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なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である 中島聡 著

1.はじめに

「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」という題名を見て、何も気にならない、というビジネスパーソンはそう多くないと思います。

そういう私も、以前から本書は気になっていました。実際に読んでみて、具体的な時間管理テクニックというより、時間に関するマインドセットの話と感じました。

担当目線・上司目線、双方の立場を織り交ぜながら、仕事の進め方についての考え方が提示され、多くの示唆がある良本だと思います。

2.内容

(1)なぜ、あなたの仕事は終わらないのか

  • 日本の職場で今最も蔓延している病気といえば「なるはや病」。「締め切りは明治しないけどとりあえず早めにやってくれると助かるのでなるべく早くやってくれ」という、極めてあいまいな指示が飛び交う日本企業特有の病。あいまいな指示に部下も緊張感を欠き、クオリティの著しく低い仕事を提出することになったり、最終的に締め切りまでに仕事が終わらなかったりする。
  • 仕事が終わらない理由を大きくまとめると、次の3点に集約される。
  1. 安請け合いしてしまう:実際に仕事に手を付けてみて、ある程度こなしてから、やっとできるかどうか判断できる。そうした慎重さを欠いて安請け合いすると、仕事は終わらず、上司からの信頼も失ってしまう。
  2. ギリギリまでやらない:締め切り直前の仕事は効率が大幅に手化する。なぜなら締め切りを破って上司に怒られるなどの嫌なイメージがノイズになって集中できないから。
  3. 計画の見積もりをしない:機能を追加で搭載するかどうか決めるべき時期は、製品化に向けた開発の初期の段階。そうすれば製品化までに必要な期間を見積もることができる。

(2)時間を制する者は、世界を制す

  • 仕事のリスクは、まず自分で計るしかない。自分で計った結果、期間内に終わらないということがわかったら、すぐに上司に言えばいい。ここでリスクを計らずに愚直に仕事を進め、締め切り間際になって「終わりそうにありません…」と報告されるのが会社にとって最悪。締め切り間際にスケジュールの再調整に追われる上司がどれだけ大変か考えてみてほしい
  • 仕事とは、どんなに頑張って100%のものを作っても、100%ではなく90%や80%に見えてしまうもの。100%のものは、そんなに簡単に作れるものではない。クオリティが低くて怒られるよりも、締め切りを守れずに「時間を守れない人だ」という評価をされることを恐れる
  • 石膏を削って胸像を作るとき、いきなり眉毛の一本一本にこだわって細い彫刻刀を使う人はいない。そんなことをしても、後になって全体のバランスがおかしくなって失敗するだけ。ふつうはまず大きく輪郭を粗削りするところから始める。つまり、プロトタイプを作るとはそういうこと。
  • 締め切りの前に締め切りがあると考えなければならない。締め切りに間に合わせようと考えていても、締め切りには間に合わない。締め切りを狙ってはいけない
  • 花を用意するという任務を与えられた以上、あなたは花屋がいかなる理由で花を届けることができなくても、責任を持って花を準備しなくてはならない。あなたの任務は花屋に花を注目することではなく、花を用意すること

(3)「ロケットスタート時間術」はこうして生み出された

  • イデアをなるべく早く目に見える形にすると、フィードバックを早く得られる。百聞は一見に如かずで、言葉で説明することが難しいときは形にして見せてしまうのが一番いい

(4)今すぐ実践 ロケットスタート時間術

  • 「最初はのんびりしていても、最後に頑張ればなんとかなる」という根本的な過ちを改めるところから始めないといけない。ラストスパート志向の一番の欠点は、最後の最後までそのタスクの本当の難易度がわからないという点にある。どんな仕事でも、やってみないとわからない部分が必ずある。
  • 時間に余裕があるときにこそ全力疾走で仕事し、締め切りが近づいたら流す。最初の2割で仕事の8割を終わらせる。とにかく猛ダッシュロケットスタートを切ることが重要。
  • ロケットスタートを実践するコツは、前倒しで取り掛かること。仕事の提出を前倒すのではない。取り掛かりの時間こそ前倒す。
  • いつも全力を出していると、真の実力を発揮できなくなる。最初の2割で8割終わらせるというのは、スラック(余裕)を意図的に獲得するための戦略。8割終われば、残りの期間は流しで仕事をすることができる。
  • メールに気を取られることで、メインの仕事の効率が落ちているということを忘れてはいけない。メールの返信が早くてもメインの仕事が遅い人の評価は高くない。あなたの仕事はメールを素早く返信することではなく、仕事を終わらせること
  • メールや電話、ほかの仕事のことを気にし始めると、メインの仕事に割くリソースが減ってしまう。重大なタスクに没頭するためには、ほかのこまごまとした仕事に悩んではいけない。認知資源は、最大限メインの仕事にのみ割くべき

(5)ロケットスタート時間術を自分のものにする

  • そもそも「他人の仕事は遅れるもの」という認識を強く持つことからはじめよう。ほとんどの人が納期に仕事を間に合わせられないことは、容易に予想のつく誤差の1つ。
  • 相手が仕事を終わらせないことと、あなたの仕事が進められないことは、厳密に考えると別の問題。だから、相手の仕事が上がってこなくても、何とか自分の仕事が進められないか徹底的に考え、自分にできる仕事を進めていく

(6)時間を制する者は、人生を制す

  • 何かの実践のために知識が必要な場合、知識はやりながら覚えていくべき。つまり、崖を飛び降りながら飛行機を組み立てていく。
  • 集中力は、好きだからこそ自然に出てくるもので、好きでもないものに対して無理やり絞り出すものではない。無理に集中力をひねり出す前に、根本的なその問いに向き合ってほしい。
  • 実際のところ、新製品のアイデアを思いつくことは、世の中を丁寧に見ている人には決して難しくない。難しいのは、そのアイデアを目に見えて触ることのできる、実際に動くものにしてしまう部分
  • 「今ある製品、サービス、考え方に、何か使い勝手の悪い部分、気に食わない部分はないか?」「やりたいことがあるのに、今はまだその願望を満たしてくれる製品やサービスがないな…」という視点で常に世の中を眺め続けることが重要であり、それを習慣化することこそが難しい
  • 「無理だ」という人の多くが実は、そのことについて実際にはほとんど何も調べてもいないし、考えてもいない人だ、ということを、強く心に刻み込む。
  • 仕事のことを考えて行動することは、相手に遠慮することに優先する。会社は成果を上げる人を必要としているし、本当に会社のためになるのであれば必ず耳を傾けてもらえるはず。あなたの仕事は、あなたの仕事を終わらせること

3.教訓

自身も管理職になってからわかったことですが、それぞれの業務担当者が、手を付けているのかいないのか、進んでいるのかいないのか、期限が近づくにつれ、ものすごく気になるものです。

そして、期限ギリギリになって、「できました!」と持ってくるのが、自身のイメージしていた方向感とは大きく異なる、相応に作り込まれたものが提出され、絶句することもあります。上席や他部にも展開するものなので、個人的な意見ではなく、客観的に見てこう思うよ、と伝えても、自分が頑張った部分があるので、なかなか修正に応じてもらえないこともあります。

そのため、普段から以下を伝えるようにしています。

  • 本文はいきなり書き始めずに、見出し・目次から作ること
  • その見出し・目次を見るだけで、この資料の論旨がわかるようにすること
  • 最初から100点を目指さず、とにかく早めに第1稿を持ってくること

自身で内容を確認するときも、以下のような手順を踏んでいます。

  1. 上から細かくチェックするのでなく、まずは全体をザッと眺めて、引っ掛かる部分がないかを確認します。
  2. パーツ同士のつながりや、この書き出しであればこういう展開で結びがくるはず、という感覚の部分をつかんでから、そうであればこの一文はこの表現のほうがよい、という風に考えていきます。
  3. そして、ここを修正するなら、手前の説明もあわせて直したほうがよい、部分と全体のバランスを整えていきます。

時間がなくて忙しいと思うのでなく、限られた時間をどのように配分し期限までに仕上げるかという、逆算思考を意識していきたいと思います。