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1分間リーダーシップ ケン・ブランチャードほか著

1.はじめに

原題は、Leadership And The One Minute Managerです。

邦題は”リーダーシップ”ですが、本書の主人公である女性経営者の相手役も、名もない<1分間マネジャー>として会話が進行していき、部下への指導法中心の内容のため、本書も「マネジメント」としてカテゴリー化しました。

1分間マネジャーのシリーズの1つであり、以前違う本も紹介したことがあります。

bookreviews.hatenadiary.com

以下では、自身が読んだのは新がついていない旧版のほうを読み、印象的だった内容を引用していきます。

2.内容

(1)リーダーシップ・スタイルを使い分ける

  • 平等でないものを平等に扱うことほど不平等なことはない。
  • 誰でも仕事を習い始めるころは、「熱心な初心者」である場合がほとんど。どんな援助でも、与えられれば受けようとする。結局はうまくやりたいと望んでいる。
  • 心からやろうという気持ちを失うのは、よい仕事をしても何の変わりもないとわかったあとのことだと思う。部下が何か良いことをやっても、マネジャーは何も言わない。ところが、ミスをやると、すぐにそれが耳に入る。

(2)部下を診断する

  • 業績や行動を調べる場合は、それを左右する「適性能力」と「やる気」という2つの構成要素に目を向けることが必要。別の言葉で言えば、監督者がいないとよい仕事ができないというのは、通常、適性能力か、やる気のどちらかに、あるいはその両者に問題がある。
  • 人はよく能力という言葉を潜在能力(可能性)の意味に使う。ある技能をあまりもたやすく覚える人たちのことを説明するのに、生まれつきの能力がなどと口にする。ところが、コンピテンスのほうは適切な指示(方向づけ・命令)と援助(助力・支援)があれば、これを啓発し開発し伸展させることができる。生まれつき備わっているのではなく、教わり、学び取るもの。
  • 人は誰でも、仕事を最高に遂行する可能性を持っている。ただ必要なのは、それがどこから来るのかを知り、そこまで出かけていくこと。
  • 人は技能が伸びるにつれて、その自信と意欲が揺らぎ始めることがよくある。本当によい仕事ができるようになるためには、まだまだどのくらい多くのことを学ばなければならないかということがわかってくるから。昔からあることわざの「知れば知るほど、知らざるを覚える」のようなもの。

(3)1分間マネジメントと状況対応型リーダーシップ

  • 人によっては仕事のある分野では発達段階が高く、ある分野では低いということがある。ある仕事の場合には誰の手も借りずに働くことができて、監督不要でありながら、別の仕事においては多くの指示や援助を必要とする
  • 与えられる特定の仕事や目標次第で、人の発達段階は違ってくるもの。状況対応型マネジャーとして、人により対応の仕方を変えるのはもちろんのこと、仕事の内容次第で「同じ相手でも対応の仕方を変える」ことが必要。
  • ある特定のリーダーシップ・スタイルは、ある時点で一定の人にとってたとえ適切であっても、しばらくすると、その同じ人にとって不適切になることがありうる。
  • マネジャーは人を採用し、何をするかを話し、あとは放っておいても自然にうまく仕事をこなすようになるものだと考えがち。しかしこれでは、仕事を委任しているのではなく、放棄していることになる。採用した人が適性能力もやる気もあるというのでないかぎり、まず仕事には失敗するか、そこまではいかなくても少なくともマネジャーの期待通りにはならない。
  • 部下を訓練する場合、褒めること以上に、自分がミスをしたことをすすんで認めるようでなければならない。だが、手を変え品を変え訓練しているにもかかわらず遂行行動がほとんど改善されない部下には、キャリア計画や転職について話し合う。人によっては訓練しても、ある種の仕事には向かないことがある
  • 「叱責法」は訓練用具ではなく、意欲と態度を取り扱う手段。「叱責法」をむやみに発達度の低い部下に用いれば、相手はやる気をなくし、努力しなくなることが多い。その代わり、仕事に関心を失ったような有能な部下には「叱責法」を使うとよい。
  • 誰かを叱責しようとするときは、その前に必ず事実をよく知り、酌量すべき事情がないことを確かめなければならない。時により、成績の低下は自身の喪失、たとえば予想以上に仕事が複雑なことが原因だということもある。そういうことがわかったら叱責してはならない。援助と励ましを、そして必要とあらば支持を与える。

(4)部下と取決めをする

  • 状況対応的リーダーシップとは、部下に"対して"何をするかではない。部下と"一緒に"何をするかである。
  • 目標の1つ1つについて、それがSMARTになるように書き直す。
  1. Spesicic/具体的な:担当者が責任を持って処理すべきことを正確に述べる
  2. Mesurable/測定可能:遂行行動や業績はどう測定されるのか、よい仕事ぶりとはどんなものを指すのか
  3. Attainable/達成可能:とても達成できないような難しい目標を与え、その人がやる気をなくすような風には持っていきたくない
  4. Relevant/適切な関連がある:業績全体に大きな違いを生み出すような活動に対して、適切な関連があるとかツボを押さえている
  5. Trackable/追跡可能:進歩を褒めるためには業績を調べるための記録整理システムが必要
  • 人は誰も、潜在的にはすぐれた業績遂行者である。ただ、ちょっとした手助けが途中で必要になる人もいる。

(5)状況対応型マネジャーになる

  • 知りて使わざるは、なお知らざるが如し。状況対応型リーダーになるのは、そのような考え方をしたからでもなく、そのような話し方をしたからでもない。そのように行動したから

3.教訓

新・1分間リーダーシップでは、SMARTのMが"Mesurable"から"Motivating"に、"叱責法"が"修正法"に変わったりしているようです。細かなところが改訂されていますが、本書が発刊された1985年から、本質は大きくは変わらないと考えています。

本書は、かなり性善説な内容になっています。それができたら現場で苦労しない、と思うことも多く、「言うは易く行うは難し」の典型例かと思いますが、本書の内容には都度立ち返る必要がある、原点のような内容だと認識しています。

指導法を人によって変えるだけでなく、同一人物であっても業務内容の習熟度に応じて使い分けることが重要です。やはり、その人にも得意不得意があるので、とある業務に自信を持ってやっているので全面的に任せてもよいかと考えてしまうこともあります。しかし、それ以外の苦手分野はサポートが欲しいと考えながらやっていることもあると思います。本人も期待に応えようと「ここは苦手です」と言いにくい面もあるのだと思うので、状況を確認しながらそこまで下りていく必要があります。

また、全員に対して成長を促す必要はなく、改善が見込めない場合はキャリア転換含めて話をする、という部分も印象的でした。適性のない仕事を続けるのは、本人にとっても会社にとっても不幸なことで、選択肢としては常に意識しておくことが重要だと思います。