1.はじめに
著者は、世の中を3パターンに分類しています。
- ギバー:与える人(成功を他人にプラスの影響をもたらす個人的なものだと考える人)
- テイカー:受け取る人(人を出し抜いて優れた成果を達成することだと考える人)
- マッチャー:バランスを取る人(成功を個人の業績と他人の業績を公正に釣り合わせることだと考える人)
ギバーは単なるいい人に留まり、マッチャーが臨機応変に立ち回るため、最も成功する確率が高いと考えていました。
しかし、最も成功するのはギバーです。
以下で、内容について触れていきたいと思います。
2.内容
(1)「与える人」こそ幸せな成功者となる
- 世の中の大半はゼロサムゲームではない。最終的にギバーは見返りを手にすることになるといってよい。確かに、ギバーが好意と信頼を築き上げるのには時間がかかるが、最後には成功へと導いてくれる評判と人間関係を作ることができる。ギバーであることは、100m走では役に立たないが、マラソンでは大いに役に立つ。
- 成功しているギバーは、4つの重要な分野で独自のコミュニケーション法を用いる。
- 人脈づくり:新しく知り合った人々と関係を培い、以前から付き合いのある人々との結びつきを強めるためのアプローチ
- 協力:同僚と協力して業績を上げ、彼らの尊敬を得られるような働き方
- 人に対する評価:才能を見極めてそれを伸ばし、最高の結果を引き出すための実用的なテクニック
- 影響力:相手に自分のアイデアや関心事を支持してもらえるようなプレゼンテーション、販売、説得、交渉をするための斬新な手法
(2)ギバーの才能① ゆるいつながりという人脈作り
- 利他的に振る舞えば振る舞うほど、人間関係からさらに多くの恩恵が得られる。人を助け始めると、評判がどんどん高まり、自分の可能性の世界が広がる。
- 「何かを手に入れたい」という目的だけでネットワークを作ろうとすれば、うまくいかないだろう。ネットワーク自体に利益を”追及する”ことはできない。利益は、有意義な行為や人間関係に投資した結果として得られるもの。
- いつ何時、誰が苦境に陥るかわからない。自分の評判を築くことだけでなく、他の人の役に立つ存在であることが大切。
- ギブアンドテイクの関係は効果的な基準ではあるが、マイナス面が2つあり、どちらも多くの人を慎重にさせる。①受け取る側が、自分が操作されているように感じる。②人を助けるたびにお返しを求めるなら、ネットワークは非常に狭いものになる。
- 相手が誰であろうと、じぶんにこう問いかけるべき。「この人にどんなことをしてあげられるだろうか?」と。将来助けてくれそうな人が誰かなんて、必ずしもわかるわけがない。
- 強いつながりは”絆”を生み出すが、弱いつながりは「橋渡し」として役に立つ。新しい情報により効率的にアクセスさせてくれるからだ。弱いつながりは、異なるネットワークの方により開かれているので、新しいきっかけを発見しやすくなる。
- 休眠状態の人間関係を復活させることは、1から関係を始めるのと同じではない。再びつながるとき、まだ互いの中に信頼感が残っているからだ。大量に蓄積された休眠状態のつながりが新しい情報が必要になったとき、きっとまた役に立つ。年を取れば取るほど、休眠状態のつながりはますます増えていき、さらに貴重なものになっていく。
- マッチャーはテイカーよりずっと簡単に連絡を取ることができるが、ギブアンドテイクの関係が前提なので、助けを求めることに居心地の悪さを覚える。頼みごとをすれば、これで1つ借りができたと感じるから。ギバーには、損得抜きで気前よく、知識を共有したりスキルを教えたりした実績があるので、もう一度連絡を取ったときに、二つ返事で助けてもらえる。
- ギバーは、価値を交換するのではなく、ひたすら価値を「増やす」ことを目指している。この「恩送り」と呼ばれる行為は、人助けをごく当たり前のものにしたいという願いが込められている。
- 不慣れな場所に行くと、人は他の人の振りを見てふさわしい行動を知ろうとする。そこで誰かが与え始めれば、それが当たり前の振る舞いになり、他の人とのやり取りのなかで積極的に実行するようになる。
- ほとんどの人がマッチャーとして「公正の原則」を破ったテイカーを懲らしめ、ギバーの寛大さに報いる。その結果、ギバーは豊かなネットワークを発展させ、それを強化することができる。仲間のギバーをネットワークに引き寄せ、関わるすべての人の分け前を大きくする。
(3)ギバーの才能② 利益のパイを大きく増やす働き方
- 成功するギバーは、単に自分だけが得するように行動するのではなく、関係者が全員が得するようにパイ(総額)を大きくする。自分の時間と知識をしょっちゅう分け与えて同僚を助けている人々は、昇給や昇進のチャンスが増えることがわかっている。
- 非常に才能のある人は、妬みや恨みの対象になる。ただし、これがギバーであれば、もはや攻撃されることはなく、むしろギバーはグループに貢献するので感謝される。
- ギバーとして信用を得ると、ちょっと大胆で挑戦的なアイデアを出しても、周りに特別に認められてしまうことがある。ギバーがアイデアを提案すると、たとえそれが自分にとって不本意なことであっても、同僚は耳を傾け、正直に話してくれたことに報いようとする。
- お互いの貢献度を正しく判断するカギは、「他人がした貢献に注目すること」。それには、自分自身がやったことを評価する前に、相手がしてくれたことをリストにするだけでよい。上司にどれだけ貢献しているかを考える前に、上司からどのくらい助けられているかを考える。
- うまくいかないときは自分が責任を負い、うまくいっているときは、すぐに他の人をほめる。
- 協力関係において、テイカーが「視点のズレ」を考慮することはまずない。自分の観点からしか物事を見ようとしないので、他の人が自分のアイデアや意見にどんな反応を示しているか結局気付かない。それに対し、ギバーはみんなに得をさせたいと思っているので、人に身になって考える方法を見つけようとする。
(4)ギバーの才能③ 可能性を掘り出し、精鋭たちを育てる
- 訓練兵に高い期待を抱いた小隊長は、彼らをよりサポートし、より多くのアドバイスとこまめな配慮を与えるようになった。訓練兵がミスをしても、小隊長はそれを能力が低いせいだと思わず、学びのいい機会だととらえた。小隊長の協力的な態度によって、訓練兵は自身と能力を高め、より高い功績を達成できるようになった。
- テイカーは他の人の意図を常に疑ってかかるので、自分に害を与えないか、絶えず警戒しているという。こうした人の可能性を信じようとしない態度は、悪循環を生み、同僚や部下のやる気と成長を妨げる。他人の能力ややる気に気づいても、テイカーはむしろその人物を脅威とみなし、支援しようとも可能性を伸ばしてやろうとも思わない。テイカーは協力的な接し方ができない。
- もちろん天賦の才能も必要だが、一定以上の能力を持った候補者がたくさんいたら、粘り強さは、その人がどこまで可能性を発揮できるかを予測する大きな要因となる。だから、ギバーは根気のある人間に目をつけ、じっくり時間をかけて、粘りのある人の背中を押すだけでなく、根気のない人に根性そのものを植え付ける努力もする。
- テイカーは、うまくいっていない投資に責任を感じ、自分のプライドやメンツを守るためにさらなる投資をしようとする。ギバーは、同僚と会社を守ることを第一に考えるので、進んで失敗を認め、柔軟に意思決定をしようとする。
- テイカーは、批判されていると感じたとたん、忠告を受け入れる気になれなくなる。まずい決断を下したと思うことを拒み、否定的な評価をまともに受け止めないことで、自分のプライドを守る。それに対し、ギバーは批判を受け入れ、アドバイスに従う。長い目で見てよりよい選択をするためなら、さしあたって自分のプライドや評判が打撃を受けても構わないと考える。
(5)ギバーの才能④ 強いリーダーシップより影響力
- テイカーは、弱みをさらけ出せば、自分の優位と権限を危うくすることになると心配する。片やギバーは、それよりずっと楽に自分の弱点を表に出す。それはギバーが、人に力を振るうことにではなく、人を助けることに関心があるから。ただし、弱みを見せても効果があるのは、周囲の人々に有能だと認められている場合に限る。同じ失敗でも、達人がすると、逆に人間らしく親しみやすい印象を与える。
- 話し方でギバーかテイカーかわかる。テイカーは強気な話し方をする傾向があり、独断的で率直だ。一方、ギバーはもっとゆるい話し方をする傾向があり、控えめな言葉を使って話す。こうした言葉は、話し手には自信も権威もないという明確なメッセージを伝える。
- しかし、控えめに話さない方がいい立場が一つだけある。それはリーダーシップを担っている場合。強気のコミュニケーションはその場限りの面接では効果的だが、チームワークやサービス関係では、チームのメンバーの尊敬や賞賛を失う要因となる。
- 知識のある同僚にしょっちゅうアドバイスや助けを求めている人は、全く求めない人よりも上司受けがいいことがわかっている。ギバーがアドバイスを求めるのは、純粋に他人から学びたいと思っているから。マッチャーが人に意見を聞くのをためらう理由は、返さなければならない仮ができると思っているから。
- ギブアンドテイクのやり方に関係なく、人間というのはアドバイスを求められるのが大好き。誰かにアドバイスをすると、テイカーは自分が偉くなったような気になるし、ギバーは人の役に立てたような気になる。
(6)ギバーが気を付けなければならないこと
- 自分を犠牲にして与えていれば、すぐにボロボロになってしまう。「他者思考」になるということは、受け取るよりも多くを与えても、決して自分の利益は見失わず、それを指針に、「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」を決めること。
- ギバーが燃え尽きるのは、与えすぎたことよりも、与えたことでもたらされた影響を前向きに認めてもらえていないことが原因。困っている人をうまく助けてられないときに燃え尽きる。
- 1日に1つずつ与えるよりも1日に5つまとめた与えた人の方が幸福度が増す。自己犠牲のギバーは、相手に求められるがまま、その都度バラバラと与える傾向がある。このやり方は気が散りやすいうえ疲労感も大きく、ギバーから必要な注意力と気力を奪ってしまう。
- 目的意識を持って楽しいから人助けをした日は、かなり元気が増すように感じる。この理由から、人の役に立つことをすると、自律心や達成感、他人との結びつきが高まるため、元気が出る。
(7)「いい人」だけでは絶対に成功できない
- 双方の利益が対立する短期間の交渉においては、相手の心ではなく頭の中に注目することで、大いにギバーの有利になる。人の視点でものを見ることが、相手の真意を見極めるカギであり、新たな選択肢をギバーにもたらしてくれる。
- 寛大なしっぺ返しは、他者志向の戦略である。自己犠牲タイプのギバーがいつでも人を信用するという間違いを犯しているのに対し、他者志向のギバーは信用することを基本としながらも、その行動や評判からテイカーだとわかると、ギブアンドテイクのやり方を使い分ける。テイカーを相手にするときには、自衛のためにマッチャーになるのがいい。
- テイカーは価値を総取りすることに焦点を合わせる。一方、自己犠牲タイプのギバーは、あまりに譲歩しすぎて、相手に得をさせてしまう。最も成功する公証人は、他者志向のギバーだある。自分自身の利益だけでなく、相手の利益にも関心を示し、相手と自分の双方が得をうするチャンスを探すことで、より突っ込んだ考えにより他者が見落としがちなウィンウィンの解決策を見つけることができる。
- 成功するギバーの多くが、人はみな善人だという信念から出発するが、同時に、周囲の状況を注意深く観察して、潜在的なテイカーを割り出す。そして必要とあらば、テイカーの感情を思いやるのではなく、その思考を分析し無条件に与える代わりに、寛大なしっぺ返しで対応する。
(8)未来を変える「因果応報」のルール
- 人との絆とは他者志向性のこと。与えるときはたいてい、相手に得をさせたいという欲求と、自分自身も得をしたいという欲求が複雑に混ざり合っている。
- 自分との類似性はちょっとした潤滑油の役割を果たす。誰かに出会ったとき、その人に自分自身を連想させるものがあると、人は少しだけ熱心になり友好的になり心を開くようになる。人は特異な共通性を持つ相手に引き付けられる。
- 自分の選択によって繰り返し人に与えていると、与えることを自分の個性の一部として内面化するようになる。つまり、自ら進んで与えると決めたからには、それを変えるわけにはいかない。そこで、言行を一致させ、偽善を避けるための一番手っ取り早い方法が、自分は人助けをしたいのだ、ギバーなのだと決めること。
3.教訓
どうしても、GIVE & TAKEというと、相手に見返りを期待して相手に親切にする、いわゆる「返報性の原則」を想定してしまいがちです。
そうではなく、組織全体を見渡して、自身の利益だけでなく他者へも貢献することを目指して行動したいものです。
それにより、損得抜きで同僚と協力できる人としての自身の評判を高め、相手からの協力も得られる好循環を実現したいと考えています。
単なるいい人に終わってもダメで、誰と組めばいいかも考える必要があります。