管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

課長経験者が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である クリスティーン・ポラス著

1.はじめに

原題は、"Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace"です。

考えるわけではなく、「マスターする」「職場での公約」と、邦題より強い表現です。

本書の「はじめに」でも、職場で誰かに無礼な態度を取られていると感じた人は

  • 48%の人が、仕事にかける労力を意図的に減らす
  • 47%の人が、仕事にかける時間を意図的に減らす
  • 38%の人が、仕事の質を意図的に下げる

という調査結果が出ていると記載されており、礼儀正しさは職場での死活問題です。

2.内容

(1)なぜ礼節ある人は得をするのか

  • どの場合でも、重要なのは、その言動が本当に相手に対する尊敬や配慮を欠くものだったかどうか、ではない。重要なのは、された方がどう感じたか。尊敬や配慮を欠く扱いを受けたと相手が感じるかどうかだ。言動が相手の目にどう映ったかが問題となる。
  • 原因はグローバリゼーションなのか、あるいは世代間ギャップや、職場環境や人間関係の変化、テクノロジーの進歩なのか、それは明確ではないが、ともかく現代の私たちが、自分にばかり目を向け他人にはあまり目を向けないというのは事実。そのせいで、他人の扱いが無礼なものになってしまい、結果として皆に害をもたらしている。
  • 職場に無礼な人がいると、そこで働く人たちの心の健康にも悪影響があることが調査によって明らかになっている。当然、ストレスには他の要因もあり、私生活で無礼な人に会うこともあるので、そのストレスの影響もあるだろう。だが、それを考慮したとしても、職場の無礼な人たちが心の健康に与える悪影響が大きいことは疑い得ない
  • ひどい叱責を受けた原因が本人の能力不足にあったとしても、また重大なルール違反にあったとしても、それはまったく無関係で、ともかく中の誰かが誰かをひどく叱責するだけで、その企業に対する印象は極端に悪化する。事情はどうであれ、無礼な態度を見てしまうと、顧客はその企業に悪い印象を抱くことになる。
  • 誰かの無礼な態度に接すると、認知のための資源が奪われてしまう。その結果、作業の能力も創造性も下がる。このことは、おそらく仕事の業績にも悪影響を及ぼすだろう。たとえ最大限の力を発揮したいと望んでも、無礼な態度に注意を奪われ、心を乱されると、それができなくなってしまう。
  • 集団の中にひどい態度、無礼な態度を取る人間がひとりでもいると、それによって生じた悪感情は集団内に広がり、態度の悪い人は増える。中には攻撃的、好戦的とも言える態度を取る人も現れる。
  • 他人に優しく接している人、気分の良い接し方をしている人の方が、声がかかりやすい。人に何かを頼まれる機会が多ければ、能力を証明する機会も多くなるし、良い評判も広まりやすくなる。そしてますます選ばれる機会が増えていく。こうして、「能力はあるけれど無礼な人」との差は時間が経つごとに開いていく。
  • 礼節ある態度とは例えば、人に感謝する、人の話をよく聞く、わからないことは謙虚に人に尋ねる、他人の良さを認める、成果を独り占めせずに分かち合う、笑顔を絶やさない、といったことを指す。こうした態度は業績の向上にも役立つ。反対に、無礼な態度は、仕事で成果をあげる上で足枷になってしまう
  • 誰かに無礼な態度を取ること、取られることを、「自己完結的」な体験だと思っている人は多い。直接やりとりをした当事者どうしで完結することだと思っている人が多い。だが実際には、無礼さはウイルスのように人から人へと伝染していく。その後、関わった人たちすべてに悪影響を与え、人生を悪い方に導くことになる。
  • 無礼な言動に触れて感情が強く動かされると、そのことは決して忘れられない。無礼な態度を取っていた人の姿を見るだけで、また無礼な態度に触れた場所に行くだけで、その時の感情が蘇ってしまう。

(2)あなたの礼節を高めるメソッド

  • 行動の意図とその影響には差があることが多い、というのも注意すべき問題。あなたが同僚に対し、(これから良くなってほしいという願いを込めて)批判的な意見を述べたとしよう。言った方が善意でも、言われた方はただ、自分は過小評価されたとしか思わないことが多い
  • 他人が見て良いと感じる行動がどういうものかは教えてもらわなければなかなかわからない。どういう状況であなたが何をすれば良い結果につながるのか。何をすれば人が喜ぶのか。それを知るのは非常に大切なこと。
  • フィードバックは批判のための批判になってはいけない。何か少しでも改善が見られれば、それを伝えることも大切。
  • 睡眠が不足すると、理解力も低下してしまう。物事を正しく理解できず、状況に正しい対応ができなくなる。他人の感情や意図を正しく読み取る能力も下がってしまう。他人の顔の表情や声の調子から、何を思い、何を考えているかを感じ取ることができなくなる。また自分の感情表現にも異常が起きる。顔の表情や声の調子がどうしても否定的な感情を表現するものになりやすい。
  • 管理職やチームリーダーを務めているのなら、部下やメンバーと良好な関係を築くには、まず温かい人になるべき。どうしても自分が有能であることを早く証明したいという気持ちに駆られる人が多い。しかし、一度温かい人だと感じると、その人に対する評価は上がりやすくなる。温かい人になることは、自分の影響力を高めるための早道。温かい人は信頼を得やすい。信頼が得られると、自然に周囲から情報やアイデアが多く集まってくる。
  • 相手が温かいかどうかの判断を下すのに要する時間は、わずか0.033秒という短さだ。相手が温かさに欠ける人だということ、無礼な人だということを人間は本当に一瞬の間に感じ取るし、一度、そういう判断を下すと、その人を簡単には許さない。
  • 笑うことは自分だけでなく、周囲にいるすべての人に影響を与える。何も言わなくても、笑っているだけで、人を安心させるし、親近感も抱かせる。何より人を元気づける。
  • 存在を認められていると感じることはとても大事。そう感じるかどうかは、ほんの一瞬の態度で決まることが多い。つまり、ほんの一瞬の態度が良ければ、相手を元気づけることができるということ。元気づいた人はきっと仕事に熱心に取り組むだろう。反対に、一瞬の態度が悪ければ、それだけで相手は認められていないと感じてしまう。
  • 話をよく聞いていれば、それだけ重要な情報、アイデアが手に入りやすくなる。あなたがもし管理職で、部下に「この人は話を聞く気がないな」と思われたら、何か良いアイデアがあっても伝えようとはしないし、役立つ提案もしないだろう。
  • 悪いところがあっても、気を使って言わないのは、その人を下に見ることであり、侮辱であるばかりか、必然的に失敗へと導くことでもある。自分より下だと思っている人には、はじめからあまり期待をしない。だから、正しいフィードバックもしない。その結果、相手が何か失敗をすれば、自分より本当に下であることが証明されたと感じてしまう。そんなことをしていては、組織全体の業績は決して上がらないだろう。
  • 職場で礼儀正しくあるためには、微笑むだけでは不十分で、他にも必要なことはたくさんある。大きくわけて次の5つ。
  1. 与える人になる
  2. 成果を共有する
  3. 褒め上手な人になる
  4. フィードバック上手になる
  5. 意義を共有する
  • 良いリーダーはスポットライトの下で自ら輝くが、偉大なリーダーは、自分だけでなく自分の下にいる人たちを輝かせる。他人の能力や努力を素直に正当に評価するような謙虚さが重要。誰もが他人を素直に評価するような環境では、もともと持っている人間性、能力を超えるような成果を上げる可能性が高まる。
  • 人は良い仕事をしたときに上司から感謝の言葉をかけられるだけで自尊心が高まり、自信を深めるという。これは他人を信じること、喜んで人を助けようとすることにもつながる。
  • まず大事なのは、フィードバックを受ける側になる人をよく知ること。そしてフィードバックを受けたとき、彼・彼女がどういう感情になるかをしないしなくてはいけない。フィードバックを与える際、重要なのは、常に未来に目を向けること。最終的には、その人がこの先、前進するためにはどうすればいいのかがわらるようにしなくてはならない。
  • 人の心をつかむには、努力、やる気、成果を必ず認め、褒め、報いる姿勢を見せる必要がある。一人ひとりのサクセスストーリーを必ずチーム全体で共有する。物事が前に進んでいることを皆が認識できること、皆が自分のいる意味を感じられることも大切。リーダーが必要に応じ、自分の時間とエネルギーを惜しみなく注ぎ込むようにする。
  • メールを書く時には、相手が受け取るのは書かれた文字だけである、ということに注意する。一度に伝えられる感情はひとつか、せいぜい2つ。口頭でのコミュニケーションで非常に多くの情報を伝えてくれるボディランゲージや、声のトーンの変化などは、そこには一切ない。つまり、伝えようとしたことが誤解される、あるいは伝わらないという危険性が非常に大きくなる。
  • メールの使い方で何よりも良くないのは、直接会って伝える必要があることをメールで伝えてしまうこと。微妙な問題、揉める恐れのある用件などにはメールを使ってはいけない。
  • 特にリーダーは、勤務日、勤務時間であっても、送ったメールにすぐに返信があると期待してはいけない。上司が即座の返信を要求する人だと、部下は気が散り、ストレスをためることになる。メールの返信に追われて重要な仕事に集中できなくなれば、生産性は下がるだろう。

(3)無礼な人に狙われた場合の対処法

  • 同僚に無礼な扱いをされた場合、相手と話し合うべきか否かを迷う人は多いだろう、そういうときは次の3つのことを問いかけてみてほしい。3つの問いへの答えがすべてYESだったら、相手と面と向かって話をする
  1. 加害者となった同僚に何か言い返しても、身体的な危険はないか
  2. その無礼なふるまいは意図的なものか
  3. その人が無礼な態度を取ったのははじめてか
  • 3つの問いへの答えが一つでもNOだった場合は、相手と直接話し合ってはいけない。そして、その後、相手と接触する際には、4つのことに注意する。
  1. 会話を手短にする
  2. 相手にとって有用と思えることだけを話す
  3. 友好的な態度を保つ
  4. 常に毅然とする
  • 「この逆境はあなたにとってどういう意味があると思うか」。人間にとって重要なのは、自分の置かれた状況を自分でどう解釈するかだと考えているからこう尋ねる。あなたに対して無礼な態度を取る人間がいるとする。そのままでは何もいいことはない。ただ、その状況から何か学べることはないか、と自分に問いかけるだけで違うだろう。
  • たとえ職場で無礼な扱いを受けた場合でも、仕事以外の活動が充実している人はそうでない人に比べ、健康を維持しやすい。それによって、自分の人生が充実しているという認識、感情が得られる。会社を出た時に何をすれば自分が幸せになれるかを考え、何か見つかったらすぐに始めてみよう。
  • 忘れてはならないのは、決めるのは常に自分だということ。ここで無礼な人間に出会ったことをどう解釈するかを決めるのも、無礼な態度にどう対処するかを決めるのも自分。あなたはどういう人になりたいのか、無礼な扱いを受けたからといって、このまま萎縮してしまうのか、それとも、さらに大きくなっていきたいのか。よく考えてみよう。

3.教訓

今の職場は、周囲に不機嫌な人が本当に多いです。電話相手の営業担当者を、今後も相談したいとはとても思えないような口調で突き放したり、部下から提出された書類を「これじゃ全然わからん」と一刀両断したりと、心理的安全性とは程遠い世界です。

本書にも記載のあった通り、自分自身が直接怒られているわけでもないのに、今後同じような目にあうかもしれないと想像したり、そんなことも知らないのかと見下されるのではと考えたり、萎縮するようなことが頻繁に発生しています。

しかしその状態をどう捉え、どう対処するのか決めるのは自分です。世の中、常に追い風が吹いているわけではなく、むしろ順調に物事が進んでいかない割合の方が高いと考えています。その時、「この逆境は自分にとってどんな意味があるのか」を考えることは、そこで自分がどう振舞えばよいかを決めるきっかけになります。それだけでなく、将来振返ってみたときに、あの時にこういうことがあったら今の自分がある、と思えることにもつながります。

無礼な人がいることの弊害はよく理解できたので、まずは自分がそうならないと考えるだけでなく、相手から見ても「礼儀正しさ」を認められるようにするにはどうしたらよいかもあわせて考えられる人を目指したいと思います。

また、最後のほうに、「仕事以外の活動が充実している人は、自分の人生が充実しているという認識、感情が得られる」という話もありました。私自身もキャリアコンサルタントの勉強をして、社外の友人が出来たことで、すごく実感を持ってわかる感覚です。たまたま、先日、ロッチのコカドさんも、ミシンに出会って生きるのが楽になった、という記事を読みました。それなりに有名になった芸能人でも、そういうことを考えるんだなと、意外感がありましたが、少し親近感も覚えました。

www.huffingtonpost.jp

移動する人はうまくいく

1.はじめに

結論から言いますと、自分にとってはなかなか実践が難しい本です。

本に記載されていることを一冊まるまる取り入れるのはどの本でも難しいのですが、本書は中でも上位に来ると思います。日々の生活があって、配偶者がいて、子供もいて、という状態で、そんな簡単に引越や独立ができるものではありません。

著者は子供がいても海外に移住していると記載していますが、あくまでレアケースだと感じます。

ただ、同じことを目指す人がいても否定はしません。私も、生まれ変わって学生時代に本書を読んでいたら、社会に出るにあたりこの考えを目指していたかもしれません。

それが今はできないのを言い訳というのかもしれませんが、そう思われても仕方ないのかなと思います。ただし、本書のような考え方も理解できる、という部分は何点かあり共感しますので、あえて感想を記載したいと思います。

2.内容

(1)なぜ、移動する人はうまくいくのか?

  • 自分の感覚を取り戻すためにも、センサーを強制的に再起動せざるを得ない環境に身を置くしかない。そのときに有効なのが、行ったことのない所に行くこと。全く違う環境に行くこと。過去の常識が通用しない場所に行くことで、人間が本来持っている感覚が蘇ってくる。その結果、自分の好き嫌いがわかるようになり、自分が本来、やりたいことが見えてくる。
  • 私たちの人生に制限をかけてきたのは、安定を求める思考だ。その結果として定住があり、そこから生まれた権力がまた安定を欲するように洗脳していくという悪循環。この悪循環を打破するには、とにかく移動するしかない。現状維持を強く求める私たちの人生を強制的に変えてくれるのが移動

(2)なぜ、移動中はインプット&アウトプットがはかどるのか?

  • 多量のインプットにより、今まで知らなかったことを知るようになり、広い地図が手に入る。良質のインプットにより、読解力が身につくから詳細な地図が手に入る。また、このようにインプットを質、量ともに増やしていくことで、脳の中身を総取っかえできる。
  • 人生はアウトプットそのものだということを忘れないでほしい。行動、結果といったものがすべてアウトプット、ただ、アウトプットはインプットがあってはじめて成立する。

(3)なぜ、移動すると行動力が上がるのか?

  • 「引越すらできない者は、人生が変わらない」と思っているし、いつもそう言っている。それくらい引越は人生にインパクトを与える。なぜなら、人生は行動がすべてだから。そして、その行動を決めるのは環境だから。まずは「移動」が先であり、一番、人生を変えるのに手っ取り早くてインパクトがあるのが引越だということ。

(4)なぜ、移動する人は仕事にもお金にも恵まれるのか?

  • 「選択肢を増やす」ということを考えたときに会社員が最悪なのはわかるだろう。「誰と働くか」「どこで働くか」「いつ働くか」が自分で選べないから。これの何が怖いかというと、日本社会ではそれらが選べないという異常事態が当たり前のこととされていること。
  • 副業でうまくいく人もいるかもしれないが、それは意志の強い一部の人だけ。私は凡人は意志の力を信じてはいけないといつも教えている。だから、転職も副業も手を出すだけ時間の無駄。
  • 今の時代は、1つのことしかできなければ、あっという間に稼げなくなってしまう。だから、普段から移動を意識することで変化への対応に優れた人間に変わっておこう。人間は環境に適応する生き物だから、いつも良い環境にいれば必ず良い結果が生まれる。「何」をやるかではなく、「環境」を徹底的に意識する。
  • 移動すると、当たり前が当たり前じゃなくなる。他人と違う視点が手に入るから他人と違う人生になる。結局、私たちの脳はいつも同じ場所にいると、何も考えなくなり、何も感じられなくなる。そして不感症になっていく。「日常が感覚を麻痺させる」。

(5)なぜ、移動すると良い人間関係が増えるのか?

  • あなたの周りにいる人の大半はあなたの過去を知っているわけで、彼らはあなたに「過去のあなた」を期待している。ということは、「過去のあなた」と整合性のない行動や言動をとれば、反発を食らうことになる。反発を食らいたい人はいないから、無意識に「過去の整合性」を取る人生を生きているのが大半。
  • キャラクターを変えないまま、行動を変えようとするのは無理があるし、「できない自分」を突き付けられていくだけでどんどん苦しくなっていくだけ。だから、まずやるべきことは、キャラクターのリセット。過去にコントロールされない環境に移動してしまえばいい。
  • どの環境にいるかによって人生が決まる。そして、一度、ある環境に入ってしまえば、キャラクターが設定され、人生が決められていく。ということは、私たちがやるべきは、環境を選ぶ自由をいつも持っておくこと
  • 知らぬ間にその環境におけるポジショントークを強いられ、人生の主導権を他人に奪われてしまうかもしれない。では、選択肢を増やすためにやるべきことは何かというと、「知識と経験をアップデートし続ける」しかない。そうすることで、選択肢がどんどん増えていく。

(6)移動体質をつくる30のアクションプラン

  • レスポンスが速いだけで、相手に安心感を与えることができる。レスポンスが無ければ不安になるのが人間。すぐにイエスを言えるかは、自分の利益だけを考えていない証拠。逆に、すぐにイエスが言えないのは、得かどうかを計算している証拠。当然、自己利益しか考えていない人は信用されにくい。
  • 良い人生は良い人間関係で決まる。そのためにも意識してほしいのが、コミュニケーションコスト。簡単に言えば、「めんどくさい奴だと思われないようにしろ」ということ。
  • いつもと違う通勤、通学経路にする、もしくは時間帯を変えるだけでもいい。とにかく、毎日、「自分の当たり前」を破壊していこう。そうすることで脳が覚醒し、体に感覚が戻ってくるだろう。
  • 結局、人はリアリティを感じることでしか行動できない。そこにリアリティを感じたら、その生活を維持するための稼ぎ方が見えるようになってくるから。結局行動しないのは、理想より現状のほうにリアリティを感じているだけだから。
  • 結局、「人生は出会いで決まる」。良い出会いが欲しいのなら、教養のレベルを上げないと難しい。自分のレベルと同等レベルの人としか出会えないのが、私たちの生きている世界。
  • 「なんでもいいから社会貢献をしよう」。なんだかんだ言っても、他人の役に立つことが、一番幸福度が上がる。なんでもいいから他人に役立つことをやると、メンタルも安定する
  • 人生はどんどん動くことで変わっていく。圧倒的に変化する。せっかく本書を読んだのだから、どんどん移動できる「身軽さの重要性」に気づいてほしい。そこで大切なのが「見切り発車」。
  • 「他人の目」を気にしても、いいことはない。そもそも他人があなたのことをどう思っているかなんてわからないし、コントロールもできない。

3.教訓

確かに、同じ環境、同じ場所、同じ仕事をしていたのでは、見える世界が決まってくるということは実感としてもよくわかります。私も10年超、立場や役職は上方遷移したものの同じような仕事をしていて、これでいいのかと思い始め、異動願いのような形にしたのも、本書を読んだ後に考えると、いい選択だったのかもしれません。

ただ、異動直後は大変だったし、今でも周囲の人に聞きながら試行錯誤して進めています。しかし、これはある意味いい勉強の機会が得られているとプラスにとらえることもできると思います。

「自分が苦労した経験がないと、誰かにそういう相談をされたときに、深みを持って対話することができない」と、ある方から教わりました。

最後の30のアクションプランの中には、「悩まない、迷わない、反省しない」という記載もありましたが、ときどき時間を取って自身を振り返って、今後につなげていくことも必要では、と考えています。

幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない ラス・ハリス著

1.はじめに

知人からの紹介を受け、読み進めました。

原題は、”The Happiness Trap”です。本文中にも「幸福の罠」と何度か出てきます。

しかしながら本書でいう幸福は、一般的に想像する幸福とは異なり、心理的成功、内面的な成功を指すものと捉えています。実際、日本語の副題としては「マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門」とあり、もともとはメンタル不調者へのセラピーがベースになった考え方で、本書の指す「幸福」の意味は、「豊かな、満ち足りた、意味ある人生」です。

そして、幸福以上に登場する言葉は「思考」です。具体的なマインドフルネスに関するエクササイズ以外の、理論や考え方については、「思考は現実化する」を彷彿とさせるな、と感じながら読みました。

上述の通り、少しタイトルと内容は合致していないように感じますし、直訳っぽさがところどころにあり読みにくい箇所もありましたが、全体として記載されている主旨自体はシンプルであり、よく理解することができました。

2.内容

(1)なぜ幸福の罠を仕掛けてしまったのか

  • 自分の周りの人々が皆、一見幸福そうに見える。ほとんどの人は、内面の思考や感情の葛藤を正直に表に出すことはない。彼らは「毅然とした表情」や「くじけない態度」を保とうとする。心で泣いて、表では明るい表情の化粧でおどける道化師と同じ。
  • 多くの人が悲嘆を受け入れることを拒否する。悲嘆を感じるよりも何かの行動をしてしまう。だがいくら悲嘆を追いやっても、それは心の奥深くに留まり、再び戻ってくる。ちょうどボールを水中に沈めているようなもの。押し沈めてる限り水面に現れないが、手が疲れてボールを話すとすぐに浮かび上がってくる。自分の感情に向き合い、それを悲嘆の自然なプロセスの一部であると認めることが、悲劇的な出来事を折り合いをつける唯一の方法。
  • 経験回避とは、望まない思考や感情、記憶を(たとえそうすることが危険を伴い、無意味で代償が大きい時でも)避けたり、追い払おうとすることを言う。私たちは幸福になるために嫌な感情を排除しようとする。だが排除すればするほど、感情は再生産される。この事実を感覚的に理解することは大切。

(2)あなたの内面世界を変える

  • ①思考=頭の中の言葉、②イメージ=頭に浮かぶ姿、③感覚=体の中に起こる感じ、この区別をおぼえておくことはとても大切。
  • 人間は思考に大きく依存している。思考は私たちの人生について、またそれをどう生きるかについて教えてくれる。私たちがどのような存在であり、そしてどのような存在であるべきか、いかに行動し、何を避けるべきかも教えてくれる。だが、思考はあくまで言葉でしかない。このため、しばしば「思考」を「物語」と呼ぶ。
  • 自分の思考が事実かどうかを考えるのは時間の無駄。時にはそれが必要な時もあるが、多くの場合は意味がなく、莫大な時間を費やすだけ。それよりも、「この思考は自分の役に立つだろうか?自分の望む人生を実現する行動をとらせてくれるだろうか?」と問いかける方がはるかに有益。思考がプラスに働くなら注目すべきだが、そうでないなら脱フュージョンしよう。
  • フュージョンの目的は、不快な思考を取り除くことではなく、そのあるがままの姿-単なる言葉の羅列であることに気づき、それと格闘するのを止めること。思考は時にすぐに収まり、時にしつこくとどまる。あなたが最初から思考を追い払えると思っているなら、失望とイライラを引き寄せているようなもの。
  • 嫌な思考や感情を変えたり避けたり、追い払おうとせずに、それを受け入れることを目指す。アクセプタンスとは、不快な思考や感情を好きになることではない。ただそれらと格闘するのをやめるだけ。変化や逃避、除去に無駄なエネルギーを使うのをやめれば、もっと有効なことに使用できる。
  • アクセプタンスとは、しっかりした足場を見つけるようなもの。自分の足がどこにあり、足下がどんな状態かを判断すること。その場所が好きかどうか、そこに止まっていたいかどうかは関係ない。一度確かな足場を見つけたら、安全に次の一歩を踏み出せる。自分の置かれた現実を受容すればするほど、それを変える有効な行動を起こせる
  • ラジオの音は聞こえていてもまったく注意を向けていない状態。脱フュージョンの目的は、思考においてこれと同じ状態を作ること。思考が言葉の連なりであることを知ってしまえば、それを背景のノイズとして扱うことができる。
  • ある感覚や衝動が不快だからといって、それが悪いものだということにはならない。感情自体に悪いものはない。ほとんどの場合、不快な感情が起こった理由は大して問題ではない。問題なのは、それに対するあなたの反応。感情はあくまで感情にすぎない。いちいち分析することなしに受容できれば、多くの時間と労力が節約できる。
  • 「拡張」は、基本的には感情のための居場所を作ってやること。不快な気持ちに十分なスペースを与えてやれば、それらはそれ以上私たちを張り詰めさせたり、重圧をかけたりはしない。
  • 思考の存在は認め、しかし注意は向けない。家の前を通り過ぎる車のように扱う。車が通ることは知っているが、通りかかる度に窓の外に視線を向ける必要はない。思考があなたを捉えたら、気を取られたことを自覚し、それまでしていたことに注意を戻せばよい。
  • 拡張の基本ステップ
  1. 自分の気持ちを観察する
  2. 息を吹き込む
  3. 居場所を作ってやる
  4. 存在を許してやる
  • 忘れてはいけないのは、感覚を排除したり変えようとしたりしないこと。それが自身で変わるのであれば問題ない。変わらなければそれもよし。変えたり追い払ったりするのは目的ではない。目的はそれらの居場所を作ってやること。好むと好まざるとにかかわらず、そのままにしておいてやること。
  • 思考する自己はタイムマシンのようなもの。常に私たちを過去や未来に連れ出す。私たちは心配することや将来の計画、未来の夢想、過去の出来事を蒸し返すことに莫大な時間を使う
  • 「接続」とは、あなたの「今・ここ」体験にフルに集中すること、この瞬間に起こっていることと完全につながること。接続は観察する自己を通して起こる。それは試行する自己の影響を受けたり気をそらされたりすることなしに、私たちを「今・ここ」に完全に集中させる。観察する自己はもともと判断しない
  • 退屈やフラストレーションを感じたら、それらに居場所を作ってやり、作業に注意を戻そう。思考がわいてきてもそのままにし、やっていることに再び意識を向ける。意識がさまよいだしたら(必ず何回もさまよう)心に感謝を捧げ、注意を妨げたものにちょっとの間注目し、自分がしていることに意識を戻す。
  • いつも自尊心を保つ努力を続けていると、自分の価値から遠ざけられてしまう。高い自尊心はほんのちょっとの間、幸福な気分を味わわせてくれるかもしれないが、それを保とうとする努力はあなたを疲弊させる。心の進化の仕方のせいで、「私は駄目だ」という物語は繰り返し起こる。

(3)生きるに値する人生を創造する

  • 価値を発見するためのシンプルなエクササイズがある。自分が80歳になったつもりで、人生を今日一日の出来事のように振り返ってみよう
  1. 私は・・を恐れることにあまりに多くの時間を費やしすぎた
  2. 私は・・のようなことにはほとんど時間を使わずにきた
  3. もし時を戻せるなら、今までやらなかったことで、何をするだろうか
  • 「これが私の価値かどうかわからない」という悪魔は、自分の答えを疑わせることによって、自身を弱めようとする。これに対処する方法は、自分に以下の質問をすること。
  1. もし奇跡が起こって、誰からでも全面的な承認を得られるとしたら、自分の人生で何をし、どんな人間になろうとするだろうか?
  2. 他の人の価値判断や意見から自由だとしたら、今とどのように違うことをするだろうか?
  3. 自分の葬式に集まった最も大切な人々の会話に耳を傾けられるとしたら、どんな言葉を聞きたいだろうか?
  4. 余命があと1年だとして、どのような人間としてふるまい、何を成し遂げたいだろうか?
  5. あと数分しか生きられないとしたら、携帯から誰に最後の電話をし、何を告げるだろうか?あなたにとって一番大切なものとは何だろうか?
  • あなたよりも死者のほうがうまくできるような目標設定をしないようにしよう。何かを食べるのをやめる、あるいは落ち込むことをやめる、何かをやめること、やらないことは死者のための目標だ。これらを生きている人間のための目標(生きている人間のほうがうまくできること)に変えるために、「もし私がこの行動・感情・思考を完全にやめたら、私はそれに代えて何をするだろうか?どんなふうに自分の行動を変えるだろうか?と問いかけよう。
  • いい気分に必要以上に囚われてはいけない。それをおいかけることを人生の目的としてはいけない。いい気分はあなたを訪れ、そして去っていく。他の感情と同じ。それがやってきたら楽しみ感謝しよう。しかし、それにこだわらないこと。その意志に任せ、来て去っていくことを許そう。
  • 何かに挑戦しなければならなくなった時、心はそれをやらない理由をいくらでも思いつく。「疲れている」「難しすぎる」「失敗するに決まっている」「値段が高すぎる」「時間がかかりすぎる」「ひどく落ち込んでいて無理だ」等。しかし心配はいらない。それらをありのままに見て、それが単なる言い訳であることを理解すれば問題ない。

3.教訓

考えても仕方のないことを考え続けたり、切り替えよう切り替えようと思うと逆に頭によぎったり、誰しもが経験したことがあると思われる内容が、言語化されています。

そこで変に考え方を変えようとするのでなく、「そういうもの」と割り切って受け入れるということが大事だと思います。

また、引用としては最後に記載した「何かに挑戦しなければならなくなった時、心はそれをやらない理由をいくらでも思いつく」には苦笑しかありませんでした。個人的には産業カウンセラー向けの学習に関心がありますが、「お金も時間もかかるしな」とまさに考えているところです。まずは体験講座に通うところから、モードを変えていきたいと思います。

なお、冒頭にも記載したように、マインドフルネスの仕方についても多く触れられています。今回は割愛しており、本書を手にとって全体を読んでいただければ幸いです。