管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

課長経験者が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

動機づけ面接入門 佐藤洋輔 沢宮容子 著

1.はじめに

キャリアコンサルタントや産業カウンセラーの授業や試験では、カウンセリングに関し本当にさまざまな理論を学びます。そして、実務においては何が本当に有用な理論なのか気になり、生成AIに尋ねてみました。

すると、ロジャーズの「来談者中心療法」に続く2番目に、「動機づけ面接」が挙がりました。もっと有名な理論があるのになぜこれが、と意外感がありました。そして、たまたま2026年になり、本入門書が出版されたことを知り、早速購入しました。

本書の”まえがき”では、以下のような「両価性」についての記載から始まります。

やるべき理由は最初から知っている。それでも今のままでいたい理由も、同じだけ確かにある。人はその真ん中で揺れます。

この揺れに、説教でも放任でもなく、相手と並んで歩く方法で関わるー動機づけ面接(Motivational Interviewing:MI)は、そんな対話のスタイルです。

本書は、基礎編と実践編に分かれており、実践編は8名の専門家による論文調の内容です。以下では、主として基礎編としてのMIの中身について中心に記載し、実践編では印象的だった一文をピックアップして紹介していきます。

2.内容

(1)動機づけ面接とは

  • MIでは、「変化すること」と「そのままでいること」の価値の間でゆれ動くジレンマを「両価性(Ambivalence)」としてとらえ、クライエント(CL)の抱える両価性を明確にする。その上で、「行動すること」の価値や理由が高まるようにCLの発言を促すことにより、変化への動機を高めることを目指す。
  • 援助者が変化に対して賛成の立場を取れば、CLはバランスを取ろうとして反対の立場に立とうとする。すなわち、CLが変化に向かって歩みを進めるためには、援助者が指示するのではなく、CLの内面に存在する動機を引き出し、CL自身が変化に対して賛成の立場を取りやすいように関わる必要がある。

(2)スピリットとタスク

①スピリット
  1. パートナーシップ:臨床家は臨床における専門家であるが、CLもまた、自分自身のことを誰よりも知っている自分自身の専門家であることを忘れてはならない。両者の間に上下関係はなく、対等な立場で相手の発言を尊重することが重要。
  2. 受容:CLの発言や行動について批判せず理解しようとする姿勢。
  3. 思いやり:CLの利益を最優先すること。
  4. エンパワメント:MIにおける臨床家の役割は、CLが自らの内部にある深い井戸から水を汲み上げられるように手助けすること。決してCLの空の井戸に、水を注ぎこんで満たすことではない。
②タスク
  1. 関わる:信頼関係を築き、いわゆる作業同盟を確立するタスク。どのような作業においても信頼関係ができていることが前提。
  2. フォーカスする:CLの目標を達成するためには、行動変容だけでなく考え方を変えることや、現状を受け入れることなど心のあり方も含めてさまざまな変化についての道のりがあることも考えておきたい。
  3. 引き出す:重要なことは、「変化を支持する意見をCL自身の口から語らせること
  4. 計画する:「変わるか否か」や「なぜ変わるのか」ということよりも、「いつ・どのように変わるか」に面接の焦点が移っていく。

(3)チェンジトークと維持トーク

  • チェンジトーク(Change Talk, CT)とは「変わりたい」や「このままではだめだ」といったような、人が変化に向かって進もうとしていることを示す発言
  • 準備チェンジトークとは、変化の準備段階においてみられるCTであり、主に変化に対する気持ちや考えが表明される。願望(Desire)、能力(Ability)、理由(Reason)、ニーズ(Needs)のいずれかに相当する。
  • 実行チェンジトークとは、変化につながる具体的な行動についての発言であり、CLが両価性の解決に向けて動き出すための手がかりとなる。コミットメント(Commitment)、活性化(Actvation)、段階を踏む(Taking steps)の3要素。
  • 維持トーク(Sustain Talk, ST)とは、実際の面接の中で、CTと一緒に、変化に否定的な態度を示す発言や、現状のままでいようとする発言
  • MIの特徴の1つは、「CLのCTに焦点を当て、強化する」こと。STには反応せず、CTに意図的に焦点を当てることで、CLは変化に賛成する立場から自分の状況を説明することとなり、「そうなんです。今のままではいけないと思って…」など、さらなるCTを引き出すことができるかもしれない。

(4)MIのコアスキル

  1. 開かれた質問:CLは臨床家側の先入観や一般常識に影響されることなく、自分の進みたい方向について理解を深め、自由に述べることが可能となる。
  2. 是認:たとえCLの取り組みが上手くいっていなかったとしても、CLの置かれた状況をリフレーム(全く別の視点から見直す)したり、CLの性質に着目して何か良い点を伝えたりすることも是認となる。
  3. 聞き返し:「~ですか?」ではなく「~ですね」のように、語尾が下がり調子になることが推奨される。質問は相手に何かしらの答えを求めることであり、「答えろ」という要求。CLが発言したことは、CLの考えや経験のほんの一部を表しているに過ぎない。推測を加えて聞き返すをすることで、CLの自己探求に勢いが増し、会話が先に進みやすくなる。もちろん、臨床家が的外れな推測をしてしまうこともあるが、その場合は間違いに気づいたCLが修正してくれることが多い。
  4. サマライズ:CLの話す内容にはSTとCTの両方が含まれるが、サマライズではこの両者を含めつつ、自然にCTにフォーカスが当たるようにしていく。この時、サマライズを行う順序も重要であり、STから始めてCTで終わるようにするとよい。そして、STとCTをつなぐ際には、「しかし」などの逆接を用いず、臨床家が双方を対等に並べていることを示す「一方で」「そして」などを用いるのがよい。サマライズの最後に、「ほかには?」という開かれた質問を加えれば、カウンセラーが取りこぼしてしまったことをCLが補うことができるだろう。
  5. 許可を得た上での情報提供と助言:最も重要なことは、情報提供や助言が臨床家からの一方的な指示とならないよう、事前にCLから許可を得ること。

(5)動機づけ面接の学習プロセス

  • MIがクライエント中心療法と大きく異なるのは、MIが意識的で、戦略的で、目的志向的なアプローチということ。MIではCLのCTを引き出し、内にある動機づけを高めることでCLが抱える両価性を解決することを目指す。オペラント条件付けの観点CTを選択的に強化し、変化への抵抗となるSTを最小化する方向でCLの発言に反応すること。
  • CLからCTを引き出す代表的な例は、開かれた質問を行うこと(例えば、「この変化はどのようにあなたに良い影響を与えますか?)。表れたCTを聞き返し、是認を行い、必要に応じてサマライズを行うことで、よりCTを深めることができる
  • 重要なのは、抵抗に対して反論しないことであり、臨床家が抵抗を誘発せず、抵抗が生じたときにそれを和らげる方法を学ぶことが目標となる。
  • 変化の計画を立てたとしても、それだけでは行動変容が起きるに十分でない。CLが変化へのコミットメントを明確に言葉にしなければ、行動変容が起こる可能性は低い。コミットメント言語を引き出し、選択的に強化する

(6)実践編

  • MIを身につければ、「聞くのがあなたの義務でしょう」と言われたときに、「話しても話しても、全部じゃない、まだ足りないという感じがあるのですね」と聞き返せるようになる。
  • CLの「減らすだけにしたい」との発言を、単なる現状を求めるSTと捉えるのではなく、何らかの形で現状から変わろうとする要素を含むCTとみなし、CTの要素を抽出して強化していくことができる。
  • 持ち続けるメリットを先に尋ねる順番が重要。元の認知を持ち続けるメリットについての発言(ST)をある程度話してもらうことにより、別の認知を持つメリットについての発言(CT)を引き出しやすくなる。
  • 「変わりたくない」と話して治療に拒絶的なCLであっても、多少は「変わりたい」気持ちを持っている。CL家族が依存症の病態を両価性として認識し、「変わりたい」という言動を強化することによって両価性のバランスを変化させることを目標とするイメージを持てると、CL支援に疲弊することが少なくなる。
  • CLは問題に取り組まなければならない、行動を変えるべき、問題を持った人間である、という治療者側の姿勢は、支援において「危険」。動機づけ面接は、CLに変化を強要すない。そして、変化に対するCLの両価性を問題とみなして、CLがそこから早く出るように押すことともしない。CLの両価性に共感し、そこに一緒にとどまる。これはCLに尊重を伝えるもっとも良い方法。
  • 対象者に関わる専門職は、人は、ありのまま受け入れられ、サポートされていると感じたときに変わるのであって、他者から無理やり直面化させられたときに変わるのではないという事実を十分に認識し、適切な対応ができるようトレーニングする必要がある。
  • 大切なことは、それぞれの当事者が認識している自分自身がおかれた状況の背後にある願望やニーズ(このままでは困る)という、本当に大切に思っていることを知ることによって、調整の余地が出てくるということ。

3.教訓

「はじめに」にも書いた通り、本書を読む前の私は、なぜ「動機づけ面接」がこれほど高く評価されるのか、正直よく理解できていませんでした。しかし読み進めるうちに、その理由が一気に腑に落ちました。

これまでカウンセリングで学んできた

  • 相手が思わず「そう、その通り」と感じる言葉を返す
  • 「AなのにBと感じるんですね」「CだからDと感じるんですね」と、両面に焦点を当てる

といった技法が、実は動機づけ面接の理論に基づいていたことがつながったのです。「両価性」という概念を知り、さらに次のような展開がCLの“変わりたい気持ち”を支えるのだと理解できました。

  1. 先に維持トークから始めてチェンジトークで終わる
  2. すると「そうなんです」とさらなるチェンジトークが引き出される
  3. 表れたチェンジトークを聞き返し、是認し、要約することで、よりチェンジトークを深めることができる

後半の実践編では、実際のカウンセリング場面を題材にした応答例が豊富に紹介されており、「こう応じるとCLの内側が動くのか」という具体的なイメージが掴めました。

悩みを抱える人の話を聴くとき、こんなふうに寄り添い、変化を支えられる応答ができるようになりたい──そう強く思わせてくれる良書でした。

交流分析のすすめ 人間関係に悩むあなたへ 杉田峰康 著

1.はじめに

カウンセラーの先輩からは「理論や技法は継続的に学ぶといい」、というアドバイスをいただいています。中でも、「認知行動療法(CBT)」「解決志向アプローチ(SFA、ブリーフセラピー)」とともに、「交流分析(TA)」が挙がります。

産業カウンセラー試験でも、交流分析の問題が毎回3問前後は出題されます。よって、主催団体でも学ぶべき内容と捉えているものと推察しています。

このような理論や技法について学ぶと、単にカウンセリングの場で活用するだけではなく、日常生活での会話や自分の考え方を振り返りに本当に役に立つ、と毎回感じます。

そして、本書のプロローグには、交流分析の考え方が以下のように示されています。

交流分析(トランザクショナル・アナリシス=TA)は、自己発見と人間理解、よりよい人間関係を求める「気づき」の科学です。交流分析では、相手を変えるよりも、まず自分に気づき、自分を変えることが先決だと考えます。「自己主張の原理」を脱して「自己理解の原理」を把握するとき、本当の意味の人間らしいコミュニケーションが始まるといえましょう。

以下では、第1章以降で特に印象に残った点を引用して紹介していきます。

2.内容

(1)3つの私

  • 人間はみな自分の内部に3つの私をもっている」-これが交流分析の基本になる考え方。それぞれの私は感情、思考、行動様式に一連した特徴があり、これを自我状態と呼ぶ。
  • 交流分析は、人間の心理や対人関係の問題などを、誰の中にもある、この3つ私に基づいて考えてゆくもの。この3つの人格を十分に自覚し、さまざまな生活状況の下で、それらを自由に駆使できるように、自分を訓練してゆくことが目的。
①親の自我状態(P)
  • 両親、またはあなたを育ててくれた人(養育者)たちが、感じたり、行動したりしたのと同じように感じ、行動する部分。すなわち、あなたの中にあって、いまだに生きていて、あなたに影響を与えている親の行動や動作。
  1. 批判的な親(Critical Parent):主として、批判・叱責・非難を行う。一般に非合理的で、Aの冷静な評価を受けたことがなく、しばしば偏見に満ちている。宗教・政治・伝統・性別などについても、自分なりの意見に基づき、必ずしも事実にそぐわない形で、行動基準を設定しようとする。
  2. 保護的な親(Nurturing Parent):子どもの成長を助ける母親的な親。同情的、保護的、養育的。慰めや親切な言葉をかけ、相手を快適な気分にしてあげる。しかし、度が過ぎると、親切の押し売りとなって、他人から敬遠されることもある。
②大人の自我状態(A)
  • 主な仕事は、事実に基づいてデータを収集し、それらを整理、統合することにある。得られたデータは、過去の知識や経験に照らして評価、修正される。このような意味から、Aは理性と深く関係する部分で、Pの偏見、Cの感情・本能的な態度に影響されない限り、それら2つの間の冷静なレフリー役を演じることもできる頼りになるパートナー。Aによる人格の統合は、交流分析が目指す目的の1つ。
③子供の自我状態(C)
  1. 自由な子ども(Free Child):親のしつけの影響を受けていない、もって生まれたままの自然な姿。本能的、自己中心的、積極的で好奇心や創造性に満ちている。
  2. 順応した子ども(Adapted Child):自由なCとは別に、成長過程において、親の影響を受けた部分。順応したCは、対人関係をスムーズに営むための適切な技術を身につけているが、反面、自由なCを犠牲にして、本当の気持ちを抑えたり、劣等感を抱いたり、現実を回避したりとマイナス面に作用することも多いもの。

(2)愛は貯金できる

  • 精神分析では、愛とは相手のために、相手本位に時間を与えることにある、と考える。自分が相手を完全に独占でき、他者の介入の心配もない時間-子どもが成長するうえでも、”徹底的に自分本位の時間”を親が共有してくれる体験が必要。
  • 相手の存在や価値を認めるようなさまざまの刺激をストロークと呼ぶ。人間はなぜ、人を求め、コミュニケーション(交流)をしたがるか。それはストロークを交換するため。言い換えれば、自分本位の時間を与えられず、十分なストロークをもらえない人間は、うまく生活がしていけないといってもよい。
  • 人は肯定的なストロークを欲しがるが、これを十分に得られない場合は、否定的ストロークを求めて行動する。”背に腹は代えられない”、ないよりはましということ。叱責や罵詈雑言でもいいから、私をかまってくださいというシグナルを出す。
  • 子どもは親から大事にされると、「自分はOK-大事な存在である」、また、「自分以外の人や自分をとりまく世界も、きっとOKに違いない」と感じ、「基本的信頼」が確立できる。そして、このように心が一番安定した状態が、PACのバランスのとれた成長を促す。
  • 子どもは、人生を自分の存在という、小さな空間から感知するから、その判断が多少ゆがんでいたり、非合理的であるのは当然。お父さんが何かに腹を立て、怒りを爆発させれば、子どもおその方法でいいのだと判断して、同じような怒りの処理の仕方を覚えていく。もし、このお父さんが爆発しそうな怒りを、そこに間をおいてコントロールするのを見れば、子どもは、親のまねをして育つ。

(3)くり返す人生ゲームー人生ゲームの分析

  • くり返し人間関係をこじらせたり、非建設的な結果を招いたりする行動のパターンが「ゲーム」と呼ばれるもの。ゲームと呼ぶのは、このような行動パターンの裏には必ずおかしなルールと隠された目的が潜んでいるから
  • ゲームに気づく最も有効な方法は、自分の感情に注目すること。ある人との人間関係で、くり返しくり返し不快な気分を味わうときは、ゲームを演じていると考えてよい。怒りをこらえたあげく、逆にこちらの”堪忍袋の緒が切れて”相手を罵倒してしまい、そのあとで自分も罪悪感にかられるようであれば、相手のゲーム(怒りの挑発)に乗ってしまったと見るべき。
  • 子どもによっては、親から自分の存在を認めてもらうために、常に人騒がせな事件を起こしたり、何でもないことをひとひねりしてこじらせるなど、不快な、非建設的な人間関係をこしらえる癖を身に付けてゆく場合がある。幼いころのストロークの求め方が根深い習慣となり、ゲームの原型をつくりあげると考える。
  • ゲームを演じる人は、相手が自分の思い通りになってくれるまで、怒り続けたり、悲しみ続けたりするもの。しかし、残念なことに、この期待はほとんど100%裏切られる。だから、長々と心配したり、恨んだりするのはやめる方が賢明。どんなに憂鬱になってみせようと、悲しい顔を見せようと、他人を変えることはできないという大原則を肝に銘じる。

(4)あなたの人生ドラマには筋書きがある―脚本分析

  • 交流分析では、人生を一編のドラマのようなものとみなし、その中であなたが演じている役割を人生脚本と呼ぶ。脚本とは、あなたの子ども時代に、親を中心とする周囲の影響のもとで発達し、その後の対人関係などを含めた人生経験によって強化され、固定化された、いわば人生の青写真
  • ごく幼時にできあがる「基本的構え」の上に構築される脚本は、人生の最も重要な局面ー例えば、職業の選択、結婚、育児、事業拡大の決断、定年退職、死に方などで、あなたの行動を左右する大きな力をもっている。
  • しかし、交流分析では、この脚本を書き直すことができる、と考える。あなたの性格のナゾ、とくに物心つかない幼児期につくられる性格の基本的な部分の仕組みを系統的な方法で知ると、脚本に縛られない自分独自のドラマが描けるようになり、人生計画を自分で決定できるようになる。これを「脚本分析」という。

(5)エピローグ

今の生活の中で、十分なストロークを得て、より豊かな人間関係をつくる方法。それは、ストローク・プランを立てること。肯定的なストロークを交換し、自分のストロークを赤字にしないためには5つの鍵がある。

  1. 与えるべきストロークがあったら、それを他人に与えること
  2. 欲しいストロークがあったら、それを相手に要求すること
  3. 欲しいと思っているストロークが来たら、喜んで受け取ること
  4. 欲しくないと思っているストロークが来たら、上手に断ること
  5. ストロークが不足したら、自分で自分によりストロークを与えること

3.教訓

冒頭でも触れたように、カウンセリングの理論や技法を学ぶことは、単にカウンセリングの場面に役立つだけではありません。日常の会話や自分自身の思考を振り返るときなど、さまざまな場面で本当に力になると、学ぶたびに実感しています。

例えば、子どもがまだ小さい頃、期待が大きすぎるあまり強く当たってしまったことがあり、「自分の子育ては間違っていたのかもしれない」と感じるようになりました。本書に出てくる「はい、でも(水かけ論)」のように、気づけば「でも」を連発する話し方になっていたのです。意図せず押しつけがましい態度になり、子どもに弁解を求めるような関わり方になっていたのかもしれません。

そのことを妻に話すと、「気づけただけで十分。これから変えていけばいい」と言ってくれました。私が「本当に変われるのかな。コミュニケーションは相手あってのものだから、自分だけ変わっても子どもの受け止め方が変わらなければ意味がない」と返すと、妻は「それでも、まず自分が変わらないと何も変わらないよ」と言いました。

そこで私は子どもに対し、「これからは言い方に気をつけるようにする」と宣言しました。また、「“でも”が多いと、相手はあまりいい気持ちがしないんだよ」とも伝えました。ただ、それを子どもがどう受け止めたのかはわかりません。それでも、伝えなければ相手の気づきを促すこともできません。少しでも自分がP・A・Cのどの立場で話しているのかを自覚し、人生脚本を少しずつ書き換えていく意識を持ち続けたいと思っています。
なお、本書にはエゴグラム・チェックリストの50項目や、得点から導かれるグラフの形状による性格傾向、人生脚本のチェックリストなど、まだまだ紹介したい内容が多く含まれています。全体を通して、さまざまな気づきを与えてくれる良書でした。

(エゴグラムのセルフチェックは、以下の厚生労働省のホームページでもできます)

kokoro.mhlw.go.jp

 

職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門 松尾 睦 著

1.はじめに

関心があり読んでいる本の中に、コルブ氏の「経験学習」について言及されている本が多く、ずっと探していますが、なかなか手に入れることができません。

そんななか、丸善丸の内本店で、現在「4つの視点で考えるビジネスの未来」という特集をしており、「組織づくり」のテーマの中で、タイトルに「経験学習」を含む本書が目に留まりました。

以下では、特に印象的だった部分を引用して紹介していきます。

2.内容

(1)成長とは何か

  • 能力的成長に比べて、やや見えにくいのが精神的成長。精神的成長とは、仕事に対して適切な「思い」を持つようになることを指す。ここでいう「思い」とは、信念や価値観であり、「大事に思っていること、こだわっていること」。「適切な思い」とは、自分のことだけでなく、他者のことも配慮できること
  • あるレベルまで成長した30代以降に、成長が止まってしまう人がいる。それは、昔のやり方に固執してしまうからだが、環境が変化しているのにもかかわらず、過去に成功した手法に頼り、それをさらに強化して対処しようとする性向を、「能動的惰性」と呼ぶ。私たちは、どうしても慣れ親しんだ仕事のやり方に頼ってしまいがちだが、ここで必要になるのが「アンラーニング」という考え方。アンラーニングとは、一度固まった知識の塊をほぐし、必要のないものを捨て、知識を組みなおす作業

(2)経験から学ぶ

  • 人は自分の力だけで学んでいるわけではないという点に注意をする必要がある。異動したり、プロジェクトに参加するとき、そこには必ず他者がいる。職場の同僚や先輩・上司から聞いた経験談や、経験に基づいたアドバイスは、人が何かを成し遂げるときの助けになっているはず。
  • コルブが提唱する経験学習サイクルによると、人は以下で学んでいる。ここでいう経験は、自分自身が体験する直接経験と、他者を観察したり、アドバイスを受けたりする間接経験の両方を含む。
  1. 「具体的経験」をした後、
  2. その内容を「内省し(振り返り)」
  3. そこから「教訓」を引き出して
  4. その教訓を「新しい状況に適用する」
  • 熟達を研究するエリクソンらは、個人の成長をさせる練習や仕事のやり方を「よく考えられた実践」と呼び、次の3つの条件を挙げている。
  1. 課題が適度に難しく、明確であること
  2. 実行した結果についてフィードバックがあること
  3. 誤りを修正する機会があること

(3)経験から学ぶための3つの力

  • 行為中のリフレクションが、行為後のリフレクションの質を決める。行為中のリフレクションが十分でないと、行為後のリフレクションの効果が半減してしまう。惰性で行った仕事を振り返っても、そこから得られる教訓は限られている。自分の頭で考えながら集中して行った仕事を振り返ることで、はじめて意味のある教訓を引き出すことができる
  • 成長が止まってしまう昔のヒーローは、変なプライドがあって、相手に素直に聞くことを恥ずかしいと感じる。その結果、知らず知らずのうちに、モノを見るレンズが曇ってしまう
  • 優れたマネジャーは、会社や上司から与えられた仕事に関心や興味を感じない場合、自分なりの目標を設定し、仕事で意味づけを変えていた。すぐには関心がわかないような仕事でも、仕事の背景を考えて、新たな意味を付け加えることで面白さを感じることができる。上からの目標を受動的に受けるだけでなく、積極的に新たな目標を設定すると、仕事に意義が生まれる

(4)「思い」と「つながり」

  • 「他者のために頑張ることが、自分の成長につながる」、「自分が成長することで、結果的に他者の役に立つ」という相互補完的な関係が見られる。他者に奉仕することを自身の目標とし、それを達成することが、他者からの評価や自分の喜びになるとき、「自分への思い」と「他者への思い」が融合される
  • 他部署や他組織にいる誠実で有能な他者と、情報をやりとりしながら損得を超えた関係を構築することで、「幅広い視点からのフィードバック」や「本音で語られる、率直で本質的なフィードバック」を得ることができる。こうした「つながり」は、私たちがより高い目標に挑戦し、自身の活動を振り返り、仕事のやりがいや意義を見出すことを促してくれる。
  • 自分の利益を意識せずに、自分とは異なる世界にいる人々と、誠実な態度でつきあうことで深い関係を築くことができる。誠実に対応するということのほかに、マネジャーが重視していたことは、自分から発信することと、他者の意見に真摯に耳を傾けること

(5)学ぶ力を育てるOJT

  • 普段の仕事の中で声をかけることが大事。挨拶するということは心を開くことを意味する。個人の情報を常に頭に入れておいて声をかける。声をかけるということは「あなたのことに関心を持っている」ということ。畑に「肥え」をまいて育てるのと同じように、人間も「声」をかけると育つ
  • ミーティングでは、とにかく相手の話を聞くことが大事。Listen, Listen, Listen。そして、聞いているときはできるだけメモをとる。真剣に聞く。しっかり聞いて、「聞き切った」と思えた後にちょっとアドバイスする。しっかり聞いた後にアドバイスすると、その内容がスーッと相手の心に入るが、聞き切らないうちにアドバイスすると心に入らない。相手の立場になりきること。
  • 他者を交えて経験のリフレクションをする利点は、意見やアドバイスなどのフィードバックが得られるということ。自分では気づかない考え方や価値観などを指摘してもらうことにより、当たり前に思っていた自分の持論を意識化することができる。このとき留意したいことは、コメントをする他者(上司や同僚)は、①率直な意見を、②建設的に伝えること

3.教訓

月例報告のような定期的なタスクは、放っておくと“ただの作業”になりがちです。そうなると、「いかに無難に、効率よく終わらせるか」という発想に偏り、業務の本質的な意味づけが薄れてしまいます。

もちろん、効率化を考えること自体には価値があります。ただ、自分なりの意義づけを行い、単なる「作業」を「魂のこもった、意味のあるアウトプット」へと昇華させていかないと、結果として上席からの指摘が増え、かえって時間を奪われることにもつながりかねません。

上司からのフィードバックは、本来であれば「気づき」を促す大切な機会です。しかし、その伝え方やタイミング次第で、組織が成長するのか、それとも停滞してしまうのか、大きく分岐してしまうと感じます。

たとえば、部下が期限通りに提出しても、上司が未決箱に溜め込んでなかなか目を通さない。そして締切直前になって突然、「なんだこれは!」と声を荒らげ、大量の赤字を入れて自分のテイストに書き換えてしまう。こうしたことが繰り返されれば、部下は「どうせ直される」と感じ、期限を守る意欲も主体的に考える気持ちも失われてしまいます。

必要なときに、適切なスピード感で、建設的に意見を伝え、相手の言い分にも耳を傾ける。そんな関わり方ができる人でありたいと思いますし、そうした関係性をつくれる組織でありたいと強く感じます。