる。でも、それは思い込みに過ぎない。

(3)直線本能:「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

  • 数字がまっすぐ上昇しているように見えても、そのグラフは直線なのか、S字カーブなのか、こぶの形をしているのか、倍増のグラフなのかはわからない。2つの点を線で結ぼうとすると、かならず直線になる。しかし、点が3つ以上あれば、「1,2,3」と増える直線なのか、「1,2,4」と増える倍増なのかを知ることができる。

(4)恐怖本能:危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み

  • 地震・戦争・難民・病気・火事・サメによる被害・テロなどは、関心フィルターを通り抜けやすい。めったに起きないことのほうが、頻繁に起きることよりもニュースになりやすいからだ。こうしてわたしたちの頭の中は、めったに起きないことの情報で埋め尽くされていく。注意しないと、実際にはめったに起きないことが、世界ではしょっちゅう起きていると錯覚してしまう。
  • 子ども向けワクチンや、放射線被ばくや、化学物質について、事実に基づいた理解を広めるのは、いまだにとても難しい。多くの人は、よくわからないものを疑い、反射的に怖がってしまう。データを見せても、なかなか信じてもらえない。
  • 恐怖本能は、正しい使い方をすれば役立つこともある。しかし、世界を理解するにはまったく役に立たない。恐ろしいが、起きる可能性が低いことに注目しすぎると、本当に危険なことを見逃してしまう。「恐怖」と「危険」はまったく違う。恐ろしいと思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。一方、危険なことに確実にリスクがある。
  • リスクは、「危険度」と「頻度」、言い換えると「質」と「量」の掛け算で決まる。リスク=危険度×頻度であり、「恐ろしさ」はリスクとは関係ない

(5)過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み

  • 「人の命が懸かっているときに、時間や労力の優先順位にどうのこうの言うんじゃない。お前はなんて無慈悲なやつなんだ」と思うも多いだろう。しかし、使える時間や労力は限られている。だからこそ頭を使わないといけない。そして限られた時間や労力で、やれるだけのことできる人が最も慈悲深い人だと思う。
  • 何かの重大さを勘違いしないために最も大切なのは、ひとつの数字だけに注目しないこと。もし数字をひとつだけ見せられたら、必ず「それと比較できるような、ほかの数字はないんですか?」と尋ねよう。ある程度ケタの数が増えると、ほかの数字と比較しない限り、どんな数でも大きく、重大に見えてくる。
  • 人口は国によって千差万別なのだから、国全体の二酸化炭素排出量を比べるのは不毛だ。もしそんな論理がまかり通るのであれば、人口500万人しかないノルウェーは、国民ひとりがどれだけCO2を排出しても、多めに見てもらえることになる。つまり、CO2排出量という大きな数字は、人口で割ることによって、比較可能な意味のある数字になる
  • ひとつしかにあ数字をニュースで見かけたときは、必ずこう問いかけてほしい。できるだけ、量ではなく割合を計算しよう。その後で、数字が重要かどうか判断すればいい
  1. この数字は、どの数字と比べるべきか?
  2. この数字は、1年前や10年間と比べたらどうなっているか?
  3. この数字は、似たような国や地域のものと比べたらどうなるか?
  4. この数字は、どの数字で割るべきか?
  5. この数字は、ひとりあたりだとどうなるのか?

(6)パターン化本能:「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み

  • 国は違っても所得の同じ人のあいだには暮らしぶりに驚くほどの共通点があることがわかるし、国は同じでも所得が違えば暮らしぶりが全く違うこともわかる。人々の暮らしぶりに一番おおきな影響を与えている要因は、宗教でも文化でも国でもなく、収入だということは一目瞭然
  • ある集団の過半数になんらかの特徴があると言われれば、その中のほとんどの人に何かしらの共通点があるように聞こえてしまう。だが、「過半数」とは半分より多いという意味でしかない。51%かもしれなし、99%かもしれない。
  • とんでもないしくじりをしないためには、あなたの経験が「普通」ではないかもしれないことを肝に銘じておいたほうがいい。くれぐれも、レベル4の経験が世界のほかの場所に当てはまると思わないように。特に、自分の経験をもとに、ほかの人たちをアホだと決めつけないでほしい

(7)宿命本能:「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

  • 宿命本能を抑えるためには、ゆっくりとした変化でも、変わっていないわけではないことを肝に銘じるといい。1年間の変化率に惑わされてはいけない。たとえ1%だとしても、前に進んでいることには変わりない。
  • 知識をアップデートしよう。賞味期限がすぐに切れる知識もある。テクノロジー、国、社会、文化、宗教は刻々と変わり続けている。

(8)単純化本能:「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

  • 病院があっても妊婦がそこにたどり着かなければ何の役にも立たない。救急車もなく、救急車が通れる道路もなければ意味がない。それと同じで、いい教育に必要なのは、教科書をたくさん与えることでも教師を増やすことでもない。学びにいちばん大きく影響するのは電気だ。電気があれば、日が暮れたあとに宿題ができる。
  • やたらめったらとトンカチを振り回すのはやめよう。何かひとつの道具が器用に使える人は、それを何度でも使いたくなるものだ。でも、ひとつの道具がすべてに使えるわけではない。あなたのやり方がトンカチだとしたら、ねじ回しやレンチや巻き尺を持った人を探し、違う分野の人たちの意見に心を開いてほしい。

(9)犯人捜し本能:「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

  • 世界の深刻な問題を理解するためには、問題を引き起こすシステムを見直さないといけない。犯人捜しをしている場合ではない。もし本当に世界を変えたいのなら、犯人捜し本能は役に立たない。
  • 便利なものをすべて手放して、ジーンズやシーツを手洗いする覚悟が、あなたにはあるだろうか?あなたにそれができないのなら、どうして彼らに不便でもがまんしろなんて言えるのだろう?犯人を探し出して責任を押し付けても仕方がない地球温暖化のリスクから地球を守るのに必要なのは、現実的な計画だ。
  • 犯人ではなく原因を探そう。物事がうまく行かないときに、責めるべき人やグループを捜してはいけない。誰かがわざと仕掛けなくても、悪いことは起きる。その状況を生み出した、複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐべきだ。

(10)焦り本能:「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

  • データそのものの信頼性と、データを計測し発表する人たちの信頼性を守ることがとても大切。わたしたちはデータを使って真実を語らなければならない。たとえ善意からだとしても、拙速に行動を呼びかけてはいけない
  • 「いましかない」という焦りはストレスの元になったり、逆に無関心につながってしまう。「なんでもいいからとにかく変えなくては。分析は後回し。行動あるのみ」と感じたり、逆に「何をやってもダメ。自分にできることはない。あきらめよう」という気持ちになる。どちらの場合も、考えることをやめ、本能に負け、愚かな判断をしてしまうことになる。
  • 小さな歩みを重ね、計測と評価を繰り返しながら進んでいくしかない。過激な行動に出てはいけない。どんな社会貢献に携わっていても、すべての活動家はこのリスクを肝に銘じておいたほうがいい。リスクに関してオオカミ少年になってはいけない

(11)ファクトフルネスを実践しよう

  • 何よりも謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。
  • 謙虚であるということは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくこと。自分の知識が限られていることを認めること。堂々と「知りません」と言えること。新しい事実を発見したら、喜んで意見を変えられること。謙虚になると、心が楽になる。何もかも知っていなくちゃいけないというプレッシャーがなくなるし、いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい
  • 好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し、受け入れるということ。自分の考えに合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めること。答えを間違っていても恥とは思わず、間違いをきっかけに興味と持つこと。好奇心を持つと心がワクワクする。好奇心があれば、いつも何か面白いことを発見し続けられる
  • いくら良心的な報道機関であっても、中立性を保ってドラマチックでない世界の姿を伝えることは難しいだろう。そんな報道は、正しくても退屈すぎる。メディアが退屈な方向に行くとは思えない。ファクトフルネスの視点でニュースを受け止められるかどうかは、わたしたち消費者次第だ。世界を理解するのにニュースは役に立たないと気づくかどうかは、わたしたちにかかっている。

3.教訓

改めて書くまでもありませんが、自分の意見や考えを持つことは、非常に重要です。

仕事においては、その考えや理論を元に仮説を立て、それが正しいのかを検証することになりますが、世界でさかんに報道されている題材となると、もの珍しい極端な事例に脳内が専有されてしまい、実際の姿とかけ離れたイメージが出来上がってしまいます。

同じことが、昔の経験にも言えると思います。

「昔の自分たちのやり方はこうだった」というイメージが強く残っていると、当時の記憶が美化されてしまい、過去からの改善の積み重ねによって今では当時と全然違う業務フローになっているのに、「常識的にはこのやり方だよね」とか「昔の方がよかった」と、ついつい言ってしまうことがあります。

すると、「あの人はわかっていない」と直近の現場を知る人の心の中で思われてしまいます。

そうならないために、今ここで何が起こっているのかの現実を把握することと、常に新たな情報を意識的に取り込むことをしっかり意識していきたいと思います。

短く深く瞑想する法:最高の「休息」と「気づき」を得るマインドフルネス入門  吉田昌生 著

 

1.はじめに

どうしても、「瞑想」というと、どこか宗教的な匂いがして、これまで敬遠してきました。

しかし、書店に行くと、マインドフルネスに関するさまざまな書籍が売っていますし、Googleその他で導入されているという記事もあることから、少し興味を持ち始めました。

そこで、会社でも希望者向けに入門の研修が開催されたので参加してみました。

しかし、実際に「瞑想」してみても、何が正しい状態なのか、1度の研修ではほとんど自己理解に到達することができませんでした。

そのため、一度、入門書を読んで、自分なりの理解を得ようと思い、本書を手に取りました。

2.内容

(1)瞑想で「気づきが増えていく」

  • マインドフルネスは、「いま」「ここ」に100%の注意を向ける「心の在り方」のトレーニン
  • 瞑想と聞くと、多くの人が「”無”にならなければいけない」と思う。しかし、それ自体が目的ではなく、大事なのは「気づく」こと。自分の内面に起こっていることに「気づく力」を高めること。
  • 自分の意識が、過去や未来にさまよっていることに気づいたら、「いま」「ここ」に戻す。瞬間、瞬間に、意識を向けていく。そのための方法が、瞑想(マインドフルネス)。
  • 瞑想によって「気づき(アウェアネス)」の力を養えば、思考を止めることはできないが、「思考を切り替える」ことができるようになる。
  • 目を閉じて、1分間、呼吸の感覚(息を吸うとお腹がふくらみ、息を吐き出すとへこむ)に意識を向ける。たった1分でも思考が鎮まり、気持ちが落ち着き、感情が安定するようになる。そして、さまざまな気づきが増えることで、自分の心とうまく付き合うコツがつかめるようになる。
  • より深く瞑想する方法は以下の3点。
  1. 調身:姿勢を整える。骨盤を安定させ、背筋を伸ばす。
  2. 調息:呼吸を整える。ゆっくり呼吸し、時間をかけて息を吐く。
  3. 調心心を整える。呼吸の感覚に注意を向ける。自然な呼吸によるお腹の動きをただ感じる。

(2)瞑想で「ストレスが消えていく」

  • 私たちは、1日の半分近くの時間をマインドワンダリング(マインドレスネス)状態で過ごしている。「いま」「ここ」に集中せず、過去の怒りや未来への憂いといったネガティブな感情を頭の中で繰り返してはストレスを受けている。ネガティブな感情の反芻こそ、精神的な疲労を蓄積させる原因
  • そうするうちに次第に心も体も元気がなくなっていく。「過去」と「未来」に振り回されないためには、自分の意識が「過去」や「未来」に向かってしまっているのにまず「気づく」こと
  • 瞑想では何もしない。何もしないからこそ価値があり、効果がある。何もしないからこそ、心が休まり、エネルギーが養われる

(3)瞑想で「心が前向きになる」

  • 人生では、たしかに失敗することもあるし、うまくいかないこともある。その人は「どうせ私は」という言葉で切り捨てられるのではなく、ほとんどの場合は勘違い。過去の経験から形成された誤ったセルフイメージであり、妄想に過ぎない。
  • 同じ勘違いなら、「私なら大丈夫」とポジティブな方向に思い込んだ方がよい。よい思い込みを作りたければ、意識的に、何度も何度も、自分自身に伝えていけばいい
  • 自分に対して思いやり深く接していくと、自分を卑下したり、自己防衛的になったりせずに、自分の過ちや弱さに向き合う勇気が持てる。その結果、自分をより高めるモチベーションへとつながりやすくなる。

(4)瞑想で「自信が湧いてくる」

  • 自分を責める気持ちは、体を緊張させる。筋肉はかたくなり、呼吸は浅くなる。すると、自律神経が乱れて、心が弱くなっていく。
  • どんな自分もそのまま受け入れるのが「自己受容。「自分を肯定できない自分」も「そのまま」受け入れていく。等身大の自分を認め、すぐに変えられないことを受け入れながらも、「いまの自分で精いっぱいがんばろう」と思える。
  • 他人を責めることは、じつは自分を責めることになる。他人を責めてばかりいると、周りに誰もいなくなり、孤立します。すると、仕事でも家庭でもうまくいかなくなり、自身がなくなっていく。すると、そんな自分を必ず責めるようになる。

(5)瞑想で「人間関係もよくなる」

  • 自信がない人は、人間関係もうまくいかない。自信がないと、人は「反応的」になりやすくなる。反応的になるとは、周囲の影響・刺激を受けて行動しがちになるということ。つまり、能動的ではなく受動的になるということ。
  • 自信がない人は、「自分はこの状況を乗り越えられない」という恐れに支配されたり、過剰なストレスを感じたりする。そして、逃げ出したり、他人のせいにしたりする。
  • 自信がない人は、やりたいことをやれなくなる。自信がない人は、他人からいい評価を得るために、やりたくないことまでやろうとしてしまう。自信がない人は、自分らしく生きることが難しくなる。そういう人はなかなか輝くことができない。
  • 私たちは「根拠のない自信」こそ必要。自信を持てないのは、「自己受容」できていないから

(6)瞑想で「幸せ体質に変わる」

  • 瞑想を続けると、心の状態が安定し、内側の幸福感が高まる。幸せでいるということは、仕事のパフォーマンスの向上や、心身の健康長寿にもつながる。
  • 大切なのは、「未来」の自分の理想や目標を持ちながらも、「いま」の自分を愛すること。瞑想やヨガに夢中になる人にありがちなのが、よりよい自分になろうと頑張りすぎること。
  • ありのままの自分を許し、認めると、自分の内側に安心感が広がる。その安心感があなたの魅力となり、周りからも大切にされるようになる。自分を愛し、自分との関係性が変わることで、自分を取り巻く現実もまた変わっていく
  • 内なる情熱、内発的動機とつながり、”want to"で行動している人は、その波動に合ったものが人生に招かれるようになる。だから、自分の可能性を最大限発揮して自己実現するためには、「自分は本当はこんなことを望んでいる」という本当の気持ちに「気づく」ことが大切

3.教訓

この本を読むまで、瞑想では「無」になることに近づかなければならない、と思っていましたが、それだけが目的ではないという記載があり、少し気持ちが楽になりました。

なかなか「無」に近づけない自分を自己受容することも、改善に向けた1つのステップと捉え、前向きに考えていきたいと思います。

心にも体にも適度な休息が必要で、時には何もしないことが重要であり、常に何かをしていないといけないとあせることなく、心を落ち着けたいと考えています。

瞑想の仕方だけでなく、心の持ち方や自己受容の考え方など、参考になる記載が多く、忙しい現代だからこそ、本書がマッチする方も多いと思います。

外交談判法 カリエール著

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1.はじめに

本書は、立派な交渉家となるために必要な資質と知識について書かれた、1716年にフランスの外交官により記された書物です。

本来は外交官としての心得を説いた内容ですが、現代の一般社会人に向けて、部門長に代わり組織を代表して行動することにも応用が利く、非常に示唆に富む内容となっています。

以下に、いくつか引用してみたいと思います。

(主君=自国の代表、君主=敵国の代表)

2.内容

  • 無経験の交渉家は、人が彼に敬礼すると、それが彼が代表している主君の地位に対して敬意を払っているのに過ぎないことを忘れて、得意になるのが普通。
  • 大使の主たる目的は、主君と任国の君主の間の良好な関係を維持することであるべき。大使は、任国の君主の権力を保ち、または増大させる手段としてのみ、おのれの主君の権力を代表するのが筋合いであって、任国の君主に屈辱を与えたり、その恨みや妬みをかきたてるために主君の権力を使ってはならない。
  • ことに大国を統治する主権者にとって、近くや遠くの国々と、公然とまたは秘密裏に、平時と戦時とを問わず、絶えず交渉を続けているということがいかに有益なことであり、また必要欠くべからざることでもある。
  • どんなに強い国でも、他の諸国がこの国に敵意を燃やし、またはその繁栄を妬んで、団結してやってきたときに、同盟国無しでは、これらの諸国の軍隊に抵抗できるほどに強くはない。
  • 立派な交渉家にとって必要なことは、何を言うべきかをよく自分で検討していない状況では、話したくてむずむずしていても、その欲望に抵抗できるような自制心を持つこと。相手の提案に対して、即座に、よく考えもしないで、返答しようと見栄を張らないこと。
  • 情報を買いたければ、与えざるを得ない。この取引から一番大きな利益を得るのは、相手よりも限界が広いので、訪れる機会を一層上手に利用できる人。
  • スパイに使うほど、適切で必要な金の使いみちはない。かかる出費を要路の大官がおろそかにするならば、それは弁解の余地のない過ちである。
  • 優柔不断ということは、大きな問題を処理する場合には極めて有害である。不利な点を色々と比較考慮したうえで決心して、その決心を粘り強く貫くことのできる果断の精神が必要
  • あまりに有能な人は、かえって凡人にしばしばうまく逃げられてしまう。時々、自分の手腕を信じ過ぎて凡人にだまされる。凡人を味方にしようと思うならば、彼らの役に立つように、彼らから好感を持たれるように自分の手腕を用いるべき。
  • ぺてんはいやしむべここと。一生の間には何回も交渉事を扱うため、嘘をつかない男だという定評ができることが彼にとっての利益であり、この評判を彼は本物の財産のように大切にすべき。
  • 感情を抑えていつも冷静な人は、気短で怒りやすい人と交渉する場合に極めて有利。勝負にならないような違った武器で戦っているようなもの。この種の仕事で成功するには、口を動かすことより、耳を働かせることの方がはるかに必要。沈着で控えめで大いに用心深く、いかなる場合にも忍耐強いことが必要。
  • 人間というものは、自分に対して役に立とうとしてくれている者に対しては、こちらも進んで親切にしたくなるもの。そして、相互に親切にしあうことこそ、友情の最も確実で長続きする基礎。
  • 君主を研究して、彼の性癖、愛着の対象、美徳と弱点を知り、必要な場合にはこの知識を利用できるようにしておくことが大切。交渉家は、任国の君主と同時に、君主の大臣や腹心の人たちを研究しなければならない。彼らの痛いところはどこか、彼らの意見や情熱や利害関係はどんなものかを見抜かねばならない。また、彼らが君主の考えに対し、どの程度の影響力を持っているか、そこでなされる決定に対してどのような関与しているかを見抜かねばならない。
  • 主権者たちは、あまりいつも褒められているので、通常、大抵の人よりは一層鋭く、賛辞の良し悪しを味わい分ける。彼らに喜ばれるためには、賛辞は機智にあふれていて、その場にピタリとふさわしいものでなければならない
  • 我々に対して愛情を示してくれる人々に対して、こちらも愛情を抱かないでいるということは難しい。そして、愛情というものは、大掛かりな献身的行為よりは、むしろ不断の心遣いを怠らず、世話や親切やちょっとした尽力をしばしば繰り返して行うことから生まれるのが普通。
  • 自分の個人的な情熱を満足させるために振る舞うならば、それは自分の感情のために主君の利益を犠牲にすることによって、自分の無能力や不忠実を証明する。
  • 状況は変化するものであって、どれほど決心が固く、強情な人でも、実は長続きせず移り気であるに過ぎない。彼らの考えも決心も、すべてその時々の彼らの想像力の状態によって左右されるものでしかない。
  • 立派な交渉家に必要な資質の中で最も必要なものは、人が言おうとすることを、注意深く噛みしめながら傾聴することができ、相手が述べたことに対して、的外れでないその場にあった返事はするが、こちらの知っていることや望むことをせかせかと全部言ってしまおうとは決してしないこと。交渉の主題を説明するにあたって、最初は相手の事情を探るのに必要な程度に留める
  • いくら自分にとって有利な企てでも、最初からその全貌と、それから起こりうるすべての結果を見せられると、やろうという決心がつかない人間が世の中には多い。しかし、そういう人たちでも、少しずつ順を追って入らせると、こちらの誘導するがままになる。なぜならば、一歩歩くともう一歩、さらに何歩も歩いてみたくなるから。
  • 有能な交渉家にとって必要なことは、ずるくて抜け目ない人だと思われたいなどというバカな思い上がりを気を付けて避けること。でないと、交渉相手に警戒心を抱かせる。反対に、彼は実があり、うそをつかず、彼の意図は公正なものであるということ相手に納得させるよう努力すべき
  • 腕利きの交渉家ならば、条約の条項の起草を引き受けるべき。なぜならば、条項を文章にする人間には、既に合意をみた条件を、当事者間で決めた事柄に違反しない範囲内で、主君にできるだけ有利な言い方で表現することができるという利点があるから。
  • どんな国民や国家にも、悪い法律もあろうが、よい法律もたくさんある。彼はそのよい法律を褒めるべきで、よくない法律のことは口にすべきではない
  • 交渉家は、軽々しく約束をしてはならないが、一旦約束したことは几帳面に実行しなくてはいけない。人は断られた場合よりも、約束が守られないことに対して、一層激しく腹を立てるもの。
  • 有能な交渉家ならば、主君の権利や主張に有利なすべての条件を、極めて明瞭に条文の文面に表現させなければならない。一点の疑いも残さないように、詳しく的確に規定させなければならない。そのためには、彼がその条約に使われている言語を十分に知っていて、そこで用いられる言葉がどれだけのことを意味しうるかを承知し、最も適切で表現力に富んだ言葉を選べることが必要
  • 思慮のある交渉家ならば、公信を書くときには、報告の対象である君主や大臣の目に触れるかもしれないから、最もな苦情の種を彼らに与えないように書くべき。
  • 彼の振る舞いが悪く、横柄で筋が通らず、人聞きの悪い行状があって憎らしがられるようになると、君主までがその国で憎まれるおそれが大いにある。
  • 問題になるのは、通常、何を報告するかということよりは、どのような言い回しで、また、どういう意図で報告するのかということ。
  • 無学で主君の権勢を笠にきてのぼせ上がっている交渉家は、自分を権威づけるために、主君の利害とは無関係の事柄に関して理由もなく主君に名前を出すきらいが強い。これに反して、分別のある交渉家は、主君の名前と権威に累を及ぼすことを避け、本当に然るべき場合でない限り、決して主君の名前を引き合いに出さない

3.教訓

本ブログを見ていただける方は、むしろ部門長よりも、中間管理職や責任者クラスの方が多いものと推察します。私もその一人です。

社内外の関係者と交渉・協議を行う際には、個人的な利害や一時的な感情に左右されることなく、常に組織を代表しているという自覚を持ち、誠実に対応したいと考えます。

また、今は社内通達や取扱マニュアルなど、文章を起案することも多いので、自らの意図をしっかり伝えることができる言葉・表現を選び抜きたいと思います。

その他、メールやツイートをする際にも参考になる、現代にも通じる内容が盛りだくさんです。 自分の能力を過信して短絡的に発言すると、いわゆる”炎上”してしまう可能性があり、充分留意したいと考えています。

 

考える技術 大前研一 著

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1.はじめに

本書は2004年11月に単行本として刊行されています。

今となっては当たり前ですが、その時点で、「携帯電話はパソコンやSuicaデジタルカメラiPodと一体化し、個人認証ができるようになる。日本の警察は遅れているから、携帯電話が運転免許証になることはないだろう。」と記載されています。

ただし、初代iPhoneが発売されたのは2007年です。その約3年も前、今から20年弱前に、現代をほぼ正確に予見をしています。

そういった洞察力を持つ大前研一さんの「考え方」について学びたいと思い、この本を手に取りました。

2.内容

(1)思考回路を入れ替えよう

  • 「やってみなければわからない」「たぶん、これで大丈夫だと思う」というレベルのものは、解決策とは呼べない。問題解決の根本にあるのは、論理的思考力である。問題解決のみならず、先見性とか直感と呼ばれるものも、じつは論理的思考があってこそ生まれる。
  • 重要なのは、「仮説」ではなく「結論」を導き出すこと。いかなる問題にも解決策は必ずある。もちろんそれは「業界から撤退する」「身売りをする」といったことも含めての話だが、解決策のない問題など存在しない
  • 原因になっている部分を直さないかぎり、問題の解決は望めない。大切なのは「さまざまな現象の中で本当の原因は何か」を考えること。現象を数え上げるだけで思考を停止させてしまってはいけない。
  • 「こうすれば問題は解決する」という提案までできなければ、真の問題解決とはいえない。しかも、その解決策は、すべて現場やマーケットから生まれてきたものでなければならない。

(2)論理が人が動かす

  • 人を納得させるための論理構成がしっかりとなされていれば、提言には説得力が伴う。説得力とはすなわち相手の心理までも勘案した論理構成の力であり、その論理構成を生み出す思考回路の組み立て方こそが、提言のノウハウなのである。
  • プレゼンテーションにおける「提言」は1つでいい。提言がいくつもあると経営者は実行に二の足を踏んでしまうが、「社長、とにかくこの1つだけをやってください」と言われれば、気持ちが動きやすいからだ。「これも重要、あれも重要。ここも直したほうがいい」というのは、コンサルタントではなく評論家でしかない。
  • 人間の感情はロジックだけでは収まらない。感情の問題をきちんとフォローして、翌日から嬉々として実行に移してもらえるように仕向けていくことも、プレゼンテーションの実効性を上げるには不可欠なのである。
  • 問題を羅列したところで、それらはしょせん現象に過ぎない。現象のさかさまは解決策ではない。本当は原因に対する解決策が必要なのに、現象にしか目が行っていない。日本の議論というのは、十中八九、現象と原因の区別さえできていない。そもそもそうした思考回路を持っていない。

(3)本質を見抜くプロセス

  • もし事実に対して忠実なら、自分がどの立場にいるかは関係がないはず。その事実を素直に認めることができなければ、物事の本質を見抜くことができないし、正しい解決策を生み出すためのプロセスを踏むことなど不可能だ。解決策を生むためには、まず自分がバイアスがかかっていない状態に身を置かなければならない。
  • 自分の意見が相手の意見と違うときに、事実に裏打ちされた信念を持って、どうやってその意見を相手に納得してもらうか。そういう努力を平素から行っている企業と、同質の集まりの中で訓練をまったくしていない企業とでは、極めて大きな差が生まれてしまう。

(4)非線形思考のすすめ

  • 現実にお金がどう流れているかといった「物理現象」しか私は信用していない。そうした現象の積み重ね、証拠の積み重ねによって、あらゆる問いに対する答えは必ず出てくるからである。新しい経済の中では、過去の常識に当てはめるのではなく、今起こっていることを観察することが大切
  • ゲームの攻略本でテクニックだけを覚え、後ろに答えが書いてあったらそこを先に読んでしまうような人間は、世の中に出てから何の役にも立たない。答えを与えられないと何もできないし、答えのない状況になったらパニックを起こしてしまうからだ。
  • 人間が極限の状況でどういう判断をし、どのような工夫をするのか、その辺を聞いておくだけで、自分がいざという場面に出くわした時の思考空間が広がる。「考える」ということは、自分に「知的備蓄」を作るということに他ならない

(5)アイデア量産の方程式

  • 「考える」とは、つねに質問をし、自分で答えを一生懸命に見つけること。「今ここで答えを出さないと王様に殺される」という強迫観念のもとに、自分の持っている数字やデータを頭の中ら引っ張り出して計算し、「なるほど」と思える解答を導き出す。こんなことは、本当は誰にでもできること。
  • 散歩するならボケっと歩きたい、という人は、問題解決に立ち向かったり、新しいビジネスモデルにチャレンジしたりすることは諦めなければならない。知的に怠惰な人にはそれなりの人生がある。あなたがそのような人生を送りたければそれはそれでいいが、だとしたらこの本を読んでも仕方ないだろう。
  • もちろん相手によって話し方は変える。ただ考え方の強度そのものは変えることはない。相手によって緊張がゆるんだり、考え方の強度を変えたりする悪い癖がつくと、「この連中に説明するときは、ちょっとくらいい加減でもいいや」という態度になる。こういう人間は、社長に前に行ったときもいい加減になってしまうものだ。
  • 発想が豊かになるためには、知識は少ないほうがいい。なまじ知っていることが書いてあると、それを確認しただけで頭の働きは止まってしまう。実は「理解した」と思うことが、人間にとってはもっとも危険な状態なのである。

(6)5年先のビジネスを読み解く

  • 成功した経営者の中には、神の啓示か何かのように「突然ひらめきがあった」などと予言者的なことをいう人はいる。しかし後で成功の原因を分析すると、ひらめきとか啓示といったものとはまったく違い、非常に論理的な「成功のパターン」が整っていることが多い。そのパターンには次の4つの要件がある。
  1. 事業領域の定義が明確にされている
  2. 現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について簡潔な論旨の仮説が立てられている
  3. 自分のとるべき方向についていくつか可能な選択肢があっても、どれか1つに集中する
  4. 基本の仮定を忘れずに、状況がすべて変化した場合を除いて原則から外れない

(7)開拓者の思考

  • 突破できる人間とできない人間の違いは、要するに自分にはまだ経験がないというときに、そこを避けて通るか、「とりあえず入ってみよう。何かあるかもしれない」と思うかの違いである。なぜなら最初から成功の道が見えている人間など、今の世界にはいないからだ。
  • 毎日が訓練であり、誰と会うときでも真剣勝負のつもりで、常にベストを尽くさなければいけない。これが平素の生活態度になっている人は、いずれ拳銃の名手になれる。

3.教訓

ただ漫然と仕事をしているだけではダメで、以下のサイクルを回していくことの重要性を再認識することができました。

  • 実際に何が起こっているのか観察する(Look)
  • その中で何がボトルネックになっているのか考察する(Think)
  • それをどうやったら解消できるのか改善策を作る(Grow)
  • 実行し、突破する(Do)

以上の内容は、現在受講中のチームビルディング研修の指定図書にも触れられています。

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今の仕事でも、わかったつもりになっているけど、実際に人から聞かれたり、いざ自分でやってみたりすると、うまく説明できないことがよく起こります。

そのため、最近では、

  • 「理屈上こうなる」と考えるだけで止まるのではなく、実際に業務を担当する人に聞きに行き、「実際にこうやっている」とことを聞きにいく
  • たぶんあの人が解決してくれるだろう、と思うだけでなく、その人に「対応しているか」を確認し、未処理なら対応を促す

といったことを意識して行動するようにしています。

THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法 ダニエル・コイル著

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]  

1.はじめに

  1. 本を読むきっかけ:「世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた」の”人材編”のなかで採り上げられていたこと。また、楠木健氏が監訳を務めていること(アダム・グラント氏の著書が代表例)。
  2. この本から何を学びたいか:個人商店の集まりではなく、チームとして機能させるために必要なこと
  3. この本を読んでどうなりたいか:担当者の延長線としてのマネジャーでなく、真の意味で組織を成長させるマネジャーを目指すこと

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2.内容

(1)スキル1:安全な環境をつくる

  • 私たち人間は、言葉以外の方法で「帰属のシグナル」を送ることで、「安心できる関係」を構築している。以下のシグナルをすべて合わせると、最終的に「あなたはここにいて安全だ」というメッセージになる。
  1. エネルギー:目の前で起こっている他のメンバーとの交流を大切にしている。
  2. 個別化:メンバーを独自の存在として認め、尊重している。
  3. 未来志向:関係はこの先も続くというシグナルを出す。
  • 言葉はノイズだ。チームのパフォーマンスを決めるのは、「ここは安全な場所だ。そして私たちはつながっている」というメッセージを伝えるしぐさや態度なのだ。
  • ただ優秀なメンバーを集めるだけでは、チームの化学反応は起こらない。明確な帰属のシグナルを継続して受け取ったとき、チームは真の力を発揮する。つまり、チームの化学反応は、謎でも運でもないということだ。そこには決まったプロセスが存在し、正しいやり方を守っていれば、誰でも達成することができる
  • 成功しているチームは、みんなハッピーな仲良しグループだと思われていることが多いが、それは大きな誤解だ。彼らの目的は、ハッピーになることではなく、難しい問題を解決することだ。そのために彼らは協力し、努力を惜しまない。この目的を達成するためには、ときには言いにくいこともはっきり言わなくてはならない
  • 以下の3つの明確なメッセージが無意識の脳を刺激し、「ここは安全な場所だ。ここなら私たちは頑張れる。」という気持ちになる。
  1. あなたはチームの一員である
  2. このチームは特別であり、高いレベルが期待されている
  3. あなたにはそのレベルに到達する力があると信じている
  • コミュニケーションの頻度と、机の距離の間には、密接な関係がある。距離が8メートルより近くなると、コミュニケーション頻度が急激に高くなる。つまり、距離の近さがつながりを生むということ。ただ物理的に近づくだけで、つながりへの欲求が一気に強くなる
  • 会話でやってはいけないのは相手の話をさえぎることだ。もちろん、話をさえぎることが絶対的に悪いというわけではない。たとえば創造的な作業では、どんどん口を出すことで創造性が刺激されることもある。大切なのは、お互いに興奮して発言が飛び出すという状況と、ただ相手の気持ちに鈍感なために口をはさむという状況を区別することだ。
  • 自分の完璧さを誇示するのではなく、会ったばかりの私に内心の恐怖を告白したのだ。これは弱さの表れではない。むしろ会話の相手とより深いつながりをつくる手段だ。弱点を正直に告白された相手は、思わずこう言わずにはいられない。
  • すべての人に発言の機会を与える。しかし、どんな立派なしくみをつくっても、リーダーに聞く気がなければ無意味だ。いちばん大切なのは、本気でメンバーとのつながりを求め、すべての意見に耳を傾けるリーダーの存在だろう。

(2)スキル2:弱さを共有する

  • 成功するチームの例と見ると、彼らは気まずい瞬間を意図的に作り出し、メンバーにわざわざ痛みを与えている。円滑な協力関係の対局にある行為ではあるが、おもしろいことに、この気まずい瞬間があるからこそ、互いに信頼し、結束力のあるチームが生まれる
  • むしろ「自分には弱点があり、助けが必要だ」という明確なメッセージがチームの中で当たり前の態度になれば、不安や恐怖を忘れ、お互いに信頼し、協力して働くことができる。反対にリーダーが弱さを隠すと、他のメンバーも同じようにする。そうなると、どんなに小さなタスクでも、不安を生むきっかけになる。
  • メンバーの誰かが弱さを見せると、チーム全体がリラックスした雰囲気になる。つながりが深まり、信頼感も深まる。誰もが「弱さを見せる」というモードを感じ取り、「このチームでは強がらなくてもいいんだ」と安心するからだ。そこから思いやりと助け合いの精神が生まれる。
  • 確実に遅刻しそうなときに、「みんな急げ!教官に怒られるだろう!」と言うか、それともチーム全員でいったん立ち止まり、「もう怒られることは確実だ。それならここで装備を見直し、完璧な状態で集合できるようにしよう。」と言うか。後者のように考える人物は、自分のことではなく、チーム全体のことを考えている。
  • 自分が主役になりたいという気持ちをいましめ、共演者の助けになること(サポートする、助ける、信頼する、聞く)をルールとする。面白いことを言いたい、主役になりたいという気持ちを捨てなければならない。
  • リーダーとして、もっとチームに対して責任を持たなければならない。ここでの問題は、人間は権威に弱いということだ。上官から何かを命令されると、ほとんど本能的に従ってしまう。たとえその命令が間違っていたとしても。つまり、誰かが誰かに命令するという意思決定法はとても危険だということだ。誰もがリーダーになる必要がある。上からの命令に従うだけでは駄目だ。自分で考えて動けるようにならなければならない。
  • そもそも、いつでも正しい人なんて存在しない。それでも、自分の行動を厳しく振り返り、真実を追求することを習慣にしていれば、全体像が見えるようになってくる。お互いに自分の経験や失敗を話すのはそのためだ。自分の行動が他のメンバーにどんな影響を与えるのかがわかり、しだいにチーム精神が育っていく。互いに協力し、チームのポテンシャルを最大限に発揮できるようになる。
  • 成功しているチームは、チームワークが生まれるのを偶然に任せたりはしない。メンバーに期待されていることを明確にしている。そして言葉や態度で、協力することの大切さを何度も伝える
  • 何かネガティブなフィードバックを与える必要があるのなら、それがたとえささいなことであっても、直接会って伝えなければならない。フィードバックを与えるほうも受け取るほうも、メールやSNSでやり取りしたほうがずっと簡単だ。それでも直接伝えた方がいい。お互いに気まずさときちんと向き合うことで絆が生まれ、それに誤解されることなく、こちらの意図をはっきり伝えることができる
  • 弱さを見せられる環境をつくるうえでは、「何を言うか」ではなく、「何を言わないか」がカギになることが多い。それはつまり、自分なら簡単に解決できると思っても、何も提案せずに黙っているということだ。なぜなら彼らは、ここでの主役は自分ではないということを知っているからだ。
  • 正直なフィードバックを与えるのは簡単な仕事ではない。少しでもやり方を間違えると、相手を傷つけ、やる気を奪ってしまう。フィードバックを与えるときは、問題点だけを具体的に指摘し、相手の性格や人間性にまで話を広げないこと。そうすれば、言われたほうも「安心と帰属意識」を失わずにすむ。

(3)スキル3:共通の目標を持つ

  • モチベーションは個人の資質ではなく、「①ここが自分の今いる場所」「②ここが行きたい場所」の2つの対象に注意を向けるというプロセスの結果だとわかる。「理想の未来」は、目標や態度に置き換えることもできるだろう。大切なのは、現実と理想をしっかりとつないでおくことだ。理想を物語にして、何度も語ることだ
  • どんなに立派な言葉でも、1回しか伝えないのでは意味がない。小さなシグナルを常に送り合い、チームとしての目標をメンバー全員で共有するのが大切だ。気の利いたことを言う必要はない。一見すると「当たり前」の内容を、ぶれずに伝え続けていくことに意味がある
  • メンバー同士の交流の悪い例は、2つのうちのどちらかだ。1つは相手にも仕事にも興味がないこと。「仕事だからやっているだけだ」というような態度だ。もう1つは怒っていること。相手に対して怒っているか、または起きたことに対して怒っている。もしその状態になったら、背後にはもっと深い問題がある。いちばん大切な仕事は、お互いを思いやること
  • 個別の標語は、どれもいたって普通のことしか言っていない。しかしそれが集まり、何度も繰り返し聞かされ、さらに行動でも手本を見せられると、チームの文化を決定づける大きな力を持つようになる。
  • 成長したいのなら、優先順位を言葉で表現するべきだ。さらに、その優先順位を守るために必要な行動も、言葉ではっきり表現する。

3.教訓

全部自分でやろうと思ったり、マネジャーとして威厳を見せないといけないと考えたり、格好だけ取り繕っても、何もいいことが無いことがよくわかりました。

今回紹介されている以下の3つのスキルは、自身でもあまり実践できていない内容で、今後のチームビルディングとして非常に参考になる内容でした。

  1. 安全な環境をつくる
  2. 弱さを共有する
  3. 共通の目標を持つ

とくに、3に関しては、「パーパス経営」としても注目されています。

最近、実際に自社でもそれぞれのチーム単位で「ありたい姿を明文化する」ことが始まりました。また、短期的な目標だけでなく、中長期的な目標も設定することが奨励されています。

チームの方向性を一致させるためには、明文化されそれが繰り返し語られれていることで、全員の共通理解を作り上げていくことが重要であると認識できました。

金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント ロバート・キヨサキ著

 

1.はじめに

金持ち父さんの本は、金持ち父さん貧乏父さん、金持ち父さんの投資ガイド入門編に続き、これで3冊目です。

単に、資産運用の本という枠を超えて、仕事上での心構えや生きていくうえでの考え方にも勉強になると思っています。

たとえば、まえがきにある以下の内容は、まさにその通りだと感じる一言です。

優等生が優等生である理由は、単に”間違いの数が最も少ない”からだ。分析麻痺という感情的な障害が問題なのは、実社会で行動を起こすのが、一番多く間違いを犯し、人生という名のゲームに勝つためにそこから何かを学んでいく人たちだから

2.内容

(1)クワドラントの右側か左側か

  • キーワードは「収入をどこから生み出すか」だ。職業やどんな仕事をしているかは関係ない。問題はどうやって収入を生み出すかだ。
  • クワドラントによってどんなふうに人間が異なるか特徴を挙げてみる。
  1. E(employee/従業員):仕事を探すときも、安定としっかりとした約束を第一に考える。彼らにとっては、安定していることの方がお金よりも大事な場合がよくある。Eには会社の社長もビルの管理人も含まれる。問題なのは仕事の内容ではなく、雇い主か個人であれ組織であれ、両社が契約に基づいた雇用関係にあること。
  2. S(self-employed/自営業者):このグループは仕事をする際に一番大事なのはお金ではない。誰にも依存しない独立した状態でいること、自分の好きな方法でやる自由を確保できていること、その分野の専門家として尊敬されていること。お金よりそういったことの方が大事だ。結局、彼らは一人でせっせと働きなんでも自分でやり続ける。
  3. B(business owner/ビジネスオーナー)マクドナルドのハンバーガーよりもおいしいハンバーガーを作れる人はいくらでもいる。だが、何億個ものハンバーガーを世界中に提供できるシステムを持っているのはマクドナルドだけ。Bタイプは仕事ではなくシステムを持っている。
  4. I(investor/投資家):投資家はお金でお金を作り出す。お金が自分の代わりに働いてくれるので、自分で働く必要はない。
  • あなたを金持ちにするのは「あなたの仕事」だ。この仕事はあなたが給料を受け取った瞬間に始まる。お金の管理がうまくできない人は、世界中のお金が手に入ったとしても救われない。
  • 金持ちと貧乏な人の唯一の違いは、暇な時間に何をするかだ。仕事を終えたあと、自分が稼いだ給料とあまった時間を使って、何をするかであなたの未来は決まる。クワドラントの左側(E&S)でせっせと働く人は、いつまでもせっせと働き続けることになる。一方、右側(B&I)で一生懸命働く人は、経済的な自由を見つけるチャンスをつかむ。
  • 金持ち父さんは、たいていの人がお金に苦労する理由は、親から子への伝えられた情報に従ってお金を運用しているせいだと確信していた。お金に関する間違ったアドバイスは、言葉ではなく行動を通して伝えられる。子供は言葉よりも実際の例を見て学ぶ。
  • アドバイスする人の能力は、それを受ける人の能力以上にはならない。自身の頭がよくなければ、アドバイスする人もそれ以上のことは教えられない。自分にファイナンシャル・リテラシーがなければ、それを既に持っていると思える人の言葉を信じるしかない。こうしてたくさんの人が、自分の考えではなく他人の意見に基づいてお金を運用している。これこそ危険だ。
  • 資産はあなたのポケットにお金を入れてくれる。負債はあなたのポケットからお金をとっていく
  • 金持ち父さんにとっては、借金やリスクを背負って投資するときはいつも、買ったその日から採算が取れるものでなければならなかった。金持ち父さんは見かけだけの節税対策や、勘だけが頼りの値上がり予測をもとに投資をすることは決してなかった。経済の動向が上向きになろうが下向きになろうがきちんとお金を生むこと。それが取引の条件だった。

(2)最高のあなたを引き出す

  • Eはシステムのために働く。Sは本人がシステムとなって働く。Bはシステムを作り出し、所有し、管理する。Iはシステムにお金を投資する
  • たとえ金持ちと同じことをやっても、考え方や信じていることが中流以下の人間と同じならば、何をやっても中流以下の人間が持っているものしか手に入らない。そのことに気が付いたとき、BE(なる)ーDO(する)ーHAVE(持つ)の意味がはっきりとわかる。
  • クワドラントの左側から右側に移るために大切なのは、「する」ことではなくて「なる」ことだ。その人が何をしているかによって右が左かが決まるわけではない。それより、どう考えているかが大事だ。つまり、本質的なところで「どんな人間か」が問題なのだ。
  • クワドラントの右側に属する人たちの場合は、お金を失うことに対する恐怖が別の考えを生む。つまり、「賢くやろう。リスクをコントロールする方法を学ぼうと考える。恐怖という感情は同じでも、そこから生まれる考えは人によって異なる。人間が異なれば考えが異なり、それが異なる行動につながり、異なる結果を生む
  • クワドラントの左側から右側に移動するには大人になる必要がある。誰もがお金に関して大人にならなければならない。親でも子供でもなく、大人としてお金を見る必要がある。大人になるというのは、何をしなければいけないか知っていて、たとえそれがやりたくなくてもやることを意味する

(3)クワドラントの右側で成功するために

  • 真の学習には頭脳的、感情的、身体的な学習が必ず伴うということ。どんな場合でも行動しないでいるより行動した方がいいのはそのためだ。行動して何か間違いを犯したとしても、少なくとも何かを学べる
  • いつも「正しい」答えを探してばかりいる人は、「分析麻痺」と呼ばれる病気にかかっていることが多い。間違いを犯すのが怖くて行動に移れない人は、頭脳的にはすぐれているかもしれないが、感情的、身体的に問題を抱えていると言ってもいい。
  • 「きみの負債はほかの誰かの資産だ」。住宅ローンや教育ローン、クレジットカードの支払い、こういった負債を背負い込むたびに、あなたはお金を貸してくれている相手のために働く従業員になっているのと同じだ。つまり、他人を金持ちにするために、あなたはせっせと働く。
  • ビジネスや投資そのものは危険ではない。無知であることが危険なのだ。同じように、間違った情報を与えられるのも危険だし、安定した仕事による保証をあてにすることはもっと危険だ。資産を買うことは危険なことではない。「これは資産だ」という他人の言葉を信じて負債を買うことが危険なのだ。
  • 誘惑、強欲、お金に関する無知が諸悪の根源だと思っていた。つまり、お金そのものが悪だとは思っていなかった。そうではなく、お金の奴隷となって一生働き続けることや、借金の奴隷となってしまうことこそが悪だと信じていた。
  • 答えが全部わかっていないからというそれだけの理由で、新しいことを決して始めようとしない人は多い。全部の答えなどいつまでたっても出るわけがない。それでも、ともかく始めてみることだ。

3.教訓

まず、日本の税制はアメリカと違うところがあります。

また、「まず最初にビジネスを立ち上げる方法を学んでほしい」「特許使用料・印税といった不労所得を増やす努力をするように」と言われても、すぐに「ああそうですか」と簡単には行かず、本に書かれた通りのことを今日から実行するのは正直難しい面もあり、それができるなら苦労はしない、と感じることもありました。

しかしながら、目指すべき方向性、持つべき考え方についてはとても共感でき、全く同じことができなくても、「間違っているかもしれないが行動する、不労所得を増やす、お金の奴隷にはならない」といったことは、一部取り組んできましたが、さらに上を目指していきたいと思います。

冒頭にも書いた通り、単なるお金儲けの本というだけでなく、いち社会人の行動にも活かせる内容で、読む価値は大きいと思います。

(逆に手っ取り早くお金を増やしたいという人には向きません)

フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 中原淳 著

 

1.はじめに

本書において、フィードバックとは「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」と端的に表現されています。より具体的には、

  1. 情報通知:たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)
  2. 立て直し:部下の自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画を立てる支援を行うこと(振り返りとアクションプランづくりの支援)

と、単に結果を通知するだけでなく、そこからの立て直しを含む概念とあります。

本書を読んだきっかけは、1on1、コーチングの勉強をしようと思い、「ヤフーの1on1」を読んだ際、フィードバックに関しては一番の本と紹介されていたことから手に取ったものです。

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2.内容

(1)なぜ、あなたの部下は育ってくれないのか?

  • 若い部下が育たないのは、あなたのせいではありません。過剰に自分自身を責めないでください。それは、職場環境の変化によって構造として生まれている現象です。
  • 「スパン・オブ・コントロール」の研究によれば、同じ目標を共有する5~7人の部下を直接管理することが、1人の上司の限界とされています。にもかかわらず、組織のフラット化によって新人マネジャーが10人以上の部下をいきなり抱えれば、きちんと面倒を見られない部下が出てきて当たり前です。
  • 中間管理職の仕事の難しさは、「他者を通じて物事を成し遂げなければならない」ということ。この「他者」の代表といえるのが「部下」ですが、一口に部下といっても、一人ひとり、能力も違えばモチベーションも異なります。キャリアに対する意識も、組織や職場に対するコミットメントもまるで違います。このような人たちに自分の望み通りに動いてもらうためには、個々の価値観の違いを理解しながら、それぞれにコミュニケーションの仕方を考えなければならず、そこが非常に難しい。

(2)部下育成を支える基礎理論 フィードバックの技術 基本編

  • 部下育成の基礎理論には、以下の2つの考え方があります。
  1. 経験軸:部下を育成するためには、実際のリアルな現場での業務経験が最も重要
  2. ピープル軸:人が業務の中で成長するのは、職場の人たちから、さまざまな関わりを得られたとき
  • 本人の成長にとって最も重要なことは、外部からの情報通知によって、自分の行動に乗り越えるべきギャップが存在することを認識し、自分の行動や結果にしっかりと「向き合うこと」です。
  • 相手に刺さるフィードバックをするためには「できるだけ具体的に相手の問題行動の事実を指摘すること」が必要です。よって、私たちはフィードバックを行うために必要なデータを、事前に部下の行動を観察することで徹底的に収集していくことが求められます。
  • SBI情報(Situation:状況、Behavior:行動、Impact:影響)を準備し、具体的にどの部下のどの行動が問題なのかを指摘することで、部下はどの行動を改善すべきなのかがわかります。より先のプロセスにおいては、そうした問題行動がなぜ起こってしまったのかについての真因探求を行えるのです。
  • フィードバックのプロセスは以下の5点。
  1. 信頼感の確保:フィードバックは、まずは相手の成長を願い、相手の意思をリスペクトする態度から始めましょう。どんなに厳しいことをいうにしても、そうした信頼感がベースになければ、人は行動を変えません
  2. 事実通知:大切なことは、このセッションの「目的」を最初にストレートに述べてしまうこと、「一緒に話し合っていこう」「一緒に改善策を考えよう」と述べることです。回りくどい言い方をしても、どんな婉曲表現を使ったとしても、フィードバックは「痛み」を避けることはできない。この段階では、無理に「褒めること」も無駄に「非難する」必要もありません。なすべきことは、あなたが事実だと思うことを、鏡のように話し、しっかりと相手に突きつけることです。
  3. 問題行動の腹落とし:上司は部下の問題行動を立て直す手伝いをすることが求められるのですが、そのためにはこの段階で「部下が自分の行動が問題であることを理解していなければならない」のです。そのときに重要なのは、今の現状が、目指すべき目標と相当かけ離れていることを、しっかり認識してもらうこと。
  4. 振り返り支援:振り返りのプロセスでは、場合によっては沈黙してしまう部下が出てくるかもしれません。しかし、決して沈黙を恐れないでください。沈黙を恐れるあまりに、本来相手が言葉にしなければならないものをこちらが言葉にしてしまうと、学びや行動変化にはつながらない場合が多い。部下の振り返りの段階では①何が起こったのか?、②それはなぜなのか?、③これからどうするのか?の3点を話してもらうように導いていきます。
  5. 期待通知:しっかりと期待を伝えたうえで、再発予防を伝えることがポイント。①今抱えている問題は、どのような場合に再発してしまうのか?、②再発してしまいそうになったら、自分としてはどうするのか?という対策を話し合っておくと、問題を繰り返す可能性が想定的に低くなります。

(3)フィードバックの技術 実践編

  • いったん始まったら、こちらも逃げられないのがフィードバックです。腹をくくってください。相手から逃げないでください。しっかりと相手に向き合ってください。
  • 感情的にならずに、まずは徹底的に聞いて、受け入れ、そのうえで返すこと。どんな反論や反発でも、聞いていれば「論理のほころび」が出てきます。そのときが刀を返すチャンスです。かくして「対話」が続きます。フィードバックとは、受け入れて攻めること、負けて勝つこと
  • フィードバック前には必ず「脳内予行演習」をすること。部下の問題点をどのようなロジックで伝えるか、事前に作戦を立てることです。集めた情報を簡単にまとめておけば、頭が整理され、体系立てて話すことができます。それに加えて、「部下に言い返されたらどのように答えるか」というようなことも脳内で予行演習をしていくとよいでしょう。
  • 厳しいことを言って、相手がしょんぼりしていると、フォローを入れたくなる気持ちもわかりますが、下手に褒めたりねぎらったりすると、ポジティブな発言の方にスポットが当たってしまい、厳しいことを指摘した効果が薄れてしまいます。特に、なんでも都合の良いように受け取る人にフォローをすると、フィードバックの内容を完全に忘れてしまいかねません。
  • 誰かが言わなければ、部下は成長しませんし、あなたの部署の業績も上がりません。支援できるのは、管理職であるあなたしかいないのです。そして、職場をまとめていくのも、管理職であるあなたしかいません。耳の痛いことを言って嫌われるのは、管理職の役割の1つです。
  • 残念ながら、フィードバックをどんなにうまく行っても、変わらない人というのはいます。私たちは、そうした場合がありうることをまずは認めましょう。そして、そのときには過剰に自分を責めないでください。相手は「大の大人」として、意思を持って「変わらない」ことを選択しているのです。

3.教訓

これまで、ポジティブフィードバックはまだできるが、ネガティブフィードバックを実施することは非常に苦手で、大きな悩みの1つでした。研修等で同じ立場の人と話しても、似たような感覚を持っている人が多かったように思います。

本書においては、「情報通知」だけでなく「立て直し」をセットで論じているので、1on1をするにしても、まさに今、自分が一番が知りたかった内容でした。

相手をしっかり観察して悪いところは具体的に何が悪いのかを指摘し、こちらも逃げずに向き合い、問題を認識してもらわないことには、その先の行動変化が伴いません。

あと、悩んでいるのはあなただけではない、嫌われるのも役割、うまく対応しても変わらない人がいる、そんなに自分を責めないで、ということも文章にしてもらえると、自分に対する悲観的な考えも少しは晴れるような気がします。

また、本書では4章で、タイプ別、シチュエーション別のQ&Aも紹介されています。例えば、①逆ギレタイプ」、②お地蔵さんタイプ、③逆フィードバックタイプ、④大丈夫です!タイプ、⑤傍観者タイプなどがあり、あなたの周りも「いるいる!こういう人!」と必ず思い当たることがあるはずです。

対応を詳細を知りたい方は、是非本書を手に取って、もらえたらと思います。新書なので、1~2時間でいい勉強ができます。

3分間コーチ ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術 伊藤守 著

 

1.はじめに

1on1やコーチングによる人材育成が求められてきているため、最近はコーチングに関連する本をよく読むように意識しています。

この3分間コーチの手法としては、以下の2つの「とにかく部下と関わる時間をつくること最優先しましょう」というものです。

  1. 部下について考える時間をとる。
  2. 部下と的を絞った短い会話をするための時間をとる。

以下で参考になったところを引用していきます。

2.内容

(1)この3分間が組織を変える!

  • コミュニケーションの内容をとやかく言う以前に、そもそもコミュニケーションがない、もしくは圧倒的に少ない、時間をとりたくても時間が取れない、話すきっかけがつかめない、というのが多くの上司の現状。
  • 3分の時間を、その人のためにとる。ついで、でなく、その人と話すという目的を持ってつくること。
  • 情報の収集と伝達だけがコミュニケーションの目的ではない。それ以前に、相手を認め理解しようとすること、つまり、コミュニケーションは、それを交わすことそのものが目的
  • 部下について自分が知らないということを知る。知らないことに気づけば知りたくなる。こうして、部下のことを考えることが、部下を大切にするということ。
  • 3分間の会話自体はそこで終わるが、その後も自分の内側での会話は続く。3分間のコーチング・カンバセーション、その後に続く自分との会話が、人を生産的、つまり創造的にしていく。3分間コーチの特徴は、会話そのものというより、3分間の会話と、次の3分間の会話の”間”にある。
  • イデアやプランと実行の間には溝がある。上司の言う通りに部下が動くなら、上司は要らない。3分間コーチが、そのコミュニケーションと信頼関係を醸成し、アイデアやプラント実行との間の溝に橋を架ける。
  • コーチングでは、基本的に「アドバイス」はしない、問題解決もしない、ただ、問題とのつき合い方をコーチする。これにより、部下のそれぞれが、現場で起こることに、毎度上司の指示を仰がなくても自分で対処できるようになる。すると、すべてのスピードが速まる。
  • 常に、”今”と”生”の部下の状態と業務の状態を知らなければ、組織に求められている成長のスピードはとうてい得られない。今、目の前で起こっていることについて、お互いに見てわかる、聞いてわかる、触れてわかることについて、その場で、あるいは起こる直前に話す。

(2)その瞬間をつかまえる

  • 部下がどんな場面でコーチを必要とするのかは、部下一人ひとりによって違う。その場面を知るためにも、いつがその「とき」なのかを知るにも、日頃から部下をよく観察し、何をし、何を欲しているのかを知ることが必要。よい上司というのは、それを知るということについて徹底している。
  • 大切なのは、毎回、部下の問題解決を手伝うことではなく、部下の一人ひとりに「不測事態対応能力」を備えさせることを目的とした会話を交わすこと。不測事態に対して、自分で考え、自分から行動を起こし、それを自分で評価できるように促すこと。そのプロセスを通して、自律性のある部下を育成することができる。
  • 会話を交わすことを通して、頭が整理されたり、新しいアイデアが出てきたりと、何か自分に変化が起こることを知れば、部下はその機会をもっと積極的に使うようになる。人が求めているのは、アドバイスよりもブレーンストーミングの相手
  • 部下が声をかけてきたら、そのときには部下の話に耳を傾けること。無理にアドバイスをしたり、問題解決をしようとするよりも、とにかく話を聞くこと。それが、部下の話す内容そのものだけでなく、部下その人を理解する機会になる。
  • いくら正論を言ったからといって、それに部下が従うわけでもなければ、上司を尊敬するわけでもない。部下の動きや態度や、ことばを交わす以前に培われている「関係」の厚みによって変化する。部下の態度は、上司の態度の反映である。

(3)そこに、その「場所」をつくる

  • 「何かあったらいつでも聞いてね」、では、部下は聞きに来れない。だいたい、何かあったら、なおさら聞けない。それに、そもそも何を聞いたらいいのか、それがよくわからない、というのが現状。何を知らないのか、それを知らない人には、そもそも質問などできない。部下が質問できるようにするのが上司の仕事。
  • 部下の肯定的な態度や行動を「アクノレッジメント(相手に現れている違いや変化、成長や成果にいち早く気づき、それを言語化して、相手にはっきり伝えること)」することで、部下を方向付けすることができる。賞賛は評価だが、アクノレッジメントは「方向付け」。
  • 話す機会が与えられれば、部下は懸命に自分の仕事の状態を説明しようと試みる。人に自分のやっていることを聞かせることができるようになるには、自分がそれについて十分理解していなければならない。したがって、話すことを通して、自分の業務についての理解も自然と深まる。部下に仕事の進捗を話す機会を与え、提案・要望を伝えることは、部下のモチベーションを上げるのに、最も近道のスキル。
  • 上司の仕事は、部下に仕事をさせることではなく、部下を自分から進んで仕事をやろうという気にさせること。仕事の出来不出来とはまた別に、いっしょに仕事をしている仲間として承認する。
  • 決して脅すのでもなく、命令するのでもなく、「要望」する。目を見て、はっきり「要望」する。遠まわしな言い方ではなく、直接、毅然と要望する上司を部下は尊敬し、信頼する

(4)これについてコーチする

  • 恒常的に「問われ」続けると、「わかったつもり・安定」から「わからない・不安定」へとシフトしないわけにはいかなくなる。すると、行動が起こる。人は不安定になると、安定するために行動を起こすもの。
  • たとえ部下に目標に対するコミットメントを誓わせたとしても、彼らが目標に向けて情熱を持ち込むことはない。重要なのは、部下が頭で約束することをやめて、心(情熱)で動くようになること。それが、目標達成に向けた真の原動力。
  • マネジャーの役割、そしてコーチングの目的は、直接的には、部下の目標達成にある。それだけではなく、そのことを通じて、部下その人の能力を引き出すことにある。つまり、彼自身のリソースを最大化させること。リソースとは「その人そのもの」。

(5)コーチ型マネジャーの時代

  • フィードバックが決して否定ではなく、本人のためを思うものであっても、本人がそれを批判と受け止めれば、それは批判。ただちに防衛体制に入り、すべてシャットアウト、それ以上のコミュニケーションは交わせないわけだから、変化もそこで止まる。
  • 人は、変化しないことのリスクが変化することのリスクを上回ったときしか、変わろうとしない。変わらなければいけないのは上司も同じ。というよりも、変わらなければいけないのは上司。上司が変われば部下も自然に変わる
  • コーチ型マネジャーが行う部下育成は、教えるというより気づかせる、やらせるのではなく自発的にやり出すのを待つ、それが基本。

3.教訓

基本的な内容が体系的に書かれていて、今まで社内研修を受けてきたインプット等を総復習できるいい機会となりました。

振返ると、3分間ですらチームメンバーと毎日話す機会を持てていない、考えを向ける努力もできていない、と思います。

また、正論を言ってもついて来ない、よかれと思って伝えてもそれが批判と捉えられれば批判になる、という部分は、日々、常々感じることでもあり、言う内容よりも伝え方が大事というのはしっかり心に刻む必要があります。

コーチングって何だろう、ということをこれから学びたい人にとって、非常に参考になる内容で、おすすめできると考えています。

Good Team 成果を出し続けるチームの創り方 齋藤秀樹 著

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1.はじめに

現在、以下のチームビルディングに関する社会人講座を受講中です。

初回に配布され、次回までに読んでおくように言われた本について案内します。

web.my-class.jp

各章のタイトルには、「3つの壁」「4段階のプロセス」「8ステップ」という言葉が並んでいて、実際にそれぞれわかりやすく説明がありますが、ここでの内容は要約ではなく、印象に残った言葉の引用ですので、詳細は本を手に取っていただければ幸いです。

2.内容

(1)どこもかしこも「バッドチーム」だらけ

  • チーム成果=Be(あり方:ミッション、ビジョン、モチベーション、信頼等)×Do(やり方:戦術、方法論、手段等)。問題を解決したいときはどうしても「Do」ばかりを欲しがりますが、チームの根幹をなす「Be」なしでは「Do」は正しく機能しません。
  • 「協調性のあるチーム」の実態は、人間関係や統率において「問題が起きにくいチーム」であり、それは「依存症」や「画一性」の強い集団であることが多い。特定のリーダーを祭り上げ、頼り、忖度する集団で、事なかれ主義の傾向が強く、本来の「協調性」とはほど遠い
  • 多くの組織は、上司と似たような価値観、考え方の部下が出世し、上司と異なる価値観、考え方を持つ部下は軽視される傾向があります。まさに多様性とは真逆の組織風土が強化されているため、いつまでも昭和的チームのOSが現役でいるのです。日本でダイバーシティが根付かない原因はここにあります。
  • 自分のチームを外から客観的に見る。自分のことは意外と見えないもの。まずは自分が「支配者」になっていないかを確かめましょう

(2)「5つの条件」を満たし「3つの壁」を乗り越える

  • コミュニケーションは100%他者評価。コミュニケーションにおける”事実”は、「伝えたこと」ではなく「伝わったこと」。「自分は言った、伝えた」と言っても、相手が「聞いてない、伝わっていない、わからない」という回答をした場合、その回答がコミュニケーションの結果、事実になります。
  • 「曖昧」がまかり通るチームは、それだけで仕事の効率や生産性が落ち、思い違いによるミスがでます。だからこそ「指示・命令、報告、対応」は、定量的、定性的、論理的、5W1Hなどを十分に配慮し、言語化していく必要があります。
  • 最も重要なのは、「自分の職場に信頼関係があるという実感を持っているか」ということ。職場における信頼関係の強さは、そのまま組織のパフォーマンスの高低に直結します。
  • コミュニケーションにおいては、「何を話したか」より「どう見えているか」の方が、人に与える影響が大きいと言われています。チームの雰囲気はリーダーの影響力だけで決まるものではありませんが、その他のメンバーに比べると何倍も大きい。そのことをリーダーは肝に銘じておくべきです。
  • 重要なことは「笑顔でいること」。笑顔は手段であって目的ではありません。目的は、チームにとってあなた自身が「ポジティブな存在」でいることです。笑顔でいることは私たち皆がポジティブな存在になるために最も有効な手段です。

(3)「4段階のプロセス」を経てチームは成長する

  • チームビルディングは「チームを成長させる」ことが最優先です。そして全員参加が鉄則です。これはリーダーだけでなく、チーム全員が持っておくべき意識です。日本企業の最大の悩みである「人材が成長しない」問題は、コンテンツではなく、職場に人を育てるBeがないことです。
  • 信頼関係は、相手に嫌われていない「平穏な状態」を維持できていれば”何となくある”と勘違いしている人がとても多い。ですが、それは信頼関係ではありません。信頼関係を築く具体的な方法は、「相手に興味を持ち大切に思うこと」と「相手が心から望むことを受け入れ支援すること」の2つです。
  • 私たちが求められていることは、アプリの入替(ノウハウや断片的な知識の習得」ではなく、OSのバージョンアップ(マインドの変革)である。
  • 「行動」は目的ではなく「手段」です。取ろうとする行動が本当にチームの成長に役立つのか、特定の個人の考えではなく、チームとしての承認が重要です。
  • 意識・無意識にかかわらず集団においては「他力・他責」の習慣的価値観に襲われる。特にリーダーが強く仕切れば仕切るほど、他のメンバーは他力、他責になり、リーダー依存、指示待ちになります
  • 個人商店化した状態において形成される、個々の行動動機の中心にある価値観が「自分の損得で動く」ようになるというものです。「自分が損か得か」「自分の責任になるか否か」。チームや会社、社会の利益とは真逆の「個人の利益を最優先する」ようになる。日本のあらゆる集団の8割以上がこの第1段階に留まっています。
  • 「チーム状態に合わない高い目標を設定する」のは愚策。高い目標を掲げることで職場に何が生まれるか。それは「あきらめ」「不満」「不安」「失望」といったネガティブなことばかり。
  • チームというものは、チームそのもののあり方だけでなく、リーダーのあり方も強く問われる。それは体裁を繕う言葉ではなく、リーダーが見せる本気度・あり方が映し出された”後ろ姿”で、それがないリーダーがメンバーからリスペクトされることはありません

(4)「8ステップ」で進めるグッドチームの創り方

  • 重要なのは、個々のメンバーの自立性を育むことと、メンバー間の相互支援力の強化によりチーム力(シナジー)を高めること。旧来型のマネジメントは管理指導が中心で、メンバーの自立性を抑えてしまう傾向がありました。今の時代、そのやり方は通用しませんし、逆効果です。
  • メンバーの自立性の進化は、リーダーのマネジメントスタイルの切替「マネジャー」→「コーチ」→「ファシリテーター」なしには実現しません。いつまでもマネジャーのままでは、メンバーの自立性・自発性は育たず、チームは成長しません。漫然と前例踏襲するのではなく、リーダー自身も自分の成長に責任を持ち、そして学び、実践しましょう。仕事とは、「成果をより高めるために現状を創造的に変えていくこと」です。
  • ラーニングサイクルでは、「PDCA」はなく「DLTG」サイクルを回す。「Do:思考」(まずはやってみる→「Look:洞察・理解」(何が起こるかよく観察して理解する)→「Think(分析・深堀)」(なぜこうなるかをよく考えてみる)→「Grow(改善・成長)」(マイルストーンを決め、改善策を図る」の実務を通して、学びを深める。

(5)チームの土台を築くステップ

  • チーム力を高めたいのであれば、リーダーシップ以前にフォロワーシップを強化することが鉄則です。チーム意識を持たない個人が何人が集まろうが、「誰も行きたくなるチーム」は絶対に創れないのです。
  • 「リーダーは孤独なものである」と言う管理職は一見かっこよさげですが、これは単なる誤解です。端的に言えば「命令を多用」するリーダーが孤独になるだけです。はっきり言うとそういうリーダーは嫌われます。「嫌われてもいい。リーダーとはそういうものだ。」という人がいたら、チーム、そして人間というものを理解していないと言えます。
  • リーダーが高い成果を求めるのであれば、まずは「安全な場」を自分自身の手で作り出してください。それもやらずに部下を叱責するリーダーは、自分の役割を認識していないことと同じです。
  • Do偏重のリーダーはとにかくBeが弱いことが多い。基本的欲求は究極のBeです。基本的欲求を満たそうとしない人には誰もついていかないし、魅力も感じません。「求心力」は、肩書や権力ではなく、他者の基本的欲求を満たすことで得られるものです。
  • 昭和的OSの中核にある「強制力」、それを具体的に行使するための道具である「命令」は、直接的に自由の欲求を阻害します。命令を多用すると簡単に嫌われるのです。たとえ親子でも、人間である以上同じです。
  • 目にはしていても認知をしていなければ、「大切な人でも、興味関心のある人でもなかった」となります。「時間がない、忙しい」は、ただの言い訳に過ぎません。部下を大切に思っていない、あるいは他人に興味関心がないことが、この問題の真因です。
  • 本当にあなたの言葉を意味あるものにしたいのであれば、それはハートを大きくしてからです。何もしなければハートはどんどん萎んでいきます。だからこそ、一定以上のポジティブなコミュニケーションの量が必要なのです。

(6)フォロワーシップを引き出すステップ

  • フォロワーシップとは、チームの一員としてリーダーを支え、他のチームメンバーと協働しながら、チーム目標の達成に貢献することです。フォロワーシップはリーダーも含め、チーム全員にまず必要になるものです。
  • リーダーの真の役割は、メンバーを「成功者」にすることに他なりません。それができないリーダーは、肩書はどうであれリーダーではありません。まさに部下に落伍者の烙印を押し続ける落伍者製造機です。
  • 最初から高い目標ではなく、必ずできる目標から始めればいいのです。この際、低い目標は「目指す」ものではなく「超える」ものという意識でメンバー全員が取り組むことが重要です。
  • チームの全メンバーがチーム目標を”自分事”として認識している状態を作ることが必須です。チーム目標が個々のメンバーにとって「大切なもの、意味や価値が明確であるもの」になっていいればいいわけです。
  • チーム目標が、なぜかリーダーだけの目標になってしまうことはよくあります。ですから、リーダーは自分の目標ではなく、チームの目標であることを強く自覚して振る舞うことが大切です。
  • 実は当事者意識がないと、自分自身の成長に責任が持てないのです。当事者意識を持っていない人は、自己成長をしようとはしません。どこかに”他人事”で働いていると、どこかで成長するための努力を怠ってしまうのです。

(7)リーダーシップを強化するステップ

  • そもそもリーダーシップは、他者を従わせるために発揮するものではありません。私たちの提唱するリーダーシップとは、「チームメンバーのフォロワーシップを引き出し、高め、チーム目標の達成に向けて束ねる影響力」を指します。
  • 意識してほしいのは、自分にとって「仕事は自己成長の道具であり、会社は社会貢献の道具」であるということです。仕事も会社も私たちにとっては「道具」なのです。私たちは使われる側ではありません。仕事における「成果」は、自分たちの「成長の証」であり、社会貢献の結果です。
  • 「コミュニケーションは100%他者評価」の原則通り、自分がどんなに頑張って実践しているといっても、他者が認識できなければ影響力にはなりません。まさにあなたの後ろ姿が他者からどのように見えているかが影響力の本質なのです。

3.教訓

講義中に「今話したことは本に書いてあるのでしっかり読んでほしい」とおっしゃっていました。そして、「コミュニケーションの80%は視覚情報で、存在そのもの」と説明のあった通り、本にも同じ内容が触れられていますが、身振り手振りで教えてもらった講座内の方が、頭の中に残ります。

それは、直接相手の表情がわかることで、理解が得られているのかいないのかを認識し、それに応じて説明のペースを変えたり、わかる言葉に置き換えたりすることで、伝わる説明が工夫できるからだと思います。

逆にいうと、伝えたいことをメールに書いて送っただけでは、読んでもらえたのか、理解してもらえたのか、実際にはわからないということでもあると思います。

メールは複数の対象者に一斉に配信でき、相手の時間も選ばないので便利ではありますが、どうしても一方通行になりがちなので、しっかり相手に伝えようと思う項目は対面や電話で相手に伝わったのか反応を確かめるなど、時と場合に応じたコミュニケーション手段を考えることの重要性について再認識できました。

恐れのない組織 エイミー・C・エドモンドソン著

 

1.はじめに

最近よく耳にする「心理的安全性」は、人事系の研修で必ず説明を受ける項目で、その先駆的な研究者によって書かれたのが本書です。

本書は、心理的安全性の重要性を示すにあたり、実際に起こった実例の紹介にかなり多くのページを割いていおり、例えば以下のような事例が説明されています。

本というより論文のような調子ですが、基礎からしっかり学ぶには最適だと思います。

(1)失敗例

(2)成功例

2.内容

(1)第1部:心理的安全性のパワー

①土台
  • どんな人でも朝、目覚めて気が重いのは、勤め先で無知・無能に見えたり混乱をもたらす人だと思われたりする場合だ。そのように思われるのが対人関係のリスクと呼ばれるものであり、無意識かもしれないが、およそ誰もが避けたいと思っている。実際、大半の人は、頭がよく有能で役に立つ人間だと他人から思われたいと願っているのだ。
  • 対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境であることが心理的安全性である。その職場には、やがて重大な影響をもたらすかもしれない沈黙はほぼ生まれない。代わりに、人々は思うがままを話す。そして、率直な本物のコミュニケーションを促進し、問題とミスと改善の機会にスポットを当て、知識とアイデアの共有を増やしていく。
  • 心理的安全性は、単なる職場の個性ではなく、リーダーが生み出せるし生み出さなければならない職場の特徴だ。どの会社や組織においても、きわめて強力な企業文化を持つ場合でも、心理的安全性はグループによって著しく異なる。
  • 公式には、ヒエラルキーの上位の人が、あなたの業績を評価する役目を負っているだろう。だが、非公式には、同僚や部下が常にあなたについて判断を下している。質問したり、ミスを認めたり、アイデアを提供したり、計画を批判したりといった行動をとったら、いつなんどき無知、無能、あるいは出しゃばりと見られてしまうかもしれない。そのようなささやかなリスクを取るのを嫌がっていると、大切なものを損なってしまう可能性がある
  • ただ、自動車を動かすのが燃料でないのと同様、組織を動かすのは心理的安全性ではない。環境がどれほど厳しいときでも、リーダーにはどうしてもしなければならない仕事が2つある。1つは心理的安全性を作って学習を促進し、回避可能な失敗を避けること、もう1つは高い基準を設定して人々の意欲を促し、その基準に到達できるようにすることだ。高い基準の設定は、マネジャーのきわめて重要な仕事である。
②研究の軌跡
  • 今日の組織にとって、心理的安全性は「あった方がいいもの」ではない。無料のランチのような職場で快適に過ごしてもらうために設ける従業員特典でもない。心理的安全性は才能を引き出し、価値を創造するためになくてはならないものだ。職場は人々が才能を活かすことができるし、積極的に活かそうと思う、そんな場でなければならない
  • 次善の策が採られるのは、システムを改善するための意見を、安心して述べたり提案したりできないときである。心理的安全性があれば、問題について率直に話すことや、作業プロセスを変えたり改善したりすることがたやすくなり、望ましくない結果しか生まない次善の策を講じることがなくなる。
  • あなたがどこで仕事をしているのであれ、ぜひ心に留めておいてほしい。大事な局面で従業員が意見を言えずにいることは、見た目にはわからない。わからないために、軌道修正がすぐにはできない。これは、競争の激しい業界において、心理的に安全な職場が圧倒的に優位に立つということにほかならない。

(2)第2部:職場の心理的安全性

③回避できる失敗
  • 回避できる失敗を回避する第一歩は、異論・反論を述べ、データを共有し、研究所や市場で実際に起きていることについて積極的に報告するよう社内中の人々を促し、絶え間ない学習と機敏な実行力を生み出すのである。
  • トップダウン型の戦略と、悪い知らせを上層部へ伝えられない心理的安全性の不足という最悪の組合せのせいで、いつ破綻してもおかしくないということだ。
  • 欠陥について情報をどれだけ持っているかをできるだけ早く明るみに出すと、失敗の規模と影響をたいてい小さくできるし、ときには完全に避けられる場合もある。
  • 詐欺と隠ぺいは、返答として「ノー」も「無理です」も認めないトップダウンの文化でおのずと生まれる副産物である。そして、そのような文化と、過去に練られた素晴らしい戦略は未来永劫続くのだという思い込みが組み合わさると、確実に失敗することになる。
④危険な沈黙
  • 心理的安全性が低いときに起きる問題は、ビジネス上の失敗などという生易しい問題ではない。多くの職場で、人々は不安を感じる出来事や不正を目にしながら、怖くて報告できずにいる。私たちは、発言をしないことが健康に害をもたらす、そんなコミュニティや文化や組織の中で生活し、仕事をしている。
  • 多くの人が、厳格なヒエラルキーが存在するときには発言できないと感じると述べている。一方、耳を傾け学ぶべき立場にいる上層部の人々は、自分の存在が下位層の人々を押し黙らせてしまうことに、なかなか気づかずにいる
  • 回避できたかもしれない悲劇を分析する多くの人が、人々はもう少し勇気を持つべきだと指摘する。この主張には賛同できても、効果的な主張かどうかは別問題だ。正しいことだからという理由で人々に率直な発言を促すことは、倫理観に訴えており、確実によい結果をもたらす戦略とは違う。勇気を出して行動すべきと主張すれば、そうしてもらえるだけの状況を作らないまま、人々に責任を負わせることになってしまう。
  • 上の者に服従することは業務、とりわけ判断に迷った場合における「当たり前」になってしまい、ひいては「トップに立つ人間は最良の策を常に知っている」と誰もが信じる状況を生み出しかねない。
  • なんとかして避けるべきものは、人々がひたすら沈黙し、情報の提供が不可欠かもしれないときでさえ保身と恥ずかしい思いの回避を無意識に優先し、それが重大なリスク要因になってしまう環境である。
  • 懸念を表明したが杞憂だったとわかることによって、率直に発言する人にも耳を傾ける人にも学習の機会がもたらされる。その結果、両者は状況や課題について皆が理解している、あるいは理解していないきわめて重要な情報を収集できるようになる。
⑤フィアレスな職場
  • 失敗したときにそれを認め、この先は避けたいものだと願いながら歩み続けるだけでは不十分だ。私たちは失敗を、不安に思ったり避けようとしたりするのではなく、学習と冒険に必ずついてくるものだと理解する必要がある
  • 学習プロセスにはミスや賢い失敗が欠かせない。誰もがミスをするし欠点もあること、それらにどう対処するかで決定的な違いが生じることを学んだ。失敗するのは構わないが、失敗に気づき、分析し、そこから学ばないのは容認されない。
  • 職場のプロセスを変えたためにかえって仕事が難しくなり従業員の怒りを買って今うような事態は誰も招きたくないが、その事態を招く指示があまりに頻繁にトップから出されてしまっている。それよりはるかに賢明なのは、実際にその仕事をする人にプロセスの再デザインをしてもらうことだ。フィアレスな組織では、「改善」のための提案が積極的に採用・導入されている
⑥無事に
  • 手順は存在していても確実に使用されるとは限らない。もし心理的安全性がなかったら、えてして対人関係のリスクを取れず適切な対応ができなくなってしまう。発言できたはずの場でためらったり沈黙したりしてしまった意味にも気づくことができない。ゆえに、心理的に安全であることが、緊急時の手順を効果的に使うための前提条件だと言える。

(3)フィアレスな組織をつくる

⑦実現させる
  • 率直に発言することは、最初の一歩に過ぎない。人々が実際に率直に発言したときにリーダーがどう反応するかが重要な岐路なのだ。土台をつくり、参加を求めれば、たしかに心理的安全性を築くことができる。だが、部下がなんらかの問題について勇気を出して発言しても、もし上司がすぐさま怒ったり見下したりして対応したら、安全性はあっという間に消えてしまう。生産的に対応するためには、感謝し、敬意を払い、前進する道を示さなくてはならない。
  • 目的意識を際立たせることも、心理的安全性の土台づくりには欠かせない。説得力ある目的をはっきり伝えて人々の意欲を高めることは、リーダーとして当然の務めである。自分の仕事がなぜ顧客や世の中にとって重要なのかをリーダーがみんなに思い出させると、困難を乗り越えるエネルギーが生まれやすくなる。
  • 気さくで話しやすく、自分が完璧ではなくミスをする人間であることを認識し、他者から積極的に意見を求めるリーダーは、組織に心理的安全性をつくり、高めていくことができる
  • 危険な、あるいは有害な、もしくはまずい結果をもたらしかねない、非難されても仕方のない行動に対し、公正で思慮深い対応をすると、心理的安全性は損なわれるどころか強化される。
⑧次に何が起きるのか
  • 発言より沈黙を好む心理的・社会的な力の基本的非対称性、つまり自己表現より自己防衛しようとする性質は、今後も変わらないだろう。だが発言と沈黙では、見返りもまた非対称である。自己防衛したところで空虚な勝利しか手に入らないのに比べ、自己表現すれば意欲的な目標を実現しうるチームの一員になって野心的な目的に積極的に貢献し、それによって充実感を得られる。
  • どのような組織においても、そこから「不安を追い払う」旅は長い道のりになる。このことについて、私たちは現実的にならなければならない。心理的安全性を一夜で実現してくれる魔法の杖などない。リーダーは、実現しようという熱意を持ち、着実に話し合いを重ねることによって、第一歩を踏み出す。
  • 心理的安全性は時間の浪費でなく節約になる。心理的安全性が欠けているせいで話が長引き(まわりくどい発言内容に遠回しな批判と個人的な当てこすりが加わるため、率直に発言するより時間がかかる)、ミーティングがだらだらと続き、重要な戦略的問題について採択ができない。
  • あなたの考えに対する周囲に反応が、期待ほどには好意的でない可能性もある。その場合は、ほかの人にあなたの意見が必要であるのと同様、あなたにもほかの人の意見が必要だということだ。これを学習するチャンスととらえ、あなたのは発言や行動のどんなところが基準に満たないのかを知る機会と考えよう。
  • 心理的安全性をつくることは、大小さまざまな調整を絶えず繰り返しながら、最終的に前進となるプロセスである。ヨットが風上に向かってジグザグに進むのと同様、あなたは、望み通りの方向へ進むことも風向きがいつ変わるかを知ることも決してできないなか、右へ左へ適宜方向を変えつつ、前へ進んでいかなければならない

3.教訓

心理的安全性は、会社の制度だったり、誰かが宣言したりしたところで、突然に確保されるわけではなく、他の誰でもない自らが作り出さなければならないものとはっきり認識できました。

この本を読んでも、「心理的安全性なんて関係ない」という考えを変えられない人はいないんじゃないか、と思うくらい説得力がありました。

最近では、いろんな会議に出る際に、ファシリテーターやマネジャーの振舞いを見て、「この人の話し方だと意見を言いやすいな」とか、「こういう雰囲気になると意見を出しづらくなるな」ということを意識して観察するようになりました。

上司である自分には話をかけにくいもの、と思われていることを認識し、話しかけてくれたことに感謝し、しっかり話を聞いて、「次からも声をかけていいんだ」、と思ってもらえるようにすることを意識していきたいと考えています。

ヤフーの1on1 本間浩輔 著

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ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法 [ 本間 浩輔 ]
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1.はじめに

今勤めている会社でも、1on1ミーティングは奨励されています。

ただ、本書に紹介されているYahoo社のように、人事制度化まではされていません。

個人的には、取り組む意義・メリットは感じており、形式的には1on1を一部取り入れています。

しかしながら、自分がやっている1on1は正直まだまだだな、というのが読んだ感想です。

冒頭、マンガからはじまるのも斬新で、文章だけではあらわすことのできない、上司・部下の表情も描かれていて、確かに自分もこんな顔しているかも、と思い、反省しながら読むことができました。

2.内容

(1)マンガで学ぶ1on1ミーティングの基本

  • 1on1でまず大事なことは「部下に十分に話をしてもらうこと」です。なぜなら、1on1は部下の行動や経験学習を深めることを目的としていて、そのためには、部下は自分の経験を詳細に思い出して、言葉にして、深く内省することが必要だからです。
  • 1on1は部下の成長のために行われるものであり、上司が状況把握をするものではありません。ここで大切なのは、部下がその状況から何を学び、次の行動にどう活かしていくのかということです。ここでの上司の役割は、部下の学びの支援であり、そのための対話であることを意識する必要があります。
  • 上司は「彼はそういうところがある」と決めつけています。ここに1on1を上司と部下の間で行うことの難しさが表れています。なぜなら、上司と異なる見立てを持っていたとしたら、部下はそれを表明しづらくなるからです。1on1は評価のための面談ではありません。良い悪いの判断は避け、部下の思いや考えを深めるための問いかけをするべきです。
  • 1on1では、考えを深めるツールとして「言い換え」をよく使います。部下の発言から状況を想像して、適切な言葉を選び、部下に投げかける。このとき、上司の語彙が豊かであればあるほど、よき1on1ができる可能性が高まります。このような上司のニュートラルな反応を契機に、部下はさらに考えを深め、だんだん掘り下げて問題の品質を探っていくことになります。
  • 対話を進めることで問題の本質が見えてきます。しかし、次の行動=問題への対処について、部下より先に上司が示してしまってはいけません。部下が自ら思いついて行動に移すことが大切です。対話によって考えを深め、主体的に問題解決の方法にたどりつくことが部下の成長につながるからです。その観点からすると、上司が行動を指示する発言は、部下の成長機会を奪ってしまいます。
  • 部下の「僕には能力がないから」は、自己評価と「そんなことはないよ」と言ってもらいたい気持ちが入り混じっているように聞こえます。ここで上司が「そんなことはないよ」などと言ったとすると、部下にとってはうっすらと期待していたメッセージをもらえたことでホッと満足してしまい、思考はそこで止まります。深まることはありません。

(2)1on1とは何か

  • 1on1では経験学習のサイクルをまわすことをイメージしています。社員の具体的経験をもとに、その経験を掘り下げて(省察的観察)、教訓を引き出し(概念化)、次の仕事(新しい試み)に活かしていく、このサイクルを何回も回転させることによって、社員の学びを深めていくのが狙いです。
  • 「1on1は部下のために行う」を上司が理解できるかどうかが、1on1導入の成否を決定します。上司が1on1をわかったつもりでも、実際には、上司が伝えたいことを伝える場になっているというパターンです。「1on1は部下のために行う」を理解して、「今日は何を話そうか」という問いを、1on1の初めに聞くことを習慣化すると、「何を話そうか」と尋ねられることを部下は認識するようになるので、あらかじめ話すテーマを探しておくようになります。つまり、当日その場で、ではなく、前もって経験学習でいう内省が始まる、ということです。
  • 典型的な1on1の上司の失敗に、アドバイスをしようと思うがあまり、「どういうふうに進めたいの?」などと、自分の理解のための質問をしてしまうことがあります。しかし、それでは詰問になってしまいます。この傾向は部下思いの上司ほど顕著ですが、それでは部下は育ちません。
  • 1on1においては部下が思っている通り、「しゃべっていいんだ」という気持ちで自由に話をしてもらうことが大切だということです。

(3)1on1における働きかけ

  • 上司と部下との信頼関係が1on1のベースであり、まずは信頼関係を構築することから始める必要があります。
  • アクティブリスニングで興味深いのは、多くのケースで、聞き手はオウム返しをしているだけだと実感するのに対し、話し手は聞き手がオウム返しをしているとは感じないことです。むしろ、「じっくり話を聞いてくれた」という感想を持つことがほとんどです。
  • 留意したいのは、共感や肯定的な配慮は、賛成や同意とは異なるということです。部下の感情に対して、上司は共感し、部下の感情を無条件に受け入れてはいますが、同意しているわけではありません。1on1においてレコグニションは、1on1を円滑に進めていくための態度であり、信頼関係を構築するための手段であることを強く意識してください。
  • 上司が投げかけた質問に部下がすぐに答えられないときは、「部下が脳みそに汗をかいて考えている」ときだから、大切な時間だと話をすることがあります。そういうときには、答え=言語化を急かしてはいけませんコーチングやカウンセリングでは「沈黙を大切にする」という言い方と基本的には同じです。
  • 問題点が明らかになったら、次は「ではどうする?」「いつやる?」などと、質問を具体的な行動に移行させます。1on1は、部下の「行動の質」を向上させ成果を上げるために行うものであり、そのために「部下の行動」→「1on1での振返り」→「行動の改善」というサイクルを繰り返していきます。

(4)1on1導入ガイド

  • 会社には管理職が向く人と向かない人がいます。これは良い悪いではなく、パーソナリティやこれまでの経験によるものです。部下のマネジメントが向かない人は、無理に管理職にならず、プレーヤーとして才能と情熱を解き放つ仕事ができればよいと考えています。そのため、1on1をうまくできないということは、管理職も不向きであるかもしれないということも繰り返し伝えました。
  • 「あの人は何を言っても理解しない」という言い方があります。では理解しないのは誰が悪いかというと、部下ではなく言っている側だと思います。言っている側が、部下に内省の機会を与えていないから、「理解しない」となるのです。
  • 以前は、プレーヤーとして優秀だった人をそのまま管理職にし、プレーイングマネジャーとして働いてもらっていましたが、管理職の仕事は部下が活躍する場をつくることだ、と改めたのです。理解できない人、できない人はその場からどいてくれということ。

3.教訓

はじめに、でも記載した通り、自分が実施している1on1は、単に部下の話を聞いて、自分の考え・判断を伝えているだけだと、改めて思いなおしています。

もちろん、担当者の方が知識があり、正確に事態を把握していることも多いのですが、過去の経験上や自身の人脈で、「これはこうして」、「ここはあの人に聞いて」、と答えが浮かぶこともあります。

そのとき、「自分で判断したり、動いたりする方が早い」と結果を急ぐのではなく、個人や組織の成長支援を考えたときに何が大切か、という視点を持つことが大切だと考えています。

また、先日テレビを見ていたときに、「向き合うだと”対峙”のイメージがあるが、同じ方向を向いて”並走”することが求められている」、というような発言があったのを思い出し、これに近い発想ではないかと感じました。

THINK AGAIN アダム・グラント著


 

1.はじめに

アダム・グラント氏の著書は、これまでも読み、感銘を受け、感想を綴ってきました。

bookreviews.hatenadiary.com

 

bookreviews.hatenadiary.com

その方の新作ということで早速購入し、自身の2022年ゴールデンウィーク(といってもカレンダー通り、平日は仕事です)中の課題図書と位置づけ、時間をかけて読みました。

直訳すると、「再考」です。

また、日本語の副題としては、「発想を変える、思い込みを手放す」となっています。

フローチャートや説明の挿絵が、適切に「再考」の重要性についての理解を進めるのを手伝ってくれます。

2.内容

(1)Part1:自分の考えを再考する方法

①今、自分の「思考モード」を見直せ
  • たいていの人は、自分の知識や専門技術に誇りを持ち、信念や見解に忠実であり続ける。こうした態度は、揺るぎない信念を持つことで報われる安定した世界においては道理にかなっているだろう。しかし厄介なことに、私たちは急速に変化する世界に生きている。めまぐるしく変化する社会では、人は考えることと同じくらいの時間を最高にも費やす必要がある
  • 残念なことに、いざ自分の知識や見解となると、「正しいか」ではなく、「フィーリング(直感的に正しいと思うか)」を物差しにしがちだ。私たち一人ひとりが自分に対するセカンドオピニオン、つまり自分自身を客観的に見、第二の見解を持つことを習慣づける必要がある。
  • 脳の処理速度が速いからといって、柔軟な思考の持ち主であるとは限らない。どれだけ高い能力を持っていても、考え方や見方を変えようとする意志が無ければ、多くの再考察の機会を見逃してしまう
  • 自分は他者よりも客観的にものごとを見ることができると信じている人が「私は偏見にとらわれていない」バイアスを持つ。賢明な人ほど、この種の罠にはまりやすい。頭のいい人ほど、自分の限界に気づかない傾向が強い。あなたが考えることを得意とするなら、あなたの考え直す力は人よりも劣る可能性がある
  • 欠点を自覚することで懐疑への道が開かれる。欠けている知識を問うことで、自分が持たない情報に対する好奇心が生まれる。探し求めるうちに新しい何かを発見し、「学ぶべきこと、発見すべきことは、まだたくさんある」と自覚することで、謙虚さを保てる。知識がパワーであるなら、無知に気づくことは英知といえるだろう。
  • 知識の欠点は、時として未知を受け入れたがらないこと。人は新しいことを受け入れる能力や積極的な意思があってこそ、よい判断ができる。
②どうすれば「思考の盲点」に気づけるか
  • 能力の低い人は多くの状況において、自己の不適格性を認識できない。この「ダニエル・クルーガー効果」によると、人は能力が欠如している時、自信過剰になる傾向がある。
  • 人は自分の知識に確信を持っていると、知識の隙間や誤認を探そうとはしないし、当然ながらすき間を埋めたり修正したりしない。心の知能指数テストでの獲得スコアが低いほど、自己を過大評価し、さらには実際の結果を不正確または不適切として拒む傾向が強いという研究もある。よって、自分磨きや自己改善のために注力する可能性が極めて低い。
  • 人が自信過剰になりやすいのは、ド素人からワンステップ進み、アマチュアになった時だ。ほんの少しの知識が危険になりうる。微々たる情報だけで満足し、それをもとに意見を言ったり判断したりしていると、「マウント・ステューピッド(優越の錯覚)」のてっぺんにいることにも、盲目になっていることにも気づかなくなる。
  • 素人からアマチュアに移行する過程で、再考サイクルが崩れる可能性がある。人は経験を積むにつれて、謙虚さを失うものだ。過信サイクルのなかで、人は自分の知識の質や量を疑問視しなくなり、知らないことに興味を持ったりしなくなる。錯覚や誤った思い込みにとらわれ、自分の無能さに気づかない。
  • 謙虚さとは、自信を控えめに持つことではない。元来、「謙虚さ」とは、しっかりした知識や能力、つまり自分の過ちや不確実さを認識する力を表している
  • 傲慢になると、人は自分の弱点が見えなくなる。謙虚さは反射レンズであり、私たちに自分の弱みをありのまま映し出してくれる。そして、バランスの取れた自信と謙虚さは補正レンズだ。これにより私たちは弱点を克服することができる。
③「自分の間違い」を発見する喜び
  • 目標は間違いを減らすことではない。大事なのは、自身の過ちを認めることだ。人は誰もが、自分が認めるよりもはるかに多くの間違いを犯している。自分の過ちを否定すればするほど、より深い墓穴を掘っていることに、どうか気づいてもらいたい。
  • 私たちは自分の意見や考えに固執するあまり、それらが的外れで、修正されなければならない場合でも、その事実さえも見落としてしまう。自分の過ちを素直に喜べるようになるには、固執を分離(デタッチ)しなければならない
  • 数えきれないほどの研究者や専門家がトランプが大統領に選ばれる可能性(そしてBrexitが現実になる可能性)を過少評価した。なぜなら、彼らは過去の予測と自身のアンデンティティに、あまりにも感情的になりすぎたからだ。もし、優れたフォーキャスターになりたければ、昨日までの凝り固まった観念を捨てなくてはならない
  • 自身の過ちを認めることで能力が過小評価されることはない。それは誠実さ、そして学ぼうという前向きな姿勢のあらわれである。自分のミスを明らかにする新しいデータを否定するのではなく認めることで、彼らに対する信用や評価は上がる
④「熱い論戦(グッド・ファイト)」を恐れるな
  • 異なる意見がぶりかり合う理性的な対立(タスク・コンフリクト)が建設的であり得るのは、思考や意見の多様性がもたらされ、メンバーが過信サイクルに陥るのを引き留めてくれるからだ。タスク・コンフリクトが生じているとき、人は謙虚さを保ち、疑問があれば臆せず表明し、常に新しいアイディアを探し求める。そうすることにより複眼的に考察し、人間関係を損ねることなく、一歩一歩真実に近づいていくことができる。
  • 挑戦的なネットワークの理想的なメンバーは、非協調的な人だ。非協調的な人こそ、思い込みを手放し、発想を変えるために、これまでのやり方や不文律に対して臆することなく疑問を投げかける(特に指導者が理解を示さないとき)からだ。彼らは耳の痛い意見でもはっきり述べる。
  • 私たちは、自分に同調してくれる人よりも、自分の見解に意見してくれる人からより多くを学ぶことができる。指導力がある人というのは、批判も受け止め、それを成長の糧にできる指導力のない人は、批判の声を押さえ込み、成長の機会を逃している。
  • 最も有益な批評をしてくれるのは、ほとんどの場合、非協調的なギバーだ。彼らの目的は、研究を向上させることであって、自身のエゴを満足させることではない。彼らが他者を批判するのは、自分に自信が無いからではない。私を気にかけてくれるからこそ、異を唱えてくれるのだ。彼らの批判は愛のムチだ。
  • よい対立では、私たちは挫折や失敗を戦うのではない。プロペラのごとく私たちを推し進めてくれる人たちと意見をぶつけ合う。異なった方向に回転する2つのプロペラがあれば、私たちの思考は地上付近に留まるのではなく、限界を越えるために飛び立つことができる

(2)Part2:相手に再考を促す方法

⑤「敵」と見なすか、「ダンスの相手」と思うか
  • 平均的な交渉人は、戦いの場にあまりに多くの武器を持ち込んでしまう。彼らが失地する理由は、最も説得力のある根拠の薄弱さにあるのではなく、最も説得力のない根拠がぐらついていることにある。
  • 他者の考え方を変えたいとき、自分の考え方を変えることを拒否していては、一歩も先に進めない。まずはこちらがオープンな姿勢を示し、自分の主張の問題点や相手の主張の一部を認めてみよう。そして、相手はどの点を考え直す意思があるのかを尋ねてみれば、こちらが食わせ者でないことをわかってもらえるだろう。
  • こちらの主張を支えるのは、理路整然として説得力のあるごく少数の根拠だけでいい。そうすると、相手はこちらの主張に耳を傾け、自分の見解を疑問視するようにもある。そして、こちらがシンプルな問いを投げかければ、相手は興味をそそられ、答えを探ろうとする。
  • 誰かから反論され、それを戦いとして受け止めたとき、人は反撃、もしくは逃走する。だが、その状況をダンスと見れば、前進や後退の他に、サイドステップという選択肢が生まれる。対話について対話を持つことで、意見の対立の原因から関心をそらして、話し合いを発展させることに意識を集中させる。
  • 論議が激しくなったとき、いったん間を置いて「どのような証拠であれば考慮しますか?」と尋ねてみるといい。その答えが「何もない」であれば、それ以上議論しても無駄だ。お膳立てしても、本人にその気が無ければ互いに歩み寄ることはできない
  • 聴衆は、情報を得れば、遅かれ早かれ私たちの欠点や矛盾を見つけ出す。それならば、こちらが自分の欠点を自ら探す謙虚さや、それらをいち早く見つける洞察力、受け止める誠実さを見せた方が、評価はよくなるはずだ。
⑥「反目」と「憎悪」の連鎖を止めるために
  • 固定観念にとらわれるようになるのには、社会的な原因もある。人は同じ思想を持つ人と交流する傾向があるため、極端な方向に流れやすい。これは「集団極性化」と呼ばれ、数百もの実例によって明らかになっている心理現象だ。
  • 固定観念を取り除いたとき、それまで忌み嫌っていた集団のメンバーの多くが意外にも感じのよい人物であると気づくこともある。固定観念という不安定なジェンガのブロックを取り除くための最も効果的な方法は、相手と向き合って話し合うこと
⑦「穏やかな傾聴」こそ人の心を開く
  • 人々を変えようとするのではなく、彼らが自力で変われるように、動機を見つける手助けをする「動機付け面接」がずっと効果的。動機付け面接を行うときは、相手の自由意思を守るために、指示や助言を与えるのではなく、本人が変わりたい方向を見出せるように質問してみる。
  • よいガイド役というのは、考えや行動を変えたいと思っている人に常に寄り添い、手助けすることを途中でやめはしない。彼らが目標に到達するのを見届けるまで、ガイドの役目は終わらない
  • 相手の話に耳を傾けるということは、相手に最も希少で、貴重な贈り物である「関心」を向けているということだ。相手を大事に思っていることを、そして相手の目標達成を心から願うことをはっきりと示すことができれば、やがて相手もこちらの話に耳を傾けてくれるようになるだろう。

(3)Part3:学び、再考し続ける社会・組織を創造する方法

⑧「平行線の対話」を打開していくには
  • 反対意見を聞いたからといって、おいそれと自分のスタンスを考え直す気にはならない。両極を示すだけでは、問題は解決しない。それは単に、社会が分極化している事実を指し示しているにすぎない。この「バイナリー・バイアス」の好ましくない傾向への対処法は、「複雑化」である。つまり、何かのテーマについて検討する際には、多種多様な観点を提示するのだ。
  • 複雑性を伝えるためには、コンティンジェンシー(偶発性・予測していなかったことが起こる不確実性。「未来に起こりうる偶然」のこと。)について強調するのも効果的だ。どんな実証的事実もいつどこで再検証され、覆されないとも限らない。偶発性、不確実性は、どこでも、どんな集団にもある
  • 「…は常にいい」とか「…は常に悪い」と思う人は、盲信者であるかもしれない。常に効果的な行動パターンなどないし、すべての解決策には予期せぬ結果が伴う。複雑性をよく理解すれば、そのことにも気づくようになるだろう。
  • 相手の立場に立ってものを考える「他者視点取得」ではなく、実際に相手と対話することで相手の見解のニュアンスについて洞察を得る「他者視点追求」が役に立つということだ。少ない手がかりをもとに人々を判断するのではなく、対話することで仮説を検証していくのだ。
⑨生涯にわたり「学び続ける力」を培う方法
  • 歴史教育の分野では、近年、正しい答えが1つではない問いを投げかけていこうという傾向がある。重視されるのは、正しい答えを見つけることよりも、むしろそれらの問題について多角的な視点で考え、建設的に論じるスキルを身に付けることだ。
  • より学生に好まれたのは講義だったものの、実際に学生たちがより多くの知識やスキルを身に付けたのは、アクティブ・ラーニングだった。アクティブ・ラーニングは脳をより働かせなくてはいけない。そのため、学生を楽しい気分にはしてくれないが、深い理解へと導いてくれる。
  • 高校では教師の半分が、授業時間の大半またはすべての授業時間を講義に充てている。講義は必ずしも最善の学習法とは限らないし、講義だけでは、生徒は生涯学習のための基盤を十分に固めることができない。学校教育のすべてが知識を詰め込むだけで、疑問視する機会を全く与えられなkれば、人生で必要とされる再考する能力を培うことはできないだろう。
  • 学校で優秀な成績を修めるには、たいてい古い思考方法をマスターする必要がある。一方で、素晴らしいキャリアを築くためには、常に新しい考え方をすることが不可欠だ。かたや、全教科でAを取った学生たちの多くが、正しさにこだわり、保守的な考えや慣行を再考したがらなかった。
  • 学ぶための最善の方法は教えることだ。彼らは何を学んだかだけではなく、誰から学ぶことができるのかを自問し、再考した。
  • 生徒は複雑な問題に直面すると、たいがいうろたえるものだ。その時、生徒が喪失感や無力感を味わわないように、さっと救いの手を差し伸べたくなるのが、教師としての自然な衝動である。しかし、曖昧さや混乱に対して探求心と好奇心をもって対応できることは心の柔軟性を見る指標の1つであることが研究でわかってる。混乱とは、探求すべき新しい領域がある、もしくは解き明かすべき新しいパズルがあるという合図にもなる。
  • つまるところ、知識を頭の中に詰め込むだけが教育ではない。教育というのは、私たちが生涯にわたり草案を何度も描き直す習慣を築くこと、そして生涯にわたり学び続ける能力を培うことなのだ。
⑩「いつものやり方」を変革し続けるために
  • 再考することは、個人にのみ求められる技術ではない。これは集団が備えるべき能力でもあり、組織の風土に依存するところが大きい。学びの文化を醸成するためには、「心理的安全性」と「説明責任(アカウンタビリティ)」という組み合わせが必要である。
  • 心理的安全性の高いチームでは、人為的ミスの報告がより多かったが、ミスの頻度はより少なかった。自分の過失をためらくことなく認めることができる環境では、人々は過ちから学び、その原因を取り除いて進歩することができた。それに反して、心理的安全性の低い環境では、人々は咎められるのを避けるためにミスを隠したため、原因を特定して将来の過失を防ぐことがチームにとっても困難になっていた。その結果、同じ過ちが繰り返されることになった。
  • 心理的安全性を醸成するおは、人が互いに尊敬し信頼し、オープンでいられる環境である。そのような環境下では、人々は報復を恐れることなく懸念や意見を述べることができる。そしてそれが学びの文化の基盤になる。
  • その根拠は何か?これは誰もが自分や他者に対して発するべき問いだ。この問いを発する際に重要なのは、率直さだ。相手を自己防衛に追い込まれないよう配慮しつつも、客観的かつ単刀直入に疑問を呈し、問題に対する興味を示さなくてはならない。
  • 自分たちは発展途上にあると認めるには、謙虚さを忘れない自信が必要だ。つまり、自分の有能さを誇示するよりも、自分を改善しようとする意欲や向上心が大切ということだ。このマインドセットが組織内に広く、深く浸透すれば、人々は率直に、勇気を持って意見を述べるようになるだろう。
  • 成果重視の組織風土では、人は多くの場合、ベストプラクティスばかりにこだわる。そこでのリスクは、あるルーチンが最善だと断定されると、それがそのまま固定化してしまうことだ。そして人はその美点を説き、欠点を見過ごし、不完全なところや改善すべき点を見つけだそうという探求心を失ってしまう。向上していくためには、私たちはベストではなく「ベター」プラクティスを常に探求すべき。
  • お粗末な判断は、浅はかな考えから生まれる。一方、適切な判断が下されるときというのは熟考・再考がなされており、人は個々の意見を誰に憚ることなく口にできる場が作られている。調査によると、判断を下す際に、その判断に至った根拠を即時に説明しなければならない場合、人はより批判的に考え、あらゆる可能性を深く考察するという。「プロセス・アカウンタビリティ」と「心理的安全性」は対極にあるかのように見えるが、実際は独立して共存している。

(4)Part4:結論

⑪視野を広げて「人生プラン」を再考する
  • 立場固定に陥るのは、人間というものがなんでも合理化しようとする生き物だから。人は絶えず自分の信念を正当化する理由を探す。エゴをなだめ、メンツを保ち、過去の決定の有効性を立証しようとする。回避可能である失敗を回避できないのは、立場固定バイアスによるところが大きい。だが、もう1つ、皮肉にも私たちが成功の原動力と崇めている資質ー「根性(GRIT)」にも大きな原因がある。再考という観点から見ると、根性はマイナスの資質になりかねない。
  • 「英雄的な粘り強さ」と「愚かな頑固さ」は紙一重だ。時として、最も価値ある根性とは、歯を食いしばって撤退することである。
  • 「職業を選ぶ」のは、「ソウルメイトを見つける」こととは違う。理想の仕事は、まだ創造されていない可能性だってある。従来からの産業は変わりつつあり、新しい産業がかつてない速さで生まれている。ほんの少し前まで、グーグルやウーバー、インスタグラムは存在しなかった。あなたの将来の姿だって、まだ存在しない。そしてあなたの興味もまた、時とともに変わるかもしれない。
  • 転々と場所を変えても、自分自身から逃げることはできない。行動を変えた学生は幸福度が高まり、その状態が継続したことが明らかになっている。人の幸せは多くの場合、どこにいるかよりも何をするかで決まる。環境ではなく、行動が意義や帰属感をもたらす。
  • 私たちのアイデンティティも人生も、開放システムだ。目標は何か、どんな人物になりたいかは変わるものであり、古い理想図に縛られる必要はない。自分の選択肢や可能性について再考するための、最もシンプルな方法は、日々の行動を疑問視し、見直すことだ。過去の決意や覚悟を見直し、改めるには、謙虚さが必要だ。現在の決断に対する懐疑心、そして将来を思い描きなおす好奇心もいる。目標に向かう道のりで見つけたものが、私たちをしがらみや過去の自分から解き放ってくれるだろう。再考は、知識や見解を改めるだけではない。再考は、私たちの思考を自由にして、より満ち足りた人生を送るためのツールなのだ。
⑫エピローグ
  • 結論が書き手の私にとっては終点を意味しても、読者にとっては始点である。結論が新しい考えへのスプリングボード(飛躍のきっかけ)、そして新しい会話への架け橋になるだろう。
  • 私たちの誰もが、再考するスキルを磨くことができる。どのような結論に達しようとも、私たち一人ひとり頻繁に科学者のゴーグルをかけて再考するなら、世界はもっと住みやすい場所になるかもしれない。さて、あなたは私の提案に同意するだろうか?あなたがノーと言うなら、どんな証拠があれば再考するだろう?

3.教訓

たとえば現在の職場では、自社での新人研修を、講師役の対面説明でなく、事前動画撮影したものを視聴することが検討されています。

たしかに、効率性の観点からすると、本書にあるベストプラクティスなんだろうと思われます。

一方で、対面の講義を続けることのメリットに目を向けると、以下が挙げられます。

・講師⇔受講者間で双方向の意見交換ができること

・現時点の担当者の顔が見えること

・講師側も教えることによって自らも学ぶ機会が得られること

また、一度作り上げてしまうと、効率性を考慮すると作り直すことが遠ざけられ、よりよい講義にしようという再考の機会が奪われてしまう可能性もあります。決断にあたっては、メリットの一面だけでなく、デメリットを天秤にかけることが大切です。

常に、今取り組んでいることが本当に正しいのかという視点を持ち続け、自分や周囲に疑問を投げかけ、立ち止まって再考することの重要性をしっかりと理解することができました。

これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学 マイケル・サンデル著


 

1.はじめに

NHKの「ハーバード白熱教室」も放送されていたことから、JUSTICE(正義)について高名な教授、ということをご存知の方も多いと思います。

www2.nhk.or.jp

本書では、さまざまな具体的な事例をベースに、発生するジレンマの両面からの意見が記され、それに対する考察が展開されていきます。

本ブログでは、本の要約ではなく、印象的な部分を抜き書きしているものの、結果としては大まかな論旨を追えるような内容に仕上がるように感じていました。

ただし、本書については全く要約にはならかったものの、世の中に唯一絶対の解がないということを強く意識できた良本でした。

2.内容

(1)正しいことをする

  • ハリケーン被害による便乗値上げに対し、市場を支持する評論家は便乗値上げ禁止法に反対した。「市場でつく価格を請求することは暴利行為ではない。強欲でも恥知らずでもない。それは自由な社会で財やサービスが分配される仕組みが必要なのだ」という。評論家は「物価の急騰はひどく腹立たしいことであり、恐ろしい嵐のせいで生活が混乱している人にとってはなおさらだ」と認めていた。だが、一般市民の怒りは自由市場への干渉を正当化するものではない。一見法外な価格も、必要な商品の増産を促すインセンティブを生産者に与えることによって、「害よりもはるかに多くの益をもたらす」というのだ。「売り手を悪者扱いしてもフロリダの復興が早まることはない。売り手には思う存分商売をさせてやることだ」というのが評論家の結論だった。
  • アメリカ国民が怒りを爆発させたのは、巨額の救済資金を得た金融機関がボーナスを出したときだった。救済資金というボーナスをまかなうのが納税者であるのに対し、好況時のボーナスは企業の利益だ。アメリカ国民がボーナスに本当に反対するのは、それが強欲に報酬を与えるからではなく、失敗に報酬を与えるからなのだ。
  • たとえば「1人の命を犠牲にしても多くの死を避けるほうが良い」という原則がある。それからその原則にそぐわない状況に直面して、混乱状態に陥る。「できるだけ多くの命を救うことは常に正しいと思っていたが、そのために1人を犠牲にすることが間違っているような気がする」というものだ。こうした混乱の力と、その混乱の分析を迫る圧力を感じることが、哲学への衝動なのだ。

(2)最大幸福原理ー功利主義

  • 功利主義」の理論は、道徳の至高の原理は幸福、すなわち苦痛に対する快楽の全体的な割合を最大化すること。ベンサムによれば、正しい行いとは「効用」を最大にするあらゆるものだという。どんな法律や政策を制定するかを決めるにあたり、政府は共同体全体の幸福を最大にするため、あらゆる手段をとるべきである。政策のすべての利益を足し合わせ、すべてのコストを差し引いたときに、この政策はほかの政策よりも多くの幸福を生むだろうかと。

(3)私は私のものか?ーリバタリアニズム自由至上主義

  • リバタリアン自由至上主義者)は、経済効率でなく人間の自由の名において、制約のない市場を支持し、政府規制に反対する。リバタリアンの中心的主張によれば、どの人間も自由への基本的権利ー他人が同じことをする権利を尊重するかぎり、自らが所有するものを使って、自らが望むいかなることをも行うことが許される権利ーを有するという。
  • 自分を所有しているのは自分自身だという考え方は、選択の自由をめぐるさまざまな論議のなかに姿を現す。自分の体、命、人格の持ち主が自分自身ならば、それを使って何をしようとも(他人に危害を及ぼさない限り)自由なはずだ。こうした考え方の魅力にもかかわらず、その含意するところすべてが簡単に容認されるわけではない。(例:臓器売買、自殺ほう助、合意食人等)

(4)雇われ助っ人ー市場と道徳

  • 志願兵制には強制という側面がある。社会のなかで他にましな選択肢がない場合、兵役に就くのを選ぶ者は、実質的には経済的必要性に迫られて徴兵されるようなものだ。その場合、徴兵制と志願兵制の違いは強制か自由意志という違いではない。双方の強制の仕方が違うのである。ー前者は法律の力によって、後者は経済的な圧力によって強制される。報酬のために兵士になるという選択が自らの意思によるものであり、選択肢が限られているためにやむをえず選んだわけではないと言えるのは、まともな仕事がある程度選べる状況があってこそ。
  • 体外受精によって登場した妊娠のアウトソーシングは、むしろ、道徳的な問題をいっそう明瞭に浮き彫りにしたと言える。子供が欲しい人にとっては費用が大幅に安くつく点、そしてインドの代理母にとっては、その子供は産めば地元で働いて得られる賃金よりもはるかに多い金額が手に入る点を考えれば、商業的な代理出産が全体の福祉を向上させるのは疑いない。そのため、功利主義の観点からは、金銭の授受を伴う妊娠が世界規模の産業として台頭していることに反論することは困難だ。

(5)重要なのは動機ーイマヌエル・カント

  • カントによれば、人間はみな尊敬に値する存在だ。それは自分自身を所有しているからではなく、合理的に推論できる理性的な存在だからだ。人間は自由に行動し、自由に選択する自律的な存在でもある。
  • カントによれば、ある行動が道徳的かどうかは、その行動がもたらす結果ではなく、その行動を起こす意図で決まるという。大事なのは動機であり、その動機は決まった種類のものでなければならない。重要なのは、何らかの不純な動機のためではなく、そうすることが正しいからという理由で正しい行動を取ることだ。

(6)平等の擁護ージョン・ロールズ

  • 契約至上主義者でもない限り、トイレ修理に数万ドルを請求するのは、どう考えても不公正だと思うだろう。この事例は契約の道徳的限界について、2つのことを浮き彫りにしている。1つは同意したという事実だけでは同意の公正さは保証されないということ、もう1つは同意を得ただけでは道徳的拘束力は発生しないということだ。一方的な取引には互恵性がほとんどないため、たとえ自発的に結ばれたものであっても義務は発生しない。
  • ロールズは2つの理由から、道徳的功績を分配の正義の基準とすることを認めない。最初の理由は、他者よりも競争を有利に進められる才能を持っていることは、完全には自分の手柄ではないからだ。しかし2つ目の偶然性も同じように重要だ。社会がそのときに重視する資質もまた、道徳的に恣意的である。私の才能は確かに私に属するものかもしれないが、それが生み出す利益は需給という偶然性に左右される。スキルが生み出す利益のタカ派、社会が何を求めているかによって決まる。何が貢献的であるかは、その社会がどんな資質を重視しているかによって違う。

(7)アファーマティブ・アクションをめぐる論争

  • 学業面での資質のみを基準に学生を選考する大学もあるかもしれないが、ほとんどの大学は違う。大学の使命を定義し、選考方針を定めるのは大学自身であって、出願者ではない。学業成績であれ運動能力であれ、どの資質を重視するかを決めるのは大学だ。大学が使命を定義することによってはじめて、合否を判断するための公正な方法が決まる。

(8)誰が何に値するか?ーアリストテレス

  • ストラディヴァリウスのヴァイオリンが売りに出され、富豪のコレクターがヴァイオリニストより高値をつけたとしよう。これは一種の損失であり、不正義だとさえみなせないだろうか。競争が不公正にに思えるからではなく、結果が不適切だという理由で。こうした反応の裏にあるのは、ストラディヴァリウスは演奏されるものであって、装飾品ではないという(目的論的な)考え方かもしれない。
  • ヴァイオリンを奏でずにヴァイオリニストにはなれない。美徳も同じだ。「われわれは正しい行動をすることで正しくなり、節度ある行動をすることで節度を身につけ、勇敢な行動をすることで勇敢になる」。

(9)たがいに負うものは何か?ー忠誠のジレンマ

  • 謝罪の根拠として十分かどうかは、状況しだいである。時には、公式謝罪や補償の試みが有害無益となることもある。昔の敵意を呼び覚まし、歴史的な憎しみを増大させ、被害者意識を深く植え付け、反感を呼び起こすからだ。公的謝罪に反対する人びとはそうした懸念を表明する。結局、謝罪や弁償という行為が政治共同体を修復するか傷つけるかは、政治的判断を要する複雑な問題なのだ。答えは場合によって異なる。
  • 選択の自由はー公平な条件下での選択の自由でさえー正義にかなう社会に適した基盤ではない。そのうえ、中立的な正義の原理を見つけようとする試みは、方向を誤っているように見える。道徳にまつわる本質的な問いを避けて人間の権利と義務を定義するのは、常に可能だとは限らない。たとえ可能であっても、望ましくないかもしれない。

3.教訓

現代の日本では、真の意味で1人で生活している人はおらず、何らかの共同体に属した生活を送っていると思います。

自身も、日本国民であるだけではなく、1企業に属するサラリーマンであり、2人の子供の親であり、居住マンションの組合員であり、といった具合です。

それぞれの共同体で求められる貢献は異なり、また求められる内容も時間の経過に伴い変化していきます。

そのため、一貫性のある行動を保ち続けること自体が正しいものではなく、場面場面で正解が異なり、また人によっても価値観が異なるが、それはそれでよい、と強く思えるようになりました。

読書とは、常に自分の価値観とは異なる見方との遭遇の連続であり、新たな発見をもたらしてくれる有益なものと思います。

マネジャーの教科書 ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 著


 

1.はじめに

「教科書」という表題になっていますが、一般にイメージする教科書とは違います。

本書は、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された論文のうち、マネジメントに関連する10本(+おまけ)をまとめたもので、体系的・網羅的に整理された内容ではありません。

しかしながら、異なる論旨を10回分学べるという点では価値があると思います。

また、それぞれ1冊の本になっているもの(自身が読んで投稿したものもあり、過去記事にリンクで紹介しています)もあって、さらに深読みしたい方は、それらを購入すると理解がより深まると思います。

2.内容

(1)新任マネジャーはなぜつまずいてしまうのか

  • 概してマネジャーの心得は実際の仕事の中で体得していくものであり、教室で学ぶことはできない。すなわち、リーダーシップは実践を通じて獲得するスキルであり、とりわけ新米マネジャーだちは既存の能力を超えた仕事を担い、試行錯誤によって前進することで学ぶしかない
  • 権力者になったなどという幻想をさっさと捨てて、交渉しながら相互依存関係を深めていかなければならないという現実を受け入れない限り、新米マネジャーはリーダーシップなど望むべくもない。真のリーダーシップを身につけるには、自分の部下だけでなく、チームが置かれている環境も含めて管理する必要がある。
  • 権威に頼った方法では、偽りの勝利しか得られない。なぜなら、権威による服従が自発的なやる気に勝ることはないからである。誰でも、やる気が損なわれれば、その持てる力を発揮しようとはしない。部下たちが自発的に考え、行動しない限り、いかに権限移譲しようと、望むような成果は得られないだろう。
  • 新米マネジャーは直属の上司のことを、見方ではなく脅威と見る。そこで、彼ら彼女らはなんでも独力で解決しようとする。本当は助けてほしくても、ミスや失敗への罰を恐れるあまり、むしろ未然に防いでくれるかもしれない救いの手に背を向ける。

(2)メンバーを変えずにチームで変革を進める法

  • リーダーはまず、現状をはっきり理解するために、自分が受け継いだ人材の価値とチーム力学を見極めなくてはならない。次の仕事は、必要に応じてチームを再編するために、メンバー構成、目的意識や方向性、業務手法、行動特性などを新鮮な目で見つめることである。最後に、早期に成果を上げるチャンスを探り当て、それを確実に物にするためのプランを練れば、短期間でチーム構築と成果向上を成し遂げられる。
  • 「なぜそうすべきなのか」という問いだけは鬼門になりがち。チームに、みんなをやる気にさせる明快で説得力あふれるビジョンがないなら、また、適切なインセンティブがないなら、望ましい方向へと力強く前進することはおそらくないだろう。
  • チームの業務運営手法について発想を広げるには、仕事のやり方を縛っている実質的な制約を突き止め、その制約の下でチームが効率と生産性を高めるにはどうしたらよいか、自問自答することだ。
  • チームを新たに統括する立場になったら、早い段階で個別面談を行う。みんなに同じ質問をして、各人の洞察力や見識の違いを探ろう。問題が起きた時の反応は、責任を負う、弁解をする、責任転嫁をする、のいずれだろうかに注目する。

(3)新人マネジャーを育てるコーチング技法

  • 新人マネジャーが権限移譲をためらうのは、その根本に恐怖心があるためだ。まず、自分が築き上げてきた評判を失うことを恐れる。部下たちに目立つ仕事をさせてしまうと、周囲の評価は部下に集まることになる。その場合「自分もきちんと評価されるのだろうか」「上司や部下に自分が生み出した付加価値をわかってもらえるのだろうか」などと懸念する。
  • 次に、コントロールを失うのではないかと恐れる。最後に、部下に負担が過重になることを気遣って、仕事を任せないというケースもあれば、かつての同僚に不満を買うかもしれないと恐れて、仕事を割り当てられないこともある。しかし、本当に不満を買うのは、部下たちが成長するチャンスを奪われていると感じる時である。
  • 決定的なことは、新人マネジャーが上司を「後ろ盾」と見なさなくなること。新人マネジャーが上司をそう見ないということは、彼らが部下からそうみられるようになろうとしないだろう。問題は、上司の地位のせいで、新人マネジャーが委縮しているというだけでなく、彼らが上司に弱みを見せることを恐れていること。
  • 部下は絶えず上司を子細に観察している。そこにプロフェッショナリズムが感じられれば、部下もそのように振る舞うようになる。だからこそ、意識的に行動することの大切さを新人マネジャーに諭す必要がある。周囲に与えている印象について日々意識させる。少しでも後ろ向きなマネジャーを見つけたら、すぐ伝えるべき。
  • 目標を明確に持っているマネジャーは、四六時中、実務に追われるのを嫌う。協調すべきは、一連のプロセスを見ることで、考えるべき点について頭を使い、チームを効果的に推進していると確信できることである。
  • 部下へのフィードバックは、楽しくない内容や一筋縄ではいかない内容も多い。大事なのは「部下が目標を達成できるように何かしたい」という気持ちを、新人マネジャーに育ませること。姿勢を改めさせるよりも行動を変えさせることのほうがはるかにやさしい。「人格を変えろとは言えないが、態度を変えろとは言える」という古いことわざも忘れるなかれ。

(4)あなたは「24時間働く」仕事人間になれるか

  • 仕事にひたすら打ち込み、常に臨戦態勢でいなければならないという「理想的な働き手」の文化を受け入れる人は、そうでない人を理解するのが難しい。その結果、彼ら受容者や24時間働くことを従業員に迫る中心的存在になる。仕事以外にも生活がある人のマネジメントができない。
  • パッシング(ふりをする)という戦略の見えにくいマイナス面は、「理想的な働き手」という文化に公然と異を唱えず、その文化の温存を許していること。ワーカホリックにならなくても成功できるということが実証されているのに、組織は相変わらず今まで通りに仕事を設計・測定する。
  • 仕事以外に大切にしているものを公にし、そのことで不利な扱いを受けると、他者のマネジメントも難しくなる。パッシング戦略を取る人の場合と同じく、理想的な働き手になれという圧力を受け入れるよう部下に促すのは気が進まないし、かといって抵抗した場合の代償は身をもって知っているため、これを勧めるのもためらわれる。
  • 皮肉なことに、仕事以外にも視野を広げると、仕事上の充実感はむしろ大きくなる。こうして再起力の増したマネジャーは、公司のバランスが取れた従業員こそ組織にとっての価値を創出できると気づくこともできる。

(5)「説得」の心理学

  • 人々に影響を及ぼしたいなら、友好的な関係を築くこと。友好関係を築くうえで役に立つ要素がいくつもあるが、とりわけ「共通点をアピールすること」と「相手を称賛すること」の2点が大きな意味を持っている。
  • 自身がその施策のメリットを説くよりも、賛成してくれている社員にみんなの前で意見を述べてもらうことを勧めたい。影響力は上から下よりも横方向に強く働くもの。
  • 人々は、文書で約束したことは守ろうとするもの。私たちには他人の前で首尾一貫した行動、ないしは姿勢を示したいという気持ちがある。内容を公表し、多くの人々の目に触れさせるようにしなければならない。
  • 権威をいたずらに振りかざして相手の同意を取り付けるのは、倫理に反するのみならず、逆に逆効果。しかし、この「権威の原則」は、使い方を誤らなければ、専門性・純粋な義務感・確かな共通点・真の権威・希少価値の高い情報・自発的なコミットメント、これらを土台に得られた結論は、すべての当事者に利益をもたらすだろう。

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(6)心の知能指数「EQ」のトレーニング法

  • 自己認識力が優れている人は率直に失敗の経験を口にするし、笑顔で失敗談を披露することさえ珍しくない。自己認識がもたらす証拠の1つは、自分を笑い飛ばせるユーモアのセンスである。
  • 達成感を動機に仕事をする人は、創造力を必要とするテーマを求める傾向にある。学ぶことが好きで、仕事をうまくやり遂げることに大きな誇りを感じる人である。また、仕事をもっとうまくやり遂げることに限りないエネルギーを注ぐ人である。そのようなエネルギーを持つ人は、現状に甘んじることをよしとしない。最高の仕事をするための方法をとことん追求する。
  • ソーシャルスキルに優れた人は人脈が広い傾向がある。あらゆるタイプの人たちと見解の一致を見出すコツ、つまりラポール(親和関係)を築くコツを知っている。いつも社交的に行動しているという意味ではなく、重要なことは一人では達成できないものだという前提で仕事をしている。このような人は、必要になったときにいつでも使えるネットワークを持っている。

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(7)「自分らしさ」が仇になる時

  • 自己認識が最も試される場面こそが、リーダーシップを巧みに発揮する方法を学べる絶好の機会。自分自身を発展途上とみなし、試行錯誤しながらプロフェッショナルとしてのアイデンティティを進化させれば、自分にしっくり合い、変わり続ける組織のニーズにも適したスタイルを確立することができる。
  • リーダーらしく考えられるようになるには、まず行動すること。すなわち、新しいプロジェクトや活動に飛び込み、まったく異なるタイプの人たちに接し、新しい仕事のやり方を試してみる。
  • 学習はたいていある種の模倣であり、「オリジナル」なものなどないと理解することがどうしても必要になる。リーダーとして成長するうえで重要なのは、オーセンティシティ(自分らしさ)を固有の状態でなく、他者のスタイルや言動から学んだ要素を採り入れ、自分のものにする能力として認識することだ。
  • リーダーとして成長する唯一の方法は、自分は何者かという枠を広げていくことだ。新しいことをすれば不安に駆られるが、じかに体験することで、自分がどうなりたいのかということに気づくことができる。完全に別人のように変わらなくても、こうした成長を遂げることは可能だ。

(8)上司をマネジメントする

  • 多くの人が、部下がどのような情報や援助を必要としているのか、上司は魔法を使ったかのように察知し、それを用意してくれると考えている。もちろん、その通りに部下を気遣う素晴らしい上司もいるが、すべての上司にこれを期待するのは危ういくらい非現実的である。
  • 上司は、無限の時間や百科事典並みの知識、さらには超能力の持ち主ではない。また、悪魔のような敵でもない。上司もプレッシャーや心配事を抱えており、それらは部下が望むところと相容れない場合もあるが、その大半に正当な理由がある。
  • つまるところ、上司の期待を見極めるのは部下の仕事だ。そのような期待は、例えば「上司がどのような問題を、いつ知らせてほしいと考えているか」など広範であり、また「いつまでにプロジェクトを完了すべきか。それまでにどのような情報を必要としているのか」など、非常に具体的でもある。

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(9)人脈の戦略

  • リーダーとマネジャーを分かつのは、自らの目的地を見つけ出し、そこに至るうえで必要な助力を周囲から得られるかどうかである。リーダーは利害関係のある相手に声をかけ、協力者や支持者の輪を広げ、社内の権力地図を把握し、これまで交流のなかったグループの間を取り持つ。
  • 戦略上のネットワークを使いこなせる人は、その影響力を間接的に行使する。要するに、自分の知り合いに動いてもらうのではなく、知り合いに頼み、その知り合いに自分が必要とする行動を取ってもらうのだ。
  • 人脈は使ってこそ意味があり、また使うことでさらに広がっていく。まずはちょっとした頼み事から始めたり、知人と知人を紹介する仲介役になったりするとよい。とにかく何でもやってみることだ。何事もそこから始まり、自分も何かに貢献できるという自信が得られるだろう。

(10)マネジャーの時間管理法

  • マネジャーは部下に対応する時間を最小限にするか、部下にはまったく時間を割かずに、自分の時間の中の、自由裁量の部分を増やす努力をすべきである。そうすれば増えた時間で、上司や組織に要求された業務をうまくさばけるようになる。
  • 部下が主導権を握って仕事をする主体性を育ててやらない限り、部下たちが主体的に行動するように、マネジャーはいつまでも監督しなければならない。ひとたび部下の仕事の主導権が上司の自分に移ってしまえば、その時点でマネジャーは自分の仕事の主導権を失い、自由裁量の時間に別れのキスをすることになる。
  • マネジャーが真っ先に行うべきは、部下に対応する時間をなくして自由裁量の時間を増やすことである。二番目に行うべきは、新たにひねり出した自由裁量の時間の一部を使って、部下の一人ひとりが実際に主導権を持ち、仕事でそれを発揮するように取り計らうことである。そして三番目には、増えた自由裁量時間の残りで、上司と組織に対応する時間で「いつ」「何を」行うかを自分の手でかじ取りするのだ。これらのステップはいずれもマネジャーの手腕を高めるだけに留まらず、マネジャーが自分の業務時間管理に費やす時間の価値を無限に高めてくれる。
  • 部下に問題を戻して自身で解決してもらうとなれば、部下にその意欲と能力の両方が備わっていることが前提。しかし、上司なら誰でも知っている通り、実際には部下にその両方が備わっているとは限らない。その場合、全く新しい問題が浮上してくる。権限移譲は通常、人材育成と同義である。つまり、当座は、自分で問題を解決するよりもずっと時間がかかる

3.教訓

マネジャーになった直後に読んでおけばよかった、という内容ばかりです。

ただ、これから取り入れても遅くない内容も多く、決して新任マネジャーだけに有益な情報ではなく、将来的に応用の効く内容です。

特に、10番目の時間管理は、まさにその通り、という内容でした。本来、上司が部下の進捗管理を行うべきところ、上司が部下からボールを受け取ってしまうと、上司が部下から進捗管理を受ける立場になってしまい、自分が自由に使える時間が無くなってしまう、というのは、全く今の自分に当てはまっています。

本稿の電子版が、過去の最高の売り上げを誇る論文の1つ、というのも非常に納得感があり、当該内容だけでも読む価値が高いと感じました。

1兆ドルコーチ エリック・シュミット, ジョナサン・ローゼンバーグ, アラン・イーグル著


 

 

1.はじめに

1兆ドルコーチの名は、ビル・キャンベル。

スティーブ・ジョブズジェフ・ベゾス、グーグル創業者などを育て上げた、伝説のコーチです。

その方から実際にコーチを受けた人々のエピソードが多く盛り込まれた、実践的な内容となっています。

2.内容

  • 有能なマネジャーやリーダーになるためには、有能なコーチにならなければならない。コーチングはもはや特殊技能ではない。有能なコーチでなければ、有能なマネジャーではいられない。

(1)マネジャーは肩書きがつくる、リーダーは人がつくる

  • 君がすぐれたマネジャーなら、部下が君をリーダーにしてくれる。リーダーを作るのは君じゃない、部下なのだ
  • どんな会社の成功を支えるのも人だ。マネジャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。マネジャーは「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきだ。
  • 全員に共通認識を持たせ、適切な議論を行い、意思決定を下すために、ミーティングを利用する。1on1で解決できそうな問題であっても、スタッフミーティングでそれを話し合えば、協力し合いながら難題に取り組む練習をチームにさせることができる
  • 経営トップがすべての決定を下すようでは、その正反対の環境になってしまう。なぜなら部下は自分のアイデアをマネジャーに認めさせることに終始するからだ。そうした環境では、最適解ではなく、最高権力者へのロビイングに長けた者、言い換えれば政治が勝利を収める。
  • コンセンサスではなく、最適解を得ることを重視する。コンセンサスを目指すと「グループシンク(集団浅慮)」に陥り、意思決定の質が低下しがち。最適解を得るには、すべての意見とアイデアを俎上に載せ、グループ全体で話しあうのが一番。正直に問題を公開し、とりわけ不満が出ているような場合には、率直な意見を述べる機会を全員に与える
  • チームと問題を話し合うとき、君はいつも最後に話すようにしろ。君は答えを知っているかもしれないし、それは正しいかもしれないが、答えをただ与えるだけでは、力を合わせるチャンスをチームから奪ってしまう。正しい答えにたどりつくのは大事だが、チームみんなでそこにたどりつくプロセスも同じくらい大事
  • 最適解が生まれない場合、マネジャーは決定を促すか、自ら決定を下さなくてはならない。マネジャーの仕事は議論に決着をつけることと、部下をよりよい人間にすること。決定を下さないのは、誤った決定を下すよりたちが悪い。
  • どんな状況にも、誰もが納得できる不変の真理が存在する。「第一原理(ファースト・プリンシプル」だ。第一原理はどんな会社にも、どんな状況にも存在する。意見には反論できても、原理には反論できない。なぜならすでに全員がそれを受け入れているからだ。困難な決定を迫られたとき、そうした第一原理を全員い説明し、思い出させることがリーダーの役目だ。そうすれば、決定はずっと下しやすくなる。
  • 適切なプロダクトがあり、適切な市場に適切なタイミングで提供できるなら、可能なかぎり早く世に出せ。小さな問題やすぐに対応が必要なこともあるだろう。だがとにかくスピードが肝心だ。
  • 情報はあらかじめ送付して、出席者たちが目を通し、質問を持って会議にやってくることを期待しよう。「期待」するとは、口先だけでなく本気で期待するということだ。宿題をやらない者は、会議に出る資格はない。

(2)「信頼」の非凡な影響力

  • 要は信頼している相手には安心して自分の弱さを見せられる。
  • コーチは何かが起こっているかを常に把握している必要があり、コーチする相手からはプライバシーを尊重してくれる存在と見なされていなくてはならない。
  • 信頼とは、常に意見が合うということではない。むしろ、信頼している相手には異を唱えやすいのだ。信頼関係のあるチームにも意見の相違は生じるが、感情的なしこりは少ない。
  • 最高のチームは「補完的なスキルセットを持つ、性格の似通ったメンバーからなる」という一般通念の誤りは証明された。そうではなく、最高のチームとは「心理的安全性が最も高いチーム」なのだ。そしてその出発点となるのが信頼である。
  • コーチとの関係から最大の価値を引き出すには、教えられる側がコーチングを受け入れる姿勢でいなくてはならない。コーチャブルな資質とは、「正直さ」と「謙虚さ」、「あきらめず努力を厭わない姿勢」、「常に学ぼうとする意欲」である。
  • ただ言葉を聞き取るだけじゃない。相手が言いそうなことを先回りせず、とにかく耳を傾けろ。
  • 質問の姿勢は、すぐれた聞き手になるために欠かせない。発見や洞察を促すような質問をしょっちゅうする人は、最高の聞き手だと相手に思われる
  • 従業員の話を聞く、声をかけるといった「ありきたりの何でもないこと」が、すぐれたリーダーシップの重要な側面だ。そうした行動は従業員に「自分は尊重されていて、目に見えない名もなき存在ではなく、チームワークの一端を担っていると感じ」させることができるからだ。
  • フィードバックは徹底的に正直で率直に、そしてできるかぎり早く与えよ。ネガティブなフィードバックは人目のないところで与えよ。
  • マネジャーはこうしろああしろと頭ごなしに言うもんじゃないと考えていた。何をするかを指図するな、なぜそれをやるべきかという物語を語れ
  • 勇気を奮い起こすようにチームを駆り立てるのはマネジャーの仕事だ。勇気を出すのは大変なことだ。人は生まれつき失敗を恐れ、リスクを怖がるようにできている。だからマネジャーはためらいを乗り越えるよう、部下の背中を押してやらなくてはならない

(3)チームファースト

  • 「自分の成功が他人との協力関係にかかっていることを理解している人、ギブアンドテイクを理解している人、つまり会社を第一に考える人」を探す必要がある。彼らが何かを犠牲にしたり、他人の成功を喜ぶことがあるかどうかに注目すればいい。
  • 大事なのはそれまでやってきたことでも、これからやろうとしていることでもなく、日々やっていることなのだ。これはチームメンバーに求める最も重要な資質。毎日仕事に出てきて、精いっぱい働き、インパクトを残す人。つまり、実行家だ。
  • 「正しいプレイヤー」を見つけよ。人に求めるべき最も重要な資質は、知性と心だ。つまり、すばやく学習能力と厳しい仕事を厭わない姿勢、誠実さ、グリット、共感力、そしてチーム・ファーストの姿勢である。
  • 勝利を目指せ。だが献身、チームワーク、誠実さをもって、常に正しく勝利せよ
  • 「チーム・ファースト」。スタープレイヤーから2,3番手のプレイヤーに至るまでの全員が、個人の利益よりチームの利益を優先させる覚悟を持たなくてはならない。こうした熱意があればこそ、チームは偉業を成し遂げられる。

(4)パワー・オブ・ラブ

  • 「やさしい組織」になる。人を大切にするには、人に関心を持たなくてはならない。プライベートな生活について尋ね、家族を理解し、大変なときには駆けつけよ。
  • 人を助けていいのだ。一肌脱げ。それが正しいことで、全員のためになるという確信があるなら、頼みごとを聞いてやれ。時間や人脈などの資源を、人のために惜しみなく仕え。

3.教訓

現在の会社において、コーチング、1on1の重要性が多く語られ、ミドルマネージャーは関係する研修を全員受講するようになり、実際、対話を始めています。

その中で感じることは、本書にも言及のあった、コーチングをする側がいくら頑張っても限界があり、教えられる側のコーチャブルな姿勢があってこそ、というものです。

自身がいち上司であっても、グループ頂点企業の社長やCEOでない限り、必ず上司が存在します。コーチングする側として偉ぶるのではなく、自身がまずコーチャブルな資質を持っていることが周囲に伝わらないと、いいチームを築くことはできないことを強く感じることのできた良本でした。