課長がおすすめする仕事に役立つ本100冊+

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HIGH OUTPUT MANAGEMENT アンドリュー・S・グローブ著


 

1.はじめに

著者のアンディ・グローブは、世界的企業インテルの創業にかかわり、後に社長・会長も務めた人物です。

本書は、以下の経営理論50冊の1冊にも選ばれていて、原書は1983年に発行されています。

今まで知らなかったものすごい理論が書かれているのかと思いきや、至って基本的な内容が中心で、ただ、それを実践するのは簡単ではありません。

イントロダクションには「ミドル・マネージャーに語りかけたいと、とくに強く願っている」とありますが、ミドルと言っても幅広く、執行役員クラスや人事採用権であるわけでもなければ、第3部全体や第4部14章は読み飛ばしてもいいと感じます。

また、ベン・ホロウィッツによる序文に書かれている以下の文章も印象的でした。

  • あなたがマネジャーなら、その製品についてどんな情報が口コミで流れているのか社内の誰よりもよく知っているかもしれない。しかし組織の他の部署と効果的に共有できなければ、何を知っていても全くの無価値。それが一部員ではなくマネジャーであることの本質。

2.内容

(1)イントロダクション

  • 遅かれ早かれ、みなさんの上司は嫌でも応でも一つの選択をすることを余儀なくされる。それは良い仕事をしていてはくれるが、他の人間の邪魔になっているみなさんをそのまま置いておくか否かという選択である。こうした状況を回避する責任は、みなさん自身にある。
  • 一番大事な課題は、環境変化の犠牲者にならないためには、自らのキャリアを管理しなければならないということ。その前に考える3つの問いは以下。
  1. あなたは本当の価値を付加しているのか、それとも単に情報をあちこちに流しているだけなのか。付加価値をどうやって高めようとしているのか。
  2. 自分の範囲で何が起こっているかに関して、いつもアンテナを張り、回路を接続して、情報収集を怠らないでいるか。
  3. 新しいアイデアや、新しい手法や、新しい技術をいつも試みているか。
  • マネジャーのアウトプットが、即、担当組織のアウトプット。原則として皆さんの時間は、自分が責任を負っている部下のアウトプットや、そのアウトプットの価値を高めることに費やさなければならない。
  • 単に新しいものについて読むだけではなくて、自分自らが実際に手を下して試みるということ。それとも他の人間があなたの職場をリエンジニアして組み替えしてくれるのを待っていて、ついには自らの職場から追い出されてしまう人間ではないのか。

(2)第1部:生産の基本原理

①生産の基本
  • カギとなる大切な考え方は、最も長い(あるいは最も困難な、最も要注意の、または最も費用のかかる)ステップから生産の流れを組み立てて、逆に考えていくという点。最も重要不可欠なステップを中心に流れを計画し、他のステップはそれぞれの処理時間に応じてずらす
  • 少なくとも、代案が必ずある。機械の性能、マンパワー、在庫をトレードオフ(損得の比較考慮)し、提供時間との兼ね合いを図ることができる。どの案を取るにしても金がかかるので、我々の仕事は、経営資源を利用するのに、”費用対効果上の最も良い方法”、つまり、あらゆる種類の生産作業を最適化するカギを発見すること
  • 大切なのは、生産プロセスのいろいろな面の間の関係をなんとしても理解しようと努力するものの考え方。
  • どのような問題にしても、生産プロセスの中で、できる限り”価値が最低”の段階で問題を発見して解決すべき。完成品の最終テストのときに問題を発見するのではなく、構成部品のユニットテストの時点に発見に努めるべき。
②朝食工場を動かす
  • 測定はどんな測定であったとしても、無いよりはマシということ。だが真に有効なインディケーターは、作業単位の”アウトプット”を測定するものであって、それに含まれる”アクティビティ”だけを見るものではない。
  • 測定されるものは”物理的(外在的)な、計算のできる”ものでなければならない。
  • インディケーターを選択する以上は、それが警戒信号を発したときには必ず行動を起こすというように、信用できるものでなければならない。
  • インディケーターの管理を厳しく実施しなければ、管理部門の職員数はいつも目いっぱいの水準に置かれることになり、有名なパーキンソンの法則がそこに働けば、人々は何をするにしても、なんだかんだと口実を見つけてはその完成までに使えるだけの時間をフルに使うようになる。当然のことだが、基準を持ち、それを信じ、かつ、予想作業量を使って管理部門の定員充足を客観的に行えれば、生産性の維持と増加の助けとなるだろう。
  • 作業簡素化を実施する際に必要なのは、それぞれのステップが”なぜ”遂行されるのかを自問自答してみること。一般に、多くのステップは大した理由もなしに、作業のながれに存在していることがわかるだろう。伝統的にそうだとか、正式の手続き上そう決められているからということで、行われていることが多い。したがって、あるステップにどのような理由が存在しようとも、一つひとつについて批判的な目で質問し、常識的に見てそれがなくても困らないようなものは捨て去らなければならない

(3)第2部:経営管理はチーム・ゲームである

経営管理のテコ作用
  • マネジャーも、自分自身の仕事をやりこなすだろうが、これは当人のアウトプットにはならない。何人かの部下や、自分の影響下にあるグループがいれば、そのマネジャーのアウトプットは、部下、あるいは影響下にある仲間たちが創出するアウトプットで測定しなければならない。
  • マネジャーの仕事は決して終わらない。もっとなすべき仕事が、もっとなさねばならない仕事が、そしてなしうる以上の仕事がいつも控えている。マネジャーは多くのボールを同時に空中に上げておき、自分の部門のアウトプットを最高に上げると思われる活動に自分のエネルギーと注意を注がなければならない。言い換えれば、自分の”テコ作用”が最大となりそうな点に移るべき
  • レポートが公式化されて記録されるときに、それを書く人は口頭で言うときよりも、厳密にならざるを得ない。レポートの作成者はその説明の中で、トラブル個所を確認し処理せざるをえない。つまり、そういう規律と思考を自らに課さざるを得ないところから、レポートの価値が生じてくる。レポートは情報を伝える方法というよりは、”自己規律訓練”の”手段”である。レポートを書くことは重要だが、読むことは重要でないことが多い。
  • 大型資本支出の許可”プロセス”はそれ自体が重要であって、許可そのものが重要なのではない。申請書を作成し正当化するために、人々は繰り返し、ああでもないこうでもないと自己分析や工夫をする。そして価値があるのはこの精神的試練であり訓練なのである。
  • マネジャーは情報を集めるだけでなくて、情報の提供源でもある。自部門の部下や、自分が影響を及ぼしている他部門の者にも知識を伝えてやらなければならない。事実を伝えるということ以上に、マネジャーは自分の目標や重点事項や優先事項などについても、特定の仕事の処理の仕方に関連する限り伝えなければならない。マネジャーがこういうことを知らせさえすれば、部下は、どうすれば上司であるマネジャーに認めてもらえるような意思決定ができるかがわかる。
  • ミーティングこそマネジャーとして活動する機会を提供している。人と顔を合わせることそのものは、マネジャーの活動ではなく、それは一つの”手段”。マネジャーは自分の仕事を、ミーティングで、あるいはメモを書くなりして、することができる。だが、自分が達成したいことに対し、最も効果的な手段を選ばなければならない。それこそがマネジャーに最大のテコ作用を提供する
  • 部下への余計な口出しや干渉は、上司が監督者としての実務知識をあまり多く使いたがることから生じてくる。ネガティブなテコ作用は、こういった状況が何度も繰り返されると、部下は自分に期待されている事柄を今までよりもずっと狭く考え始め、自分自身の問題解決にもあまり積極性を示さず、問題を上司に任せるようになることから生じてくる。その結果、組織のアウトプットは長期的に減少する。
  • 人は、自分が精通している活動と、あまりよく知らない活動とのどちらを委任するかと言われたら、どちらを選ぶだろうか。答える前に、最後までとことん、フォローしない権限移譲は”職務放棄”だという原則をよく考えておいてほしい。よく精通していることのモニタリングの方が容易だから、一番よく知っている活動を委譲すべき。この手の委任はマネジャー自身の気持ちにかなり逆らうところがあるかもしれないことを理解していただきたい。
  • リミッティング・ステップを中心にその他の仕事をやりくり(オフセット)したり、計画しなければならない。つまり、動かせないものを先に決め、もっとやりくりできる活動をその周辺に置くように工夫すれば、より能率よく働ける。
  • もしマネジャーが相当数のレポートを読んだり、下からの人事考課の結果を承認しなければならないとすれば、相当なまとまり時間を取っておき、次から次にそれらをひとまとめ(バッチ)にして処理することにより、こうしたタスク処理に必要な”精神的な”準備期間を最大限に活用しなければならない。
  • マネジャーがカレンダーを「生産」計画のツールとして使うには、次の2つのことを責任を持って処理しなければならない。
  1. 時間が決定的な意味を持つ出来事と、必要だが時間的にはそれほどではない出来事との間の穴を進んで埋め、カレンダーを積極的に利用する方向に進むこと。
  2. 処理能力以上の仕事に関しては、初めからはっきりと「ノー」を言うこと。
  • 仕事が仕上がらなければ何も言わなくても結局は「ノー」と言うことになるので、はっきりと、あるいはそれとなく「ノー」と言うことが大切。時間は人間にとって有限の資源なのであり、あることに対し「イエス」と言ったら、必然的に他のことには「ノー」と言っていることを忘れてはならない。
  • やることは必要だがすぐに達成させる必要もないもの、つまり、マネジャーが長期にわたり部下グループの生産性向上のため実施するような任意プロジェクトの在庫がないと、マネジャーは自分の空き時間を部下の仕事への余計な干渉に使いがちになる。
  • 大事な点は、仕事を邪魔する人はそれなりに処理してもらいたい正当な問題を抱えているのだと理解してやること。だからこそ、それを持ち込もうとする。
  • 要は、マネジャーの問題の処理の仕方に一つの”型(パターン)”を設けること。かつては不規則だったものを規則的にするのが基本的な生産の原則であり、この原則がマネジャーを悩ます中断をいかに処理するかを教えてくれる。
②ミーティング-マネジャーにとっての大事な手段
  • マネジャーは意思決定もするし、人の意思決定の援助もする。この基本的なマネジャーの仕事は両方とも、膝を交えての話し合いの時、したがってミーティングを通じてのみ遂行できる。だから、ミーティングはマネジャーが仕事を遂行する”手段”そのものに他ならない。ということは、我々はミーティング存在の当否と戦うのではなく、むしろその時間をできるだけ能率良く使わなければならない。
  • ワン・オン・ワンの大切な点は、これが”部下の”ミーティングであり、その議題や調子も部下が決めるべき筋合いのものと考えることである。これには相応の全うなな理由がある。ミーティングに対しては誰かが準備しなければならない。アウトラインの作成は部下にさせるべきである。
  • ワン・オン・ワンを効果的にする上での物理的なヒントの一つに、上司も部下もミーティングのアウトラインをそれぞれ各一部手にして、メモを書き込まなければならない。アウトラインが載った紙にメモしようとすれば、勢い情報を論理的に分類せざるをえない。それが情報の吸収に役立つ
  • ワン・オン・ワンでは、上司をいわゆる「ポロリともらすこちらをハッとさせるような本音」、つまり処理しにくいときに、思いもかけず持ち出される率直な問題点に十分な注意を払わなければならない。こういう事柄はしばしばミーティングの終わり間際に現れる。
  • スタッフ・ミーティングでは監督者はどういう役割を果たすのか。リーダーか、観察者か、進行係か、質問者か、意思決定者か、答えはもちろんこの全てである。ただし、講師役だけは入っていない点に注意願いたい。監督者はスタッフ・ミーティングの場を利用してもったいぶった話をしてはならない。それをすれば必ずや自由討議を妨げ、ひいてはミーティングの基本目的すら危うくしてしまう。
  • 司会者はミーティングの目標、何をする必要があるのか、どういう意思決定をしなければならないのか、をはっきりと理解していなければならない。自分の欲しいものを知らないで手に入れることなどはできない。これは絶対の真理。だから、ミーティングを招集する前に、自分が達成しようとしているのは一体何なのかと自問しなければいけない。このミーティングは果たして必要なのか、望ましいのか、理由付けできるのか、と考えてみる。すべての答えがイエスでなければ、ミーティングを招集してはならない
③決断、決断、また決断
  • 議論が白熱してくると、通常、参加者は事態の方向を感知しようとして、どんな見解が優勢であるかを見極めるまで腰を引いていて発言しようとしない。こういうとき、負け戦となるような立場に与しているとみなされるのを避けるために優勢な意見の方を支持する。一見、奇怪に思えるかもしれないが、そういう行為を奨励している組織も実際にはある。
  • 意思決定にまだ議論の余地があると思うときは、議論を避けるために問題をあいまいにしがち。しかし、当たり障りのないことを言うだけでは、結局は議論そのものは避けられず、単に延期されるだけになる。
  • どんな意思決定でも、その”処理能力段階から見て一番下のところで"これを行い合意に達すべき。その理由は、意思決定は、その状況の最も近くにいて、かつその状況を最もよく知っている人々によってなされることだから。
  • 同僚同士は、会議を仕切って取りまとめるために、上役のマネジャーを求める傾向がある。その上司が、一座の中で最も有能だとか知識豊かな人物というわけでないときさえそうである。その理由は、たいていの人は、自分ひとりだけが出しゃばるのを恐れるから。
  • 知識パワーと地位パワーの両方の所有者をも麻痺させて身動きをできなくさせるものが一つある。それは実は単純なことだが、”何か言うとばかだと思われはしないか”という恐怖心である。上席者は、そのために自分が当然尋ねねばならない質問を自ら抑え込んでしまうことになりやすい。
  • 我々は英知を授けられ、意志力に恵まれている人間存在なのである。うっかり口を開くとばかだと思われはしないかという恐怖とか、上から否決される恐怖とかを克服する上で、我々は英知と意志力を活用できる。英知と意志力こそが議論を始めさせ、一定の立場を抱きながらも話し合いの第一線へと出るようにさせる。
  • 機が熟さない状態では、意思決定を強引に求めない。会議の初期段階では、とかく出がちな表面的なコメントよりも、本当の問題点に耳を傾け考慮したかどうかどうか確認すべき。しかし、問題のあらゆる側面が洗い出され、すべて聞くべきことは聞いたと感じたならば、コンセンサスを強く求める。そして、コンセンサスを得ることができなかったら、介入して意思決定をしなければならないとき。
  • 経営管理の重要な課題の一つは、事前に次の6つの重要な質問を自問自答する。
  1. どのような意思決定をする必要があるのか?
  2. それはいつ決めなければならないか?
  3. 誰が決めるのか?
  4. 意思決定をする前に相談する必要があるのは誰か?
  5. その意思決定を承認あるいは否認するのは誰か?
  6. その意思決定を知らせる必要がある人は誰か?
④計画化-明日のアウトプットへの今日の行動
  • 工場における計画方法を要約すれば、ステップ1:製品への市場需要を見極める、ステップ2:調整をしない場合なら工場は何を生産するか決める、ステップ3:生産計画を調整することいよって、市場需要の予想と工場の予想アウトプットとを一致させる。
  1. 環境が要求するもの:顧客は現在何を要求しているか。自分は顧客を満足させているか。今日から1年経ったら、何を期待するであろうか。必要なのは、環境が現在要求するものと、今日から1年後に要求すると思われるものとの差異を浮き彫りにさせること。この差異に”対応すること”が実際上、プランニング・プロセスにおける主要な成果。
  2. 現状把握:現在の能力と仕掛りのプロジェクトをリストアップし、現在動いているプロジェクトはすべて完了できるか、いつか廃棄されるか流される可能性があり、こういう要因を予想のアウトプットに割り込ませる。
  3. ギャップを埋めるためになすべきこと:要求と現在のギャップを埋めるために、新しいタスクに着手するとか古いタスクを修正する。第一はギャップを埋めるために何をする”必要”があるか、第二はギャップを埋めるために何が”できるか”、それぞれの質問を個々に考え、それからあなたの活動がギャップを狭めるうえで”どんな影響”を”いつ”与えられるかを評価しながら、実際に何をするかを決める。こうして決めた一連の行動があなたの”戦略”。
  • プランニング・プロセスには誰が参画すべきか。組織の中の実施担当マネジャーである。というのは、計画立案者が計画を実行する人と異なっていてもかまわない考え方は通用しないから。組織の将来の業績に与える影響を与えるテコの作用は、プランニングと実行がよく組み合わされ、まっとうに協力してこそ実現できるもの。
  • プロジェクトに対して、あるいは一連の活動、あるいは何に対してでも「イエス」と言うことは、その他のことについては「ノー」と暗黙のうちに言うことになる。ひとつの約束をするたびに、何かそれ以外のことを約束する機会を喪失する。もちろん、これは避けがたく逃れがたいものであるが、有限の資源を配分する以上当然のこと。計画を立てる人間は、「イエス」と笑って答えるばかりではなく、「ノー」と頭を振る気迫、正直さ、規律を身に付けなければならない

(4)第4部:選手たち

①スポーツとの対比
  • 人が仕事をしていないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないのか、やろうとしないかのいずれかである。つまり、能力がないか、意欲がないかのいずれかである。
  • マネジャーの最も重要なタスクは、部下から最高の業績を引き出すこと。その取り組み方は、”訓練”と”動機付け(モチベーション)”の2つある。
  • マネジャーはどうやって部下にやる気を起こさせるか。だが、私にはそういうことができるとは思えない。モチベーションなるものは人間の内部から発するものだから。したがって、マネジャーにできることは、もともと動機付けのある人が活躍できる環境を作ることだけ
②タスク習熟度
  1. 低:明確な構造、タスク志向-何を、いつ、どうして、を示す
  2. 中:個人志向-双方向通行的コミュニケーション、支持、お互いの判断力を重視する
  3. 高:マネジャーの関与を最小限に-目標を設定し、モニターする
  • マネジメント・スタイルに、何が「良く」て何が「悪い」ということは、あなたの考え方や行動の中で、いかなる場も占めてはならない。我々が追及しているのは、何が最も”効果的”かという点である。
  • 事実、実践上の価値観、優先順位、好みなどを共有していること、つまり、いかにひとつの組織が一致協力しているかということは、経営管理上のスタイルが進歩していくことを望むならば必須の条件。このような共有化がなければ組織はすぐに混乱を生じ、目的意識を失ってしまう。したがって、共通の価値観を伝えてゆく責任はまさに監督者にかかっている
  • 部下に物事を教える責任は必ず上司が負わなければならないし、組織の内外を問わず、顧客が支払うべきものではない。
  • マネジャーは部下の仕事にはまり込んで代わりに意思決定をしたいか、あるいは、完全に放り出して煩わされたくないか、のいずれかと考えている。これに関連するもう一つの問題は、マネジャーの自己認識。我々は実際以上に、もちろん部下たちが考えている以上に、自分自身のことをコミュニケーションの良い人、権限移譲をよくする人だとみなしがち。
③人事考課
  • 考課における最大の問題は、管理者が通常部下に何を期待しているかをはっきりと決めていないこと。自分が望むものを知らなければ、どうして確実にそれを得ることができようか。
  • マネジャーは業績がはっきりしているときにだけそれを見て記録するのではない。目に見えない業績を”判断する”ことも求められている。
  • 避けなければならない大きな落とし穴は、「可能性(ポテンシャル)という罠」。いつでも可能性でなくて実績を評価するよう努力すべき。「可能性」とは実質以外のものをいう。
  • 誰を昇進させるかの選択ほど、明確に大声でもってマネジャーの価値観を組織に対して知らせるものはないことを我々はよく認識しておかなければならない。誰かを引き上げることで、我々は実質的に組織内の人々に対する役割モデルを作り出している。我々は最良の人を昇進させることによって、部下に業績がものをいうことを知らせている。
  • 一人の部下がいかによく仕事をしたとしても、なお改善を示唆しうる道は発見できるはず。そういうことに対して、気まずい思いなど少しもする必要はない。たとえ後知恵であったとしても、まともな目で見れば、部下ができたかもしれないことに対し、何をやったかを比較することができる。そして、その際は将来どうしたら改善できるかの方法を我々に教えてくれるはず。
  • 「人の話をよく聞く(リスニング)」というのは、あなたの言いたいポイントが部下の頭で正しく解釈されるために全感覚機能を使うこと。あなたが正しい考課を準備するためにありとあらゆる知性と誠実さを傾けても、こうならなければ何も生み出さない。もし理解していないと思ったら、注意してもう一度同じことを説明するか、異なった表現で説明しなおす。
  • 人間には一時に吸収できるメッセージに限界があるということは事実。特に自分自身の考課を受け止める場合はそれが当てはまる。考課の目的は、部下を観察して得た”あなた側の”真実を洗いざらい出すことではなくて、”彼の”業績を向上させること。そこで、述べることは、少なければ少ないほど良いと言ってよい。
  • 業績の良くない人は自分の問題を”無視する”傾向が強い。そこで、マネジャーはその真実を示すことができる事実と具体例を持つことが肝要。部下が消極的に無視するよりは問題を”積極的に否定する”方が、前者に比べて一歩前進。
  • 問題の解決方法を発見することは、考課者と部下の共同作業であるけれど、部下をすべての段階を通過させて責任引受にまで移行させるのは考課者の仕事である。部下が相変わらず否定したり、他人を非難し続けていたりするのに、監督者が解決方法を発見しようとしても何にもならない。
④タスク関連フィードバックとしての報酬
  • 人により自分の能力以上の職位に昇進し、その仕事をかなり長い間平均以下にしかできないことがある。解決方法は”リサイクル”することである。昇進させられる前によくできた仕事に戻せばよい。不幸にも、これは我々の社会では非常に困難なこと。人々はそれを個人としての失敗と見がちである。事実は、その人がもっと責任ある仕事のできる準備ができたと誤って判断した経営者の失敗。
⑤なぜ教育訓練が上司の仕事なのか
  • マネジャーが通常、部下の個人個人のパフォーマンス・レベルを引き上げるにあたっては、2つの方法がある。ひとつは動機付け、すなわち各部下がそれぞれの職務をやろうとする意欲を増大することであり、もうひとつは各人の処理能力を増加させることであるが、この後者に教育訓練が関わってくる。
  • 訓練を動機付けとともに部下の業績向上の方法として受け止め、また教える中身は実際に行っていることに密接に結びついたものとし、さらに訓練は1回限りの出来事ではなくて、ひとつの継続したプロセスであるということを認識するならば、訓練をするのは「誰か」ということはおのずから明らかとなる。それは「あなたがたマネージャー」なのであるということがわかろう。

3.教訓

自身がマネジメントをしていて、かなり胸が痛い内容も多かったのは事実です。

  • よく知っていることこそ権限移譲すべきだが、自身の気持ちに逆らう
  • 一つのことにYESと言ったら、他のことにNOと言うことと同じ
  • 何か言うと馬鹿だと思われる恐怖心が本来すべき質問を抑える
  • 計画立案者が計画を実行する人と異なっていてもかまわない考え方は通用しない
  • 計画を立てる人間は、「YES」と笑って答えるばかりではなく、「NO」と頭を振る気迫、正直さ、規律を身に付けなければならない

自身の経験でも、収益化は見込めないが顧客利便性は確実に高まるサービスを導入を検討した際、どうせやるなら収益化を、と求められたことがありました。

その際、NO(顧客利便性優先)と言っても理解されずに、かなり落ち込みました。結果として導入は認められ、その後の展開には苦労しましたが、それでも今はあって当たり前のサービスになりました。

NOというのは、見栄やメンツ、プライドが邪魔して、実際には言いにくいものです。でも、そこでしっかりと自分の意見を言ったうえで、折り合いを見つけていくことを意識したいと思います。