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銃・病原菌・鉄(下) ジャレド・ダイアモンド著


 

1.はじめに

先日は、上巻についてのまとめを実施しました。

今回は、第3部以降について(主として下巻、上巻最終章となる11章含む)、印象に残った点を残していきます。

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2.内容

(3)銃・病原菌・鉄の謎

①家畜がくれた死の贈り物
  • 戦史は、偉大な将軍を褒めたたえいているが、過去の戦争で勝利したのは、必ずしも最も優れた将軍や武器を持った側ではなかった。過去の戦争において勝利できたのは、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側にその病気をうつすことができた側である。
  • 病原菌は、その進化の過程で、ある個体から別の個体へ感染するためのさまざまな手段を編み出してきた。自然淘汰においては、うまく伝播して感染個体の数を増やすことができ、より多くの子孫を残すことができる病原菌が結局は生き残る。病気になったときに出てくるさまざまな「症状」は、実は病原菌が感染を広げる手段に人間を使おうとして、感染個体の体の働きを色々巧妙に変化させていることの表れである。
  • 集団感染症は、狩猟採集民や焼畑農業の集落などでははびこり続けることができない。この種の病気がそうした少人数の集団に登場するのは、病原菌が外部から持ち込まれたときである。少人数の集団では抗体を持つものがおらず、ひとたび流行が起こると、全員が感染してしまう。
  • われわれが病気にかかるのは、病原菌が進化し続けていることを示している。そして、病原菌は、新しい宿主や媒介動物に適応すれば生き残り、適応できなければ自然淘汰によって排除される。病原菌は、人間の体内という新しい環境で生存し繁殖していけるように進化しなくてはならない。
  • 非ヨーロッパ人を征服したヨーロッパ人が、優れた武器を持っていたことは事実である。より進歩した技術やより発達した政治機構を持っていたことも間違いない。そのような結果になったのは、ヨーロッパ人が、家畜との長い侵攻から免疫を持つようになった病原菌を、とんでもない贈り物として進出地域の先住民に渡したから。
②文字を作った人と借りた人
  • 文字を発明した社会がほんのわずかしか存在しないという事実は、文字システムをゼロから編み出すことの難しさを示唆している。そして文字の発達には、いくつかの社会的要素が不可欠であった。文字が使用されるようになるには、その社会にとって文字が有用でなければならない。文字の読み書きを専門とする人々(書記)を食べさえていけるだけの生産性のある社会でなければならない。
  • 誰かが何かを発明したとき、それがうまく働いていることを知っている人が、わざわざ自分で似たようなものを独自に作り出そうとするだろうか。技術や概念といったものは、「実体の模倣」か「アイデアの模倣」で伝播するのが普通。
  • 文字を読み書きしていたのは、余剰食糧によって支えられた官吏だった。狩猟採集民の社会では文字が発達しなかった。よその社会から借用されることもなかった。食料生産を行わない狩猟採集民たちは、農耕民たちのように余剰食料というものを持たず、文字の読み書きを専門とする書記を養うゆとりがなかった
  • 文字が誕生するには、数千年のにわたる食料生産の歴史が必要だった。文字は、いったん発明されると、交易を通じて急速に広がっていった。勢力の拡大や宗教の流布活動を通じて、経済的および社会的に似た社会へと浸透していった。食料生産は、文字の誕生や借用の必要条件である。しかし十分条件ではない。
  • 驚くべきことに、世界の文字の歴史は、地形を含めた自然環境上の障壁が、人間の発明の伝播にも同様の影響を与えていたことを示している。
③発明は必要の母である
  • 実際の発明の多くは、人間の好奇心の産物であって、何か特定のものを作り出そうと思って生み出されたわけではない。飛行機や自動車をはじめとする近代の主要な発明の多くは、発明された当時、どういう目的で使ったらいいかよくわからなかった。つまり、多くの場合、「必要は発明の母」ではなく、「発明は必要の母」なのである。
  • 功績が認められている有名な発明家とは、必要な技術を社会がちょうど受け容れられるようになったときに、既存の技術を改良して提供できた人であり、有能な先駆者と有能な後継者に恵まれた人である。
  • 技術は、非凡な天才がいたおかげで突如出現するものではなく、累積的に進歩し完成するもの。また、技術は、必要に応じて発明されるのではなく、発明された後に用途が見いだされることが多い。この2つの結論が、記録に残っていない古代の技術に、もっとよく当てはまることは確かである。
  • 技術に対する革新性や保守性を、その社会がどの大陸にあるかで決めることは正しくない。革新的な社会や保守的な社会は、どの大陸にもどの時代にも存在する。また、技術に対する社会的受容性は、同じ地域において常に同じであるわけではない。
  • 難しい発明は、伝播によって広がることが多い。独自に発明するよりも、伝播してくる速度の方が速いからである。
  • 有用な発明は、一つの社会から別の社会に2つの方法で伝播する傾向がある。1つはその発明を実際に目撃したり教わったりした社会が、それを受容し取り入れる方法。もう1つは、その発明を持たない社会が、自分たちが不利な立場に立たされていることを認識し、その発明を取り入れる方法。
  • ヨーロッパ人は、中国で発明された陶磁器技術を、長い時間をかけて自分たちで独自に考え出したが、これは「アイデアの模倣」によって技術が伝播した例。ヨーロッパの職人たちが陶磁器の製造を思いついたのは、目標とするお手本が目の前にあったから。
  • 定住生活の始まりは、持ち運べない所有物をため込むことを可能にしたことにおいて、技術の受容性を決定的に変化させた。野営地から野営地に移動して暮らす狩猟採集民は、持ち運べるものしか所有できない。
  • 食料生産は、定住生活を可能にし、様々なものを貯め込むことを可能にしただけではない。食料生産は、他にも人類の科学技術史で決定的な役割を果たしている。食料生産は、人類史上初めて、農民に生活を支えられた、非生産民の専門職を要する経済システムに基づく社会の登場を可能としている
  • 技術は、すべての条件が等しければ、人口が多く、発明する可能性のある人びとの数が多い地域、競合する社会の数が多く、食料の生産性の高い広大な地域で最も早く発達する
  • 人類の科学技術史は、こうした大陸ごとの面積や、人口や、伝播の容易さや、食料生産の開始タイミングの違いが、技術自体の自己触媒作用によって、スタート時点におけるユーラシア大陸の「1歩のリード」が、1492年のとてつもないリードにつながっている。ユーラシアの人びとがこういうリードを手にできたのは、彼らが他の大陸の人びとよりも知的に恵まれていたからではなく、地理的に恵まれていたから。
④平等な社会から集権的な社会へ
  • 現代世界を統治しているのは、人類史上、どこよりも先に集権化と宗教の体制化を成し遂げた社会の人びとの子孫である。その意味において、政教の組み合わせは、病原菌、文字システム、そして様々な技術革新といった3つの要因と同様、人類史に直接影響を及ぼしている。
  • 首長社会は、首長の存在や権威を正当化するイデオロギーの所有を象徴としている。そして、このイデオロギーの役割は、時間の経過とともに、宗教が担うことになる。首長社会では、首長が政治的リーダーと宗教的リーダーを兼任していることもあった。
  • 宗教と権威の結びつきは、エリート階級による富の取得を正当化した。それ以外に、この結びつきは、次の2点において、首長社会の利益になった。
  1. 社会全体で一つの宗教を共有することによって、赤の他人同士が互いに殺し合うことなく一緒に暮らすための下地ができた。
  2. この結びつきが、遺伝子的な利己心とは異なる、他の人びとのために自己を犠牲にする行為の実践を民衆に動機付け、戦場で命を落とす兵士の犠牲のもとに、武力による征服や抗戦を社会全体として効果的に行えるようにしていった。
  • 集約的な食料生産と複雑な社会の出現は、相互に自己触媒の関係にある。つまり、人口の増加が、より複雑な社会を生み出したのと同時に、より複雑な社会の誕生が、より集約的な食料生産を可能にし、人口を増加させた

(4)世界に横たわる謎

  • 人類の長い歴史が大陸ごとに異なるのは、それぞれの大陸に居住した人びとが生まれつき異なっていたからではなく、それぞれの大陸ごとに環境が異なっていたから。最も重要な違いは、以下の4つである。
  1. 栽培化や家畜化の候補となりうる動植物種の分布状況が大陸によって異なっていた。これが重要なのは、食料生産の実践が余剰作物の蓄積を可能にしたからであり、余剰作物の蓄積が非生産者階級の専門職を養うゆとりを生み出したからであり、人口の稠密な大規模集団の形成を可能したから。
  2. 伝播の速度を大陸ごとに大きく異ならしめた要因も重要。作物や家畜の育成は、気候によって大きく影響される。つまり作物や家畜の育成は緯度の違いによって大きく影響されるために、東西方向に伸びる大陸では作物や家畜が最も伝播しやすかった。東西方向に伸びる大陸で技術が最も伝播しやすかったことも、環境にあわせて技術の内容を変更する必要性がなかったという理由で説明できる
  3. 大陸間における伝播の容易さは、どこも一様だったわけではない。地理的に孤立している大陸もある。
  4. 面積の大きな大陸や人口の多い大陸では、何かを発明する人間の数が相対的に多く、競合する社会の数も相対的に多い。利用可能な技術も相対的に多く、技術の受け容れを促す社会的圧力もそれだけ高い。新しい技術を取り入れなければ、競合する社会に負けてしまう
  • 肥沃三日月地帯や地中海東部の地域に繁栄した人びとは、自分たちの環境基盤を破壊し、自分で自分の首を絞めてしまった。ヨーロッパ西部および北部の社会が同じ運命をたどらなかったのは、肥沃三日月地帯の人びとよりヨーロッパの人びとが賢かったからではない。降雨量が多く、植物が再生しやすい土地だったから。
  • 中国は、政治的に統一されていたために、ただ1つの決定によって、中国全土で船団の派遣が中止された。ただ一度の一時的な決定のために中国全土から造船所が姿を消し、その決定の愚かさも検証できなくなってしまった。
  • 中国では、地域の地理的結びつきが強かったことが却って逆に作用し、一人の支配者の決定が全国の技術革新の流れを再三再四止めてしまうことが起こった。これとは逆に、分裂状態にあったヨーロッパでは、何十、何百といった小国家が誕生し、それぞれに独自の技術を競い合った。1つの小国家に受け容れられなかった技術も、別の小国家に受け容れられた
  • 現代という時代にあっても、新しく台頭して力を掌握できる国々は、数千年の昔に食料生産圏に属しえた国々である。あるいは、そういうところに住んでいた人びとを祖先に持つ移民が作った国々である。

3.教訓

①技術は生み出される土壌は、どうしても与えられた環境に左右されること

②技術は突然生まれるわけではなく徐々に進歩すること

③技術は社会が受容したときに広がるが、社会によって受容度は異なること

④技術のさらなる発展には多様性が重要であること

これは、単に技術の話だけではなく、組織運営でも全く同じだと思います。

すなわち、生産性の高いチームとするためには、普段から何でも言える雰囲気を作り、常に改善を目指す意識を持ち、ルールに沿った画一的な運営でなく一定の遊びを持つことが重要だと考えています。

口で言うのは簡単ですが、うまく実践できるように意識を高く持ちたいと思います。