管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

現役課長が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

ユーモアは最強の武器である ジェニファー・アーカー ナオミ・バグドナス著

1.はじめに

チームビルディングを普段から意識している自分にとっては、タイトルと装丁だけ見て、中身を立ち読みせずに買って読もうと考えていた本です。

翻訳本は、インパクトを狙って原著とまったく違う日本語タイトルになることも多いものです。しかし、本著は副題の一部に"Why humor is a secret weapon in business and life"とあるように、ユーモアは「秘密兵器」という近い表現がされています。実際に中身ともマッチしていました。

本書より「おもろい話し方」のほうを先に読んだ感覚として、どちらが有益かという二者択一でなく、双方を読むと相乗効果を出せると感じます。ぜひ2冊とも手に取っていただくことをおすすめします。

まずは本書で印象的だった箇所の一部を、2.で引用します。

2.内容

(1)ユーモアの4つのタイプ

  • 私たちの職場には、もうこれ以上「プロ意識」など必要ない。それより必要なのは、もっと自分らしく振る舞うことや、もっと人間らしいつながり。陽気さをほんの少し取り入れるだけで、その場の空気が一変することはよくあるし、事務的で機械的なやりとりが、人と人とのつながりや心の触れ合いを感じられるものになったりする。
  • 部下たちに自分の人間らしい部分を見せ、コミュニケーションの壁を取り払い、権威と親しみやすさのバランスをとるためにも、ユーモアは強力なリーダーシップ戦略。遊び心のある文化は、とくにチームにとってリスクの高い場面や困難なときこそ、しなやかに乗り越えるのに役立つ。
  • よい印象を与えるか、悪い印象を与えるかにおいて最も重要な決定要素は、ジョークで笑いを取ったかどうかではなく、そのジョークが適切とみなされたかどうか
  • 別に誰よりも気の利いたジョークを言う必要はない。職場をもっとユーモアにあふれた場にするための一番簡単な方法は、面白おかしくなろうとすることじゃない、それより、笑える瞬間を目ざとく見つけること

(2)ユーモアの脳科学

行動科学の研究には、仕事上でユーモアを用いることによって、次の4つの効果が強まることを示す豊富な事例がある。

  1. パワー:地位が高く優れているという印象を与え、相手の行動や意思決定に影響を及ぼす。こちらが提案したアイデアを覚えてもらいやすくなる。
  2. つながり:知り合ったばかりでも信頼感が生まれ、打ち解けることができる。長く続いている間柄なら、なおさら満足感を覚える。
  3. 創造力:それまで見落としていた関連性に気づきやすくなる。リスクのあるアイデアや型破りなアイデアを思い切って提案できる。
  4. レジリエンス:ストレスが緩和され、挫折から立ち直りやすくなる。

(3)プロコメディアンのテクニック

<原則1>ユーモアの核心は事実にある

  • 事実の共通認識はユーモアの基盤になる。だから、まずは「何か面白いことはないか」ではなく、「どんな事実が潜んでいるか」と、自分に向かって問いかけてみる。

<原則2>あらゆるユーモアには驚きとミスディレクションが潜んでいる

  • ユーモアは、予想と実際に起こった出来事の不調和から生じる。多くのジョークがうけないのは、冴えたアイデアに欠けているからではなく、ミスディレクションが欠けているせい。つまり、予想を裏切るオチになっていない。

以下に紹介するシンプルな5つのテクニックを使えば、設定からオチまでうまくつなげられる。

  1. 誇張する:ものごとの規模や重大さをうんと誇張して、大げさな表現を使う
  2. コントラストを生じさせる
  3. できるだけ具体的な表現を使う:突飛なものを連想させる
  4. 比喩を用いる:効果的な比喩を生み出すには、特定の対象について自分自身が思うことや感じることと、その対象の比較についてほとんどの人が思うことや感じることの間に、共通の特徴を見つければいい
  5. 「3つのルール」を守る:一般的で予想しやすい要素を2つ挙げてから、意外な3つ目の要素を挙げる
  • たいていのコメディアンは、持ちネタをひとつやふたつどころか、目録にできるだけ蓄えていて、いつでも使えるようにしている。自分が持ちネタを集めていけば、あなたにも同じことができる。いざというときに披露するネタで、自分でも話すのが楽しくて、いつでも笑いを取れるネタがいい。

(4)ユーモアを仕事に活かす

  • 以前うけたジョークや面白かったできごとを引き出す「コールバック」は、あなたと相手との共通の経験を思い出さる。コールバックがとりわけ効果的なのは、相手も楽しい返信をしやすくなるから。
  • PS(追伸)を付け加える。適当な内容であれ、おかしなジョークに触れたものであれ、楽しい追伸というのはウィンクのようなもの。親しみを伝え、相手の遊び心を引き出してくれる。
  • 不在通知に陽気さを伝えるのは、機械的な自動応答メッセージを、味気ないもの(なんだ、いないのか)から豊かなやりとり(何これ、面白い)へと変えるチャンス。
  • 初対面のときに相手に与える印象は、その後の相手との関係に大きな影響を及ぼす。だから、初対面の機会をなりゆき任せにしてはいけない。まずは事前の準備として、相手と個人的な関係を築くのに役立ちそうな手掛かりを探そう。
  • 思いやりをもってユーモアを使えば、厳しいフィードバックの衝撃を和らげてくれる。ネガティブな批判をすれば、相手は身構えたり抵抗したりするかもしれないが、「思いやりのあるジョーク」を使えば、同じことを伝えるにしても、相手に嫌な思いをさせずにすむ
  • 人間は社会的動物であり、グループの中で最高位の人のまねをする傾向にある。つまり、リーダーたちはものごとを堅苦しく考えずに、みんなが優れた仕事をできる状況を率先して作り出すことができる

(5)ユーモアとリーダーシップ

  • とりわけ有効なのが、自分の失敗を明らかにするだけでなく、茶化してみせること。なぜなら、リーダーたちが弱みを見せれば、笑い物になるどころか、笑いがチームに信頼感が生まれる効果をもたらす
  • ユーモアを使うことで、自分自身や会社の失敗を重苦しくない方法で認めやすくなる。自分の失敗を笑い話にすることは、自分の心理状態をコントロールするための強力なツールとなるだけでなく、まわりの人たちも安心して失敗を認めやすくなる。
  • 上司が部下に対して、人間らしい一面を見せるのにもっとも手軽で効果的な方法は、自虐的なユーモアを健全な程度に披露すること。自虐的なジョークを言う上司のほうが、信頼度とリーダーシップ能力の両方の点において、部下たちから高く評価されている。
  • リーダーがみんなの前で陽気な遊び心を表現すれば、組織文化の雰囲気を決定づけるだけでなく、みんなが安心して見習うようになる。

(6)ユーモアのグレーゾーンを切り抜ける

  • 何を面白いと思うか、あるいは何を適切だと思うかは、万人共通と言うには程遠い。コメディには事実、痛み、距離という3つの重要な要素があり、この3つがバランスを保つことで機能する。
  1. 「事実」を見極める:「事実」からユーモアを取り除いたらどうなるだろう?この文脈でこの人たちの目の前で、こんなことを言うのは適切だろうか?
  2. 「痛み」「距離」を考慮する:私はこれをジョークにできるほど、この人たちと距離が近いだろうか?痛みの原因に関して、自分にも個人的な経験が十分にあると言えるだろうか?
  3. 空気を読む:「何を言えば笑わせることができるか」を理解することだけでなく、「聞き手がどう感じるか」を理解しようとするのも重要。みんなジョークを笑って受け止められる気分だろうか?文化の違いをはじめ、ほかにも考慮すべき点はないだろうか?
  • 地位が高くなればなるほど、ほかの人をからかうのは「パンチ・ダウン」になってしまう。そのためリーダーが自分を卑下するのは謙虚な印象を与え、みんなと通じ合える親しみやすい存在に見えるだけでなく、やっぱり地位の高い人はさすがだと思わせる効果がある。経験則としては、出世すればするほど、他人をからかうよりも自虐的ユーモアでいくこと。
  • 上司がジョークを言った場合、みんなの笑いはジョークに対するリアクションというより、地位や序列に対する配慮。リーダーが自分のジョークの効果を正確に測るのはきわめて難しい。学ぶべきは、みんなの笑いを額面通りに受け取らず、地位の差による力関係を認識すること。
  • ユーモアが通じなかったり相手が気を悪くすると、私たちは「自分のほうに問題があったのではないか」と落ち着いて考えもせずに、「彼にはあのジョークが解らないんだ」「彼女は過敏すぎる」などと、つい相手のせいにしたくなってしまう。そんなときは、相手のリアクションにはしかるべき理由があるはずだと考え、自分が間違っていた点を理解し、盲点を反省して過ちを正すことに努める

3.教訓

自分としても、どうせやらないといけない仕事なのだから楽しくやりたい、少しでもチームの雰囲気をよくしたいと考えています。そのため、しょうもない軽い冗談を言って、悲壮感だったり閉塞感だったり、重苦しい気持ちのハードルを下げようと努力しています。

しかし、中には冗談が通じず、本当に額面通りに受け取り、「以前こういうこと言いましたよね?」と詰め寄ってくる人もいます。白か黒か、0か100かの世界しか見えない人も世の中にはいます。

本書にも「ユーモアのグレーゾーン」という言い方が出てきて、その章(上述では2(6))が非常に勉強になりました。受け取る人それぞれで、単に自分基準で面白いと思ったことを言えばいいだけでなく、その場や空気が適切なのかをわきまえることが求められるし、うけなかった理由を後から自省することも必要です。

あれこれ考えると、余計なことを言わずに波風を立てないほうがいいんじゃないか、となってしまいます。それでも自分より地位の高い人がウイットに富んだ話をしているのを聞くと、「ああ、やっぱりこの人は頭がいいな」と感心しますので、自分にも取り入れてユーモアを自分の武器にできるよう、トレーニングと実践をしていこうと考えています。

なお、ここでは詳細に書きませんでしたが、第1章の見出しの通り、ユーモアには4つのタイプがあり、本書にミニクイズとして自分がどれに当てはまるかが収録されています。興味のある方はぜひ購入して自己認識し、今後のコミュニケーションに役立てていただければと思います。