管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

課長経験者が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

会社でいちいち傷つかない 認知が教える、心を守り成果を出すための考え方と行動 中島美鈴 著

1.はじめに

先日、あっという間にGWが終わりました。

振り返ると、GWが始まる前の4月は、これまでの会社人生でも指折りの忙しさでした。前任者からの引継ぎが山積し、初めて担当する業務も多く、時間も気力も削られていくような日々。会社へ向かう足取りが、少し重く感じられるほどでした。

そんなある日、待ち合わせまでの時間つぶしに立ち寄った書店で、ふと本書を手に取りました。実は新刊として並んだときから気になっていたものの、その時は購入に踏み切れずにいました。けれど、このときの自分の気持ちが、背中を押してくれたのだと思います。

GW中に読み終えたことで、休み明けの出社は、心が少し軽くなった状態で迎えられました。

以下では、特に心に響いた部分を引用しながら紹介します。

2.内容

(1)上司や同僚の評価を気にしすぎてしまう

  • 「私はできないんだ」というスキーマを持っていると、他人に褒められても「まぐれでうまくいっただけ」「本当の自分を知らないだけ」「お世辞で言ってくれているだけ」と自分を過小評価したり、割り引いてしまう。一旦身に付いたスキーマは、なかなか書き換えられないことがわかるだろう。
  • 「わからない=無能」なのではなく、わからないことを伝えることで、上司に誤解されず、正しい指示を受け、マネジメントしてもらいやすくなる。長い目で見たら、自分の実力を知ってもらっていた方が、それに応じた指導も受けられて、実力に見合った仕事を回してもらえて結果が出やすくなる。
  • 思考のクセに気づき、今の状況に合わせて調整していく
  1. 相手の期待に応えられたらよいだろうが自分にもペースがある。無理はしない
  2. 自分の行動指針は、相手からの影響は無視できないが、最終的には自分で決める
  3. 最善の努力をしたとしても、完全に相手から好かれるとは限らない

(2)仕事が終わらない、ミスが減らない、自分はできない人?

  • 「注意持続訓練」とは、雑念に振り回されずタスクに集中する訓練。雑念が湧いてきたら、その雑念を行動に移す代わりに、メモに箇条書きしておいておく。ぱっと短く書くだけでいい。そして、「よし、ここに書いたから大丈夫。アラームが鳴ったら、このメモについて後から考えよう」と切り替えて、タスクに戻る。一旦書き出しておくことで「後で」という安心感を持つことができる
  • 「問題解決技法」とは、ある問題を解決するための方法を、一旦評価せずに幅広く並べた上で選択していくというもの。この「一旦評価せず」という部分が肝心。質より量でこれまでの自分の思い込みをとっぱらってどんどんアイデアを出していく。
  • 人間の一連の思考の流れを「情報処理モデル」という見方で見ていく。人の認知を「①情報の入力→②処理→③出力」という3つのプロセスで捉えたもの。ある程度仮設を立ててから相手にヒアリングしてみる。相手が責められているというようなやりとりを避けられる。「どこでつまずいているんだろう」と持ち掛けることで、相手とのズレもなくなる

(3)仕事と気持ちを切り離す ~人間関係、能力への不安との向き合い方~

  • 不安に対する認知行動療法は、古くから開発されてきた。大まかにいうと、「不安はその対象が何かを明確にした方がいい」「逃げずに向き合った方が不安は減っていく」ということがわかっている。そのための治療方針としては、「不安の対象を明確にして、対峙して無事であることを体感していく」ということになる。言葉にしてしまうとシンプルだが、これを「体感」することが難しい。
  • 落ち込みが長く続いて、単なる落ち込みよりも自責し悲観し、時には現実を受け止めきれずに曲解してしまうような状態がうつ病。うつになると、私たちは「自分はだめだ、価値が無い、愛されない」とか、「将来は絶望的だ、うまくいきっこない」などと悲観する。また回避的な行動が多くなったり、いつまでも悲観的に考え続けたりする。このことを反芻という
  • 「プレゼンの前に不安になるもなにも、明日はどうがんばっても自分の実力以上は出せないよ。スーパーマンになろうとしているの?」と自分に突っ込む。等身大の力しか出せないよね、と開き直ることで、不安が減って準備に向かえる
  • 気持ちが落ち込んでいても、行動をいつも通りに切り替えることによって、いつの間にか気持ちが変わってくる。行動活性化して、いつも通りに過ごす

(4)それでも傷ついてしまったら ~疲れ、感情の揺れを事前に把握しておく~

  • 大前提として、最優先すべきなのは、睡眠と休養を取ること。身体を整える時間を削ってまでやるべきことはない。精神論で「どんなにきつくても眠くても、やるべきことをやるべし!」という考え方は捨てる。体調を良くしてからこなす方がタイムパフォーマンスもいいはず。

(5)会社は成果を上げて、給料をもらう場だと心得る

  • スキーマを職場に合わせて調整する。「職場は学校やプライベートの人間関係と違って、あくまで生産性を上げて利益を追求する場。人間関係がいいと円滑ではあるけれど、あくまでそれは副産物であって、最大のアウトプットは生産性」と考える。やること、やらないことを事前に決めて、それ以外は、あくまで仕事の生産性を下げないために、最低限の交流を保つように気をつける
  • その中にはどうしても自分とは合わないという人がいるもの。そうした人と一緒に仕事をしなければならない時こそ、スキーマから脱出してすること・しないことリストを作ることが役立つ。あらかじめ周到にこちらの対応を固めておくことで、下手に巻き込まれない。リストを作れば、自分と相手の間に境界線を引くことができるので、心を守れる

3.教訓

新しい環境や新しい仕事、初めて会う人──年齢を重ねても、不安なものはやはり不安です。「何の不安もない」と言う人もいますが、誰しも心のどこかに拭いきれない不安を抱えているのだと思います。そんな中で、

  • 不安は、その対象を明確にした方がいい  
  • 逃げずに向き合った方が、不安は減っていく

この2つの言葉は、特に強く心に残りました。

実際、私自身も4月から前任者の異動に伴い、多くの業務を引き継ぎました。どれくらい時間がかかるのか、どこでつまずくのかもわからないまま、期限だけは迫ってくる。しかも一人で対応しなければならず、大きな不安を抱えながら日々を過ごしていました。

それでも、手を動かし、試行錯誤しながら進めていくうちに、「こういうことか」と腑に落ちる瞬間が増え、次回は順番を変えた方がやりやすいなど、少しずつ見通しが立つようになりました。確かに、不安は向き合うことで小さくなっていくと実感しました。

とはいえ、時間は想像以上にかかりました。自社の勤務間インターバルの標準時間を確保できない日もあり、体力的にも精神的にも厳しさを感じていました。そんな中で出会った「身体を整える時間を削ってまでやるべきことはない」という一文は、胸に深く響きました。

他にも、

  • 雑念が浮かんだら一旦書き出し、「後でやる」という安心感をつくる
  • 気持ちが落ち込んでいても、行動を活性化させ、いつも通りの生活リズムを保つ

といった、日常に取り入れやすい実践的なヒントが多く、学びの多い一冊でした。

流れをつかむ技術 桜井章一 著

1.はじめに

著者の桜井さんは、プロのマージャン士です。

どんな方か知らない人もいるかと思いますので、wikipediaのリンクを案内します。

ja.wikipedia.org

ちなみに、私は麻雀が強くなりたくてこの本を手にしたわけではありません。その道のプロがどのような心持ちで世界と向き合っているかに興味があり、手に取りました。

学生と社会人になりたての頃はよく麻雀をしていましたので、時折記載のある道場でのルールを理解できました。しかし、麻雀をやったことがない方であれば、少しついていくのが難しい部分もあるのでは、と思いながら読みました。

以下では、麻雀とは関係ない内容で特に印象に残った部分について数を絞って引用して紹介します。

2.内容

  • 人間的な成長というと、いかにも足し算のようなイメージがある。しかし、人は歳を重ねていけば、必ず人間的に成長するというわけではない。むしろ反対に、人間的に退化していく人のほうが多いかもしれない。大人の論理を身にまとうにつれ、どんどん心が汚れていく。その意味では、世間体やしがらみといった荷物を降ろしていく「引き算」のほうが、人間力を磨く上では大切な作業になる。
  • 成長とは、暴走しがちな知性や理性にブレーキをかけつつ、人間の五感や身体のすべてを使って自然界から学んでいくこと。そのためには、本能の声に耳を傾けながら生きていかなくてはならない。知識を増やしたり、金儲けのためのテクニックを身に付けたりすることは、私からすると成長でもなんでもない。自然から離れていくという意味では、成長よりもむしろ退化しているようにさえ感じる。
  • 木からはぐにゃぐにゃした細い枝がいくつも伸び、また葉っぱも無数に茂っている。材木にする際にはすべて切り捨てられるその部分は、果たして何なのか。自然の中であれば、幹も枝も葉も等しく木を形づくるものであるはずだ。「枝や葉を、いつの間にか見えないものにしてしまう」、それが専門家を生み出す社会制度なのだと思う。
  • 自由がなければ創造性を発揮することなどできない。多くのものがいぎっしりと詰まった状態では、自由に動くことなど不可能。必要以上のもので周りを埋め尽くして自由を奪えば、状況に応じて変化する柔軟さもなくしてしまう。柔軟さが失われれば当然、成長の機会も途絶えるだろう。ただし、自由を得るためには、もちろん果たすべき義務や責任が伴ってくる。それを理解せずに自由に振る舞おうとすれば、それは単なる傍若無人な輩でしかない。
  • 感情とは、言うなれば「川の流れ」のようなもの。無理に抑え込もうとすると、感情という名の川の流れは悪くなっていく。川の流れが淀んでくると、当然水は濁り、やがて腐り出す。そのような悪臭漂う感情を抱いている人には注意が必要。感情という名の川の流れをよくするためには、自分の気持ちを常に表へ出すこと。
  • 自分の中の醜い面を他人にさらけ出すことを、必要以上に怖がることはない。誰しもそういう要素を持っているのだから、過剰に恐れず「自分にはこんなダメなところがある」と素直に他人に見せてしまう。そうすると、人生はだいぶ楽になってくる。世間からの評価や期待に対して神経質になりすぎ、そのせいで常に不安を抱えながら生きていくくらいなら、他人から嫌われるほうがよほどまし。
  • 「気づき」というものは、頭だけでなく身体全体で理解しなくては動きにまでつながらない。だから、心身が硬直した者ほど、気づく能力を身に付けるのには時間がかかる。だが、いくら飲み込みが悪くても決して排除するようなことはしない。そういう者をうまく導く術を知ることもまた、大事な「気づき」。そうした意味では、気づきのない者もまた、何かを教えてくれる師と言える

3.教訓

今回引用した「人生引き算」「材木は木から枝や葉を見えなくする」「気づきのない者もまた、何かを教えてくれる師」といった独特の表現は、一見すると奇抜でありながら、どれも核心を突いていて、読んでいて新たな視点を与えてくれるものでした。

著者の世界観は、私がこれまで生きてきた感覚とはまるで異なります。そのため、選ばれる言葉も物事の捉え方も大きく違い、新鮮な気持ちで読み進めることができました。

私はつい、自分の関心のある分野の本ばかり手に取ってしまいがちです。しかし、書籍やサイトでは「他の読み手のレビューや書店の棚を参考に、普段なら選ばない本を手に取ってみるのも良い」とよく案内されています。今回まさにその有用性を、実感を伴って理解することができました。

自分の感性や視野を固定させず、むしろ広げていくために、これからも意識的に読書を続けていきたいと、改めて思わせてくれる一冊でした。

他人がこわい あがり症・内気・社交恐怖の心理学

1.はじめに

本書は、Diamond WEEKLY(2026/2/21-28号)にある「週末読書」というコーナーで、「不安や悩み、心の動きに上手に対処する法」として紹介されていました。「カウンセリングとは何か」とともに掲載され関心を持ち、手に取りました。

bookreviews.hatenadiary.com

300ページを超える分量で、心の問題を取り扱うので少し読むのに時間がかかりましたし、印象に残った部分が多くなったため引用個所が長くなりましたが、以下で内容を紹介していきます。

2.内容

(1)社交不安はこう現れる

  • ”社交不安”は、相手との親密さや距離にかかわらず、さまざまな対人関係で現れうる。店員との雑談であろうが、同僚との世間話であろうが、そこに他人がいる限り、どういう相手に対しても不安を感じる可能性がある。これらの事例には、それぞれの状況において、「相手につまらない人間と思われたくない(でも思われるかもしれない)」、あるいは「相手に気に入られたい(でも無理かもしれない)」と思っている、という共通点がある。そういう自信の無さが、彼らの心に緊張や不安を引き起こしている。
  • 他人に自己主張をする時の不安は、相手に非難、批判、不快な態度などをされることへの怖れから生じている。この「他人に自己主張をする」時の不安は、「他人の反応がわからない不安」とも言い換えられるだろう。この種の不安のせいで、自らの最低限の「権利」を行使できない人もいる。
  • 「内気に対処するもっともよい方法は、不安な状況を回避することだ」と、”社交不安”の人たちは異口同音に言う。ところが、”回避行動”が大きな弊害をもたらす場合もある。”回避行動”は社会生活の妨げになる上、交友関係を大幅に狭める原因にもある。その上、”回避行動”が習慣化すると、自分の行動を無理やり正当化し始めるおそれがある。”回避行動”を続けていると、”社交不安”はどんどん重症化する。つまり、”回避行動”は”社交不安”に対処する最善の方法どころか、逆に悪循環に陥らせてしまう
  • 認知は、状況のとらえ方を表している。対人関係における特定の状況で不安を感じた人は、身体反応と同じくらいスピーディーに、ほとんど反射的に、その状況についてなんらかの考えを抱く。それは無意識的に、自動的におこわわれるので、努力をする必要もない。そしてたいていの場合、「そうかもしれない」という仮定ではなく、「そうに違いない」「そうに決まっている」など、ほぼ確信として心の中に現れる。しかも不安を強く感じる人の場合、特定の考えがパターン化している傾向が高い。たとえ事実に反していようと、いつも同じ考えがことあるごとに意識の中に入り込む。まさに「思い込み」だ。そしてその思い込みは、非常に根が深いので、簡単には修正できない。
  • 最悪のシナリオが現実になる可能性は非常に低い(ゼロとは言わないが)。ところが不思議なことに、”予期不安”を抱く人は、何十回、あるいは何百回と予想が外れても、懲りずにまた最悪のシナリオを作り出す
  • パーティで会話が苦手な人は、その場に溶け込む努力をしないせいで、本当に誰とも会話ができなくなるかもしれない。その結果、「自分は非社交的な人間だ」と思い込み、まわりからもそう思われてしまう。この現象は、心理学用語で「予言の自己成就」と呼ばれる。つまり”社交不安”の場合、”予期不安”が的中する確率は完全なゼロとは言えない。もちろん、本人思うほどひどい状態でない場合がほとんど。

(2)社交不安の4つのタイプ

  • ”内気”な人の特徴といえば、よくないところばかりのようだが、実は多くの長所も備えている。まず、他人の話に真摯に耳を傾けて、相手の気持ちを汲み取れる人が多い。距離を置いてまわりを眺めているので、他人のことがよくわかる。職場でも、”内気”な人は高く評価されやすい。他人に好かれたい、高く評価されたいという気持ちが根底にあるため、同僚の仕事を進んで手伝ったり、みんなが嫌がる仕事を引き受けたりして、まわりから「気が利くね」と感心される。
  • ”回避行動”が習慣化すると正確として固定化し、それが本人の人生に重大な弊害をもたらすようになったときに、”回避性パーソナリティ”という精神疾患になる。つまり、”回避性パーソナリティ”は、ある日突然現れるのではなく、ふつうの人の”回避行動”と地続きとなっている。”回避性パーソナリティ”の人は、他人に低く評価されることに強い怖れを抱いており、評価にさらされる状況を避けようとする。
  • ある行動を取っている時に不快な思いをせずに済んでいると、その行動のおかげで不快さから逃れられていると思い、その行動がますます「強化」される(つまり、頻度が増える)。これと同様に”社交恐怖”の人も、他人を回避することで不快な思いをせずに済んでいると、”回避行動”がますます増えてしまう
  • ”社交恐怖”の人は、ささいなことも決して見逃さない。他人が無意識に発した言葉、行動、視線、しぐさを敏感にキャッチし、自分を批判しているのではないかと疑う。「他人は自分に厳しい評価を下す」と思い込み、「もし自分の弱さがバレれば、攻撃され、軽蔑され、嘲笑される」と信じ込む。細かいことにいちいち意味を見つけようとして、”妄想症”とみなされる人もいる。
  • ”内向性”は”内気”とは別物。”内向性”の人は、内面世界に関心があり、他人と一定の距離を置くのを好む傾向にあるだけ。
  • ”社交恐怖”の人が具体的に何を恐れているかというと、ひとつは、他人から揶揄されたり攻撃されたりすること。もうひとつには仲の良い友だちやグループから不評を買ったり嫌われたり仲間はずれにされること。行動や身体反応の「症状」にまわりの大人が気づくことで、子どもの”社交恐怖”を早期発見できるかもしれない。

(3)どうして社交不安を感じるのか

  • 認知とは、あらゆる「自分自身との対話」。ものの見方は人によって異なる。同じ情報を受け取っても、それをどう考えるかはその人次第。極端に一般化するのも”社交不安”の人の特徴。ひとつの出来事、ひとつの結果をすべてと思い込む。彼らの発言には、「いつも」「決して」「みんなが」などの単語が頻繁に登場する。
  • ”社交恐怖(社交不安症)”の人の認知は、極端にネガティブであるとわかっている。彼らは、どうとでも取れるあいまいな状況をすべてネガティブに解釈し、よくないことが起こるはずだと悲観的に捉える。こうした「脳のはたらきのエラー」を発見し、改善するのは、”社交不安”の克服に非常に有効。
  • 私たちは一人ひとり、誰にも見えないところに、他人や自分に対するさまざまな信念や価値観を隠し持っている。それは「中核的信念」と呼ばれる。中核的信念は、私たちが自身に課した個人的なルールで、たいていは「~しなければならない」「~すべきである」という命令調で自らの言動を律している
  • すべての”社交不安”の根底には、「他人に高く評価されたい」「相手に気に入られたい」という思いが秘められている。そしてたいていの場合、その「クリアすべき基準」は非常に高いレベルに設定されている。自分のあるべき姿、自己イメージの理想が高すぎる。だからこそ、目の前のハードルの高さにプレッシャーを感じ、大事な場面でいつも通りの行動がとれなくなってしまう。
  • 感染防止のためのマスク着用は、多くの”社交不安”の人に、対人関係における心の平穏をもたらした。顔の半分ほどが見えなくなることで、感情や赤面を隠せるようになり、職場でもプライベートでもリラックスして話せるようになった。一部の人たちにとって、マスクなしの生活に戻るのはかなり厳しかった。やはり”社交不安”にとって、長期の”回避行動”は要注意

(4)社交不安を克服する

  • 医学的治療を受けることへの恐怖や羞恥心をなくすこと。とりわけ、「精神科」に通うことへの躊躇を捨てる。今のところは心のバランスを保てているという人、”回避行動”によって一時的に平穏を得ている人の場合、治療を決意するのはなかなか難しいだろう。だがこういう人も、長期的に見れば重症化のリスクが高いことは覚えておいてほしい。
  • 心理療法については、とくに認知行動療法(CBT)が”社交不安”の治療にもっとも有効で、持続的な効果が得られると判明している。もちろんCBTも奇跡を起こせるわけではない。
  • 療法士がカウンセリング中に患者にノウハウを伝授し、次のカウンセリングまでにひとりで実践してもらう指導をすることもある。ものの見方や行動様式を変えるトレーニング法を患者自身が習得し、治療終了後も継続して行ってもらうためだ。おそらくこうしたことが、症状が再発せず、効果が長続きする理由のひとつだろう。もちろんそのためには、患者自身も積極的に治療に取り組み、自らの行動を観察したり、内省したりしなくてはならない
  • ”社交不安”の人は、不安を感じる状況から逃げ出し、自分だけの世界に引きこもりがち。そうすることで多少は不安がやわらぐので、無意識にそういう行動様式を習慣化させてしまう。この傾向から脱却するには、まずは不安を感じる状況から逃げ出さないことが大切。だが大人になると、いったん習慣化した行動様式を変えるのは難しい。それを可能にするには、行動療法の代表的なメソッド、エクスポージャー療法が有効。私たちは逃げ続けている限り、恐れをなくすことはできない
  • 問題を具体的にとらえて、力を注ぐ方向を定めない限り、”社交不安”は克服できない。「ひどく内気なんです」ではなく、いつ、どこで、誰と、何をしていると”内気”になるのか、問題点を明らかにすることから治療が始まる。
  • エクスポージャーは、たとえ苦手な状況に立ち向かっても、決して悲惨な状態にはならないこと、耐えられないほどの恐怖に襲われるわけではないことを、本人が理解できるようになるために行われる。そのためには、十分に時間をかけて行う必要がある。不安がだいたい半減するまで繰り返し行うことが大切
  • エクスポージャーに成功すると、本人の中核的信念(スキーマ)が変わることさえある。多少のことでは揺らがないはずの頑固な”スキーマ”が、「行動すれば治る」という行動療法の原則に従うことで修正される。確かに、何年も回避しつづけてきた状況にうまく立ち向かえるようになれば、自分に対する評価が180度変わってもおかしくない
  • 自己主張ができるようになるためのトレーニングについて、簡単に要点を説明する。まず、日ごろの対人関係において、自己主張をしたい状況を選ぶ。そして、「行動様式」だけでなく「ものの見方」にも気を付けるよう心掛ける。不安な状況に置かれた時、”回避行動”や”攻撃的行動”をもたらす思い込み(「自分が意見を述べると、すべてが悪いほうに転がる」「欲しいものを手に入れるためには、ある程度威圧的にならなくてはならない」など)をしていないか、きちんと見極めなくてはならない。そして最後に、トレーニングの目的を忘れないこと。上手に自己主張ができるようになり、対等で楽しい人間関係を築くために訓練を行う
  • 他人とうまくやれずに、自分らしい生き方などできない。”社交不安”の人たちは、職場で他の人たち以上にストレスを感じている。仕事上のストレスの要因(心理社会的要因)はいろいろあるが、対人関係はもっとも重要なものの1つ。とくに”社交不安”の人は、無作法な相手やハラスメントに対して戦える術をほとんど備えていない
  • 人間は、他人との交流を通じて自分自身を築く。対人関係から吸収する栄養は、食物からの栄養と同じくらい、人間形成には必要不可欠。よい対人関係を築いている人は、そうではない人に比べて、心の病から守られている。いや、心だけでなく、多くの身体の病からも守られている。

3.教訓

私も今の職場で、日々どこかに「恐怖」を抱えながら働いています。
表向きは普通に仕事をしていても、胸の奥ではずっと緊張が抜けないような感覚があります。

というのも、周囲の“許容の幅”がとても狭く、説明が少しでもわかりにくかったり、背景事情が複雑だったりすると、こちらがどれだけ準備を重ねていても、「そんなの知らない。それはそちらの都合でしょう」と切り捨てられてしまうことがあるからです。
その瞬間、努力ごと否定されたような気持ちになり、言葉が続かなくなります。

本来、仕事は趣味ではなく、依頼する側もされる側も、同じ方向を向いて進めていくものだと思っています。
それなのに、どうしても対立の構図が生まれてしまい、同じ部署にいながら一体感を持てないまま働いている──そんな日々が続いています。
その状況に慣れたふりをしていても、心のどこかではずっと疲れが溜まっていくのを感じます。

本書を読み、自分の中に「他人をこわがっている自分」が確かにいることに気づきました。
そして、同じような思いを抱えている人が世の中には一定数いること、今まさに自分が関わっている相手の中にも同じ不安を抱えている人がいるかもしれないこと──その事実に、少しだけ救われるような気持ちにもなりました。

さらに、社交不安には認知行動療法が有効で、避け続けているだけでは恐れは薄れないということも学びました。
逃げてきた自分を責めるのではなく、「ここから変わっていけるかもしれない」と思える一文でした。

まずは、以下の本を読み直しながら、セルフモニタリングから始めてみようと思います。

bookreviews.hatenadiary.com