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1.はじめに
原題は"How to Win Friends and Influence People"で、「友人を得たり他者を促す方法」といった意味です。
人生で身につけるべき人間関係の原則を、実話をベースに実例を交えて説得力豊かに説き起こされています。
日本国内でも500万部以上の販売数を誇る名著中の名著であり、著者本人の顔写真が映った緑色の表紙をどなたも一度は目にしているのではないかと推察します。
おそらく、一定規模の本屋さんなら、まず間違いなく店頭に並んでいると思います。
2.内容
①人を動かす三原則
- 批判も非難もしない。苦情も言わない。:およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねればらない。人を非難するする代わりに、相手を理解するように努める。
- 重要感を持たせる:自ら動きたくなる気持ちを起こさせる。自己の重要感を満足させる。自分の長所や欲求を忘れて、他人の長所を考える。そうすればお世辞などは無用になる。うそでない心からの称賛を与えると、受けた相手はいつまでも忘れない。
- 人の立場に身を置く:人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えること。常に相手の立場に身を置き、相手の立場から物事を考える。他人の立場に身を置き、その心の中に強い欲求を起こさせるということは、相手をうまく操ってこちらの利益にはなるが戦法の損になることをやらせることでは決してない。双方が利益を得なければ嘘である。
②人に好かれる六原則
- 誠実な関心を寄せる:友を得るには、相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心を寄せること。こちらから心からの関心を示せば、どんなに忙しい人でも注意を払ってくれるし、時間も割いてくれ協力もしてくれる。「我々は自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる。」
- 笑顔で接する:動作は言葉より雄弁である。笑顔は好意のメッセンジャーだ。受け取る人々の生活を明るくする。買うことも強要することも借りることも盗むこともできない。無償で与えてはじめて値打ちが出る。
- 名前を覚える:人間は他人の名前など一向に気に留めないが、自分の名前になると大いに関心を持つ。人に好かれる一番簡単で、分かり切った、しかも一番大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせること。
- 聞き手にまわる:自分のことばかり話す人間は、自分のことだけしか考えない。そのような人間は教養のない人間である。話し上手になりたければ、聞き上手になること。興味を持たせるためには、まずこちらが興味を持たねばならない。
- 相手の関心を見抜いて話題にする:人の心をとらえる近道は、相手が最も深い関心を持っている問題を話題にすること。相手の関心を見抜き、それを話題にするやり方は、結局双方の利益になる。
- 心からほめる:人間は誰でも周囲の者に認めてもらいたいと願っている。見え透いたお世辞は聞きたくないが、心からの賞賛には飢えている。人は誰でも他人よりも何らかの点で優れていると思っている。だから相手の心を確実に手に入れる方法は、相手が相手なりの世界で重要な人物であることを率直に認め、そのことをうまく相手に悟らせること。人と話をするときは、その人自身のことを話題にせよそうすれば、相手は何時間でもこちらの話を聞いてくれる。
③人を説得する十二原則
- 議論を避ける:議論に負けても、その人の意見は変わらない。誤解は議論をもってしては永久に解けない。気転、外交性、慰め、いたわり、そして相手の立場で同情的に考える思いやりをもってして、初めて解ける。相手が反対意見を述べてくれるのは、同じ事柄に関心を持っている証拠。相手は手助けをしたいと願っていると考えれば、論敵は味方になる。
- 誤りを指摘しない:間違えを指摘されて、考えを変えようと思うわけがない。傷つけられたのは、論理ではなく感情。「おそらく私の間違いでしょう」と言って面倒の起きる心配はない。むしろそれで議論がおさまり、相手もこちらに負けず寛大で公正な態度を取りたいと思うようになり、自分も間違っているかもしれないと反省する。
- 誤りを認める:他人の非難よりも自己批判の方が気が楽。自分に誤りがあるとわかれば、相手の言うことを先に言ってしまう。そうすれば相手には何も言うことがなくなる。十中八九、相手は寛大になり、こちらの誤りを許す態度に出るだろう。
- おだやかに話す:もし相手がこぶしを固めてやってくれば、こちらも負けずにこぶしを固めて迎える。だが、相手が「お互いによく相談してみましょう。そしてもし意見の相違があれば、その理由や問題点を突き止めましょう。」とおだやかに言えば、やがて意見の相違は思ったほどでなく、互いに忍耐と率直さと善意を持てば、解決できることがわかる。
- イエスと答えられる問題を選ぶ:まず、意見が一致している問題から始め、それを絶えず強調しながら話を進める。互いに同一の目的に向かって努力しているのだということを相手に理解させるようにし、違いはその方法だけだと強調する。最初は相手に”イエス”と言わせる問題ばかりを取り上げる。
- しゃべらせる:相手の言うことに異議を挟みたくなっても、我慢しなくてはいけない。相手が言いたいことを持っている限り、こちらが何を言っても無駄。大きな気持ちで辛抱強く、しかも誠意を持って聞く。そして、心置きなくしゃべらせてやる。
- 思いつかせる:人に自分の意見を押し付けようとするのはそもそも間違い。暗示を与えて、結論は相手に出させる方がよほど利口だ。相手に相談を持ち掛け、できるあけその意見を採り入れて、それが自分の発案だと思わせて協力させる。
- 人の身になる:他人にものを頼もうとするときには、まず目を閉じて、相手の立場から物事をよく考える。「どうすれば相手はそれをやりたくなるだろうか」と考える。この方法は面倒だが、これによって味方が増え、よりよい結果がたやすく得られる。
- 同情を持つ:口論や悪感情を消滅させ、相手に善意を持たせ、自分の言うこと聞かせるには、「あなたがそう思うのはもっともです。もし私があなただったら、やはりそう思うでしょう。」と話を始めること。我々は交渉を持つ相手の75%は同情に飢えている。それを与えると好かれることは請け合いだ。
- 美しい心情に呼びかける:人間は誰でも、正直で義務を果たしたいと思っている。人をごまかすような人間でも、相手に心から信頼され、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできない。
- 演出を考える:単に事実を述べるだけでは十分ではない。事実に動きを与え、興味を添えて演出しなければならない。興行的な手法を用いる必要がある。人の注意を引くには何よりも有効だ。
- 対抗意識を刺激する:仕事への意欲を最も強くかき立てる要件は、仕事そのものだ。自己表現の機会、つまり存分に腕をふるって相手に打ち勝つ機会が色々な競争や協議を成立させる。優位を占めたい欲求、重要感を得たい願望を刺激する。
④人を変える九原則
- まずほめる:ほめられた後では、苦言も大して苦く感じない。
- 遠まわし注意を与える:ほめると同時に、その目的には向かないことを遠まわしにほのめかす。
- 自分の過ちを話す:人に小言をいう場合、謙虚な態度で自分は決して完全ではなく失敗も多いがと前置きして、それから間違いを注意すると、相手はそれほど不愉快な思いをせずに済む。
- 命令をしない:命令ではなく暗示を与える。「こう考えたらどうだろう」と言って相手に意見を求める。決して命令はせずに自主的に仕事をする機会を与える。相手の自尊心を傷つけず、重要感を与えることになり、反感の代わりに協力の気持ちを起こさせる。
- 顔をつぶさない:たとえ自分が正しく、相手が絶対に間違っていても、その顔をつぶすことは、相手の自尊心を傷つけるだけに終わる。大切なことは、相手を私がどう評価するのではなく、相手が自分自身をどう評価するかである。
- わずかなことでもほめる:我々には他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらないうわべだけのお世辞には反発を覚える。批判によって人間の能力はしぼみ、励ましによって花開く。
- 期待をかける:相手に美点を発揮させたければ、彼がその美点を備えていることにして、公然とそのように扱う。良い評判を立てると、その人間はあなたの期待を裏切らないように努めるだろう。
- 激励する:大いに元気づけて、やりさえすれば容易にやれると思い込ませ、そして相手の能力をこちらは信じているのだと知らせる。そうすれば相手は自分の優秀さを示そうと懸命に頑張る。
- 喜んで協力させる:責任や肩書、称号、権威を与えると、自分の任務を完全に遂行するようになる。
3.教訓
書かれている内容に、目新しさはないし、なんとなく人それぞれが目指していることだとは思いますが、そこをしっかり体系化して自分のものにできている人はそれほど多くないと思います。
あとは、しっかりと内容を理解し、いかに実践しようと本気で思うか次第で、人生の幅が広がるものと考えます。