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自省録 マルクス・アウレリウス著

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自省録改版 (岩波文庫) [ マルクス・アウレリウス・アントニヌス ]
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1.はじめに

マルクス・アウレリウスは、西暦161年~180年に在位したローマ皇帝です。

おそらく、日記のようなものと推察しまして、前後のつながりはあまりなく、同じような内容が繰り返される部分があり、書物として世間に公開しようと思っていたわけではないので当然ですが、読みにくいと感じる部分もあります。

それでも、2,000年近くの間、時間と空間を超えて読み継がれる理由があることについて、読めば納得できます。

以下では、仕事に役立つ内容として、自身が印象的だった部分を取り上げます。

2.内容

  • 私たちは協力するために生まれついたのであって、両手両足や上下の歯列と同様。それゆえに互いに邪魔し合うのは自然に反すること。そして人に対して腹を立てたり毛嫌いしたりするのは、とりもなおさず互いに邪魔しあうこと。
  • 何かするとき、いやいやながらするな、利己的な気持ちからするな、無思慮にするな、心に逆らってするな。君の考えを美辞麗句で飾り立てるな。余計な言葉や行いを慎め。曇りなき心を持ち、外からの助けを必要とせず、また他人の与える平安を必要とせぬよう心掛けよ。まっすぐ立たせられるのではなく、まっすぐ立っているのでなくてはならない。
  • 2つの座右の銘のうち、一つは、事物は魂に触れることなく外側に立っており、わずらわしいのはただ内心の主観から来るものにすぎないということ。もう1つは、すべて君の見るところのものは瞬く間に変化して存在しなくなるであろうということ。
  • 君に害を与える人間が抱いている意見や、その人間が君に抱かせたいと思っている意見を抱くな。あるがままの姿で事物を見よ。
  • 隣人が何を言い、何を行い、何を考えているかを覗き見せず、自分自身のなすことのみに注目し、それが正しく、敬虔であるように慮る者は、なんと多くの余暇を得ることであろう。目標に向かってまっしぐらに走り、わき見をするな。
  • 君は心地よい思いをするために生まれたのか、いったい全体君は物事を受け身に経験するためにうまれたのか、それとも行動するために生まれたのか。君は人間のつとめをするのがいやなのか。自然にかなった君の仕事を果たすために馳せ参じないのか。
  • 君にとってやりにくいからといって、これが人間にとって不可能であると考えるな。人間にとって可能であり、その性質にかなったことであるならば、それは君にも到達しうると考えるべし。
  • 会話に際しては、人の言うことに注意していなくてはならない。またあらゆる行動に際しては、その結果生じてくることに注意していなくてはならない。後者におういてはそれがどんな目的に関連しているかを最初から見抜くこと。前者においては、その意味が何であるかを注意すること。
  • 人が君に対して過ちを犯したとき、その人が善悪に関するいかなる観念をいだいてこのような悪事をしたのか直ちに考えてみるがよい。それがわかったら、君はその人を憐れみこそすれ、驚いたり怒ったりしないだろう。なぜならば君自身またその人と同じ善の観念を持っているか、あるいは大体同じような観念を持っているのだから、彼を許してやらなくてはならない。
  • 人類はお互い同士のために創られた。ゆえに彼らを教えるか、さもなくば耐え忍べ。
  • 罪を犯す者は自分自身に対して罪を犯すのである。不正な者は、自分を悪者にするのであるから、自分に対して不正なのである。
  • あることをなしたために不正である場合のみならず、あることをなさないために不正である場合も少なくない。
  • 君が他人の不忠と恩知らずを責めるときに、何よりもまず自分を省みるがよい。人に善くしてやったとき、それ以上の何を君は望むのか。君が自己の自然に従って何事か行ったということで充分ではないのか。その報酬を求めるのか。
  • もし彼がつまずいたら、親切に教えてやり、見誤った点を示してやれ。それができないなら自分を責めよ、あるいは自分さえ責めるな。
  • 善い人、慎み深い人、真実な人、思慮深い人、素直な人、心の大きい人等の名称を人からもらったら、他の名前をもらわぬように注意せよ。
  • もし君が自分の道を見ることができるなら、脇道にそれずにいそいそとその道を歩むことができるはずだ。またもし君に自分の道が見えないなら、足を止めて最も優れた相談相手の忠言に従えばよい。
  • 君自身もまた多くの過ちを犯し、その点他人と変わりない。またたとえ君がある種の過ちを犯すのを差し控えるとしても、そういうことをする傾向は持っている。
  • すべて君が苦手だと思うものに慣れよ。なぜならば左手は習慣の無いためのあらゆる仕事には不器用なのに、手綱は右の手よりもしっかり持つ。それはこれに慣れているから。

3.教訓

何より、当時のローマ皇帝という、おそらく何でも命令さえすれば思った通りに世間を動かすこともできたであろうという地位の人が、ここまで自身の内面と向き合い、自分が不完全であると認識し、日々自省していたことに驚嘆します。

結局は、はるか昔から、人として重要なことは自分の気持ちの持ちようであり、起こっていることをすべて他人のせいにする他責的な考え方ではいけない、ということを改めて感じることができる本です。

他にも、死生観や宇宙観など、宗教的な思想も多く含み、もともと体系的に整理された内容にはなっていないため、すべてを理解しようとせず、今の自分自身に響くところだけピックアップする読み方でよいと思います。