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経営者の条件 ピーター・F・ドラッカー著


 

 1.はじめに

数々の名著を残したピーター・ドラッカー氏の本のうち、自身が一番感銘を受けた本書を採り上げます。

ダイヤモンド社ドラッカー名著集でも、1番の番号が振られているのも理由がわかる気がします。

日本語の表題は「経営者の条件」ですが、現代は「THE Effective Executive」です。

タイトルだけ見れば、社長に向けた経営指南書のように思えますが、実際には「業績を上げるために自らをマネジメントする方法」が書かれている内容です。

エグゼクティブとは、知識労働者全般を指していて、「自らの知識あるいは地位ゆえに、組織の活動や業績に対し、実質的な貢献を行うべき者」と定義されており、言ってみればオフィスワーカー全員が該当します。

それゆえ、マネジメントの立場ではない人が読んでも参考になることばかりで、以下で具体的な内容に触れていきたいと思います。

 2.内容

(1)成果を上げるために身に付けるべき5つの習慣

以下の5点が提示され、その詳細がそれぞれ2章~6章に記されています。

  1. 何に自分の時間がとられているか知る。残された時間を体系的に管理する。
  2. 外部の世界に対する貢献に焦点を当てる。仕事の過程でなく成果に精力を向ける。
  3. それぞれの状況下における強み、すなわちできることを中心に据える
  4. 最初に行うべきことを行う。優先順位を決定し、それを守る。
  5. 成果を上げる意思決定を行う。
①汝の時間を知れ

時間は他をもって代えることのできないユニークな資源で、時間こそ普遍的な条件です。

一緒に働く人間が多いほど、仕事や成果でなく、互いの相互作用により多くの時間が使われます

そこで、以下3点の時間管理に取り組む必要があります。

  1. 何の成果も生まない仕事を見つけ、その仕事を直ちに止める
  2. 自分がなすべき仕事に取り組めるよう、他の人にできることは任せてしまう
  3. 他人の時間を浪費していることを整理する。

 ただし、時間浪費の原因を容赦なく切り捨てていっても、自由になる時間はさほどおおくありません。

そこで、重要な仕事に当てるまとまった時間を確保し、重要でない仕事が浸食していないかと目を光らせなければなりません。

②どのような貢献ができるか

 成果を上げるためには貢献に焦点を合わせ、仕事から目を上げて目標に目を向ける、すなわち自らの責任を中心に据える必要があります。

いかに肩書や地位が高くても、努力に焦点を合わせたり、下に向けての権限を重視する人は、他の人の部下にすぎません。これに対し、新人であっても、貢献に焦点を合わせ、結果に責任を持つ人は、厳格な意味においてトップマネジメントと言えます。

貢献に焦点を合わせない組織は、腐って死んでしまいます

  • 組織は常に目的を持たなければならない。
  • 自らを変革できない組織は、明日への変化に生き残ることはできない。
  • 新しい地位の要求するものに応えて自ら変化していく能力が意思が欠如し、これまでと同じことを続けていけば失敗する運命にある。

また、貢献に焦点を合わせることによって、人間関係も生産的になります。

  • コミュニケーション:まず部下が自ら期待される貢献を十分に考える。その後で初めて、上司には部下の考える貢献についての有効性を判断する権限と責任が出てくる。
  •  チームワーク:貢献にに焦点を合わせることで、横へのコミュニケーションが生まれ、チームワークが可能となる。組織構造でなく、状況や要求に従って、自発的に協力して働く
  • 自己開発:なすべき貢献のためにはいかなる知識や技能を身に付け、強みを仕事に適用すべきか、いかなる基準をもって自分の基準とすべきかを考える。
  • 人材育成:貢献に焦点を合わせるならば、部下、同僚、上司を問わず、他人の自己開発を触発する。属人的な基準でなく、卓越性を要求する。
③強みを生かせ

 成果を上げるためには、利用できる限りの強み(同僚・上司・自分自身)の強みを使わなければなりません。組織の役割は、一人ひとりの強みを、共同事業のための建築用ブロックとして使うところにあります。

あらゆる分野で強みを持つ人間はいません。他人に成果を上げさせるためには、「彼とうまくやっていけるか」を考えるのではなく、「彼はどのような貢献ができるか」を問います。弱みに焦点を当てるのでなく、強みだけを意味あるものとするように、組織を構築しなければなりません。

その4原則は以下の通りです。

  1. 天才にしかできない職務を作らない。平凡な人が非凡な成果を上げるように組織する。
  2. 職務は、初めから大きく多くを要求するものとして設計する。その場合においてのみ、変化した状況の新しい要求に応えていくことができる。
  3. その人が現実にできることを評価する。一方で、強みに直接関係のない評価項目もある。人間性や品性はそれ自体で何事もなしえないが、それがなければ他のあらゆるものを破壊し、人を失格にしてしまう
  4. 強みを手にするためには弱みを我慢する。強みや実績を持つ者には機会を与える。逆に、成果を上げられない人間は異動させる。そうでないと他の者を腐らせ、機会を奪われている他者に不公正である。

自らの仕事においても、強みからスタートしなければなりません。

「何もさせてくれない」というのは言い訳にすぎず「何ができるか」という質問から始め、意識的に行動します。自分が得意であると知っていることを、自分の得意な方法で行うことによって成果を上げます。 

④最も重要なことから始めよ

成果を上げるための秘訣は、最も重要なことから始め、しかも一時に一つのことだけに集中することです。上方への貢献に焦点を当てるほど、まとまった時間が必要です。

また、力を集中するためには、もはや生産的でなくなった過去のものを捨てる必要もあります。古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法です。

そして集中できるエグゼクティブがあまりに少ないことは、「劣後順位(=取り組むべきでない仕事」の決定と、その決定の順守は困難だからです。優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気です。

その順位決定の法則は以下の4つです。

  1. 過去ではなく未来を選ぶ。
  2. 問題ではなく機会に焦点を合わせる。
  3. 横並びでなく独自に方向を決める。
  4. 無難で容易なものでなく、変革をもたらすものに照準を高く合わせる。

集中とは、「真に意味あることは何か」「最も重要なことは何か」という観点から、時間と仕事について、自ら意思決定を行っていく勇気のことです。

⑤意思決定とは何か

成果を上げるためには、あまり多くの意思決定を行わず、重要な決定に集中しなければなりません。

また、個々の問題解決でなく、戦略的・基本的なことに考え、概念的な理解に基づいて、不変のものを見なければなりません。

そして、意思決定のプロセスは以下の通りです。

  1. 「これは一般的な問題か、例外的な問題か」「何度も起こることか、個別に対処すべき特殊な問題か」を見極める。特殊に見える問題も、やがては新しい一般的な問題の第一号となるのではないかと疑う必要がある。
  2. 「その意思決定の目的は何か」「達成すべき最低限の目標は何か」「満足させるべき要件は何か」を明らかにする。意思決定は目的に適合していなければならない
  3. 「何が正しいか」からスタートする。最初から「誰が正しいか」「何が受け入れやすいか」という観点からスタートしてはならない。
  4. 「誰がこの意思決定を知らなければならないか」「いかなる行動が必要か」「誰が行動を取るか」「行動すべき人間が行動できるためには、その行動はいかなるものであるべきか」を問い、意思決定を行動に変える。新しい方針とは逆の行動が評価されるのであれば、その逆の行動こそトップが本当に望み、報いようとしている行動と受け取られてしまう。
  5. 自ら出かけていって、自らの目で確かめることは、意思決定の前提が有効であるか、陳腐化しており再検討の必要があるかを知る最良の方法である。

(2)成果を上げる意思決定とは

1つの分野に長い間関わりながら、自分の意見を持たないと、観察力の貧しさや頭の鈍さを疑われます

意見を表明する者に対しては、現実による検証について十分に考えることを求めなければなりません。そして「この仮説の有効性を検証するためには何を知らなければならないか」「この意見が有効であるためには事実はどうでなければならないか」を問わなければなりません。

判断を行うためにはいくつかの選択肢が必要であり、何が問題であるかについて正しい洞察を得ることができます。

相反する意見の衝突、異なる視点での対話、異なる判断の間の選択があることが重要であり、意見の不一致が存在しない時には意志決定をすべきではありません

意見の不一致が必要な理由は3つあります。

  1. 意思決定を行う者が組織の囚人となることを防ぐ唯一の手段。
  2. 反対意見だけが選択肢を与えてくれる。選択肢のない意志決定は博打である。
  3. 反対意見は、何にも増して想像力を刺激するために必要である。

したがって、成果を上げるエグゼクティブは意図的に意見の不一致を作り上げます。意見の不一致はもっともらしい決定を正しい意思決定に変え、正しい意思決定を優れた意思決定に変えてくれます。ほとんどの人が自分の見方が唯一の見方だと言う確信からスタートしていますが、一つの行動だけが正しく、他の行動はすべて間違っているという仮定からスタートしてはなりません

そして最後に、「意志決定は本当に必要か」を自問しなければなりません。何も意思決定しないという代替案が存在するからです。

何もしなくても何も起こらないのであれば、手をつけてはいけません。

意志決定には勇気が必要です。絶対にしてはならないことは、「もう一度調べよう」という誘惑に負けないことです。自らの決断力の無さのために、有能な人たちの時間を無駄にすべきではないのです。

とはいえ意思決定の意味について完全に理解しているという確信なしに意志決定を急いではなりません。

3.教訓

  • エグゼクティブの仕事は成果を上げることであり、成果を上げることは修得できる。
  • 成果を上げている者はみな、成果を上げる努力をしている。
  • 自分をマネジメントできない者は、他人をマネジメントできるはずはない。

以上のことをもう一度肝に銘じ、自分にできることは何かを考え目的意識を持って行動し、勇気をもって意思決定していこうと思います。そして、意思決定をしないという選択肢があることも心に留めておきたいと思います。

また、何か管理職としての威厳を示すために、こと細かい注文を付けたり、意味もなく話しかけたりすることは、自分が一切やっていないとはとても言えませんが、それが相手の時間を奪ってしまうことにつながります。

もちろん、コミュニケーションだったり、今後のための示唆だったりと、必要な指摘・会話はあります。今言うべきことか、個別の成果につながるか、組織の方向性に沿ったもので全体の底上げにつながるか、といったことは確りと意識し、自分が正しい行動を取れていたか後から振り返り、次の機会に備えたいと考えています。

ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち レジー著 regista13

 

1.はじめに

本書は、「ビジネス・教養系YouTuber影響力トレンドランキング」の上位陣の実名を挙げながら、何とも言えない居心地の悪さと日本の「教養」への不安を覚える人は少なくないのではないか、という文章から始まります。

mdpr.jp

これは、2022年のM-1グランプリで優勝した「ウエストランド」の1stラウンドのネタに通じるものがある、と直感的に思いました。YouTuberを全面的に支持できない人も一定数いて、だからこそウケたし、(それ以外のネタも含めて)笑った人は共犯者、という流れです。

www.youtube.com

以下では心に残った文章を引用しつつ、最後に自信の気づきを記します。

2.内容

(1)「ファスト教養」とは?

  • 立場が上の人の繰り出す話題についていくことができれば、自身の印象を良いものにすることができる。それによって、自分の仕事をスムーズに進められる。その先には収入アップや出世といった結果が見えてくる…こういった流れを生み出すためのフックとして、「教養」の重要性が各所で説かれている。
  • 「楽しいから」「気分転換できるから」ではなく、「ビジネス(つまりお金儲け)に役立てられるから、という動機でいろいろな文化に触れる。その際自分自身がそれを好きかどうかは大事ではないし、だからこそ何かに深く没入するよりは大雑把に「全体」を知ればよい。そうやって手広い知識を持ってビジネスシーンをうまく渡り歩く人こそ、「現代における教養あるビジネスパーソン

(2)不安な時代のファスト教養

  • 小林信三氏は「すぐ役に立つ人間はすぐ役に立たなくなるとは至言である。同様の意味において、すぐ役に立つ本はすぐ役に立たなくなる本であるといえる」と述べている。「すぐ役に立つ」を突き詰めたものは基本的には普遍性を失う。なぜなら、それはすなわち個別事情に最適化したものだから。
  • 変化の大きい時代で脱落しないために教養を学ばなければならない。そんなスタンスに立った場合、「人生を豊かにする教養」を悠長に学んでいる暇はない。「使えない」という恐怖に苛まれる中で、教養に触れる際にもビジネスにとって重要な「スピード感」「コスパ」が重視されるようになる。そういったビジネスパーソンのニーズと課題に対して過不足なくミートしているのがファスト教養。
  • たいていの「大雑把な情報」は、その生成過程においてそこに含まれる「正確さ」の一部がカットされている。とりあえずざっくり理解しておけばOK、コンテクストの深堀はコスパを損ねるという態度の強調はファスト教養の特徴
  • アーティストのような目線を身につけることができれば、自身の直感をベースに全く新しいアイデアを出せるのかもしれない。一方で、「ビジネスパーソンとしてアートを学ぶべきだから」といった動機でアートに触れている時点で「アーティストのような目線」を獲得するのは不可能だろう。
  • 仮に「それでも知らないよりはまし」といったスタンスで「勉強」を続けたとしても、そこで得られるのはユニークな発想につながる美意識とはほど遠い「大雑把な知識」だけになると思われる。
  • 「教養を身につけるべき」というテーゼは広く支持され、一方で「教養とは何か?」「教養を身につけるために何をすればいいか?」という問いに対する明確な答えがないからこそ不安が増大し、そこにつけ込むコンテンツが跋扈する…という悪循環が生まれてしまっている。

(3)自己責任論の台頭が教養を変えた

  • 「こちら側」と「向こう側」に線を引いて、「向こう側」に対する優越感をくすぐることに特化した態度が果たして「教養」なのだろうか。
  • 努力して何かを学ぶこと自体に咎められる要素は何もない。その成果が金銭的な対価として着実に個人に返ってくる社会のあり方は、1つのあるべき姿。成果を出すために世の中においてニーズのあるスキルに絞って勉強するのは戦略として正しい。それを進めるための効率的なやり方を志向するのは当然。
  • ただ、「自分が生き残ること」にフォーカスした努力は、周囲に向ける視線を冷淡なものにする。また、本来「学び」というものは「知れば知るほどわからないことが増える」という状態になるのが常であるにもかかわらず、ファスト教養を取り巻く場所においてはどうしてもそういった空気を感じづらい。

(4)文化を侵食するファスト教養

  • 手っ取り早く要点と要約を知りたい」という背景に目を向けると、「ファスト映画」が支持を集めたことについても理解が深まるはず。支持につながった「映画の結論をクイックに知って周りと話を合わせたい」という心理は、ファスト教養の「ビジネスに役立てるためにとりあえず話を合わせるネタが欲しい」という欲望と共通している。
  • 筆者の実感として、特定のジャンルに明るくなるためには、「はずれ」も引きながら体でその分野の空気を覚えていく必要がある。また、自分で見つけたという感覚自体がそのカルチャーにのめり込んでいくきっかけにもなる。しかし、もはやこういった考え方自体が古いものになっていると認識すべきかもしれない。
  • 「金を稼いでいる人こそえらい」というような考え方は、その対極にいる「金を稼いでいない人」を見下すスタンスにつながる。ファスト教養の世界には弱者の社会性を認める、底上げするといった発想は存在しえない。そこに結婚という制度が結び付くと、「自分が稼いでやるから女子どもはそれに従え」という家父長制の在り方、配偶者の自由を尊重しない関係性につながっていく可能性がある。
  • AKB商法は、好きな音楽を聴くシンプルな娯楽が、応援という名目のもとで「数字を上げる」という目的に向けた活動にすり替わってしまっている。本来は「ただ楽しむ」ためのものがいつの間にか数字で管理される行動に転化する構造は、教養が新自由主義的空間の中でファスト教養へ変貌していく流れに近いものがある。

(5)ファスト教養を解毒する

  • いわゆる「古き良き教養」にロマンを抱く人たち、もしくは文化を愛好している人たちは、とかく「ビジネス書」というだけで忌避する傾向がある。しかし、その発想は、すべての映画を名作から商業的に量産された作品まで同じ価値のものとして捉えるくらい乱暴である。
  • 何が書かれているか覚えているくらい体にしみこんでいて、読んだ時の感じ方を通して自分の状況を客観的に把握することができる。そういった領域に到達する書籍その他の情報をどれだけ保有することができるか。その世界に没頭する時間は「お金儲けにつながるか」といった視点が入り込めないものになるはずで、そのプロセスにおいて自分の内面に目を向けるこそが教養を身につける入り口
  • 繰り返すうえでポイントになってくるのは、能動的な「好き」という気持ち。好きな本だからこそ、負担を感じることなく繰り返し読める。そう考えると、この「好き」こそがファスト教養に対抗するうえで重要。お金のためには「好きか嫌いかはどうでもいい。むしろ嫌いでもいい。まずは読んでみる」のが大事であると説くのがファスト教養だとしたら、重要性がより伝わる。
  • 「既存の枠組みから自由になる」と「既存の枠組みの中で戦える知識の習得から逃げない」を並べて頭の中に持つことは、「結論をあらかじめ決めない」ということでもある。お金儲けにつながる、生き残るために使えるといった価値観を絶対視しない。一方で、古き良き教養の立場に立って「お金より大切なものがある」といった一見正しそうでも現実には即していない意見を全肯定しない。
  • 本来目指すべきは、「営業成績がすごい上にキルケゴールも知っている」状態。注意しないといけないのは、「営業成績を伸ばすためにキルケゴールを知る」ではないということ。現実の社会に対応しながら、現実を変えられるかもしれない考え方に思いを馳せる。2つの世界を行き来するイメージを持つことが必要。
  • マイケル・サンデルは「実力も運のうち」の結びにおいて、「自分の運命が偶然の産物である」と理解することから生まれる謙虚さが「われわれを分断する冷酷な成功の倫理から引き返すきっかけとなる」と述べている。「圧倒的な努力」や「強い意志」とは違うところで動いている「偶然」に心を開くことこそ、ファスト教養と決別するために求められる視点

3.教訓

「結論をあらかじめ決めない」という部分に非常に共感を持ちます。

知識を得るのは「古典」か「ビジネス書」かといった、二者択一の世界ばかりではない、一方を毛嫌いしない、ということを強く意識していきたいと思います。

周囲にも、必要な資格試験に向け、配布テキストではなくYouTubeを見て勉強する人もいます。人それぞれ、文字で勉強したほうが頭に入るという人もいれば、視覚情報のほうが理解しやすいという人もいるので、自分には合っているのは何かを自分で考えればよいだけのことだと思います。

上司にも文章で説明したほうが理解が進む人もいれば、いちいち文章にせずに口答で説明してほしいという人もいる、というのも同じで、自分で結論ややり方を決め打ちせずに、相手や状況に合わせて行動することが求められます。

このように、事象によってはファスト教養で事足りることもあれば、じっくり買ってきた本を読み込んで理解した知識が生きることもあります。まぁ、買ってきた本が期待外れだったことも一度や二度ではありませんが、そういう失敗を含めて経験を重ねることで、その時々の自分に合う本に巡り合う確率が上がってきているように感じます。

巷にあふれるファストな情報についての向き合い方や、最短距離を走ることだけが唯一の解ではないこと、頭の中をオープンに保つことが重要であることなど、いろいろ考えることのできた良本でした。

1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 伊藤羊一 著

 

1.はじめに

これまで、表題が命令形になっていたり、”ヤバイ”、”すごい”という言葉が入っているような本は、個人的には敬遠してきました。

しかし、いくつかの書店で平積みになっているので以前から気になっていて、ブックオフでセール特集の棚に並んでいたので手に取りました。

話し方やプレゼンの仕方のテクニックが書かれた本ではなく、聞き手の立場から見た受け入れやすさ、動きやすさに焦点が当たっています。また、最後の「実践編」では、相手の巻き込み方などサラリーマン検定的に有用な内容にも触れられていて、タイトルほどの威圧感はありませんでした。

2.内容

(0)序章

  • まず1つ気づいてほしいのは、そもそも、「人は、相手の話の80%は聞いていない」ということ。でも、それが当然。どんなにプレゼンがうまくなっても、これらの言うことを100%理解してくれる、なんてありえない。
  • ここで言うプレゼン力とは、人前で発表するスキルでも、話すスキルでもない。人に「動いてもらう」力。そのために必要なのは、「1分で話せるように話を組み立て、伝えよう」ということ。

(1)STEP1:「伝える」ための基本事項

  • 人に何かを伝える際、「そもそも何のために自分はここにいるのか?何のためにプレゼンするのか?」ということを明確に意識しながらできているか?なぜ意識しなければいけないかというと、それは「聞き手を動かすため」。
  • 「何のためにプレゼンをするのか」「聞き手はどんなイメージか」を考えた後、次に考えるべきは「ゴールは何か」。このプレゼンを通じて、「聞き手をどういう状態に持っていくか」「どこをプレゼンのゴールとするのか」を言語化する。
  • すべてのプレゼンは、ゴールを達成するためにある。聞き手のことを考え、聞き手をどういう状態にもっていきたいかを見定めてから、それを実行するために何をすればいいか、何を伝えればいいのかを逆算で考えていく
  • そもそも、「理解してもらう」というゴールがおかしい。伝える側が聞き手に、「理解したうえで、どうしてほしい」のか、君が動くのか私が動くのか、どうすればいいのか、ということを必ず考えなくてはならない。

(2)STEP2:1分で伝える 左脳が理解するロジックを作る

  • 「考える」とは、自分の中にあるデータや自分の外にあるデータを加工しながら、結論を導き出すこと。
  • 「悩む」と「考える」は、明らかに違う。「悩んで」いても結論は出てこない。この「無限ループ」を避けるためにも、機械的に「考える」=結論を出す習慣を作る。そのために自分に問う。黄金の質問は、「だから何?」「本当か?」「ファイナルアンサー?」。
  • プレゼンというのは、自分が伝えたいことを「伝えていく」行為ではなく、「相手の頭の中に、自分が伝えたいことの骨組みや中身を”移植していく”作業。
  • 主張と根拠を言うとき、聞いている人にとって、意味がつながっているとすぐにわかるようにすることが大事。この「主張と根拠の意味がつながっている」のがロジカルということ。
  • 意味が通じるかどうかは、聞き手が決めること。話すあなただけが理解できるのはダメで、聞き手がそう判断できるかどうかが大事。
  • たくさん話したくなるのは、調べたこと、考えたことを全部伝えたい!、頑張った!と思ってほしいという話し手のエゴ。でも、聞き手は、必要最低限の情報しかほしくない
  • プレゼンの場では、笑いはいらない。ビジネスで面白いのはロジック。相手は、あなたのロジックを聞きに来ている。

(3)STEP3:相手を迷子にさせないために「スッキリ・カンタン」でいこう

  • 私たちは、何か熱量を持って伝えようとするとき、ついつい、多くの言葉を使おうとする。ただ、聞き手が集中して聞いてくれていなければ、多くの言葉を使うと逆にノイズとなってしまう。
  • 資料を紙で渡して、1対1や少人数で説明する際にはこの限りではないが、それでも字が多くて読むのが大変な資料を渡すと、相手は資料を読むのに集中してしまうので、必然的にあなたの説明を聞かなくなる。話を聞いてもらうためには、資料の文字は少なく、すっと頭に入るようなものがよい。
  • 大人でも、少し難しい言葉を使うと、すぐに迷子になってしまう。迷子になってしまうと、すぐにチャンネルを変えられてしまう。専門用語以外は、可能な限り中学生でもわかる言葉を使って番組を作り、絶対に迷子にならないようにする。

(4)1分で動いてもらう

  • ピラミッドストラクチャーは、「①結論」→「②根拠」→「③たとえば」の3段で作る。
  • まず主張と根拠のピラミッドを作りロジックで「左脳」を納得させ、次に写真や図や「たとえば」という言葉を使ってイメージを創造させて「右脳」を刺激する。これにより聞き手は話を理解し、よりこちらに思いを向けてくれる。
  • 自分の伝えたいことを、一言のキーワードで表す」。そうすることで、その一言に自分の伝えたい内容を包み込む。
  • 人前で話すときのポイントは4つ。
  1. 視線:しっかりと聞き手を見る
  2. 手振り:多少動きをつける
  3. :「相手と対話するように」声を届ける
  4. 間合い:話の区切りで、普段より3秒ほど長く間をとってみる
  • 優れたビジネスリーダーは、「メタ認知力」が優れている。ビジネスリーダーは人を巻き込んでいく必要がある。その時、自分の都合や思いだけでは周囲がついてこない。自分自身の行動や振る舞い、言葉などを相手に合わせて少しずつ修正していくことで、結果として周囲もフォロワーとしてそのリーダーについていくことになる。
  • 「根回しやアフターフォローをすることはカッコ悪いことだ」と思っているのは仕事の本質から外れている。つまり、あなたはカッコいい・悪いで仕事をしていないか?ということを問いたい。

(5)伝え方のパターンを知っておこう

  • 聞き手は、あなたが望むゴールにいない。その聞き手に変化を促し、動かしていく。それは簡単なことではない。あなたが心の底から強く思うことを、情熱をもって自分の存在をかけて語るからこそ、聞き手は心から動かされ行動に移す
  • 「正しいことを言うだけ」では相手は動かない聞き手が、あなたが設定したゴールまで動いてはじめて、あなたの目的は達成する。つまり「動かしてなんぼ」の世界。成果はそれだけで測られ、それ以外のことは重要ではない。

(6)実践編

  • まず大事なのは、相手の問いが何なのかを認識すること。まずは落ち着いて相手の質問を聞いて、YES/NOで答えればいいか、アイデアを聞かれているか、懸念点を答えればいいのか、といった答え方をとらえる。
  • 会議では、またビジネスパターンのスタンスとしても、「ポジションを取る」ことは大事。誰かが何かのポジションを取らないと、まったく議論は進まない。なんとなくその場の空気が物事がよくない方向に決まってしまうこともある。
  • 前向きな何かを作り出す部分については、上の職階の人は、部下たちの意見を求めている。上司である自分が何か意見を言ったら、すべてそう決まってしまうことこそ怖いことはない。だから、部下をしっかり自分のスタンスを明確にし、上司に応えるべき。
  • 突っ込みたいという相手には、突っ込んでいただく。それでその意見も取り込んでいく。そうすれば「共同作業」になる。つまり「共犯」になるので、否定しづらくなってくる。そういう道をあらかじめ作ってコントロールする。
  • 「伝わらない」「わかってくれない」「相手がきょとんとしている」ということのきっと7割くらいは「声が小さい」というただそれだけの理由ではないか。目の前の人、自分から一番遠い人に、「声」というボールを届けるような意識で話してみる。
  • 1対1で提案なり相談するのは、一発勝負の場というより「対話」しながら「結論を一緒につくれる」機会。だから完璧にプレゼンしようとするのではなく、しっかり対話ができる場を持ち、一緒に結論を作っていくことを目指す。
  • 「うちの上司は、何を言っているかわからない」と匙を投げてしまってはいけない。そんな場合は、上司の言いたいことを整理するのも部下の役目。そのためのやりとりはあなたが主導権を握るとよい。
  • 上司だから言うことを聞く。どうせ自分の意見は聞き入れられない。だから黙って上司の意向を待つ。これではあなたは単なる作業者になる。そうではなく、しっかりと自分の意見を言う。それが間違っていてもいい。これが上司との信頼関係をつくるうえで重要。「配慮はしても、遠慮はするな」ということ。
  • 自分の意見をちゃんと持つことが主観。これを伝えることで対話が始まる。そのうえで、相手の意見と戦うのではなく、上司はどんな意見を持っているか、まぜそう言っているのか、自分の意見とどう異なるのか、どこをどうすると合意できるのか、といったことを考えるのが客観の自分。
  • 営業の仕事は、自分の会社の商品やサービスを売り込むことではない。相手の課題を解決するのが営業の仕事。ここに気づく人は営業の成績が上がるし、かつお客さまの信頼を得ることができる。まず、相手のニーズに応える。結果として信頼関係が生まれる。それが取引に結び付く。

3.教訓

この本の直前に読んでいたのは、「群集心理」でした。

びっくりしたのは、その本から得た「教訓」に書いたことと、かなり似た内容だったことです。

bookreviews.hatenadiary.com

個人的には、1分で話すことにも伝える技術にも焦点が当たっているわけでもないように感じており、もっとソフトなタイトルにしたほうが内容とも語り口ともマッチするように思います。

そこは、読者を振り向かせるように訴求するには仕方ないのかなと感じますが、私と同じようにタイトル名だけで毛嫌いして読んでいない人がいるかもしれません。

そこを横に置いて一度手に取れば、相手に単に理解してもらうだけでなく、相手に動いてもらうことがゴールであることがよくわかる良本でした。

www.yomiuri.co.jp