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世界で一番やさしい会議の教科書 榊巻 亮 著

1.はじめに

表紙だけ見ると、ちょっと漫画っぽい軽い感じの本かと想像します。

しかしながら、会話調で進んでいき少し笑いの要素も入るものの、中身は至って真面目な「会議をより良くする具体的な方法論」が展開されています。

冒頭、「一生涯で会議に費やす時間は3万時間」「1日10時間活動できるとして約8年分」という途方もない時間量が目の前に置かれます。そうすることで、確かに何とかしたい、と思うようになります。

実際、著者の榊巻亮さんは、ファシリテーション型のコンサルティング企業の代表者です。あとがきで、「この本で紹介したファシリテーションのスキルは、すべて現場の会議室から生まれたホンモノ」と記載されています。

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上述の通り、会話調の部分もあって、そこは形式を整えつつ、印象的だった内容を以下に引用します。

2.内容

(1)確認するファシリテーションを始める

  • ファシリテートは「促進する・容易にする」という意味。ゴールを達成するための活動を促進するということ。会議は何かを決める場。だから、何かを決めることを促進する、容易にする技術ということ。そのためにいろんな工夫をする。
  • 会議が終わったタイミングで、”決まったこと、やるべきこと”を確認する。確認したことが間違っていてもかまわない。間違っていれば誰かが訂正してくれる。やるべきことは、”誰が、いつまでに、何をするか”を明確にする。
  • 決まったことは、会議の最初や途中に散らばっている。時間が経つと忘れてしまう。最後にもう一度確認することで抜けが無くなる。
  • たかが確認、されど確認。確認しただけで、決まったことが皆に分かって、会議を促進することができる。必ずしも司会者として場を仕切る必要はない。それを”隠れファシリテーター”と呼ぶ。
  • 会議の終了条件を確認する。初めからそれが共有できていたら、全員がそれを決めるために必要な議論だけに集中しようとする。なぜならみんな早く会議を終わりにしたいから。
  • 「終了条件に合致する状態を作り出そう!」と全員が思っていれば、自然とベクトルがそろう。逆に終了条件が不明確だと何をどのくらい議論すればいいのか分からないから、好き勝手に話し始める。だから議論が発散する

(2)書くファシリテーションを始める

  • 議論がかみ合っていない状態を解消するには、会議の内容をそのまま書けばいい。発言をそのまま文字で書く。書く時には、”意見”、”論点”、”決定事項”を意識して書き分けると、スクライブしやすくなる。
  • 議論は”問(論点)”に対する”回答(意見)”が積み重なって成立している。そして、複数の問(論点)を同時に議論することはできない。つまり、”たった今、何の問(論点)について話をしているか?”を明確にすることが、議論をかみ合わせるうえで極めて重要になる。
  • そもそも会議の参加者は他の人の話を聞いていないもの。次に自分が何を言うか考えていたり、やり残した仕事のことを思い出していたり。書き出しておけば、多少話を聞き洩らしても議論にしっかりついていける。「挙がった議論を記憶し、思い返して全体を俯瞰する」ことに脳のパワーを割かなくて済むのが大きい。
  • 書けないところは確認すればいい。発言している本人も整理がついてないまましゃべったりしているから、聞くことでまとまった発言をしてくれるようになる。みんの理解も進むし、いいことだらけ。
  • 書くスピードについていけないことも、スクライブして初めて分かる。まずやってみる。うまくできなくて困る、だから解決策が欲しくなる。困ってない人に解決策を先に渡してもなんの意味もない。
  • 議論を止めてまで「なんと書けばいいか?」と確認するのには抵抗がある。ところが、「スクライブされることで、まとまらない発言をしている自分に気づく」と言われる。書きづらいのはスクライブの技術不足が原因ではなくて、単に議論がぐちゃぐちゃしているから。
  • スクライブの重要な役割は、”議論の見える化”と”議論の整流化”であり、スクライブしやすいように議論を誘導することで、理路整然とした議論が展開されるようになる。

(3)隠れないファシリテーションを始める

  • 悪かった点を出し切らないうちに施策の議論に入ると、重要じゃない議論に時間を使ってしまったり、論点が行ったり来たりして、とっ散らかった議論になる。出し切るまでは次の議論に入ってはならない。挙がったものから議論を始めるとキリがないし、時間がいくらあっても足りない。一度課題を出し切って、優先度の高いものから議論したほうがずっと効率的に進められる。
  • 問題解決には5つの階層がある。下の階層で意見が一致していないと、上の階層では絶対に意見が合わない。一見遠回りなように見えても、階層4の認識合わせまで立ち返って議論をかみ合わせたほうが、結果的に結論が出るまでの速度も納得度も上がる。
  1. 効果:どの施策が効果が大きいのか
  2. 施策:どんな解決策があるのか?
  3. 原因:なぜそれが発生するのか?
  4. 問題:具体的にどう困るのか?
  5. 事象:何が起こっているのか?
  • 黙っている人の5分類。そんな状態で結論を出しても、後から物言いが付いたりするもの。だから、発言していない人はきちんとケアする。どんな状態であれ、黙っている人にしゃべってもらえないと、会議に納得感は生まれない。口数が少ない参加者に対して、発言の場を作ってあげる必要がある。
  1. 議論についていけない
  2. 何かモヤモヤした思いがあるが、まとまっていない
  3. 何か言いたいことがあるが遠慮している
  4. 他の人の意見と同じなのでわざわざ話さなくてもいい
  5. 議論に興味がない
  • 言い切らせる工夫をする。会議をよく観察してみると、発言の語尾があやふやで、言い切っていない発言が本当に多いことに気づく。日本語は文脈に重きを置くから、多少あやふやでも伝わってしまう。しかし会議では言い切ってもらわないと何が言いたいのか分からない。質問なのか、単なる意見なのか、改善の要望なのか分からなくなってしまう。
  • ファシリテーターが「どうしましょう?」と言ってるばかりじゃ先に進まない。だから進め方を提案して、参加者に確認する。会議が促進されるように、タイミングよくいい提案ができるのが優れたファシリテーターの条件。会議が促進されゴールが達成できるなら、手段は選ばない。
  • ファシリテーターは常に正しいことを言わないといけない」という強迫観念にとらわれる人がいる。「今の話はよく分からなかったけど、質問したらバカだと思われないか」なんて思う人もいる。でも本質は全く逆。どんどん間違っていい、どんどん否定されていい。その結果、参加者の理解が進み、議論が進むならファシリテーターは立派に役割を果たしている。ファシリテーターが分からないことは、どうせ他の人も分かっていない。

(4)Prepするファシリテーションを始める

  • 「準備が完了した」と言えるのは、”4つのP”がそろった状態。
  1. Purpose(目的):終了条件の確認
  2. Process(進め方):会議の終了条件にたどり着くために会議の流れを考える
  3. People(参加者):必要な人を漏らさず呼び、貢献しない人は呼ばない
  4. Property(装備):プロジェクター等の設備
  • 終了条件がすべての出発点になる。終了条件を満たすために必要な参加者を呼び、終了条件を満たすために必要なプロセスを組み立てる。
  • 終了条件を満たすために、誰に参加してもらわないといけないかを考える。「いたほうがいいか?」と考えると、多くの場合、「いないよりいたほうがいい」という結論になってしまう。逆に、「いないと何が困るのか?」と考えるほうがいい。
  • 「議論に必要な情報は何か?」「それを基にどう議論するといいだろうか?」と考えてみるといい。実態が分かっていないと、憶測で議論することになってしまう。想像力が足りないから、むしろ想像しようとすらしないから、会議がグダグダになる
  • ”会議は主催者が作るもの”という先入観を取っ払ってほしい。参加する人全員に会議を良くする責任がある。少しでも生産性を高め、より良い場にする責任がある。

3.教訓

私が社会人になったころは、ファシリテーションなんていう言葉は広く一般には存在しませんでした。それが、数年前からは、もう当然のように認知されているスキルの1つになり、研修でもメニューとして提供されるようになりました。

確かに、グダグダな会議に出くわすこともあります。「これ、自分が出る意味ある?」と思うことも、これは自分には関係ないからと内職することもあります。この本が出版されたのは2015年で、今より前に読んでいたら、もっと会議を回せる人になれていたと思います。

本書を読み、チームミーティングも、発言内容がわからなかったら質問する、最後に今日決まったことをまとめる、ということをはじめ、会議の実効性向上をはかりたいと宣言しました。

また、「こういうことに取り組んでいるがうまくいかない」と報告を受けた際には、「それより前に、そうなってしまう原因は何か?何が具体的に困っているか?」を聞くようにしています。

 

読書も会議と似たようなところが多いと思います。頭の中でなんとなく思い描いている知識や内容が、どこまでわかっていて、どこまで実践できていて、どこからわかっておらず、どの点が至らないのか、文字になった内容を目で追うことでよくわかるようになります。

さらに、このブログのように、気になった点や今後意識したい点をアウトプットとして最後にまとめることで、自分の血肉になっていくと考えています。