管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

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コンサルが「マネージャー時代」に学ぶコト 高松 智史 著

1.はじめに

本書のP.149にも記載されている通り、以前、丸善丸の内本店の入り口の一番目立つところに大量に緑ボンが平積みされているのが気になり、手に取りました。

kanataw.com

その印象が強く、本書が発売されて店頭に並んだとき、あぁあれの続編だな、とすぐに”ピンッとくる”ものがありました。

タイトル通り、前作よりもマネジメントに寄った内容ですが、必ずしもコンサルでマネジャーをする人だけでなく、私のような事業会社の人が読んでも(管理職でなくても)考え方自体は非常に勉強なります。

以下では、一部、MD=上席と書き換えたり、ご本人もあとがきで”「言葉遣い、表現」を大げさに、強めにわざと書いた”と考えた部分について、表現ぶりの調整をしたりしたうえで引用しています。また、足元では営業職ではないので今回は取り上げませんでしたが、「営業の鉄則」について触れられているページもあります。

印象に残る箇所や業務に直結する内容は、読む人の職種や立場によって、それぞれ異なる部分があると思います。MDって何?実際にどんな表現をされているの?と気になる方は、ぜひご自身の手に取っていただければと存じます。

2.内容

(1)マネジャー1年目=「インテレクチャルリーダーシップを磨く」

  • 論点マネジメントはインテレクチャルリーダーシップの始まり。TASKマネジメントは時代遅れの「優しさ」のリーダーシップの始まり。ただただ、TASKの進捗確認をする人だよね、などと言われてしまう。
  • ホワイトボードに、①今回、解くべき問い=論点はクライアント、そして上席とズレはなく、ちゃんと理解し言語化を行って彼らと議論したか? ②その論点をベースにサブ論点、サブサブ論点を立てて、クライアントや上席、そしてチームメンバーと議論し、言語化された形で共有されているか? ③論点と紐づく形でTASKが整理され、言語化された形で共有されているか?
  • アウトプットがズレてしまった原因は、「マネジャーである自分」だと考えた方が健やかに成長できる。そしてその成長に一歩としてすこぶる大事なのは、「ズレる」構造をちゃんと理解しておくこと。理解するからこそ、わざわざ「論点ワード」を書くし、書かせる。
  • しっかり丁寧に思考された「論点ワード」があると、健やかに考えられる・書けるを通り越して「誰が考えてもそのTASKになる」となる。良質の「論点ワード」の先に、良質の「ワークプラン」あり。
  • 何かネガティブムーブが起きてから、何かしらの対策を練ることを「後出しじゃんけんと呼ぶ。これこそがマネジャー、誰かをマネージする上でやってはならないことの1つ。
  • 「答えのないゲーム」をしているということは、インプットが変われば、仮説も180度変わるということ。たった1つのインタビュー、クライアント発言、上席のインプット、チームメンバーのFACT、ニュース、競合のニュースリリースなどで180度進むべき方向は変わる、大いに変わる。さようなら、初志貫徹。
  • チームメンバーから反発が来ることを大いに理解し、その方がマネジャー自身の業務量は増えるにもかかわらず「朝令暮改」になっているときは、「何か新しいインプットがあったに違いない!」と考える
  • 集まっている情報など関係なく「この基準で評価すべき?」を思考し評価基準を立てる。その上で、その評価基準で評価するために情報を取りに行く。なければ推測するという「評価基準→FACT+推測」が大事。
  • コンサルタントは「地上戦」を好む。地味に地道にFACTを集め、課題を丁寧に積み上げ、「凡庸にも思える」打ち手に落ち着く。言葉だけが飛び交う議論の「空中戦」じゃなく、「地上戦」やろうぜ。
  • ①「これが課題だ!」と思ったらもう一段「これが課題もどきだとすると?」と思考する習慣をつける。②その上で「何故?」を繰り返すわけだが、そこに「構造的に考えてみると」を付けると思考しやすくなる。③原因と真因との区別は恣意的なので、まるで正しい答えがあるかのように「真因」を神秘的に扱わない。むしろ、「打ち手の裏返しで決めただけ」と思うべき。
  • 「まとめスライド」はどんなに忙しくてもチームメンバーに書かせてはいけないし、上席がどんなにぐりぐり出しゃばってきても、「赤ペン先生」はしてもらっていいけど巻き取られてはいけない。
  • 「まとめスライド」を書くのは「最初も最初」。パワーポイント資料が何もないときに、最初に「まとめスライド」から書く。本パッケージのメッセージを補完・サポートするために、どんなスライドを作ればいいのか?であり、決して「出来上がったパワーポイント資料をどうまとめればいいのか?」ではない。

(2)マネジャー2年目=「クライアントへ自分を売り込む」

  • 「当たり前なこと」を言うときは必ず、「今から言うことは当たり前ですよ」と理解させる枕詞を付けて話す習慣をつけよう。インテレクチュアルリーダーシップは「3番目に思いついたことを言う」で攻め、「見たままですが」で守る
  • ①「ただただ、書いてあることを読んだだけだろ」を避ける。②「まずは黙って読ませる」ことで、相手に浮かんだ「質問」に答える形で進められる。だから盛り上がる。③そして「黙って読んで理解してもらう」ことを前提としているので、アウトプットの質が自然と上がる。何故ならプレゼンでごまかせないから。④そして、「読まずして」質問してくる輩も排除できる。⑤きっちり「まとめスライド」を書く。だって、この1枚から「黙って読め」が始まるのだから。
  • ホチキスパッケージとは、チームメンバーが作ってきたスライドに表紙・中表紙をつけて「ホチキス」で止めて資料としたもの。そして、これこそが、マネジャーの矜持として愚の骨頂。マネジャーの矜持としては、チームメンバーの全てのアウトプットは大いなるインプット。自分でインプットとし考え、アウトプットする。それを手足として、チームメンバーに助けてもらう。
  • 上席のせいで炎上したとき、プロジェクトが「有事」のとき、任せていたチームメンバーが「明後日の方向」に作業していて、すべてが無駄になったとき。「1日あれば大丈夫」がマネジャー。「もっと早く言ってもらわないと」がマネジャー未満
  • クライエントと距離を詰めるためには、本来ならプロジェクトのスコープから外れているとか、その組織のためというよりは「対面」のキーマン個人の役に立つことが大事。「宿題」をもらいにいくのは当たり前。できれば、「個人的な」宿題を取りに行く。
  • 「YESマン」でよかったのは遠い昔。今は甘えられない。これからは「(その場で考えて、時には)リジェクトマン」の時代。
  • 「正しさ」だけでは人は動かない。「時間」「政治」「意固地」のマネージが必要。ディベートしてしまうと、人はより頑固になる。いかに素直に考えてもらうかが大事。
  • 「構造化」には価値はない。構造化は「中身」の整理の仕方であって、「中身」は変わらない。だから、「構造化」の前に「中身」の磨き方を勉強する。
  • 「考え切っていないこと」を上位者、つまり「頭の良い人」と議論してしまうと、面倒なことしか起きず最悪の結末になりがち。だから、そんな上席に最初の「0→1」部分というか、最初の思考=「たたき台」を作らせてはいけない。あくまで、「上席はインプットをくれる人、今の考えを磨いてくれる人」と思う。
  • マネジャーは、クライアントのキーマンの目の前に座り、彼ら彼女らが放つ「予想もつかない」質問や議論についていかねばならないから、「瞬発力」が求められるようになる。瞬発力は「頭の回転の速さ」もあるが、ほとんどがメンタリティで、次の3つの呪縛から解き放たれる必要がある。
  1. 「その場で」考えるのができないのではなく、「その場で」考えることからそもそも逃げている。
  2. 「その場で」出した結論と、「1週間後に」出した結論は大きく異なると思っている。
  3. 「その場で」出した結論と、「1週間後に」出した結論が真逆の結論になったら大問題だと思っている。
  • 圧倒的に喋ることを準備しきった、頭が真っ白になっても話せるという心理的安全性が「アドリブ」を作る余裕を生む。事前準備を、チームメンバーの見えないところでしまくっておくことを決して忘れない。

(3)マネジャー3年目=「上をマネージ、下を愛す」

  • 怒りたいときは個別ミーティングでやる。そうしてくれさえすれば、相手の「自信」は失われても、相手の「威信」だけは失われない
  • 偉い人っていうのは「面倒な生き物」。「面倒な生き物」だったからこそ偉くなれた。どうでもよさそうに思えることでも拘る。彼ら、彼女らはプロアスリートだと認識しちゃう。そうすると合点がいく。
  • 自分にとってそこまで重要ではない、どっちでもいいことを注意されたからといって「自分に寄せてしまう」のがNOT大人。「めちゃくちゃこだわりを持ちたいこと」以外は「どっちでもいいこと」なので、「あなたに、そして世間に寄せますよ。だって、どちらでも僕の人生そんなに変わりませんからとできるのが大人
  • クライエントが今日のミーティングで不機嫌な顔をして席を立ち、そこでミーティングが終わったとしたら、次回のミーティングで取り戻そう意気込んで終わりではいけない。可能ならその日の夜中でも個別に時間をもらい、お小言を言われるべき。嬉しい気持ちは日に日に風化してしまうが、怒る気持ちは日に日に増大する。そして気まずくなる
  • マネジャーとして、「マイクロマネジメント」「放置・放任マネジメント」を本当に使えるようになるべきというか、チームメンバーから見たときに「2つのマネジメントスタイルを使えるマネジャー」と見えていることが健やかな関係につながる。
  • PMOの場合、関与する人数も多いので、2つのアウトプット=ワークプラン、WBSを効果的に使わなければならない。
  1. ワークプランは「論点、サブ論点、サブサブ論点」+TASKが書いてあるアウトプット。システム開発のPMOの場合は、システムだけでなく事業についても議論できる人を入れよう。
  2. WBSは「TASK」+「スケジュール・期限」が書いてあるアウトプット。
  • このミーティングは「自分のため」か、はたまた「チームメンバーのため」か。これに尽きる。何となくの「不安」を解消するだけに会議をする。その連続が、悪いマイクロマネジメント。チームメンバーが迷わない、健やかにできるために会議をする。その連続が、良いマイクロマネジメント。
  • 予定を物理的にブロックし、あえて暇を作るしかない。ポジティブな「0→1」=何かを生み出す活動をするには、そもそも「暇=時間」を持て余していることが大前提となる。
  • 仮に仕事があまりうまくいかず辞めることになったとしても、ちゃんと「僕はこの仕事、うまくできなかったんだよね」と健やかに言えるようにすることが大事。それを「向いていなかった」とか「こちらから辞めてやった」とか言ってしまうと、その先、何かにつけてそこが引っ掛かりエネルギーが湧き起こらない。だから、何かを諦めたらちゃんと句読点を打つ。その習慣が大事。
  • 「丁寧に」。これはあくまで、「少し前の自分」との相対値に根差したアドバイス。絶対値に根差した「ゆっくり」とは全然違う。誰にだって不調やスランプは来る。そんな時は「丁寧に生きましょう。」という言葉を意識して過ごす。

(4)暗記する。そしてとことん健やかに進化する

  • チャームがあるだけでお金になる。
  1. テンションを+2度:低い側の人は気づかないが、高い側の人は「めちゃくちゃ疲れたなぁ」と思っている。「テンション低い」はビジネスでは御法度
  2. 第1声シェア1位:2人でも3人でも、オンラインミーティングでは「音声が聞こえる」表示になった瞬間、最初に一言目を発しよう。それだけで印象が良くなる。
  3. 相談+報告:本当に「相談しっぱなし」が多い。相談したら、その結果がどうなったのかはちゃんと報告しよう。相談された側は「議論を深めるために、あえて逆の立場を取る」場合もあるし、「アドバイスに従わない」からへそを曲げることもない。万が一「曲げられた」としても、必ず報告すべき。そうしないとどちらにしろ、次の相談がしづらい。
  4. 辻褄思考:上司やクライエントから「は?今更何を言っているの?」という発言をされたときにすぐさま反論、嫌な顔をするのではなく、辻褄思考=「仮に、その発言の意味が通る、まさに辻褄が合うとすれば」を思考をすること。
  5. クローズドクエスチョン:質問する側で「きっとこういう答えですかね?」とクローズドクエスチョンにすることが礼儀。わからなければ、最低でも「オープンクエスチョンとなりすいませんが」という枕詞はつける。
  6. day0プロジェクト開始は月曜からなのに、自ら土日から準備を始めて、それも下準備としてプロジェクトの論点でななく周辺の業界などについて、まさにチームメンバー全員が知りたかったことを調べてくれているのはすごいチャーム。
  • 「役割分担」という、ただただ「誰が何をやる」という平面的な話から、「モジュール設計」という、簡単に言えば「考えるべきこと、論点が多い」役割分担。まさに立体的。メンバーの強み・弱みはもちろんのこと、メンバーがやってみたい経験、そして何より「やっているチームメンバーが楽しいか?」をとことん考える。それが、マネジャーの役割分担。
  • 仕事がつまらないのは、仕事が下手なだけ。だから、仕事がうまくなればいいだけ。原因は仕事自体にはない。簡単な話で、考える力/動き方を磨けばいい。学べばいい。

3.教訓

最後の「暗記する」の部分では、本書にもたびたび登場する緑ボン(当時の読書記録は以下)の復習にもなり、2024年の年初からいい学びを得られる良本でした。

bookreviews.hatenadiary.com

そして、本書には1問だけ「お題」が出ています。

それは、「満員電車を解消する方法は何か?」について、文字数を気にしない「論点ワード」を書いてみる、というものです。

自分としては、

  1. 輸送量を増やすことで解消できないか?
  2. 同じ輸送量でもやりくりできる方法はないか?
  3. 電車でない移動手段は考えられないか?
  4. そもそも通勤しない方法は取れないのか?

といった論点を考えていました。しかし、その先のサブ論点までは掘り下げできておらず、すぐに解決策のほうに目が行っていました。むしろ、解決策から逆算したような論点となっていました。

まだまだ思考が足りないことを実感するとともに、”しっかり丁寧に思考された「論点ワード」があると、健やかに考えられる・書けるを通り越して「誰が考えてもそのTASKになる」”という言葉が身に沁みました。

また、”まとめスライドは最初に書き、本パッケージのメッセージを補完・サポートするために、どんなスライドを作ればいいのか?”の部分については、そもそもこの資料で何を伝えたいのかを考えることの重要性とは何なのか、改めて意識しないといけない内容と感じました。

 

そして、特に印象に残ったのは、”大人”の定義です。

  1. 自分にとってそこまで重要ではない、どっちでもいいことを注意されたからといって「自分に寄せてしまう」のがNOT大人。
  2. 「めちゃくちゃこだわりを持ちたいこと」以外は「どっちでもいいこと」なので、「あなたに、そして世間に寄せますよ。だって、どちらでも僕の人生そんなに変わりませんからとできるのが大人。

40代後半にして、もう少し大人にならなければ、と新年から反省しました。