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アイデアのつくり方 ジェームス・W・ヤング著

1.はじめに

本書は数年ほど前に買って、一度読んだだけで本棚にしまいこんでいました。

しかし、業務フローを改善したり、新たな組織に業務移管したりと、いろいろと考えることが増え、どう対処すればうまく行くかを考える際に本書のことを思い出し、再読するに至りました。

以前に読んだときより、本書の意味するところがよりよくつかめたような気がします。

以下では、どうすればよいアイデアが手に入るのかについて、印象的だった部分を引用していきたいと思います。

2.内容

  • イデアの作成はフォード車の製造と同じように一定の明確な過程であるということ、アイデアの製造過程も一つの流れ作業であること、その作成に当たって私たちの心理は、習得したり制御したりできる操作技術によってはたらくものであること、そして、なんであれ道具を効果的に使う場合と同じように、この技術を修練することがこれを有効に使いこなす秘訣である、ということ。
  • パレートは、この世界の全人間は二つの主要なタイプに大別できると考えた。1つは「スペキュラトゥール」(投機的タイプの人間)で、このタイプの顕著な特徴は、パレートによれば、新しい組み合わせの可能性につねに夢中になっているという点。
  • もう一つのタイプは「ランチェ」(株主)。この種の人々は、彼の説によると、型にはまった、着実にものごとをやる、想像力に乏しい、保守的な人間で、先にいった投機的な人々によって操られる側の人々。社会構成グループの総括的説明としてのパレートのこの学説の妥当性をどのように考えるかは別として、誰しもこの二つのタイプの人間が現実に存在することは認めるにちがいない。
  • どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことはまず第一に原理であり第二に方法である。これはアイデアを作りだす技術についても同じこと。特殊な断片的知識というものは全く役に立たない。
  • 知っておくべき一番大切なことは、ある特定のアイデアをどこから探し出してくるかということでなく、すべてのアイデアが作りだされる方法に心を訓練する仕方であり、すべてのアイデアの源泉にある原理を把握する方法
  • 事物の関連性が見つけられると、そこから一つの総合的原理をひきだすことができるというのがここでの問題の要点。この総合的原理はそれが把握されると、新しい適用、新しい組み合わせのカギを暗示する。そしてその成果が一つのアイデアとなるわけである。だから事実と事実の関連性を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切なものとなる。
  • 心の技術は五つの段階を経過してはたらく。大切なことはこれら五つの段階の関連性を認め、この五つの段階を私たちの心は一定の順序で通り抜けるという事実-本当にアイデアを作成したいのなら、この五つのどの段階にもそれに先行する段階が完了するまで入ってはいけないという事実-を把握すること。
  1. 資料集め:一つのアイデアを構成するということはつまり私たちが住んでいるこの万華鏡的世界に一つの新しいパターンを構成するということ。このパターン製造機である心の中に貯えられる世界の要素が多くなればなるほど、新しい目のさめるような組み合わせ、即ちアイデアが生まれるチャンスもそれだけ多くなる
  2. 心のなかで資料に手を加えること:資料集めという職人的な仕事、つまり第一段階での仕事を実際にやり遂げたと仮定して、次に心が通り抜けねばならぬ段階は、これらの資料を咀嚼する段階。この段階を通り抜けるとき、まずちょっとした、仮の、アイデアが諸君を訪れてくる。それらを紙に記入しておくこと。どんなに突飛に、あるいは不完全なものに思えても一切気に留めないで書きとめておく。これらは生まれてくる本当のアイデアの前兆であり、それらを言葉に書きあらわしておくことによってアイデア作成過程が前進する。
  3. 孵化段階:アイデア作成のこの第三段階に達したら、問題を完全に放棄して何でもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに心を移すこと。第一の段階で食料を集めた。第二の段階ではそれを十分に咀嚼した。いまや消化過程が始まったわけで、そのままにしておくこと。ただし胃液の分泌を刺激すること
  4. イデアの実際上の誕生:その到来を最も期待していないときに訪れてくる。アイデアの訪れてくるき方は、アイデアを探し求める心の緊張をといて、休息とくつろぎのひとときを過ごしてからのこと。
  5. 具体化・展開させる段階:そのアイデアを実際に力を発揮しなければならない場である現実の過酷な条件とかせちがらさといったものに適合させるためには忍耐づよく種々たくさんな手をそれに加える必要がある。この段階までやってきて自分のアイデアを胸の底にしまいこんでしまうような誤は犯さないようにして頂きたい。理解ある人々の批判を仰ぐこと。良いアイデアはいってみれば自分で成長する性質を持っている。良いアイデアは人々を刺激するので、その人々がアイデアに手を貸してくれる。自分では見落としていたそのアイデアの持つ種々の可能性がこうして明るみに出てくる。

3.教訓

本文だけなら10数分、解説も含めて30分あれば読み終わるくらいの分量です。

ただ、この本はさらっと読めば知識がつく、アイデアが湧くようになる、という筋のものではありません。読み終わったその日から、アイデアを出そうと日々意識し、継続的に努力・修練することが求められます。

イデアは単にセンスのあるなしで左右されるものではありません。アウトプットのために日々インプットするのも大事ですが、やみくもに貯めればいいものでもありません。つながりや組み合わせを意識し、思いついたことを紙に書き留めながら、常に頭を働かせることが重要です。

また、何かしらアイデアを思いついたのなら、批判されるのを恐れず、前に出すことが大切です。「こんなこと言ったら笑われないか」「批判を受けるのではないか」と思っていたら、頭の中に留まってしまい、そのアイデアが日の目を見ることはありません。他者の厳しい目にさらされ、反対意見もうまく取り入れながら、関係者との共同作業によって仕上げていくことで、そのアイデアがより堅固になります。

以上のことがよく理解できる良本です。