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組織が変わる 行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2on2 宇田川元一 著

 

1.はじめに

以前、著者の本を読んで感銘を受けたため、2冊目を拝読しました。

bookreviews.hatenadiary.com

表題では、対話の方法としての「2on2」が提唱されていますが、これはあくまで1つのやり方に過ぎず、実践的な対話とはどういうものか、について記述されていると理解しました。

そのため、対話そのものを中心に引用し、2on2の具体的なやり方の紹介はせず、詳しい内容を知りたい方は直接本を手に取っていただければと思います。

2.内容

(1)組織で対話が必要な理由

  • 誰か優れたリーダーが変革するのではなく、私自身から継続的に日常的な”小さな”変革を積み重ねられると認識を変えることが重要になってくる。たとえるなら、閉塞感漂う組織の変革は、「慢性疾患」状態の変革。
  • 対話が目指すところは、問題を単に解決するだけではない。むしろ、問題の解決行動を一度ストップして、背後にあるモヤモヤとした課題の存在に気付くアラートとして捉える点に特長がある。一人ではなく、他者とともに様々な角度から眺めることによって、自分では気づけなかった背後の課題へアクセスする入口を見つけることができる。

(2)組織が抱える慢性疾患へのアプローチ

  • 組織の慢性疾患の6つの特徴は、①ゆっくりと悪化する、②原因があいまいでお特定できない、③背後に潜んでいる、④後回しにされがちである、⑤既存の解決策では太刀打ちできない、⑥根治しない。
  • 対話のポイントは、表面化した問題をすぐに解決しようとせず、どうしてその問題が起き続けるのか、メカニズムを理解していくこと。この際に気を付けなければならないのは、問題を単純化しないこと。
  • 状況を変えたいマネジャーが、部下が自分から動けない背後にある複雑なメカニズムを理解しないまま、マネジャーの理解の範囲内で状況を単純化している状態を”独話(モノローグ)状態”と呼ぶ。この独話状態を変えていく対話(ダイアローグ)が有用になる。
  • 認識のすれ違いが起きたときこそ、対話のチャンス。問題が出てきたら面白がるくらいの心づもりでいるのがよい。対話をしていくと、どうして問題が起きるのかがわかってきたり、意外な発見があったりする。
  • 問題の単純化が起きる2つの理由は、①問題を既存の解決策で解決できると考えるから、②問題は解決しさえすればいいと考えるから。その結果、問題は掘り下げられず、慢性疾患は放置される。慢性疾患を放置すれば合併症が生じる。
  • 慢性疾患に対して、既存の単純化アプローチを採用することは大変危険。大切なことは、慢性疾患が一体どういうものか対話的に解きほぐすこと。そうすることで、問題の発生を通じて、よりよい組織を作っていくことにつながる。
  • 心理的安全性は結果的に高まるものであって、心理的安全性を高めることに注力するのは慢性疾患悪化への入口。盲点は、互いに何でも言い合えるようにすることにフォーカスし過ぎて、どんな理由があって言いたいことを言い合えなくなっているかがほとんど考えられていないこと。

(3)対話とは何か

  • 対話を一言でいうと、”今見えている問題の枠組みから抜け出し、問題の捉え方を変え、組織をよりよい状態に導くための取組”。対話とは、その断片を持ち寄り、何が起こっているのか、みんなで理解をつくっていくこと
  • 対話に必要な4つのステップは、①問題を眺める、②自分もその問題の一部だと気づく、③問題のメカニズムを理解する、④具体的な策を考える。
  • 各々が正しいことを主張し続けても、問題は平行線のまま。どこかで、互いのナラティブの接点を見つけなければならない。それが対話するということ。相手には相手なりに一理あることを認める。そこに何か物事を進めていく手がかりがある。自分のナラティブの偏狭さに気づき、押し広げていく実践こそが対話
  • 対話とは、相手を自分の目的達成のために道具的に「巻き込む」前に、まず相手のナラティブが自分とは異なるものであることを理解しなければならない。相手を「巻き込む」前に、相手に「巻き込まれる」、つまり、相手のナラティブに参入することが重要
  • 対話は決してわかり合うことを目指して行うわけではない。そうではなく、組織の慢性疾患に対して、セルフケアをする核心が対話。
  • 対話で気をつけるべきことは、「なぜ?(Why)」と問うのをやめてみること。「なぜ?」ではなく、「どんなときに?」「いつ頃から?」「どんなきっかけで?」「どんなふうに?」「関わっている人は誰だろう?」と自問してみる。
  • 誰でも自分が提案したことにネガティブな反応をされたらショック。自分とは違う世界で生きていた現実を突きつけられた、味方だと思っていたのに裏切られた、という気持ちが湧き起こってきたかもしれない。しかし、あなたの提案に価値が無いわけではない。相手のナラティブの溝にうまく橋が架からなかっただけ。
  • 人間は互いに違うナラティブを生きている。その前提に立つと、「どんなことが起きているのか」と観察をスタートできる。小さな変化も感知できるようになる。大事なのは、同じナラティブを生きなくても、ともに仕事はできる、ということ。

(4)新しい対話の方法「2on2」とは何か

  • 2on2とは、他者の力を借りて、普段自分のとらわれている解釈の枠組みからいったん離れて物事の見方を変える、4人で行う対話の方法。
  • 2on2の目的は、普段きちんと話し合えていない組織の慢性疾患問題に対し、具体的に起きている問題を話し合っていくことで、問題発見や対処方法の向上させること。
  • 2on2で最も重要なポイントは、一気に問題を解決しようとは思わないこと。問題解決モードを抜け出し、対話モードで慢性疾患に迫ることを目指している。

(5)2on2を実施する際にやってはいけない6つのこと

①2on2を実施する理由が共有されていない
  • 問題を共有せずに、一方的に集められて困惑すること自体が、部署の慢性疾患をよく表している。
②すぐに問題解決策を言ってはいけない
  • すぐに問題解決策を言ってしまうと、問題の背後について考えることができなくなってしまう。問題解決策を言うとは、その問題はすでにわかっていると宣言することであり、それ以上、何が問題なのかを考えることを放棄することだと肝に銘じる。
③全部周りのせい、他人のせいにしない
  • 経営者に限らず、マネジャーやメンバーでも、自分ではなく周りを変えようとしがち。この問題には2つのアプローチが有効。
  1. 自分は何に困っているのかを理解する
  2. 自分も問題の一部だと気づく
④きれいに終わらせようとしない
  • そもそも自分が何に困っているかわかっていないことがわかった、程度で終わるかもしれない。案外、当事者役の人がそう思ったりするもの。問題解決モードとは違う対話モードで、いつもの仕事を眺めてみる萌芽的視点が出てきただけでも収穫。日々の仕事が違って見えてきて、変化の入口に立てる。
⑤周りの人たちは自分の話を始めない
  • なぜ自分の経験談を話を始めることがよくないかというと、問題を単純化してしまうから。当事者役が投げかけた問題について、十分に観察せずに、自分の既存の枠組みで解釈しては、まったく対話になっていない
⑥目新しいだけで始めない
  • 組織の慢性疾患のないところに、新しい方法だからとやってみようと取り入れるのは大きな間違い。ニーズがないのにツールを押し付けられたら、メンバーはたまったものではない。それこそ時間の浪費。

(6)なぜ、2on2を開発したのか

  • 「自分では気づけないことを他者は簡単に気が付く」のはよくあること。なぜかといえば、自分とは別のナラティブでその出来事を解釈しているから。棚卸段階含め、一緒に取り組むことができたら、対話のプロセス自体がより充実したものになる。
  • 「部署間で仕事の押し付け合いがあって、毎回うんざりする」といった悩みはよく耳にする。それを「上層部の組織設計の問題だ」「うちの会社の文化は・・」といった大きな問題にしてしまっては、何も変化は生み出せない。まず、その問題に対し、自分がどう困っているのか、何が嫌なのか、今後どうしていきたいのか、そこに目を向けていくが、現状を変えていく一歩
  • 文化の問題という前に、自分もその問題を構成する一員という認識が持てると大きな一歩。自分はその問題の外側にいるのではなく、もう一方踏み込んでその問題のメカニズムや、自分がその問題にどう関わり、どこからアプローチできるかを探っていく姿勢が必要
  • 組織という実体がよくわからないものを変えようとしなくても、自分の困りごとに対して変革はできる。そのとき「うちの会社は少し変わったな」と思えるのは、組織自体が変わったのではなく、あなたと周りの人たちの問題に対するアプローチの仕方が変わったのだ。
  • うまくいっていない仕事において大切なのは、なぜその人がその行動を取ったのか掘り下げること。何がその人に無責任な行動をさせたのか。何か自分たちにできることはなかったのか。大事なのは犯人探しではなく、他者の語りを通じて問題をとらえるナラティブを広げること。人が問題なのではなく、問題が問題

3.教訓

本書にある2on2を始めようとすると、直接の当事者でないが理解力のある人を呼んできて、2on2の枠組みを理解してもらってから始めないといけないので、1回のミーティング時間はそれほどかからないかもしれませんが、トータルの時間は一定量が必要になろうと思います。

また、そういうことに時間を使うということに組織として理解が得られないと、「何をあいつらは無駄話をしているんだ?」と思われかねません。

ただ、冒頭にも書いた通り、2on2という形式の打ち合わせをすること自体が目的ではなく、その主旨を理解したうえでしっかり対話して、問題を認識し、解決の一口を探ることが目的だと理解しています。

その意味で、上述の2(5)の「やってはいけない6つのこと」は、1on1だったりコーチングだったり、他の形式の打合せや面談のときにもしっかり応用の利く内容で、有用な感覚を持つことができました。

また、自分も問題の当事者である認識を持つことや、その問題が起こった背景から考えること、変えられる範囲のものにフォーカスしてアプローチの仕方を考えることについても、改めての気づきや理解を得ることができた良本でしたし、「他者と働く」の復習にもつながりました。