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1.はじめに
著者は、太陽の塔を制作した岡本太郎さん。「芸術は爆発だ」という言葉は、一度は耳にしたことがあると思います。
この本は、以下の一文から始まります。
人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積み減らすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きが取れなくなる。
2.内容
- 社会的状況や世間体とも闘う。アンチである、と同時に自分に対しても闘わなければならない。これは難しい、きつい。社会では否定されるだろう。だがそういう本当の生き方を生きることが人生の筋だ。
- 今までは、謙虚であるということが世渡りの第一歩と考えられてきた。だがぼくの考え方では、それは非常に傲慢だとはいえないが、不遜だと思う。というのは、自分の能力や器を見極めもしないで、つまり自分のことが自分でわからないのに、勝手に自分はダメだと見切り、安全な道をとってしまう。
- ”いずれ”なんていうヤツに、本当の将来はありっこないし、懐古趣味も無責任。つまり、現在の自分に責任を取らないから懐古的になっている。しかし、人間が一番つらい思いをしているのは”現在”。やらなければならない、ベストを尽くさなければならないのは、現在のこの瞬間にある。もっと現実を直視し、絶対感を持って問題にぶつかって、たくましく生きるようにしなければいけない。
- うまくいくとか、いかないとか、そんなことはどうでもいい。結果とは関係ない。めげるような人は、自分の運命を真剣に賭けなかったから。自分の運命を賭ければ、必ず意思がわいてくる。もし、意思が沸いてこなければ、運命に対する真剣味が足りない証拠。
- 内向的ということをマイナスと考えたり、恥じちゃいけない。生きるということを真剣に考えれば、人間は内向的にならざるを得ない。また逆に、内向的なために、かえって外に突き出してくる人もいる。これが本当の人間的な人間。
- 自分はあまり頭もよくないし、才能のない普通の人間だから何もできないんじゃないか、なんて考えているのはごまかし。そうやって自分がやらない口実にしているだけ。
- 人生うまくやろうなんて、利口ぶった考えは、誰でも考えることで、それは大変いやしい根性だと思う。世の中うまくやろうとすると、結局、人の思惑に従い、社会のベルトコンベアーの上に乗せられてしまう。一応世間体はよいかもしれないが、本当に生きているのではない。流されたまま生きているに過ぎない。
- すべての人が芸術家としての情熱を己の中に燃え上がらせ、経済などを芸術的角度、つまり人間の運命から見返し、激しく協力に対決しなければならない。つまり、合理に非合理を突き付け、目的的思考の中に無償を爆発させる。あいまいにミックスさせることではない。猛烈に対立し、きしみあい、火花を散らす。それによって人間は、”生きる”手ごたえを再びつかみ取ることができるだろう。
3.教訓
君子危うきに近寄らず、ということわざがありますが、危ないかどうかは、近づいて自分の目で見て、触って、確かめてみないことには実のところはわかりません。
対象に近づいて、真剣に考え、常識にとらわれない発想をしないと、出来上がったものは単なる妥協の産物に終わります。
一回、殻を突き破ろうと思わなければ、自分に破る力があるのか、殻をやぶること自体がいけないことなのか、その外にはどんな世界があるのかも見えてきません。摩擦や議論を避けずに、現在起こっていることに正面から向き合う意識を持ち続けたいと思います。