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How Google Works 私たちの働き方とマネジメント エリック・シュミットほか著

1.はじめに

Googleについては、オフィスに卓球台やビリヤード台がある、などという記事を目にしたかたも多いと思います。ほかにも世界各国には、クライミングウォールやビーチバレーのコートがあるオフィスもあるようです。

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ただ、そういった環境や空間があれば、だれでもクリエイティブになれるかというと、そうでもないと思います。企業文化、コミュニケーションの仕方、意思決定の方法など、内部体制がしっかりとしているからこそ結果がついてくる、そのような人たちに報いるために設備がある、ということが本書を読めばよくわかります。

なお、本書には、戦略(経営計画)、人材(採用)についても触れられていますが、自身が現在担当し、将来目指す領域とも異なるので割愛しています。そこも含めて関心のある方はぜひお手に取って直接内容確認頂ければ幸いです。

2.内容

(1)文化 自分たちのスローガンを信じる

  • オフィスの広さや高級さを重視するような文化は、社内に有害な影響が広がる前に排除したほうがいい。オフィスデザインは従業員を孤立させたり、地位を誇示させることではなく、エネルギーや交流を最大化することを目的にすべき。スマート・クリエイティブはお互いとの交流のなかで真価を発揮する。彼らを狭い場所に詰め込むことで、創造性のマグマが沸き上がる。
  • オフィスのカバ(HIPPO, Highest-Paid Person's Opinion、一番エライ人の意見)も危険な存在。オフィスのカバに耳を貸すのをやめると、能力主義が浸透する。「誰のアイデアか」より「まともなアイデアか」が重視される職場。
  • 懸念を口にしなかった人も共同責任を負うことになる。スマート・クリエイティブにとって「異議を唱える義務」を重んじる文化は、背中を押してくれるもの。だが、反対意見を述べること、とくに人前でそうすることが苦手な人もいる。だから異議を唱えることを「任意」ではなく「義務」にする必要がある。
  • 組織を事業部、あるいはプロダクトライン別にすると、それぞれの事業部が自分のことだけを考えるようになり、情報や人の自由な流れが阻害される。つまり事業部の責任者は、自らの事業部の損益を会社全体の損益より重視するようになる。
  • 最高の経営システムは、アンサンブルを土台にしている。スーパースターの共演というより、ダンスチームのパフォーマンスに近い。能力の高い人材が大勢集まり、チャンスがあれば誰でもリードダンサーを務められるシステムのほうが、組織は長期的に安定する。
  • 誰かが自分は会社の成功に欠かせない存在なので、1週間も休暇を取ったらとんでもないことになると思っているのなら、かなり深刻な問題があるサイン。必要不可欠な人間などいるべきではないし、またそんなことはあり得ない。時には自分のエゴを満たすため、あるいは「必要不可欠な人間」になることが雇用の安定につながるという誤った認識のために、わざとそういう状況を作り出そうとする人もいる。そういう人には休暇を取らせ、その間は別の人間にその仕事を任せる。
  • 強い意志、粘り強さ、何より大切なのは一心不乱に取り組む姿勢。イスラエルの戦車司令官は戦闘を開始するとき、「突撃!」とは言わない。「アラハイ!(ついてこい!)」と叫ぶ
  • 廊下のゴミを拾い上げる担当幹部、玄関前に配達される新聞を、毎朝自分で取ってくるCEO、机を拭いてまわる創業者。リーダーはこうした行動を通じて、平等主義の精神を身をもって示す。自分たちはチームであり、必要だがつまらない仕事を免除されるような”エライ”人間は一人もいないのだ、と。リーダーシップには情熱が欠かせない。あなたにそれがないなら、さっさと降りたほうがいい。

(2)意思決定 「コンセンサス」の本当の意味

  • 正しい意思決定のあり方を考えるうえでまず理解すべきは、正しい選択をすることだけに集中してはいけない、ということ。判断に到達するプロセス、タイミング、そして判断を実行に移す方法も、判断の内容そのものと同じくらい重要。そのどれか1つでも欠ければ、おそらくまずい結果になるだろう。また意思決定すべき事柄は次々と出てくるので、プロセスに問題があると弊害はとめどなく広がっていく。
  • 会議に出たら数十枚の文字だらけのスライドを見せられ、しかも担当者がそれを逐一読み上げた、という経験のある人は多いだろう。会議で意見を言う人は、スライドをカンニングペーパーのように使うのはやめ、自らの意見を補強する材料として使うべき。スライドは会議を運営するため、あるいは意見を主張するために使うべきものではない。全員が同じ事実を共有できるように、データを見せるためのもの。
  • 最適解に到達するには、意見の対立が不可欠。オープンな雰囲気の下、出席者が自分の意見や反対意見を述べなければならない。なぜならすべての選択肢を率直に議論しなければ、全員が納得し、結論を支持することはあり得ないから。納得していない者は、ボブルヘッド人形のようにうなずいておきながら、部屋を出たとたんに単に自分の好きなように行動する。
  • あなたがリーダーの立場なら、議論の最初に自分の立場を明らかにするのは控えよう。あなたの役割は参加者の地位や職務にかかわらず、全員の意見を引き出すこと。トップが最初に意見を言ってしまうと、それは難しくなる。
  • リーダーがコントロールできるものがまだ1つだけある。社内のスケジュールだ。きわめて重要な意思決定を迫られたとき、リーダーとしての招集権限を使って定期的な会議を開くと、とても大きな意味のあるメッセージを送れる。それが本当に重要な決定なら、会議は毎日開くべき。会議の予定をこれほど頻繁に入れると、問題の重要性が全員に伝わる
  • 議論を打ち切り、出席者から100%支持されているわけではない結論を出すときに、「どちらも正しい」と言う。誰でも自分の意見に反する決定を心から受け入れるには、まず自分の意見がきちんと聞いてもらえただけでなく、その意義を認めてもらえたと感じる必要がある。「どちらも正しい」という評価によって、それが可能になる。意見が通らなかった人に、その主張にも傾聴すべき要素があったのだと伝える
  • 会議は運営しやすい規模に。8人以下が妥当で、どう頑張っても10人が限界。会議室に集まった全員が意見を述べられるようにする必要がある。会議の結果を知らせるべき人が他にいるなら、オブザーバーとして参加させるより、情報共有のプロセスをつくるほうがいい。オブザーバーがいると、参加者が率直に意見を言いにくくなる
  • 会議に出ることが重要な人間の証ではない。自分の存在が必要ではないと感じたら退出しよう。事前に出席を断るほうがなおいい。
  • 会議に出るなら、まじめにでよう。マルチタスクはうまくいかない。会議中に、会議とは関係のない用件でノートパソコンや携帯電話を使っているのなら、会議に出るより重要な仕事があるということだろう。会議に出ている者は全員、その内容に集中すべき。会議が多すぎて仕事が終わらないというなら、解決策は簡単だ。優先順位をつけ、出席する会議を減らす。

(3)コミュニケーション とびきり高性能のルータになれ

  • 重要な情報を従業員を信頼して共有すれば、彼らはその信頼に応えようとする。
  • 何かが計画通りに進んでいなくても、その事実が迅速かつ率直にトップに報告されるなら、(手放しで喜ぶことこそできないが)情報伝達プロセスがきちんと機能していることは確か。
  • 幹部がどれほど率直な対話を呼びかけ、「オープンドア・ポリシー」を採用しようとも、実際にそのドアをくぐろうとする社員がいなければ何に意味もない。組織の右も左もわからない人間にとって、会話を始めるのは難しい。とくに大企業の、新参者にとってこれは切実な問題。リーダーのほうから手を差し伸べる必要がある。
  • たいていのスーパースターは自分の時間をムダにする人間に寛容ではなく、相手に容赦なくそれを思い知らせる。未熟なスマート・クリエイティブでも、一度でもそんな目に会えばすぐに学習し、二度と同じ失敗は起こさない。
  • 15~20回ほど繰り返して、自分ではいい加減うんざりし始めたころ、ようやく周囲に伝わり始める。だからリーダーは常に”コミュニケーション過剰”であるべき。ただ、「正しいコミュニケーション過剰」と「誤ったコミュニケーション過剰」の違いは頭に入れておこう。誤ったコミュニケーション過剰は無益な情報の拡散を招き、すでに満杯のメールボックスにさらに無駄な情報を流し込むだけ
  • あなたの名前で発信するなら、あなた自身の考えをきちんと入れよう。効果的なコミュニケーションをしたければ、100%アウトソースで済ませることはできない。文章のうまい人に表現を直してもらうのは構わないが、内容にはあなた自身の考え、アイデア、経験でなければならない。100%本物に近いほうがいい。
  • 自分の下で働きたいと思うような上司であれ」。自分がマネジャーとしてお粗末で、部下だったら最悪だろうと思うなら、ちょっと努力したほうがいい。少なくとも年1回、自分自身の仕事ぶりを振り返って書き出し、読み返し、自分なら自分の下で働くか考えてみる。
  • メールにすばやく変身すると、コミュニケーションの好循環が生まれる。チームや同僚が、重要な議論や意思決定のメンバーにあなたを加えるようになる。また誰に対しても同じようにすばやく変身すれば、フラットで能力主義的な企業文化の構築を助長することができる。返信は短くていい。私たちがよく使うのは「了解」。
  • メールの扱いは「LIFO(後入先出)」で、古い案件は、すでに他の人が処理してくれている場合もある。
  • メールで相手を叱り飛ばさない。誰かを叱責する必要があるなら、直接会ってそうするべき。メールを介すと小言を言うのがものすごく楽になるので自戒したい。
  • 国家にもビジネス・パートナーにも、それぞれの信念体系があり、その違いは歴然としている。パートナーシップを成功させる重要な第一歩は、こうした違いを認め、それを受け入れること。相手にも自らのシステムと信念を保つ権利があり、こちらと同じような強い信念でそれを貫こうとするだろう。そのようなパートナーとの協力関係を築くには、善悪の判断を控える必要がある。

(4)イノベーション 原始スープを生み出せ

  • 燃費を10%改善しようと思えば現在の設計を多少いじるだけで済むが、200km/L走る車を作ろうと思ったらゼロから考え直さなければならない。まさにこの「どうやってゼロから作り直そうか?」という思考プロセスが、これまで誰もが検討しなかったようなアイデアを生み出す
  • 発想を大きくすることには、あまり知られていないメリットがある。大きな賭けをするほど、成功のチャンスは大きくなる。会社として失敗が許されなくなるためである。反対に、どれも命取りにはならないような小さな賭けをたくさんすると、凡庸なものしか生まれない
  • 20%プロジェクトに対して金銭的報酬を払わないのは、単にその必要がないから。陳腐な言い方かもしれないが、仕事自体が報酬になる。外部からの報酬は、本質的にやりがいのある挑戦をカネを稼ぐ手段に変えてしまうため、クリエイティビティを助長するどころか阻害する要因となることを、複数の研究が示している。

3.教訓

本書を読んでみると、自身の仕事の仕方には反省することばかりでした。

  • 大量の資料確認依頼の締め切りに追われ、会議中に他案件の資料チェックをしている
  • メールでついつい小言を書いてしまう
  • 替えのきかない一部の人材に頼ってしまっている

などなど、書き始めたらキリがありません。できていることは、メールの返信を早くしようと意識していることと、パワポを文字で埋め尽くしてそのまま読み上げるのはやめようねと指導していることくらいでしょうか。

意外だったのは、ものすごくドライに物事を進めているのかと思いきや、上席者が雑用もこなす、採用されなかった提案者にも傾聴する、リーダーのほうからコミュニケーションの手を差し伸べるといった、ウェットに近い感覚だったことです。

中でも印象的だったのは、「自分の下で働きたいと思うような上司であれ」の一文です。究極的にはこの内容に尽きると言っても過言ではないくらいの衝撃でした。これは今日から意識し、これからも大切にしていきたい言葉です。

 

なお、カッコ書きや総数200を超える欄外の注釈にウイットに富んだジョークが散りばめられており、電車で読んでいても思わず何度も表情が緩み笑ってしまいました。グーグルを成長させるという大事業でも、ユーモアは大事だということを改めて認識しました。(ユーモアに関する本は以下の記事をご参照ください)

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