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なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学 和田秀樹著

1.はじめに

表紙の笑顔の女性が印象的で、タイトルと著者から、買って読もうと決めていた本です。発刊から1年半弱経ちようやく手に取りました。

他にも読みたい本、積読本があってなかなか手が伸びなかったのですが、結果としては発刊当初に読んでおけばよかったと思える良本でした。

心理学者としての「こころと体のクリニック」を運営する立場として、現場での出来事に即した話を聞くことができます。

以下では、特に印象的だった部分を取り上げて引用していきます。

2.内容

(1)明るい人はなぜ人生がうまくいくのか?

  • 部下の人たちに威厳を示そうと「仏頂面」をしている上司より、ニコニコと愛想がいい課長や部長のところには、やはり人が集まってくる。仕事ができる人というのは、男性でも女性でも意外と愛想がいいもの。
  • ビジネスの世界の成功者に限らず、人生が最終的にうまくいく人というのは、いろいろなことを「めげずに試し続ける人」。めげずにというのは、何の根拠もなく楽天的に考えることではなく、「勝つことがあれば、負けることもある。だけど結局は勝つことでしか前には進めない」ということを知っているということ。
  • ところが、実際に試してみる前に自分勝手な答えを出して、それが正しいと思い込んで何もやらない人が意外と多い。あれこれ試してみるというのは、「向上心を持つ」という意味ではない。自分なりに考えながら試行錯誤を繰り返すということ。人が決めたレールを走るということではない。
  • 打数が多くなれば、ヒットの数は自然と多くなる。打数が増えれば打率が下がると思うかもしれないが、世の中の人は打率で人を見ていない。すべてヒットの数で判断している。ホームラン級の目立つヒットが1本でもあれば、多くの人は「あの人はスゴイ」と高く評価するから、少しくらいの失敗など誰も関心を持たない
  • 暗い気持ちで何もしないでいても、悪いことが起こりやすくなるわけではない。結果として何も楽しいことが起こらないというだけのこと。本人は現状維持で無難にやっているつもりでも、知らない間に周囲の人は成長したり変化していたりするので、自分だけ成長しないというのは実は大きなリスク。
  • 何も変化は起こらないと思っていても、明るい気持ちでいる人は前向きに何でも試しているから、知らない間に差をつけられてしまう。「やる」と「やらない」では、後になって大きな違いが出る
  • トヨタはカタカナの「カイゼン」と表記することで「現状に満足せず、今よりもっと良くするという意味を込めたという。もし生産性が上がらなければ、元に戻せばいいだけの話

(2)「不安」にならない仕組みをつくる

  • 精神科医としては、あまりにも起こる確率が低いことを心配しすぎる人には、何らかの病気を疑う。人には「無視できる確率」があるから。無視しなければ生活が成り立たなくなるような確率のことは、心配したところでどうにもならない。それを「万が一」と考えていたのでは、何もできなくなってしまう。
  • 上司が嫌なことを言ったとしても、必ずしも悪気があるとは限らない。あなたの成長を願って、あえて苦言を呈しているのかもしれないから、「言葉通りの意味ではなく、他の可能性も考えられるでしょう?」ということ。大事なことは「そういう一方的な考え方は変えましょうね」ということ。「絶対こうに決まっている」という硬い殻から抜け出して、別のアングルからの視点を持つことが、ストレスを和らげるための第一歩となる。
  • 大切なことは、ネガティブにしか物事を考えられないと、「最悪の結果しか想定できない」という問題点を本人が自覚すること。逆に、ポジティブにしか考えられないことも、「一番いい結果しかイメージできない」という問題点があることがわかる。
  • 合わないものは合わないと認める「勇気」が必要。無理なものは無理と「割り切る」ことも大切。「人に嫌われることもある」と覚悟を決めれば、あなたの気持ちは軽くなる。
  • ①思い込みが強い人、②決めつけが強い人、③自分の意見を曲げない人は、相手の考えを変えさせようとしてもほとんど意味がない。思い込みが強い人は、自分のことを思い込みが強いとは思っていない。「自分は正しい」と思っているから、変わることを期待しても無理がある
  • 多くの人が「じっと我慢」する道を選択して、結果的に心身に支障をきたしている。「最後には逃げればいいんだ」「逃げられるんだ」と思えば、すぐに会社を辞めないで、「もう少し様子を見てから決めよう」という気持ちの余裕が生まれる。

(3)うまくいっている人の考え方のコツ

  • 気持ちが明るくなったり暗くなったりするのは、あくまで本人の「主観」の問題。同じ出来事に遭遇しても、平然としている人もいれば、不安に襲われる人もいる。つまりは、自分の「考え方」「感じ方」ひとつで、物事の受け止め方は大きく変わってくる
  • 実験だから失敗することもあるが、それを嫌がって実験をしなければ、おいしいラーメンに出会うという「成功」を手に入れることはできない。何事も「実験」と考えることができれば、これまでためらっていたことにも、積極的に向き合うことができる
  • うまくいかなかったことは逆に超ラッキーなことであり、ダメな方法が1万通りもわかったのらから、次こそ結果が出るに違いない、という考え方。ただし、うまくいかないやり方は二度とやらないことも大切
  • 「生きたいように生きる」というのは、無責任に生きるとか、好き勝手に生きるという意味ではない。自分の気持ちに素直に向き合って生きるということ。人が明るい気持ちで生きていくためには、誰の責任でもない、自分の人生を歩むことが大事
  • 「傾聴・受容・共感」の3つのキーワードの中に「愛想がいい」ということの本質があるように思う。「愛想のよさ」というのは相手と適当に合わせることではなく、相手のことを真剣にわかろうとするということ。本当に愛想のいい人というのは、言わなければいけないときは、言い難いことでもハッキリ言える人。
  • 好印象を持たれていれば、少しくらいミスをしても、周りの人も寛容になってくれる。人に与える「印象」だけで、その受け取り方には大きな違いが出るが、多くの人は「人にいい印象を与える」という意識が低いように思う。
  • 大事なポイントは、人のために自分がやれる範囲のことはやるとしても、できないことは素直にで「断る」ということ。普段から、いろいろやってあげていれば、一度くらい断ったところでそれほど波風は立たない。少なくとも、周囲の評価を下げることはない。
  • 「自分から見た自分」と「人から見た自分」にはギャップがある。人から見られている自分のキャラがわかれば、自分がどう振る舞えば周囲から好感を持たれるかがわかる。「人からどう見られているか」を知っておいて、そのイメージに乗っかるというか、それをうまく利用する方が無理がない。
  • 気持ちを明るくして、楽しく毎日を過ごすためには、「どうせ・・」という口癖をやめて、「とりあえず・・」という新たな口癖を心がける必要がある。実際にあれこれとやってみれば、楽しいことが増えるから、自然と笑顔になっている自分に気づくはず。
  • 相手を言い負かしたところで、相手が考え方を変えてくれることはほとんどない。本人は勝ったつもりでいても、それほど意味はない。物事を勝ち負けで考え続けていると、人間には「負けたくない」という心理が強くあるから、負けたくないあまりに逆に「消極的」になってしまう
  • 人の人生は、「逃げたら負け」ではない。「逃げるが勝ち」でもない。大事なことは勝ち負けではなく、結果的に「生き残る」ということ

(4)ポジティブな感情を引き出す方法

  • 人の長所と短所など、明確に2つに分かれた事柄しか理解できない偏った考え方を「二分割思考」という。この考え方の問題点は、白と黒の中間にあるグレーの部分が見えないこと。こうした思考パターンの人は、人間関係において孤立してしまうことも珍しくない。逆に長所ばかりに目が向いていても判断を誤る。
  • 「面白きこともなき世を面白く(高杉晋作)」。自分から積極的に面白いものを見つけようとしないと、よほど面白いことに出会わない限り、ほとんどのことがつまらなくなってしまう
  • 会社に勤めていても、家に帰っても、いろいろなことがうまくいかないと感じることもある。それでも、会社はクビになっていない、離婚するほどでもない、というのは実は非常に大事なこと。今日がダメでも、明日もダメとは限らない
  • ネガティブな感情というのは、それを無くそうとしても、泥沼にハマり込むばかりで、ろくなことはない。それらが「あるなり」に、「どうしていくか?」を考える。できないことを考え続けても、深みにはまるだけ。

(5)「意欲」さえあればすべてうまくいく

  • 人は年齢を重ねるうちに、徐々に意欲が低下してきて、あらゆることが「面倒くさい」と感じるようになる。そうなると一気に「老化」が加速して、見た目や体が老け込むことになり、場合によっては認知症になることもある。
  • 定年を迎えると、人は真正面から「老い」と向き合うことになり、体や心の衰えを実感する。定年退職とは、それまでの束縛から解放されて、「自由を手に入れる」ということ。老いや衰えは仕方ないとしても、老いても試せることはたくさんある。会社を辞めてからのほうが、むしろ試せることは増える。
  • 定年退職によって得られなくなった「刺激」は、自ら探し出す必要がある。定年退職を迎えるなど、ある年齢になったら、意欲を保ち続けるためにも「自分がやりたいことをやる」のが大事。年齢を重ねてまで、嫌なことをする必要はない。
  • つまらない勝ち負けにこだわるのではなく、ある年齢に達したら、自分が勝てる土俵を探すのは大事なこと。これだけは負けないと思えるものがあれば、自信が生まれる。

(6)おわりに

  • 日本人は「嫌なことをしないと、いいことが起こらない」と思っているが、できることなら、嫌なことはなるべくしないで生きていったほうが、余計なストレスを抱え込まなくても済む
  • 提案したいのは、「今日からひとつだけ我慢をやめてみる」ということ。あなたが日ごろから「我慢している」と思っていることを、今日からひとつ手放してみる。自分にブレーキをかけているものを試しに一度外してみる。自分にブレーキをかけているのは何なのか?まずは、それに気づくことが大切

3.教訓

いわゆる、元気のいい「陽キャ」を勧めているわけではなく、考え方としてポジティブでチャレンジ精神があり柔軟に捉えられる人が明るい人で、人生がうまくいく人、というわけです。

すなわち、単にヘラヘラ笑って表面上明るく振る舞ってやり過ごせばいい、ということではなくて、相手に真剣に向き合う愛想のよさが必要で、他者に依存せずに自分に向き合いの自分の責任で生きていくことの重要性を学ぶことができました。逆に「外弁慶」ではダメだということでもあります。

oggi.jp

また、”思い込みが強い人は、自分のことを思い込みが強いとは思っていない。「自分は正しい」と思っているから、変わることを期待しても無理がある。”という部分にも共感を得ました。

確かに周りにこういう人が一人や二人はいます。もともと持っている能力は高いのに、考え方を変えてくれたらさらに良くなるのになと期待しても、そうはならないことが多くストレスだけが残ります。ただ、自分の中にも一部にそういった面もあると思うので、逆にそう思われることのないように自戒したい部分でもあります。

そして、自分自身でも「どうせ〇〇だから」と言ってしまっていることもあるなという点も反省ポイントです。最初からあきらめて行動せずに現状維持のままでいると、今のやり方がよくないことにも気づけません。何か試してみて、ダメだったら元に戻せばいいという風に考えることは意識していきたいと考えています。

「何事も実験」というのはよい表現で、今後取り入れていきたいと思います。