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とにかく仕組み化 人の上に立ち続けるための思考法 安藤 広大 著

1.はじめに

本書の「おわりに」もある通り、「数値化の鬼」→「リーダーの仮面」に続く識学シリーズ3部作の完結編です。そこでの記載の通り、順に内容を追って読んでいけばいいのかもしれませんが、私は最初に本書を手に取りました。

著者が推薦する読み方は、以下の通りです。

  1. まずは、仕事ができるプレーヤーになる(「数値化の鬼」のエッセンス)
  2. そして、マネジャーへと頭を切り替える(「リーダーの仮面」のエッセンス)
  3. 最後に、人の上に立ち続ける(「とにかく仕組み化」のエッセンス)

以上が、著者が想定する、組織で働くうえで身につけてほしいすべての流れですが、数年マネジャーやプロジェクト単位でのリーダー等を経験している人や、将来目指している人であれば、最初から本書を読んでも得られるものは多いと思います。

2.内容

(1)序論

①人の上に立ち続けるための思考法
  • 「歯車になること」の力に気づき、いったん受け入れた人から、成長は始まる。その組織の中で求められている役割を理解し、自分自身も仕組みの一部に組み込まれる。そのスキルさえあれば、実はどこに行っても活躍できるようになる。
  • マニュアルは過去の苦労の結晶。世の中にあるレシピや法則は、過去の膨大な失敗を経て残っている。いったんその通りに、忠実になろうとするほうが、実は成長は早い。
  • 性弱説」というのは、「人はラクをして生きるものだ」と、精神論を諦めたうえで物事を考えたほうがいい、という教え。だから仕組み化をやっておかないと、毎回頭で考えてしまったり、自分の誘惑といちいち戦ってしまうことになる。この無駄を極限までシンプルにするのが「仕組み化」のメリット。
②序章 なぜ「とにかく仕組み化」なのか
  • 締切が存在しない仕事はありえない。締切のない仕事はただの趣味。締切が絶対であることを徹底する。それにより、組織が仕組み化していく下準備が整う。
  • 「仕組み化」の反対は「属人化」。マネジャーは、属人化を壊す存在でないといけない。自然状態になるプレーヤーを仕組み化する立場。「優秀な人が不在でも、チームとして機能することで勝てる組織」が優秀な組織。
  • 新しい仕組みを取り入れるとき、必ず反発は起こる。どこかで線引きが必要。会社での判断軸は「ちゃんと成長したい人が成長できるかどうか」の1つだけ。既得権益にメスを入れるのが、人の上に立つ人がやるべきこと。不適切な人にはバスを降りてもらう。ここにいれば成長できる、という意欲の高い人が残り続けるようにする。

(2)本論

①第1章:正しく線を引くー「責任と権限」
  • 「属人化」ではなく「仕組み化」に頭を切り替える。そのために人の上に立つ人は、ルールを決める責任がある。権力とは、権力を持つ人が許された人が、それを正しく行使するということ。役職に応じて決裁ができる仕組みは、組織において大事な機能。
  • 「悪い権利」とは、文章として明確になっていない曖昧な権利のことを指す。多かれ少なかれ、見えない決まり事が組織にはある。その「悪い権利」があることによって、認識のズレが生じて、人によって言うことが違ってきてしまう。上司が「そのルールはおかしい」と判断するなら、「悪い権利」として潰さないといけない
  • 責任者が不在になっても、ルールだけ残れば、それは「形骸化したルール」になる。昔からのルールを検討して、今も必要だと考えるならば、「今も必要なルール。私がそう判断した。」と堂々と伝えればいい。人の上に立つなら、主語は絶対に「私」であるべき。過去の決まりを思考停止して続けることは、責任を果たしていない。
  • 仕事における正解は常に変わる。だったら、ルールを変えなければいけない。「ルールを変える人」を責めてはいけない。「このルールがあることによって、作業に時間がかかる」と事実を伝え、判断をあおぐようにする。問題意識を持つことは悪いことではない。仕組みでルールを運営すべき。
  • 精神論によって「部署を横断してコミュニケーションをとりなさい」などと言われても、主体性がある一部の人しか動かない。仕組みがあり、メリットがあるから、人は動く。部署が分かれて自分の役割が明確になるから、仕事に集中できる。タテ割りが基本。フラットな状態はうまく動ける一部の人にとって進めやすくなるだけ。
  • 率先して人がやらないような仕事をやってくれる人が、あなたの職場にもいると思う。その存在に甘えている。そういう人は「自分だけ損している」と感じ、その組織を去るようなことは仕組みで回避しないといけない。誰に責任があり、誰が何をするのか、それを最初に仕組みとして決める。
  • 本来の「任せる」とは、明文化した責任と権限を与えること。「何をしなければいけないか」「そのために何をやっていいか」その線引きをする。
  • 優秀さとは、その組織に入ることで、いかに適応し成長するか。「仕組み」によって組織に合わせていく能力。もしやってダメなら、また他を試す。それを繰り返すことができるのが、組織にいることの最大のメリット。
②第2章:本当の意味での怖い人ー「危機感」
  • 指導の基準が明確で、誰が見ても「理不尽な部分」がない。それが、ここで言いたい「怖い人」の姿。その厳しさを「本当の優しさだ」と部下が認識できると、一気に成長できるチャンス。
  • 恐怖政治は絶対にNG。なぜなら、指摘されたことで「何を改善すればいいか」がわからないから。「それを言われて、次はどうすればいいのだろう…」と部下を迷わせるような指導は何の意味も持たない。危機感が芽生えるのが正しい指導。なぜなら、次に何をすればいいかわかっているから。
  • 「明文化されたこと」について指摘する。逆に、「書いていないこと」で罰を与えたりしてはいけない。常に責めるのは「仕組み」のほう。そうすることで、「明文化されたルール」に価値が生まれる。
  • 人の上に立つためには、会う回数や話す時間を意識的に減らすことが重要。まず、話を聞く回数と時間を決める。それ以上は増やさない。話を聞きすぎない。人の上に立つ人は、「距離感を保つ」「制限時間を作る」という仕組みを実践する。実際にやってみると、部下が自分で考えて結果を出すようになる。
  • 会社は花形部署だけでは成り立たない。長いキャリアをつくるうえで、いつか花形部署に行けるチャンスは巡ってくる。それは任された責任を負える人。異動部署に文句を言って、最初の配属先で頑張らない人には、そのチャンスも巡ってこない
  • 「いつかラクになれる」という発想そのものが錯覚。満足した瞬間というのは、成長が止まるとき。どんな仕事も、やり続けると常に新発見があり、壁が現れる。それは、仕事をすることで、解像度が高くなるから。それが一生続く。
③第3章:負けを認められることー「比較と平等」
  • 新しい会社のルールに従えない人は、その転職が不幸になる。人の上に立つ人が、明文化して伝える。最初のコミュニケーションがブレてしまうと、後々必ずトラブルを起こす。特別扱いをしてしまうと、「言ったもの勝ち」の状況を生む
  • 頑張った人に報いるのが、本当の「平等」。差を設けることで、「負けたことを正しく認識し、危機感が芽生える」という状況が生じる。評価すべきでないものを評価すると、不満が続出する。なぜなら、評価はメッセージだから。
  • 「未達成だと、降格・降給となること」を明文化しておくことは会社がやるべきこと。責任として自分に跳ね返ってくるかどうかは大事な仕組み。「降格」という一時的なところを切り取るのではなく、長期的なキャリアとして見て判断する。
  • 個人としての成長を考えたときに、「1人でどこでも生きられるようにする」「どんな組織でも働けて、結果が出せるようにする」ということを期待すべき。
④第4章:神の見えざる手ー「企業理念」
  • 「企業理念」の深い理解は、遅れてやってくる。「そうか、だからあの仕事をしていたのか」「だから、あの事業が必要だったのか」と、遅れて理解がやってくる。
  • 役職が上がり、視座が異なってくることで、考え方が変わる。「あの人は出世して変わっちゃったな」「組織の人になっちゃったな」と言われるのは当然のこと。そうなることが真理。
  • 意思決定は、上から下に行われる。ただし、下から上に情報をあげることは正しい。責任がない人が、決定したり、判断したりすることは、物理的にできない
⑤第5章:より大きなことを成すー「進行感」
  • 「会社が変わる」というのは、「会社の仕組みが変わる」ということ。制度やルールに手を入れなければ、具体的には何も変わらない。単純に人が代わったり、気持ちが入れ替わったりすることではない。
  • 会社が企業理念の実現に近づいていく実感が得られることによる「進行感」がもっとも大切。
  • ちゃんと仕組みを整えれば、どんな人でも成長できる。上司ガチャと呼ばれるような状況は、仕組みで壊せる。「進行感」というのは、人間同士の自然な状態では発生しない。社会を形成していき、組織が前進する中で生じるもの。そして、組織のエネルギーの源は、この進行感しかない。

(3)終章

  • いつまでも成長し続けたい人に、常に会社は「居場所」を与える。あなたが成長するために「負荷」も与える。そこで努力して上を目指す人になってほしい。
  • 会社は仕事をするコミュニティ。ただし、コミュニティは1つとは限らない。友達。家族。趣味。そこでは、いかにあなたが「替えが利かないか」が重要。それらのコミュニティは、仕事のコミュニティとは真逆。
  • 年功序列、終身雇用に守られて、年収はあまり下がることはなく、クビにもならない。そして気づいた頃には、社内をうまく立ち回る能力しか身についていない。ほかの業界や企業では、「何の役にも立たないスキル」だけしか残らない。あなたの組織でも、そんな属人化で溢れかえっているはず。そんな人がいるのは、人の上に立つ人たちが仕組みを作ってこなかった責任。
  • マニュアルどおりに働いたり、ルールを守って働いたり、感情より理論を優先させたとする。しかし、その姿でも、十分に相手には「感情」が伝わる。そうやって、人は組織で「かけがえのない歯車」になることができる

3.教訓

冒頭から1章までは、圧倒されながら読みました。自身が中間管理職として、組織の中で本当に機能しているのか考え込みました。たしかに、よくできる担当者に頼り切っている面はあります。気性の荒い担当者には、言い出すタイミングをうまく見つけれらず、状況を少し放置したりということもあります。

また、属人化については、特定の人でないとその仕事が回らない、という意味だけにとらえてきましたが、本書を読んで、仕組み化できていないこと=属人化と、イコールの意味だということが、よくよく理解できました。

精神論で動ける人が一定数いるので、そこに逃げてしまうこともありますが、全体で見れば決してそういう人ばかりでなく、自然に任せてうまくいくはずはありません。誰がやっても回る、自分がいなくても回る仕組みを考えて、自分でやったほうが早い病からも抜け出して、個でなくチームで結果を残すことを意識していきたいと思います。

非常に良書だと感じたので、3部作の他の本も手に取りたいと考えています。