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頭のいい人が話す前に考えていること 安達裕哉 著

1.はじめに

2023年5月の時点で、大きめの本屋の多くで平積みされている本です。

手に取ると、「はじめに」よりさらに前に、目次にも載っていない内容として、イラスト付きの短い文章が載っています。

そこには、以下で始まる10ページちょっとの文章が展開されます。

子どものころ、「ちゃんと考えてから話して」と言われたことはないだろうか。もしくは、上司に「ちゃんと考えた?」と言われたり、部下の話を聞いて「こいつちゃんと考えたか?」と思ったりしたことはないだろうか。

もうこの時点で、「買って読まなきゃ」と思いました。

ファスト&スローや、経営者の条件など、外国人学者の内容も含めて紹介・引用しつつ、いい意味で、「日本人による日本企業に勤める日本人のために書かれた本」だな、という印象です。

日常的に起こっているシーンが登場しますので、読んだその日から意識すれば活かせる知識が詰まっています。

bookreviews.hatenadiary.com

 

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2.内容

(1)頭のいい人が話す前に考えていること

①黄金法則その1:とにかく反応するな
  • 要するに、怒っているときは、誰でも頭が悪くなる。怒っているときに下す判断は、まず間違っていると考えたほうがいい。つまり、”話す前にちゃんと考える”ということは、感情に任せて反応するのではなく、冷静になること
  • 「すぐに口を開かない」ことで、考える余地が生まれる。あれこれ代案を検討しているうちに、怒りは静まる。いくつかのシナリオを検討するのは、”実際に最適な手段を検討するため”でもあるが、冷静になる時間を稼ぐ”間をとるため”でもある。
②黄金法則その2:頭のよさは、他人が決める
  • 頭のよさは他人が決めるという前提に立ち、「他者がどのように思うか」を意識することこそ、知的で慕われる人が持つマインドの根本であり、思考の質を高めるために最も大切なこと。頭のいい人というのは、自己満足ではなく、まわりの人から”頭のいい人”と認識されている人
  • 人は頭のいい人の話を聞こうとする。頭のいい人と認められれば、自分のやりたいことも通りやすくなる。一生懸命プレゼンしても企画が通らない人と、簡単に説明するだけでやりたいことができてしまう人の差は、その人が周りから”頭がいい”と思われているかどうか。その信頼感があるかどうかが非常に大きい。
③黄金法則その3:人はちゃんと考えてくれてる人を信頼する
  • 「何か言っているようで、何も言っていない発言」をする人たちは、「賢いふりをする人」の代表例。しかし、実際には中身がない「賢いふり」は、その場しのぎにはよいが人の心を動かさない。このような発言を繰り返していると、聞く耳をもたれなくなる。
  • 賢いふりをしようとすると、最初に発言するより、他の人の話を聞いてから発言したほうがいいと判断するだろう。ただ、評価されるのは、最初に発言した者。賢いふるまいとは、賢いふりをすることではない。
  • 単なる”頭がいい”だけでは、ただ頭がいいだけで終わってしまい、結果につながらない可能性がある。”この人、我々のためにちゃんと考えてくれてるな”、相手がこの心情になったとき、信頼が生まれ、長期的な関係につながる。
④黄金法則その4:人と闘うな、課題と闘え
  • 頭のいい人は、決して論破しようとしない。議論はしても、勝ち負けにこだわらず、議論を前に進め、仕事を進捗させることを意識します。人と闘うな、課題と闘え
  • 頭のいい人は、議論の勝ち負けではなく、議論の奥にある、本質的な課題を見極めようとする。ちゃんと考えて話すというのは、”相手の言っていることから、その奥に潜む想いを想像して話す”ということでもある。
⑤黄金法則その5:伝わらないのは、話し方ではなく考えが足りないせい
  • 型に当てはめるだけでは考えたことにならない。信頼が生まれるのは、プレゼンがうまくできた瞬間ではない。「質疑応答」の時間を長く取り、お客さんとのやり取りを濃くしたとき。そこでちゃんと考えているか考えていないかの差が生まれる。
  • 大事なのは、「型」はあくまで考える”きっかけ”ととらえること。相手に伝わらなければ、話し方が悪かったのではなく、考えが浅かったと考える。これが実際に頭のいい人のマインドであり、思考の質を高めるポイント。
⑥黄金法則その6:知識は披露するのではなく、誰かのために使って初めて知性になる
  • コンサルに入ってまず、簡単にアドバイスするな、意見を言うな、とにかく相手に話してもらえと徹底的に教えられた。人間は、自分の話をしたい生き物。知識があれば披露したくなる。知識は披露するのではなく、誰かのために使って初めて知性になる
  • 話す前に”本当に相手のためになるのか?”と立ち止まることで、知識を披露したいだけ、ただ言いたいだけの自分に気づくことができる。話す前にちゃんと考えるということは、自分の知識の披露ではなく、”これから話すことは本当に相手のためになるのか?”という視点を持つこと。
⑦黄金法則その7:承認欲求を満たす側に回れ
  • 自分の承認欲求は抑制し、他者の承認欲求を満たすことができれば、「コミュニケーションの強者」になることが可能。承認欲求を満たしてもらう側ではなく、満たす側に回ることで、上手に信頼を得る
  • 他者からの信頼は、肩書があるから得られるものではない。肩書があったうえで、他者に親切にできる人こそ、絶対的な信頼を得られる

(2)一気に頭のいい人になる思考の深め方

①まずは、バカな話し方をやめる 「客観視」の思考法
  • 話を深くする2つのポイントは以下の2つ。確証バイアスに意識的になり、あえて自分に都合の悪い情報にあたることで思考を掘り下げる
  1. 自分の意見と真逆の意見も調べる
  2. 統計データを調べる。
  • 頭のいい人は「この言葉を使ったら相手がどのような意味にとらえるか」まで想像して言葉を選び、定義が曖昧な言葉は使わないか、言葉の定義をはっきりさせることから始める。つまり、”ちゃんと考えてから話す”とは、相手が受け取る言葉の意味を想像し、できるだけ定義の齟齬が出ないように話すということ。
  • 言葉に敏感になり、定義を掘り下げることは、言い換えれば”思考の解像度を上げる”ということ。それにより、見えている世界をより鮮明にはっきりと映し出すことができる。
  • たとえ現在うまく機能していないものであったとしても、過去にはそれが導入された理由がちゃんとあったはず。その理由を知り、深く考えるための足掛かりとなるのが”成り立ちを知る”こと
②なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか? 「整理」の思考法
  • コピーライターは魔法のように言葉を巧みに操って人の心に刺さる言葉を書くのではなく、製品のことからその製品を使う人のことまで、とにかく対象となるものを深く理解することに重きを置いて、言葉を紡ぐ人たち。人の心を動かせるかも、わかりやすく話せるかも、理解の深さに比例する
  • 理解するというのは”分ける”ことであり、整理すること。逆に理解できないというのは”分けられない”状態であり、整理できていない状態。
  • 結論が何かをはっきりさせる。結論とは何かを知らずに結論から話すのは容易ではない。”頭のよさは、他人が決める”ということは、相手の立場に立って考えること。相手が求めている結論がわかれば、結論から話すのはそう難しくない。誰でも結論から話せるようになる最も簡単な方法は、結論とは何かを相手に聞くこと。
  • 結論とは何か、相手に聞けない場合は、「相手が最も聞きたいであろう話」からする。つまり「結論から言え」というのは、本質的には、自分がしたい話ではなく、相手が聞きたい話を最初にしろということ
  • 結論から話す、というのは相手に”聞くスイッチ”を入れる行為。話す前に、どんな気持ちで相手に聞いてほしいか、どんなスイッチを入れようか、を考えてから話してみる。
  • 事実とは、証拠を挙げて裏付けすることのできるもの。意見というのは、何事かについてある人が下す判断。ほかの人はその判断に同意するかもしれないし、同意しないかもしれない。
  • ”自分の意見を持つ”というのは、「客観的事実である感想から出発し、根拠を集めることで、他にも納得できる形にすること」といえる。事実を求められているときに意見を述べない、意見を事実のように言わない、を意識しながら、感想を意見に昇華させることを意識する。
③ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう 「傾聴」の思考法
  • 話を聞けない人は、話を聞いているのに、聞けない人。彼らは「自分の認識できたこと」だけを切り取って話を聞いている。人間は多かれ少なかれ、自分に都合のいいように置き換える癖がある。
  • ちゃんと話を聞ける人は、余計な口を挟まず、”言いたいことはなんだろうか”と考えながら、まずは相手の話を正確に理解しようとする。話す側の立場に立てば、相手がこのような態度で聞いてくれると”自分の話を正確に受け取ってくれた”という感覚になる。
  • 知的で慕われている人の聞く態度
  1. 肯定も否定もしない
  2. 相手を評価しない:評価したくなっても「あなたがそう思うならそうなんでしょう」と思うようにする。
  3. 意見を安易に言わない:相手はあなたの話を聞きたいのではなく、安心したいだけ
  4. 話が途切れたら、むしろ沈黙する
  5. 自分の好奇心を総動員する
  • 「何を言うか」より「誰が言うか」が重要であり、アドバイスを受けて納得し、行動に移すのは、その相手をよほど尊敬し、慕っている場合だけ。
  • どんな人でも、相談すべき課題があれば、何かしらの解決策を持っているもの。「こうしたい」という相手の意思が聞けたら、それを素直に推してあげる。あなたの思う解決策やアドバイスを話す必要はない。
④深く聞く技術と教わる技術 「質問」の思考法
  • ちゃんと考えて質問するというのは、質問する前に、相手の立場に立ち、仮説をもって質問するということ。「どう思う?」と漠然と聞くよりも、間違いなく返答の質が変わってくる。
⑤最後に言葉にしてインパクトを残す 「言語化」の思考法
  • メールを書く行為には、言葉を選ぶ、整理する、相手の反応を想像する、書き直すなど、さまざまなコミュニケーションコストが内包されている。つまり、言語化コストに内包されるさまざまなコストのすべてを、話し手(送り手)が支払っていることになる。
  • どんな場合でもメールが必ずしも最適というわけではない。しかし、忘れないでほしいのは、コミュニケーションのコストをどちらが払っているかを常に意識すること。
  • 優秀な人はみな「なぜそのようなアウトプットに至ったのか?」と質問すると、その発想の原点や方法論、思考法について話すことができる。言語化なしには、繰り返し高度な作品をアウトプットすることはできない
  • 思考の質は、言語化の質を決める。言語化の質は、アウトプットの質を決める。アウトプットの質が高ければ、人の心を動かす。人の心を動かせば、行動につながる。つまり、ちゃんと考えるとは、突き詰めれば、人を動かすアウトプットを生み出すということ。
  • 人は、名前のないものについて、深く考えることはできない。ネーミングは、思考の出発点となる。名前のないものを見つけたら名前をつける。すると、自然と思考の質は高まる。

3.教訓

実際、結論から話せない人、いきなり電話してきて話を始める人はいます。「今の打ち合わせで決まったことをまとめてみて」というと、「よくわからなかったのでもう一度お願いします」という人もいます。言葉の意味をあまり考えずに選択する人もいます。

例えば、「すり合わせ」という言葉。詳細が詰まっていないところを明確にし、内容の最終確認をするような場面で言われることがあります。前提として”意見がすり合っていない”状態を是正するような響きがあって、こちらとしては、「別に対立しているわけでも、妥協したいわけでもないんだけどな」と思ってしまいます。

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また、それでいいとは思いませんが、残念ながら”「何を言うか」より「誰が言うか」が重要”というのは、動かしがたい真実だと思います。

あの人が言うなら大丈夫だろう、間違いないだろうとして、スーッと話が進んでいくことがあります。そしてそれが大体あっているので、実際に困る機会は多くありません。

本書を実践し、「誰が言うか」側に回りたいと思える良書です。