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コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト 高松智史 著

1.はじめに

著者の高松さんは、新卒でNTTデータに入社し、その後BCGに転職した方です。

表紙の裏のそでのところには、以下のことが記されています。

”コンサルの思考も心得も「才能」ではなく「濃い技術」です。そしてそれは決してコンサルためだけのものではありません。業界も業種も関係ない。全てのビジネスパーソンに届けたい最高のビジネススキル。それを104個も詰め込んでみました。”

以下では印象に残ったところを、少し表現を整えながら引用します。

2.内容

(1)「2度はできない」叱咤激励の1年目

  • 相談後の結果の「報告」こそが、その相談者との関係を深めるし、何かにつけてアドバイスをもらえる関係に昇華できる。結果、こちらとしても相談しやすくなる。つまり相談とは、相談で終わり、ピリオドを打つのでなく、相談+報告で終わり、ピリオドを打つもの
  • 論点に答えていないことを、ビジネスでは「論点がズレている」と言う。何か質問された場合は、必ず「答え(返事)」から質問に返ってこれるか?」をチェックする。論点に答えた後は「あなたの時間」だから、論点とか気にせず自由に話してOK。
  • アウトプットを生み出す6ステップ。ロ→サ→T→ス→作→ア。①論点→②サブ論点→③TASK→④スケジュール→⑤作業→⑥アウトプット。「論点バカ」になる。
  • 議論(ディスカッション)、炎上をして初めてプロセスが終わる。ロ→サ→T→ス→作→ア→D。上司と議論するまではセット。メールに「ご査収お願いします」などと書いてはいけない。「議論をしましょう感」がゼロ、むしろ「アウトプットのその後は、上司にお任せしました。僕は帰ります」感がすごい。
  • プロ・コン(メリデメ)は「評価基準」が埋もれてしまっている。何かを比較するときに最も大事であり頭を使うべきことは、まぎれもなく「評価基準」なのに、それが括りだされていない。
  • 発言録=「時系列」で構造化、議事録=「話しているテーマ」で構造化、議事メモ=「議論前に立てた論点ベース」で構造化。材料=議事メモを読んでくれると、その会議での論点の掴み方や構造化について、上司からインプットをもらうことができる。材料は鮮度が命。のんきに「自分のペース」で作るのは愚の骨頂
  • 「平温」=いつものテンションよりも+2度上げる。それだけで周りは「この仕事、この場を盛り上げよう、テンションを上げようとしてる」と気づいてくれる。それがあなたのチャームとなり、良い循環を生む。
  • オープンクエスチョン+「自分なりの答えを考えた」=クローズドクエスチョン。これで相手に「ここまでは理解できています」ということが伝わるので、答える側にとってもシャープな答えを返すことができる。オープンクエスチョンはバカの始まり、クローズドクエスチョンは「仮説思考」の始まり。
  • いっぱい書いて、あとは無駄な文字を削っていく。「書いて削る」美学は言語化力も磨いてくれる。「文字にできる」はお金を生む。
  • 会議で必ず一言話さなければならなくなると緊張感が増し、おのずとそのミーティングの当事者になれる。「発言しないなら出席するな」、この厳しくも温かい格言には愛が込められている。

(2)「天狗になる」⇆「鼻をへし折られる」繰り返しの2年目

  • プロジェクトが始まる日=「Day1」、その日までの日=「Day0」。仕事をする上で「差がつく」のは何と言っても「Day0」の過ごし方。勝負はDay0。始まる前に決着をつける
  • 議事メモとしてちゃんと「活字に落とす」だけでも価値になる。ある程度のクオリティを担保できれば、イメージで言えば「50点=仮に添削するとすれば、いくつか赤字が入る」程度のレベルで書けば、最初に活字にした奴が一番えらい。
  • PowerPoint資料が何枚あろうとも、エグゼクティブサマリーは最も大事なものであり、まず最初に作らねばならないもの。何があっても最初に書くことを忘れてはならない。
  • 誤解なく最も読み取りやすい情報は、表とWord。皆さんが最も読みやすいのは、箇条書きで書かれた文章と、縦軸横軸の表。これは紛れもない事実。
  • どんな問いを答えるべきかと論点思考をぐりぐり回す時も、「少ししか知らない」状況でも考え抜くという仮説思考を使いまくる。その問いの答えを作ろうと戦略思考をぐりぐり回す時も、その材料が限定であっても考え抜くという仮説思考を使いまくる。「仮説」とは検証されていない状態を指すだけの言葉。故に、「問い」の世界でも「解」の世界でも使う。
  • 今この瞬間からケースバイケースというのはやめよう。僕らに課されていることは「答えのないゲーム」、故に議論しないと始まらない。議論するためには、そもそも自らの「答え」、つまりスタンスを作らないと始まらない。スタンスを取れるようになって初めて一人前。コンサルだけでなく、それこそ人生も。
  • フレームワークなど気にせず、ぐりぐりと物事を考えた上で、いかに「漏れなく考えた。僕はありとあらゆることを考えた」感を伝えるために、フレームワークで整理して伝えるか。正しい付き合い方は「フレームワークで考える」ではなく、「フレームワークで説明する」
  • 参加者それぞれが持っている「論点」=検討すべきポイントが違うのに、それを意識しないで良い資料などできない。だから、絶対に参加者確認を忘れてはいけない。そして、一般/全員向けでなく誰かに向けて作る。To AllでなくTo Someone。
  • ミスの都度、反省し謝る。反省の純度を100%にする。起きた失敗を無しにはできないわけだから、「言い訳」を絶対にしない。何度聞かれても「言い訳」をしない。
  • 「あれどうなった?」もしこれを聞いてしまったら、その仕事を100%のクオリティでやっていたとしても、あなたのポイントにはならない。何せ、「あれどうなった?」は、「僕の期待していたタイミングより遅いんだけど」と同義

(3)「付加価値を付ける」真っ向勝負な3年目

  • 「解」を提示するのではなく、そのプロジェクトに参加した社員に、その過程を一緒に体感していただく中で成長してもらい、社員を有効化=戦力化する。自分だけ、1人の力だけで出せる付加価値には限界があるわけだから、チームでいかに価値を出すかが大事になる。
  • 何か問題が起きた時に、タイムリーにというか、その問題がどのくらいの規模になるかもわからない状態で相談をしたくなる相手になりたい。そのために必要なのは、手ぶらでの議論、資料無しで付加価値を提供できること。これを即座にしなければならない。
  • 打ち手を作る際に必ず、意識すべきことは「プラクティカル」かどうか。直訳すると「現実的に実行可能かどうか?」その逆を砕けた言い方でいうと、「何も言ってない」。アドバイスしたつもりかもしれないけど、何も変わらないよ。何も言ってないのと同じ意味だよ、となる。
  • 「争点」をファシリテーションする。まずは明確に賛成の人に当てる。次に、明確に反対の人にあてる。そして最後に、表面的に賛成も反対もできない人に当てて、「何を言っているんだよ」とバッサリ切り捨てる。
  • 理論だけでは人は動かない。感情を全面に出した時、人は動いてくれる。感情=好きを表現してからの理論=なぜか?を語る
  • 自分の下にいるメンバーと対応している際に上司から怒られた状況になった瞬間、間髪入れずに「あ、それ僕の指示です。すみません。」とフェースアップして、怒っている上司と対峙しなければならない。それがリーダーとしての第一歩。決して「メンバーの梯子」を外してはならない。
  • 議論することが大前提。時には炎上しないと終われない。だから、会議が「しゃんしゃん」で終わった時は黄色信号。議論がうまく仕掛けられていないんだと考えなければだめで、安心材料ではない。
  • 「あったらいいな」と言うくらいなら「死ぬ気でやってほしい」とか、「やらなくていいよ」と言う。
  • 無茶なお願いをされたとき、ネガティブな感情が湧く前に、商人魂をたぎらせて、貸しが作れるなら、恩を売れるなら、お安い御用だ!と思考する。

(4)「一桁上の価値を出す」マネージャーに挑戦の4年目

  • 「あのマネージャーくらいなら自分にもできるかも」などと思いがちだが、当然そんなことはない。それは単に、視座が低くて見えていないだけ。成長を加速させるために、上司・マネージャーが「見える部分、見えない部分」でどんなことをやっているのか、これを意識して勉強させてもらえるかが分かれ目。
  • 世の中は「過保護(≒ホワイト化)」が進む。すると「成長する機会」が奪われる。故に、「自分の意識」で機会を取りに行く時代

3.教訓

もちろん、104個のスキルがすべて活かせるの越したことはありません。しかし、全部使えなくても、今いる環境で、自分ができるところから取り入れることができればいいと思います。

会社からは無線で動くPCが貸与されているので、打ち合わせ時に手帳を持っていくことは減り、PCを持ち込むことが増えました。そのため、打ち合わせや面談をしながら、やり取りをPCに記録することができるようになりました。打ち合わせが終わればその記録をすぐに配信することを目標にしていて、鮮度は意識できていると感じました。

その際、自分としては、今でも以下のようなことには気を付けてきました。

  1. 単に言ったことをそのまま文字に起こすのではなく、文意や熱量が伝わるように(かつ飛躍しない程度に)適宜加工すること
  2. 話した順に書き連ねるのではなく、適宜テーマごとに並び替えること
  3. やり取りの報告だけでなく、最後に自分の所見を述べること

ただし、相手によっては、目を合わせる機会があまりなくパチパチとPCに打ち込んでいる状態を嫌う人や、「誰かに自分が言ったことがすぐ筒抜けになる」と思う人もいます。話すテーマや人によって、やり方を工夫することには注意が必要です。

 

また、メンバーには、まさにこういう話をしてきました。

  • 相手から聞かれる前に報告をする。その際、自分が知っていること・言いたいことではなく、相手が知りたいこと・聞きたいことを中心に組み立てる。
  • ルールベースの理想論だけ語るのでなく、現実的にワークする案を考えないと、結果的に相手が困る。

 

できていることがある一方で、メリデメ表を使ったり、「ケースバイケース」と言っていたりは、自分でも認識があります。

考えているように見えるけど、実はよくないこともいくつか知ることができ、現実的に意識や行動を変えることができる良書でした。