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1.はじめに
以前紹介した「エッセンシャル思考」の著者の続編です。
エッセンシャル思考は「何を」やるか、それに対しエフォートレス思考は「どのように」やるかを極める技術です。
- 問題は、やる気がないことではない。やる気でなんとかなるなら、誰もが理想的な体型で、お金に困らず、大好きな仕事をしながら、最高の人間関係を築いているはずだ。
- 問題は、どんなにやる気があっても、リソースが限られていることだ。本当に大事なことで成果を出したいと思うなら、働き方と生き方を根本的に変える必要がある。
- 力ずくで頑張るのではなく、一番楽なやり方で最優先事項に取り組むのだ。
以下では、本文中から重要と感じた内容を引用していきます。
2.内容
(1)エフォートレスな精神
①INVERT(展開):頑張れば成果が出るとは限らない
- 大事な仕事をやり遂げられない最大の理由は、まさに困難だからではないのか。そして何かが困難だと感じるのは、もっと簡単なやり方を見つけていないからではないか?
- 努力と根性で何とかしようというのは、一つの考え方に過ぎない。ところが多くの人は、それが唯一のやり方だと思い込んでいる。他のやり方を探ろうとしないまま、限界を超えて頑張り続ける。力ずくでやることに慣れてしまっている。エフォートレス思考は、問題に対するアプローチを180度逆転させる。それは「どうすればもっと楽になるだろう?」と考えるアプローチだ。
- 「楽をするのは悪いことだ」という思い込みを捨てよう。そうすれば、目の前に立ち込めていた霧が晴れる。そして、エフォートレスに日々を生きることが可能になるはずだ。
②ENJOY(遊び):「我慢」を「楽しい」に変える
- 重要なことが楽しくないと考えるなら、それはどんどん後回しになり、実行されなくなるだろう。そして、重要な仕事をしていないという後ろめたさから、遊びを存分に楽しむことさえできなくなるだろう。
- 我慢を美徳とすることをやめれば、重要な仕事を、まるで遊びのように楽しむことが可能になる。嫌なことを我慢するより、楽しくできるやり方を探した方がいい。
- 習慣と儀式は大事な点において異なる。それは、行動したときに満足を感じられるかどうか、という点だ。言い換えれば、習慣は「何を」やるかを問題にし、儀式は「どのように」やるかを問題にする。儀式は行動に意味を与える。
- いつかやってくる満足を、ずっと心待ちにする必要はない。楽しみは常に、今この時にある。退屈なタスクにちょっとした遊びを加えるだけで、タスクそのものが楽しみに変わる。そうすれば、私たちはもっと自然に、エフォートレスに生きられる。
③RELEASE(解放):頭の中の不良品を手放す
- 不平不満は、簡単で価値のないものごとの典型だ。不満を言うだけなら誰にでもできる。そして不満に身を任せるうちに、頭の中に無価値なゴミが溜まり、自由に使えるスペースがどんどん減っていく。すると、エフォートレスの精神に立ち戻ることが難しくなる。
- 不満ではなく、感謝に注意を向ければ、世界に見え方はがらりと変わる。「不足思考(後悔、妬み、不安)」がいっぺんい消え、「充足思考(順調だ、恵まれている、将来が楽しみだ)」へとシフトする。自分がすでに持っているリソースや資産やスキルを正しく評価し、存分に活用できるようになる。
- 不平不満を溜め込むと、「負のスパイラル」が生まれる。ネガティブな気分が高まると、視野が狭まり、新たなアイデアや他者に対して心を開くことができなくなる。心身が縮こまり、使えるリソースがどんどん少なくなる。その結果、そもそも不満の原因だった状況を変える力さえ無くなってしまう。
- 嫌なところは見方を変えればポジティブに解釈できる。そういう態度でいるうちに、相手のいいところがどんどん見えてくる。相手の長所をほめると、相手はすっかり驚いた。いつもネガティブだから、誉められることに慣れていなかった。
- 怒りの感情を雇用する目的は、例えば満たされないニーズを満たすため。すっきりしない気持ちを、怒りが解決してくれるのではないかと期待する。ところが、業績を評価してみると、怒りはあまりいい仕事をしていないことに気づく。リソースを食うばかりで、投資に見合った効果が得られない。その場合、怒りを解雇した方がいい。
- 他人の関心を引きたくて、怒りを雇用することもある。自分が不当な目に遭った話をすれば、周りの人は同情し、慰めてくれるだろう。だがそうするうちに、聞く方も疲れてきて、以前のように同情してくれなくなる。あなたは周りの人に失望し、話を聞いてくれる人を求めてさまよう羽目になる。
- 自分を傷つけた人に対するネガティブな感情を手放してみよう。相手を自由にするためではない。自分自身を解放するためだ。怒りや不満を、感謝と思いやりに変えてみよう。それはただの交換ではない。革命的な変化だ。これを一つひとつ積み重ねるたびに、私たちは少しずつ、エフォートレスな精神に近づくことができる。
④REST(休息):「休み」で脳をリセットする
- 頑張ってもうまくいかないときは、さらに力を入れるのではなく、力を抜くことを試してみよう。ほんの1分間でもいい。活動に中断して休息を取れば、心身は驚くほど回復する。体のリズムに抗わず、リズムに乗って動いてみよう。活動と休息のリズムをうまく使えば、無理せず最高のパフォーマンスが出せるはずだ。
- 睡眠時間をいくら削れるかという競争に意味はない。眠い体を酷使するのはやめて、自然のリズムに身を任せよう。充分な睡眠を取れば、頭がクリアになり、エフォートレスな精神が戻ってくる。
⑤NOTICE(集中):今この瞬間にフォーカスする
- 難しいのは聞くことではない。聞きながらその他のことを考えないことだ。難しいのはその場にいることではない。そこにいながら過去の出来事や未来の予定に気を取られないことだ。難しいのは、何かを見ることではない。雑多な情報を無視して、見るべきものだけを見ることだ。
- 私たちの思考も、さまざまなノイズによって濁らされている。頭の中に余計な考えごとが詰まっていると、見るべきものを見ることが難しくなる。放っておくと、思考がどんどん鈍り、一つのことに集中できなくなる。注意力が下がり、ケアレスミスが増える。やがては、何が大事なのか見分けられなくなってしまう。
- 友人や家族が悩みを打ち明けてくれたとき、私たちはすぐに結論を出そうとしがち。「すべき」の話をすると、悩んでいる人は自分の過ちを責められたような気分になる。すると心が閉ざされ、前向きな話し合いができなくなってしまう。さらに、他人の意見は本人がじっくり考えるためのスペースを奪い、自分で結論を出すことを妨げる。
(2)エフォートレスな行動
あるポイントを超えると、努力の量は結果に結びつかなくなる。むしろ、パフォーマンスが低下する。経済学では、これを「収穫逓減の法則」と呼ぶ。入力の量が一定量を超えると、いくら入力を増やしても出力が増えなくなるという意味だ。
①DEFINE(目標):ゴールを明確にイメージする
- 修正しようと思えばいくらでもできる。だが、あるポイントで完了させないと、あとは手間ばかりかかって効果はほとんど得られない。時間と努力を無駄にしないためにも、「完成」のイメージを明確に定義し、そこにたどり着いたら潔く終わりにしよう。
- 先延ばし癖のある人は、まず何をすべきかというゴールが明確に描けていないことが多い。最初に一歩を踏み出そうにも、どの方向に進んでいいかわからないのだ。ゴールを描くことは、終わらせるためだけでなく、始めるためにも有効だ。心にゴールを思い描くだけで、進むべき道は驚くほどクリアになる。
②SIMPLIFY(削減):手順を限界まで減らす
- 必要最小限のステップを見極めることは、「手を抜く」ことや「品質を落とす」こととは違う。不要なステップは、単に不要なのだ。不要なステップを排除すれば、重要なプロジェクトに存力を注ぐことができる。どんな分野にも言えることだが、価値のない余計なものを付け加えるよりも、完成させるほうがはるかにいい。完成させることは、それだけでも誇れることだ。
- 「やらないことを最大限に増やす」にはどうするかを考える。最終的な目標が何であれ、価値を生み出すステップだけに集中すべきだということ。無駄な手順には機会コストがかかる。本質的でないステップを取り除けば、そのぶん本質的なことに使える時間やエネルギー、脳のリソースが増える。
③PROGRESS(前進):よい失敗を積み重ねる
- 何か新しいことを学びたいと思いながら、難しくて怖気づいていないだろうか。習得すれば生活や仕事に大きな価値があるとわかっているのに、道のりが長すぎてあきらめていないだろうか。失敗なくして習得はありえない。恥をかくのを恐れていたら、何も学べない。
- あえて失敗するのは勇気がいることだ。失敗は怖いし傷つく。失敗した場合の影響が大きければ、それだけ大きな勇気が必要になる。私たちの勇気は無限ではないので、なるべく安く失敗を経験したほうがいい。
- たとえ拙い言葉でも、ただの白紙よりは力がある。拙い言葉を書き始めなければ、名作は決して生まれない。最初から完璧なものを作ろうとして気が重くなっているなら、単純にハードルを下げてみよう。くだらないものを作る勇気が、インスピレーションを呼び込んでくれる。
④PACE(上限):早く着くために、ゆっくり進む
- 最初から大きすぎるゴールを設定すると、すぐに疲れる。疲れて休んだら、遅れを取り戻さなくては焦ってさらに頑張り、どんどん疲弊する。悪循環にはまり込む。
- ゆっくり進めば、ものごとはスムーズになる。観察し、計画を立て、力の配分を考えることができる。ただ、ゆっくりしすぎると、行き詰まったり勢いを失ってしまう。
- 上限と下限を設定し、必ずその範囲に収めよう。下限はモチベーションを維持できる程度には高く、予想外のトラブルが起こっても達成できる程度の低さにしよう。上限は、順調に進んでいると感じられるくらいには高く、しかし疲れてしまわない程度の低さにしよう。リズムに乗れば、作業は流れるように進みだし、絵フォートレスな行動が実現できる。
(3)エフォートレスの仕組化
テコは力を何倍にも増幅させる装置。ただしテコには欠点もある。同じ小さな努力が、大きな悪い効果を生むことがある。力がどの方向に向かうかは、私たちの使い方次第。
①LEARN(学習):一生モノの知識を身に付ける
- 個々のアイデアは、そのままでは直線的な知に過ぎない。しかし、そのアイデアが相互に結び付くと、累積的な知が生まれる。有用な知識は、自分の専門分野の外側からやってくることが多い。最高のアイデアが生まれるのは、既存の知識に「意外な組み合わせの侵入」が起こったとき。
- 読書は、この世で最もハイレバレッジの高い活動。1日の労働時間とだいたい同じ長さの投資(と数円)で、おそろしく賢い人々の発見や知恵にアクセスできる。本をしっかりと読み、自分の血肉にすれば、他の何よりも累積的な成果が得られるだろう。
- みんながやっていることをとても上手にやるよりも、誰もやっていないことをそこそこうまくやった方がいい。さらに、誰もやっていないことをとことん極めれば、あなたの価値は飛躍的に高まる。知識の累積的な成果を得るために、まずやるべきことは、他の人から学ぶこと。だが最終的な目標は、自分だけの知識を見つけだし、伸ばしていくこと。
- 独自の知識を持っている人は信頼される。人もチャンスも集まってくる。「自分だけが知っている」という状態は、何よりも大きなレバレッジだ。独自の知識が評判になれば、何年にもわたってチャンスがやってくる。独自の知識を得るのには、時間と努力が必要。だが一度投資すれば、一生にわたってチャンスを引き寄せることができる。
②LIFT(強化):いちばんシンプルに伝える
- 人に教えると、自分も効率よく学ぶことができる。誰かに教える機会があるかもしれないと考えるだけで、学びの濃度は高まる。集中力が増し、よりよく理解しようと耳を傾ける。自分の言葉で説明するために、根本的なロジックを意識するようになる。人に教えてはじめて、本当に理解することができる。
- すべてを教えようとすると、何も教えられなくなる危険がある。もっとも重要なメッセージを明確にし、それを単純化すれば、たやすく累積的な結果を残せる。
- メッセージはわかりやすいだけでなく、誤解されにくいものでなければならない。無駄に難しい言葉を使わないこと。頭の良さを見せつけようとしないこと。理解しやすく復唱しやすいストレートなメッセージを選ぶこと。
③AUTOMATE(自動化):勝手に回る「しくみ」をつくる
- 極端に複雑な作業をしていると、認知的負荷が課題になり、ミスを起こしやすくなる。必要なのは知識を増やすことではなく、ワーキングメモリに負担をかけない新たなやり方を探すこと。
- チェックリストの優れた点は、考える作業が事前に完了すること。思考の入り込む余地はない。いや、思考は既に装置の中に組み込まれている。だから、その場その場で判断しなくても、毎回正しく実行できる。重要なことを自動化するためには、ローテクなやり方が意外と役に立つ。
④TRUST(信頼):不信のコストを削減する
- 他人との共同作業をもっと簡単にする方法は信頼だ。信頼があれば、人々の調整にかかる労力が少なくて済む。すばやく仕事を分担できるし、問題が起こっても素直に話し合うことができる。貴重な情報を独占せず共有できる。わからないことがあれば気軽に質問できる。意思決定のスピードが上がり、政治的な争いが減る。人間関係の調整に手を焼くことなく、最優先の仕事にエネルギーを集中できる。その結果、パフォーマンスは飛躍的に向上する。
- チーム内の信頼度が低いと、すべてが困難になる。メールを送るだけでも、一言一言がどう受け取られるかと考えているうちに疲弊する。日々の会話が苦痛になる。監視し締切を思い出させ、成果物をいちいちレビューする。そうするうちに「自分でやった方が早い」と感じ、何も任せられなくなるかもしれない。あなたの仕事はどんどん溜まっていく。信頼関係が無ければ、チームのパフォーマンスは上がらない。
- 自分の責任を果たし、適切な判断を下し、やると言ったことをしっかりとやる。細かく指示・管理しなくても、チームの目標を理解し、経営者と同じ目線で仕事に取り組める。そんな人を雇えば、ビジネスはきっとうまくいく。
- 「あなたの判断を信頼する」ーこの言葉を心から言えるとき、チームは魔法のようにうまくいく。メンバーに責任感が生まれ、自信を持ってリスクを取れるようになる。成長し信頼が強まる。そして、信頼は信頼を呼ぶ。
- 人の採用は、エフォートレスな成果を生み出すひとつの決断。一度正しく行えば、何百倍もの価値をもたらしてくれる。逆に一度間違えると、何度も繰り返し損をすることになる。
⑤PREVENT(予防):問題が起こる前に解決する
- なぜ多くの人は、問題を必要以上に長く我慢してしまうのだろうか。それは問題を解決するよりも、ごまかす方が手軽だから。だが、長期的な視点で見ると、計算結果が変わってくる。今日も明日も、その先何百日も同じ問題に悩まされることを考えれば、一度だけ手間をかけて根本的に解決した方がずっとコストが低い。長期的には、きちんと直したほうが絶対に得。
- いつも枝葉を切っていれば、枝葉を切るのはうまくなるかもしれない。だが、それでは問題は解決しない。この先いつまで経っても、同じ問題に悩まされることになる。単に枝葉を切るのではなく、根本からやっつける方法を考えてみよう。
3.教訓
この本は中間管理職なら、誰しもうなづく部分があるはずです。
チーム運営をしていると、以下のような場面には一度ならず遭遇していると思います。
- 不平不満ばかり言って、他人のアドバイスが聞けない
- いろいろなタスクがあって、一つのことに集中できない
- そこまでやらなくてもいいと思うところに時間をかけている
- 完成イメージがなく仕事に手をつけてしまう
そして、中でも特に印象に残ったのは、①一番シンプルに伝えることと、②不信のコストを削減することです。
変にカタカナ言葉を使ったり格調高く説明されても、結局何が言いたいの?と思うことはよくあります。話すことに自己満足するのではなく、それを相手が理解して他の人にも伝えられるくらいを目指すことを意識しなければ、と考えています。
また、本当は任せたいと考えていても、このようにメールを書くとこんな反応が返ってくるんじゃないか、いちいち反発されるなら最初から自分で対応してしまった方がよいのでは、と考えているうちに、結局自分の時間が足りなくなる、ということも実際に起こっています。
信頼感があって、自然とチームがうまく回る仕組みを作らないと、と思いながらも道半ばで止まっているので、改善を目指したいと思います。