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命綱なしで飛べ トマス・J・デロング著

1.はじめに

帯に、「Amazon.com 生涯で読むべきLeadership&Success本選出!」とあるので、あまり迷うことなく手に取りました。自分以外でも帯だけ見て買った人が一定数いると思います。

それを見た期待値の高さと、税込1,980円という価格設定が自らハードルを上げてしまい(奇しくも本書でも”ハードルは常に上がる”話は出てきます)、本件記載日時点でAmazon評価が3.7に留まっている要因ではないかと推察いたします。

ただし、フラットに見れば、真実をついたよい内容と思います。

以下では印象的な部分を引用していきます。

2.内容

(1)なぜ失敗をおそれる?

  • 問題は「望ましいことを見事にこなす」段階にどうすれば至れるかということ。「成長」に至るには、「勇気と弱さ」のスペースを通過するしかない。何かを見事にこなすには、何かを「恰好悪くてもいいから」しなければならない
  • 成功に至る道はまっすぐではない。予期しない方向に迂回しなければならない。だが、それによってさらに大きな仕事ができるし、人生の満足感が味わえる。

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(2)3つの大きな心配

①目的
  • ただ「仕事をしている」と感じるだけなら、いかにうまくできているか気にする必要はないはず。だが、目的を持たずに仕事を続けていれば、いつ不安に忍び込まれる。不安を感じるようなら、あなたは目的を持たずに仕事に臨んでいるかもしれない
  • 職場でも上の人たちの言っていることとしていることが違うと感じることはないだろうか。もしあるなら、あなたは会社にとって重要だと言われても、「それにふさわしい扱いを受けていない、だから信用できない」となるだろう。
  • 自分の目的がはっきりしないということになったら、自分で対処しなければならない。業界や会社に変化があれば、自分自身も変えるときと受け止める
  • 事を曖昧にされて不安になるなら、真実を聞かされたほうが絶対にいい。曖昧な状況に置かれた人は、自分がまさに曖昧な状況にいると気づいていない。事実が明らかになったほうが安心できるはず。たとえ否定的なフィードバックであっても、それで自分が今どこにいて何に取り組む必要があるかはっきりすれば、すべて前向きに受け止められる
②孤独
  • 「自分は組織の輪の中にいないのでは?」という認識が正しいか正しくないかは問題ではない。この認識が現実に影響を及ぼす。自分は見限られたと思い込むと、仕事に支障をきたし、充実感が得られなくなる。現実に除外されていなくても、不安で生産的でなくなる。そのうち周囲との衝突も避けられなくなる。
  • 仕事を始めるにあたり、まずはしかるべきスキルの習得にまい進しなければならない。これにより、組織の戦力として迎えられることになる。高いスキルを身につければ周りから認められ、組織との絆も築ける
  • 結果を強く求める者は、”重力”に引きつけられるように自分は取り残されていると感じ取る。注意してほしいのは、外的な力でなく、あなた自身が作り出す重力によってそう感じ取っているかもしれないということ。
  • 上司や同僚に率直に話してみれば、気持ちが落ち着き、不安が解消することがほとんど。注意してほしいのは、くどくど自分がおそれていることを話したり、自分の立場を守ろうとしたりしないこと。何が不安なのか手短に要点だけ伝える。
③意義
  • どの世代であろうと、みんな自分の仕事が重要であると思いたい。求めているのは、自分が重要である思わせてくれる上司であり、リーダーだ。上の人たちには、ちょっとしたことでもいいから伝えてほしい。
  • どの組織においても高い能力を持つ人たちはわずかで、堅実に仕事を進める人が大多数というのが現実。堅実に仕事に取り組む人は、自分は組織にとって重要だと他の人に思わせてもらうのを待ってはいけない。そうではなく、自分は意味がある仕事をしていると自らの行動を通して思わなければならない
  • 期待は精神的な重荷になることもあるが、それ以上に自分は重要であると感じられる。うまくいけば、自分は何か重要なことを成し遂げたと思えるはず。だから、クライアントにも上司にも「君にはこれをしてほしい」とはっきり伝えてもらうのがよい。

(3)4つの罠

①忙しさの罠
  • 多忙はアピールしたくなる。自分がどれだけ忙しいかを示すことで、自分がどれだけ重要かを思わせようとしている。
  • 忙しくしていれば、能力を発揮できずにいるという恥ずかしい思いはせずにすむ。その根底には、「自分は何をしたらいいのか本当はわかっていない」という事実を認めたくない心理があるのかもしれない。
  • 目指すべきは、ただ「忙しさの罠」から逃れること。何も見えないような忙しい状態にならずにすむように行動を管理できれば逃れられる。常に忙しくあろうとする自分を管理する方法を学び取れば、仕事の進め方を大きく変えられる
②人と比べる罠
  • 「人と比べる罠」にはまると、目標の達成は常に困難になる。そして困難な目標を達成すると、次に目指す目標の達成難易度がまたさらに押し上げられる。「人と比べる罠」にはまってしまえば、どれだけ結果を出しても決して満足できなくなってしまう
  • 仕事で結果を強く求める者は、誰もが「人と比べる罠」にはまらないように、さまざまなことを経験する必要がある。経験の幅を広げるように努めること。経験を深め、広げることで、「人は自分にないものを持っている」と真っ先に空想せずに済む。自分が置かれた状況を客観的に分析することができるはず。
  • どれだけ手に入れても比較の基準が存在し、ハードルは常に上がる。比較競争ゲームは刷新が随時図られる。人と比べるばかりで、「自分は何者で、どのような存在か」といったことを冷静に考えてみることはなくなる。
③人を非難する罠
  • 「しかるべき責任を認める」段階に至るには時間がかかることをまずは認識してほしい。問題を自分の中で処理することなく、恥をかくこともおそれず、しっかり自分の役割を果たさなければならない。そのうえで、自分の弱さをさらけ出せれば、人を非難しようなどと思わないはず。
  • 人は大体、自分には人を理解する特別な才能があると思っている。だから君も同じように特別な力があると考えていい。でも覚えておいてほしい。まわりのほとんどの人も、同じように自分には特別な力があると思っている
④心配の罠
  • 適度な心配は、集中力を高めるかもしれない。しかし、その度合いがあまりに強いと効果的でなくなる。むしろ、ぬるま湯(コンフォートゾーン)から抜け出せなくなってしまう。慣れた状況から飛び出せば、さまざまな心配事を目にすることになるから。
  • 完璧な答えはないし、どちらが正しくないか判断するケースも増える。どちらを選んでも誰かが不快な思いをする。このような場合、どうしたらいいか頭で分析せず、本能で判断する。
  • 私たちはどんなメッセージや行動にも「意味」を見出そうとする。情報不十分であっても、何を伝えようとしているのか理解しようとする。その結果、あいまいな態度を取ったりすると、否定的に解釈されかねない

(4)乗り越える

①過去を「過去のもの」にする
  • 自分は間違いを犯すかもしれないし、はっきり言葉にできないこともあると認めるのは、実は強さの表れ。勇気を持ってそう認めることで、「望ましくないことを無難にこなす」から「格好悪くてもいいから望ましいことをする」へとついに昇華できる。それによって学び、変化し、成長する力が得られる。
  • 後悔や怒りを言葉にして吐き出せば、心にいつまでも貼りついていることはない。言語化するーすべて吐き出してしまおう。時間をかけて頭の中にため込んで何度も再生するくらいなら、その時間とエネルギーを生産的なことに使うべき
  • 大切なのは、あなたの物語が唯一絶対ではないと認識すること。すべての物語には2つ(あるいはそれ以上)の側面がある。これを理解することで、私たちは変われる。自分に話してきた自分の物語は一面しか伝えていないかもしれないと気づけば、ほかの人の見方も受け入れられる
②フェアな人と組む
  • 勇気を出して、手を差し伸べてくれる人を探そう。そんなふうには見えないかもしれないが、その人はあなたが求めることをしっかり受け止めてくれるし、親身になってあなたの話を聞いてくれる。
  • いちばん大切なのは、あなたが聞きたいことは言わない人をあえて選ぶこと。白を黒と呼んでしまっている、あるいは黒を白と考えてしまっているときに、その間違いをずばり指摘してくれる人だ。
  • 助言者に次の3つの簡単な質問に回答してもらうことで、貴重な意見が得られる。
  1. 私は何をやめるべきか?
  2. 私は何を続けるべきか?
  3. 私は何を始めるべきか?
③命綱なしで飛べ!
  • 「命綱なしで飛ぶ」のは、「目をつぶって飛ぶ」のとは違う。「命綱なしの飛行」が機能するのは、準備が整い、よく考えたうえで、自分の弱さをさらけ出し、勇気を持って行動に臨むのがいいと判断できるときだけ。
  • 不安を感じる、リスクを伴う可能性がある状況に直面したとき、目をそらさず、前に進むのが正しいと信じて、前進する覚悟が時に必要。それによって、「望ましいことをする」という強い意志を持てる。まばたきしない勇気は、「必ず乗り越えられる」という信念に根差している
③一歩動いて「波」に乗る
  • 傍らに立ってダンスをする人たちを見つめていれば、「ただそれだけの人」になってしまう。さらにまずいことに、そうやってただ傍から見ているだけだと、受け身の姿勢が染みついてしまい、自分から何かしようと考えられなくなる
  • なぜあのときああしなかったのかと、心をくじこうとしているわけではない。この残念な気持ちや後悔の念を認識することが大事。これを受け止めて反省することで、同じ過ちを繰り返す可能性が低くなる。
  • いちばん大切な人たちと過ごす「大事な時間」が割けないのであれば、何のための人生か?さらに言えば、こんな状態で高い成果を出すためのリスクを冒そうと思えるだろうか?家族や友人の支援がなければ、大きなチャンスが訪れたときに飛びつくことはできない
④傲慢にならない秘訣
  • すべてがいい方向に転がりだしたら、まわりに「感謝の気持ち」を示すことが重要。達成したことを謹んで受け入れるのは問題ないが、自分ひとりで成し遂げたとは思わないこと。感謝すべき人がまわりにいる。
  • 仕事を見事にこなした満足感に浸ることなく、次のタスク、次の仕事を考えてしまう。だから意識的にペースを落とし、仕事を達成した喜びを味わおう。少しのんびりする。それによって、この成功をもたらしてくれた人たちに感謝の気持ちを示したいと自然に思えるはず。
  • 「格好悪くてもいいから望ましいことができる」ようになるには、自分の弱さを示し、自分を知らなければならない。それができれば命綱なしで飛べる。思い切って飛んでみれば、着地先でさらなる成長が期待できる。

3.教訓

この本は、読む人を選ぶような気がします。ある程度の経験をして自分の信念を持ったうえで、少し問題意識を持っている人、この現状を変えたいと考えている人でないと、この本を読んで、「なるほど!」とは思えないように感じました。

また、よくない事例がこれでもかというくらい登場するので、メンタルが弱い状況で読むと、再び自己嫌悪に陥ってしまうかもしれません。

以上を踏まえたうえで、しっかりと本書を向き合うことができれば、命綱なしで飛ぶとはどういうことかを理解し、よい方向に向かうきっかけになると思います。

  • どれだけ社会人経験が長かろうが、役職が上だろうが、未経験の仕事を始めるときには自分よりも既存メンバーのほうが業務内容を理解しているし、自分よりも本質をとらえて仕事をしている人はいる。
  • そういう状況で、自分の体面にこだわっても仕方がない。独力でできる仕事などほとんどない。わからないことや自分の弱さを認め、周りの協力を仰ぎ、周りに感謝できないと、さらにその先には進めない。