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最強組織の法則 ピーター・M・センゲ著

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最強組織の法則 新時代のチームワークとは何か [ ピーター・M.センゲ ]
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1.はじめに

原題は"The FIFTH DISCIPLINE"であり、副題として "The Art & Practice of The Learning Organization”が添えられています。

また、「最強組織の法則」は400ページほどの内容ですが、最新の改訂版は「学習する組織」として、原書から一部割愛されていた部分含めすべてが翻訳され、500ページを超えています。(英題は両方とも同じです)

本書で取り扱う、「学習する組織」=「The Learning Organization」を育てるのに必要な技術・知識・筋道についての、副題の方から日本語版の題名になった形です。

2.内容

(1)企業が抱える学習障害

  • 組織の成員が自分の職務だけに気を取られると、すべての職務が関連しあって生まれる結果に対する責任感が薄れてしまう。さらに、不本意な結果の場合、原因が非常につかみにくくなる。「誰かがしくじったんだ」と思うのが関の山。
  • 自分の仕事にしか目が向かないと、自分の行動の影響が職務の範囲を超えてどう広がっていくのか見えない。そんな行動が自分を害する結果になって戻ってくると、その問題の原因は外部にあると誤解する。
  • 行動の帰結が自分の視野を超えたところにある場合、直接経験から学ぶのは不可能になる。組織のぶつかる学習ジレンマの核心がここにある。人は経験から多くのことを学ぶが、重要な決定の場合はたいてい、その帰結を直接には経験しない。
  • 組織は伝統的に、自らを分割することで、決定が与える広範な影響に対処しようとする。しかし、機能分割はいつしか封建領地に変わり、便宜的な分業だったものが変容し、各機能の接触がほとんど絶たれてしまう。成り行きとして、会社の抱える最も重要な問題、機能の枠を超えた複雑な問題の分析が危うくなる。
  • 企業におけるチームは、極めてしばしば、縄張り争いをする一方、個人の対面を汚すことは避け、チームの全体戦略を全員が後押ししているふりをするに時間を費やしがちである。結束したイメージを保つため、重大な疑問を抱いている者も、それを公に述べるのは控える。共同の決定は、全員が飲める内容を反映した生ぬるい妥協の産物か、一人の考えをみんなに押し付けたものになる。意見の相違がある場合、それは責任のなすり合いか意見の二極分解となって表れ、基礎にある想定や経験の違いが浮き彫りにされてチーム全体が学べるようにはならない。

(2)5つの「ディシプリン

それは、①システム思考、②自己マスタリー、③メンタル・モデルの克服、④共有ビジョンの構築、⑤チーム学習の5つです。

ディシプリンといっても、「規律」や「懲罰」の意味ではなく、学習し習得するべき理論および技術の総体であり、実践されるべき課題です。ディシプリンを実践するとは、生涯学び続けることです。「ゴールに到達する」ことは決してなく、一生をかけて習得に励むものです。

①システム思考

システム思考とは、複雑なシステムの根底にある「構造」をとらえ、影響力の大きい変化と小さい変化を識別するためのディシプリンである。

システム的観点から見ると、人間という行為者はフィードバック・プロセス(因果関係の循環)の一部であり、そこから離れて存在しているわけではない。これは認識の根源的な転換を意味する。これにより、我々がいかに現実から影響を受け、また現実に影響を与えているかを把握うすことができる。

システム思考を習得するうえでは、一人の人間が責任を取るべきという前提を放棄することになる。フィードバック的大局観では、システムの生み出した問題の責任は誰もが分かち合うもの。スケープゴート探しは、行き詰まりの結果を生むだけである。

「変化への抵抗」があるとき、「隠れた」平衡循環プロセスがある。従来の基準を動かしにくいのは、権限や支配力の分配を動かしにくいからだ。賢い指導者なら、変化への抵抗を克服するために、無理強いするよりも抵抗の源を認識する。そして潜在的な基準およびその基準が根差す力関係に直接働きかける

改善のペースが鈍ってくると、より努力して取り戻そうとする。しかし残念なことに、同じ方法で推し進めようと熱心になればなるほど、平衡プロセスはより強く反発し、努力はますます無駄になる。そのシステムの行動を変えるためには、制限要素を特定し、それを変えなければならない。そのためには、考えもしなかった措置や気づきもしなかった選択肢、あるいは報酬や基準の変化が必要となる。

根本問題は立ち向かうのが困難だ。そこで簡単で効率的に見える応急措置に頼ると、症状は緩和され、根本的な解決策を見つける必要性も薄れたようにみえてしまう。根本的な問題は手付かずのままで、悪化することもあり、また対症療法的の副作用は根本的解決策の導入をさらに困難にする。時が経つにつれ、対症療法的解決策への依存度はますます高まり、次第にこれが唯一の解決策となっていく。

企業が潜在的な成長の可能性を達成できない場合、成長と投資不足を認めることができる。通常そこには慢性的な資金のひっ迫があるが、皮肉なことにそれは投資不足の原因でもあれば結果でもある。資金のひっ迫は積極的な投資を困難あるいは不可能にするが、現在資金がひっ迫しているのも、元をただせば過去に十分な投資を行わなかったことによる。

②自己マスタリー

自己マスタリーは、人生を創造的な仕事として受け止めていくことであり、人生を受け身の視点でなく創造的な視点で生きること。

この自己マスタリーによって、以下の二つの基本的な活動が具体化する。

  1. 自分にとって何が大事かを常に明らかにし続けること
  2. どのようにすれば今の現実の姿がもっと把握できるようになるか学習し続けること

ビジョンと今の現状のはっきりとした見取り図を並列に置けば、「クリエイティブ・テンション」と呼ぶ創造的な緊張関係が生まれる。大切なのは、生活の中でクリエイティブ・テンションを作り出し、維持する方法を学び続けることにある。

自己マスタリーの高いレベルに達した人には、ビジョンや目標の裏側にある目的意識がある。そのような人物にとって、ビジョンとは単に良いアイデアではなく、強い欲求であり、学習を続ける姿勢がある。決して「到達」したりはしない、一生続くディシプリンである。

ビジョンと現実の姿の間にあるギャップは、エネルギーの源でもある。このギャップをクリエイティブ・テンションと呼ぶ。輪ゴムを手にかけて離していくと、緊張関係ができる。このテンションを解決する方法は2つしかない。現実の方をビジョンに持っていくか、ビジョンの方を現実に近づけるのかどちらか。そして、どちらになるかは、我々がどの程度ビジョンをしっかり保持しているかで決まる。

③メンタル・モデルの克服

メンタル・モデルとは、我々の心に固定化されたイメージや概念のこと。

よい考えが実行されないのは、心の奥底には世界の仕組みに関して深く秘められた各自のイメージが存在し、それが新しい見識と相容れないせいで実行の段階にまで進めないから。このようなイメージが、我々を今までの慣れ親しんできた考え方や、行動に縛り付けている。人々は自分の支持する理論に必ずしも調和した行動は起こさないが、自分が使っている理論(メンタル・モデル)には、確かに調和的に行動する。

メンタル・モデルが検証されないままだと、組織の行動を制限することになり、結局は慣れしんだ居心地のいい場所に安住してしまうことになる。

④共有ビジョン

共有ビジョンとは、組織の中のあらゆる人々が抱いている心象である。組織に浸透し様々な活動への結束をもたらす共同体意識を共有ビジョンは生み出す。ただ個人的にコミットするのでなく、互いにコミットし合うとき、ビジョンは真の意味で共有される。

もし自分自身のビジョンを持っていなければ、他の誰かのビジョンに「加入する」しかない。その結果もたらせるのは服従であって、コミットメントではない。これに対し、自らの進むべき方向を強く認識している人々は、結束して自分たちが真に望むものに向かって力強い相乗作用を生み出す。

リーダーシップを取る立場の人々にとって最も重要なのは、自分のビジョンもやはり個人のビジョンなのだと肝に銘じること。指導的立場にあるからといって、自分の個人的ビジョンが自動的に組織のビジョンであるというわけではない。

コミットした人は「ゲームのルール」に基づくプレーはしない。ゲームに責任は持つが、もしゲームのルールがビジョン達成の障害になれば、ルールを変える方法を見つけるだろう。共通のビジョンに本当の意味でコミットした人々が集まれば、とてつもない力となる。彼らは不可能に見えることを成し遂げることができる。

多くの管理職が直面する最も厳しい教訓は、つまるところ、他人を参加あるいはコミットさせるために自分にできることは一つもない。参加やコミットメントは選択の自由を必要とする。それを強いても、服従を助長するのがせいぜいだろう。

⑤チーム学習

チーム学習とは、チームのメンバーが本当に望んでいる成果を生み出すために、一致協力してチームの能力を伸ばしていく過程である。

チーム学習のディシプリンでは、意見交換とディスカッションという二つの異なる対話方法をマスターする必要がある。意見交換では、複雑で微妙な問題を自由かつ建設的に探究し、お互いの意見を十分に「聴き」、自分の意見を提示する。対照的に、ディスカッションでは、様々な考えを述べたり弁護して、その時に下せねばならない決定をサポートするにはどの考え方が最善かを探求する。意見交換とディスカッションは、潜在的には互いに捕捉し合うが、両者の違いを見分けて意識して使い分けられるチームはほとんどない。

意見交換の目的は、個人の理解を深めることにある。「意見交換で勝とうとしているのではない。ちゃんと意見交換していれば、みんなが勝つ」。意見交換では、個人的には絶対に得られない洞察を各人が持つようになる。

意見交換では、自分の持つ考えを観察できる。意見交換で衝突したとき、人は緊張を感じるが、その緊張はまさに自分たちの意見から出ている。だから、「衝突しているのは、意見の相違や自分の意見へのこだわりであって、我々自身ではない」とわかるだろう。意見交換を通して、人は互いの意見の中の矛盾に気づく。このようにして、集団思考はますます統一性のあるものになる。

意見交換は、集団の一人ひとりがお互いをより深い洞察と明快さを追求する仲間だと見なして初めて成り立つ。お互い仲間だと認めようとして意識して行動すれば、仲間としての相互作用が生まれる一助となる。お互いに仲間と見なすことは、前向きな姿勢を確立し、意見交換がもたらす脆弱さを相殺するために不可欠。

ディスカッションでは、様々な意見が呈示されるので、全体の状況を分析するのに役立つ。一方、意見交換では、様々な意見が呈示されるが、それは1つの新しい意見を見つけるための手段だ。ディスカッションでは決定が下されるが、意見交換では複雑な問題が探求される。

(3)創造への課題

  • すべての管理職にとって有効な出発点は、自分の考える時間を見つめ直すこと。ある人にとっては、個人の習慣を改める必要も出てくるだろう。また、絶えず忙しさを強制する組織の要求を減らしたりかわしたりする必要がある人もいるだろう。我々一人ひとりが自分たちの時間をどう管理するかによって、学習する態度は大きく影響を受ける。
  • ラーニング・オーガニゼーションは、破綻した家庭と抑圧された人間関係の上には築けないと認識することが重要。権威主義がはびこる組織内で管理職が身に付けた習慣は、まさしく親として失格を招く習慣である。

(4)新しいリーダーシップ

  • リーダーの仕事とは、学習プロセスを設計することであり、それによって組織のメンバーが自分の直面した重要課題に対処し、学習のディシプリン一つひとつについての能力を高めることができるようにすること。
  • 素晴らしいリーダーの特徴は、考え方の明解さと説得力であり、責任感の強さであり、常に学び続けようとする前向きの姿勢である。彼らは答えを知っているわけではないが、心底から欲する結果を達成するために必要な事柄は、何でも学ぶことができるという自信を、周囲の人に受け付けることができる。
  • 「欲しい」は受動的であり、「選ぶ」は能動的だ。つまり、欲求とは何か不足している状態で起こる(人は自分が持っていないものを欲する)。これに対し選択とは充足状態において起こる(人は本当に欲するものを手に入れるために選ぶ)。今後の選択は人生を決定づけるものになりうる。

3.教訓

学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)の核心には、以下2つの精神の変化があります。

  1. 自分自身と世界とを別個のものと見る態度から、世界とつながっていると見る態度への変化
  2. 問題の原因は「よその」誰か、または何かから来ているとする態度から、自分の行動が目の前の問題を生み出しているのだとする態度への変化

自分がどのようにして現実を作っているか、そしてその現実をどうすれば変えていけるか、本当の意味で「学習すること」を継続していきたいと考えています。