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1分間マネジャーの時間管理

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1.はじめに

本書の目次より、はじめによりも前に、以下のことが記載されています。

管理職はマネジメントに時間をかけるべきであって、「やらなくていいことを効率よくやる」ことに時間をかけてはいけない。

ふむふむと読み進めるうちに、本書は以下の第10章”マネジャーの時間管理法:「サル」を背負うべきは誰か”が元になっていること、それをさらにかみ砕いて実践的な内容になり理解しやすくなっていることに気づきました。

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もともとは章構成なく31の見出しに分かれていますが、それを自分なりに再構成して目次立てをしたうえで、印象的な部分を引用していきます。

2.内容

(1)サルの正体

  • サルとは”次の対応”のこと。部下に任せておけばいいサルをわざわざ引き受けるということは、サルが好きというメッセージを発しているのと同じ。だから部下は当然のように私にサルを寄こしてきた。
  • 私たちは日常のあらゆる場面で、頼まれもしないサルをいとも簡単に引受ける。そして自分のサルをほったらかし、相手を甘やかし、相手が自力で問題を解決する機会を奪っている。余計な世話を焼くと人をダメにしてしまうという現実。世話を焼かれた相手は自信を失い、焼いた方は自分のサルにかまう余裕がなくなる
  • 経験とは自分の身に起きたことではない。自分の身に起きたことにどう対処したかを言う。

(2)オンケン流サル管理の心得

可能な範囲で部下にサルを任せれば、部下はそのぶんだけ自分たちで現場を仕切れる。

サル管理の心得の狙いは、何を、誰が、いつまでに、どのように実行するのかを確定すること。

①第1条 サルの特定:”次の対応”を具体的に決める
  • 上司と部下は”次の対応”を決めるまで話し合いを切り上げてはいけない。”次の対応”が決まるまで話し合いが終わらないことが分かっていれば、部下も自分なりの考えを準備してから話し合いに臨むようになる。
  • ”次の対応”を決めることでサルの担当者のモチベーションが飛躍的に上がる
  1. ”次の対応”が決まると目的意識が明確になり、意欲と集中力が違ってくる
  2. 最初の一歩を踏み出しやすくなる
  3. ”次の対応”を決めることにより大きなプロジェクトを小さなステップに分割できる
  4. 最終目標と小さなステップの間で気持ちを交互に切り替えられる
  • 部下の相談に乗っている途中で時間切れになり、問題の特定も”次の対応”も決まらないまま話を切り上げなくてはいけない場合、”次の対応”はサルの預け先を決めること。話し合いを再開するまで、この案件を保留しなくてはならない。部下に預けるほうが少しは進展が望める。その少しがミクロ単位だとしてもゼロよりはいい。自分が預かったら、進展する可能性は完全にゼロ。
②第2条 サルの世話係:”次の対応”の担当者を決める
  • 上司と部下は各サルの担当者を決めるまで話し合いを終えてはいけない。人間は他人のモノより自分のモノを大切にする。第一、サルの担当者を決めなかったら、連帯責任は無責任という結果になりかねない。
  • のちのち感謝されるリーダーというのは、たとえ反発されても、相手にベストを尽くさせる。相手の力を最大限に引き出すことができれば、いずれは尊敬され、慕われる。責任感を育てるには責任を与えるしかない
③第3条 サルの保険:万一のリスクに備える
  • 上司と部下はすべてのサルに保険をかけるまで話し合いを切り上げてはいけない。その狙いは部下の自由裁量と上司の結果責任とをうまく兼ね合わせること。
  • できるだけ現場から手を引き、必要なときだけ現場に口を出す。それを徹底するために「着手してから上司に報告する」タイプを推奨し、必要なときだけ「上司の承認を得てから着手する」タイプを指示するように心がける。
④第4条 サルの定期健診:進捗報告会の日時と場所を決める
  • それほど大事なサルだから、元気でいてもらうには定期的な健康診断が欠かせない。そこで上司と部下はサルの定期健診の日程を決めるまで話し合いを切り上げてはいけない
  • 「とにかく健康診断は実施する。”やりそびれた手当て”について話そう」と返答する。これで担当者は二者択一を迫られる。そのまま何の手当もせず、翌日に「進展はありませんでした」と報告するのか、それとも何らかの手当をして「進展がありました」と報告するのか。どちらがいいのかは明々白々。
  • 部下と相談して健診の日程を決めたら、その場でカレンダーに書き込む。文字にすることで、ただの口約束よりも正式になり重要性が増す。こうした姿勢を見せることは、私が何を歓迎するのかを示すと同時に何を歓迎しないのかをほのめかすことにつながる。

(3)究極のマネジメント-サルの一任

  • マネジメントとは人を使って仕事を達成すること。その定義に従えば、マネジメントの出来は管理職のもとで現場がどれだけ結果を出すかに表れる。他の条件が同じなら、少ない労力で部下を大きく動かす管理職は効率がいいことになる。
  • コーチングの目的はプロジェクトを一任できる環境を整えること。その環境を整えるには、管理職は次の2点を確認してからでないと任せてはいけないし、そもそも任せられない。この2点をクリアしないで部下に主導権と責任を渡すのは、一任でなく放任
  1. プロジェクトが軌道に乗っていること
  2. そのプロジェクトを仕切るだけの能力が担当者にあること
  • 上司はコーチングを経て初めて、部下にあとを任せられるかどうか判断できる。その判断材料を提供するのは、言うまでもなく部下の務めであり、自分の力量をアピールして上司の信頼を勝ち得なくてはならない。第一、部下が実力を証明してくれなかったら、上司はあとを任せたくても任せようがない。
  • つまり一任とは、単なる”行為”ではない。十分なコーチングを通して初めて成立する”状態”を指す。キャッチが良ければまずいパスもナイスパスになる。パスが良ければ受けた選手はナイスキャッチと褒められる。

(4)3つの時間

①上司にあてる時間
  • 上司がいる以上は多少の手間ひまを覚悟しなくてはいけない。ビジネスの世界には金(権力)を持つ者がルールを決めるという黄金律がある
  • 上司の要望は常に聞き入れる。上司の要望が気に入らなかったら、要望の内容を変えてもらえばいい。しかし、聞き入れる姿勢を変えてはいけない
②ルーティンワークにあてる時間
  • ルーティンワークにあてる時間とは、社内の決まりを守って、あるいは所属部署以外の要請に応えて手続きに費やす時間を指す。
  • 我々の仕事は事務方のサポートなくしては成り立たないし、こちらから協力を仰ぐことのほうが多い。だから、組織の中で生きていくには彼らのルールに従わなければいけない。時間がもったいないからと言って決まりを無視すると、結果的にさらなるルーティンワークを強いられることになる。
③自分にあてる時間
  • この時間が他の2つよりも大切なのは、組織のなかで個を発揮できる唯一の時間だから。その中でももっとも尊重するべき自由活動の時間は、プレッシャーにさらされると真っ先に無くなってしまう。なぜなら、社内のニーズを軽んじると、目に見える制裁が即座に下るから。
  • 上司の意向に逆らえば反抗的と思われる。社内の決まりを守らなければ協調性がないと責められる。部下との約束を後回しにすればクズ呼ばわりされる。私たち勤め人はそうした批判にめっぽう弱い。
  • まずは部下にあてる時間を減らす。仕事のスタイルを改めると、部下がそれに応え、現場の生産性と士気が向上。すると安心して部下に現場を任せられるようになり、その結果部下の自由裁量と私の時間が増える
  • その時間を上司にあてたら、信頼を得ることに成功し、自分にあてる時間がさらに増える。増えた時間を他部署との付き合いにあてたら、少ない時間で多くの協力を得られるようになる。ようやく管理される立場から管理する立場になる

3.教訓

会社やポジションによると思いますが、管理職になれば1日に数百通のメールが届き、確認依頼を求められる文書はかなりの数になります。

それに対し、一言一句漏らさず見て、いちいち首を突っ込んで、すべての手を下していては、時間がいくらあっても足りません。仮に時間に余裕があったとしてもそうすべきではないと考えています。

すべて上司が咀嚼し、作業を分解し、道筋を示し、あとは決められたことをやるだけ、となれば、とある部下にとっては非常に楽かもしれません。しかしながら、そこには自分の工夫する余地は限られ、なぜそういう判断に至ったのかもわからないので、その上司が抜けてしまうと、自分で1から組み立てができない組織体制が残ってしまいます。

また、一任することと丸投げとは大きく異なります。ある程度その組織を見ていたら、この人にはここまで任せても大丈夫、ということがわかってきます。任された担当者からしたら、「また自分にばっかり仕事が降ってくる」と思うこともあります。ただし裏を返せば、信頼されていることの証であることを理解してもらえたらと願っています。

自分で責任が取れることを理解しながら相手に任せる、そして組織全体の基礎能力が上がっていくことをこれからも目指していきたいと考えています。

管理職だけでなく、プロジェクト単位のリーダー的な役割の人も含め、自分が働きすぎていると思っている人には大変おすすめの内容です。

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