管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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解決志向ブリーフセラピー 森俊夫・黒沢幸子 著

1.はじめに

カウンセリングを資格試験のためだけに表面的に学ぶと、どうしても用語暗記に終始してしまいます。しかし、それでは実務に活かすことが難しく、資格取得後も継続して学び続ける姿勢が欠かせません。そのためには、技法に焦点を当てた書籍に触れ、1つひとつの技法の背景や意図を丁寧に理解していくことが重要だと感じています。

また、こうした知識は「これからカウンセリングを始めますね」という場面だけに役立つものではありません。日常の何気ない会話や、ちょっとした相談を受けるときにも、学んだ技法が自然と活きてきます。カウンセリングを学ぶことは、普段のコミュニケーションそのものを豊かにしてくれるのだと実感しています。

そして、学習を進める中で必ず出会うのが「ブリーフセラピー」です。試験対策として一度触れたものの、本書を通じて初めて、“解決”とは何か、“コンプリメント”とは何かを、より深く理解することができました。

ここで言う解決とは、「新しく何かが構築されること」なのです。「より良き未来の状態を手に入れること」と言ったほうが正確かもしれません。より良き未来の状態が手に入った場合には、たいてい問題も解決しているでしょう。いずれにせよ、Problem solving(問題解決)ではなくて、Solution building(解決の構築)なのです。

そして、中心哲学は以下の3つのルールからなっています

  1. もしうまくいっているのなら、変えようとするな
  2. もし一度やって、うまくいったのなら、またそれをせよ
  3. もしうまくいっていないのであれば、(何でもいいから)違うことをせよ

以下では、重要なポイントについて書き留めていきます。

2.内容

①発想の前提1:変化は絶えず起こっており、そして必然である

  • 「人間って、変わらないよね」って多くの人が言います。でも、この言葉自体が、変化を妨げるのです。もっとも大事なのは「あなたは変わりますよ」です。

②発想の前提2:小さな変化は、大きな変化を生み出す

③発想の前提3:解決について知るほうが、問題と原因を把握するよりも有用である

  • 心の問題で原因を特定することはとても困難だし、仮にいくつかの原因が特定されたとしても、その原因を取り除くことは、多くの場合、ほとんど不可能。
  • 問題というのは、しばしばつくられるものです。最初は何もなかったところに、少なくとも問題と言わなくてもよかったものに「問題」という名前をつけ、その感覚が共有されていくうちに、どんどん「問題」は大きくなり、本当の「問題」をつくってしまったのです。問題なんて見つけようと思えば、どこにだって転がっているし、何にだって「問題」と名付けることができます。

④発想の前提4:クライエントは、彼らの問題解決のためのリソース(資源・資質)を持っている。クライエントが(彼らの)解決のエキスパート(専門家)である

  • クライエントがリソースを持っていないケースなど1つもない。私たちが彼らの問題解決の専門家なのではなくて、彼らが自分たちの問題解決の専門家だということです。私たちが専門家であるはずがありません。だって、私は彼じゃないのですから。
  • 援助は必要かもしれません。でも、「援助を受ける」ということもリソースなのです。「人から援助を受ける力を持っている」ととらえることができるわけですから。このように、リソースとしてとらえるからリソースとして見えてくるし、リソースとして見えてくれば、使うこともできるのです。
  • SFA(Solution-Focused Approach)では、面接を全部で5つのステップで考えている
  1. クライエントーセラピスト関係の査定(アセスメント)
  2. ゴールについての話し合い
  3. 解決に向けての有効な質問
  4. 介入
  5. ゴール・メンテナンス(解決の維持・発展)

(1)ステップ1:クライエントーセラピスト関係の査定(アセスメント)

  • 初回面接で介入までやってしまうのです。ですから、初回面接はすごく忙しい。悠長にインテーク面接なんかしている暇はない! 私たちは「面接は立ち合い勝負」とよく言ってます。立ち合いがうまくいけば、あとは放っておいてもうまくいく。立ち合いでミスすると、取り返すのは大変です。
  • 何でもいいから見つけてほめる。SFA用語では、これを”コンプリメント(compliment)”と呼びます。コンプリメントというのは、相手のやっていること、あるいは相手の考えなどに対して「あっ、それはいいね。それはすごいね」というように「評価し、賛同すること」です。「敬意を表す」という形をとることもありますし、場合によっては「労をねぎらう」という形にもなります。
  • 絶対にほめなくてはいけない点は、「クライエントが来てくれたこと」です。特にビジター・タイプ(ニーズや問題を表明しない)の関係の場合、これを怠ると面接は失敗します。
  • コンプレイナント・タイプ(不平不満)の関係で出す観察課題は「他者・状況に関する”例外”探しの観察課題」です。「例外」というのはSFAのキーワードの1つで、「既に起こっている解決の一部」がその定義です。例外をどんどん探していって、それをどんどん広げていって、解決を構築していくのです。観察課題のときでも、観察する対象は必ず外の問題、つまりクライエント以外の人や物にします。自己観察を入れてはいけません
  • 確かに、周囲に問題があると訴える人のほうに問題があるのかもしれません。しかし、解決志向ブリーフセラピーにとって重要なことは、「何が正しいか」ではなくて「何が役に立つか」なのです。
  • カスタマー・タイプ(やる気まんまん)の関係の場合、「そうですか。大変ですね。お話をおうかがいしました。じゃあ、次回」と、行動課題まで行かないで、共感・受容・傾聴だけで対応したら、たいていのクライエントは欲求不満を持って部屋をあとにすることになります。カスタマー・タイプの場合は、初回面接で行動課題をきちっと出す。「初回面接はインテーク、情報収集」と決めているセラピストがいますが、それはセラピスト側の都合です。

(2)ステップ2:ゴールについての話し合い

  • 要するに、「何がゴールなんだ」ということを話し合っていくわけです。このあたりが解決志向ブリーフセラピーと従来の心理療法との一番違うところでしょう。解決志向ブリーフセラピーでは、今の話が終わったら、過去の話は必要最小限にとどめて、すぐに未来の話に特化する

  • 夢と目標は違う。夢は大きく、目標は小さく。夢は、たとえば北極星のようなもの。一生航海していたとしても北極星に着くことは絶対にない。北極星との距離はまったく変わっていない。そこには着けないんだけれども、それは私たちに方角を示してくれるという点で、とても大事なものである。
  • それに対して、目標は小さく、すぐそこに見えるもの。到達したものがわかるもの。たとえば、歩いているときの電信柱みたいなもの。夢や北極星に当たるのが解決像、ソリューション・イメージで、目標や電信柱に当たるのがゴールです。
  • 良いゴールのための3つの条件
  1. 大きなものではなく、小さなものであること
  2. 抽象的なものではなく、具体的な、できれば行動の形が記述されていること
  3. 否定形ではなく、肯定形で語られていること
  • しばしば、旗を立てようとするときに、遠くに旗を立てがちですが、ゴールというのは、ゴールテープを切ってなんぼのものです。私たちがクライエントに得てほしいのは、「成功体験」です。確実に成功できる水準にゴールを仕立てることが仕事です。
  • 人間は、過去から現在の時間の流れの延長線上に未来時間イメージを抱き、それはほとんど一本道で、そのイメージにとらわれて生きている。現在の自分の行動を拘束している最大のものは、自分の持っている未来時間イメージなのです。この枠というのは、ものすごい力を持っています。
  • 「必然的進行」を引き出す「タイムマシン・クエスチョン」。漠然と「20歳になったら、大学生をやっていると思う」と答えてもらうのではなく、「こんな顔をして、こんな表情で、こんなファッションで、こんな雰囲気で、こんなことをしている」ということをありありと語ってもらいます。ビデオトークと呼ばれますが、スクリーンに映し出されている、その映像を見ているかように語ってもらうのです。

(3)ステップ3:解決に向けての有効な質問

①ミラクル・クエスチョン
  • 「眠っている間に奇跡が起こり、解決が起こっている。そうすると翌日は(要するに解決したあとの1日は)どんな様子をしているのか」。これがミラクル・クエスチョンの骨子です。
  • ミラクル・クエスチョンの意図というのは、解決像=ソリューション・イメージを構築することです。そして、解決像はできるだけ具体的につくっていきたいのです。もう1つ大事な作業というのは、「差異」を見つけるということ。たとえば、「今日まではこうだった。ところが、明日になったらこうなっている。どこがどういうふうに違うのか」という質問を、どんどん投げかけていきます。
②「例外」探しの質問
  • 「例外」というのは、要するに「例外的に、うまくいっているとき・うまくやれていること」のことです。とにかくそれをどんどん見つけていきたいのです。何もないところから何かを生み出そうとしているのでも、何もないからこちらから与えようとしているのでもありません。その人が忘れていたり、価値が無いと思っていたりするかもしれませんが、既にあるもので解決に役立つ「かけら」を探すお手伝いをするという発想です。
  • 相手の話を聞いているときに、常に「例外は何か?」ということを頭に置いておくと、自然に相手に関心が持てるようになり、自然に質問が出てきます。相手に自然に関心を持つ態度って、面接でとても大切です。
  • 解決志向ブリーフセラピーでは、問題の原因探しはしませんが、うまくいっていることや例外の原因は、しつこいくらいに聞いていきます。
③スケーリング・クエスチョン
  • たとえば、「1番いときの状態を10点として、最悪の状態を0点としたときに、今、何点ですか?」とか「そのときは何点でしたか?」という質問です。
  • ただ、数字の絶対値にこだわってはいけません。2点だと言われたときに、「あぁ2点か」と落ち込むのではなく、「その2点分って何なの?」という具合に、0点と2点の差についてたずねるのです。
  • 「あと〇点は何が足りないの?」という聞き方は、聞く方向が逆です。解決志向ではなく問題思考になっています。何があるかではなく、何が足りないかに焦点を当てているわけです。解決の方向に向かって聞いていくのです。
④治療前変化を見つける質問
  • 本人が「良くなってきたんです」と言えば、「ああ、良かったですね。どんなふうに良くなってきていますか?」というのが普通の対応でしょう。まず「治療前変化というものがある」という前提に立って、「どうですか? 予約の電話をいただいてから今日まで、何か変化がありましたか?」と質問してあげる。質問することによって、「あっそうか。1週間前と今日とでは、確かにいろいろなことが違うな」ということにクライエントが気づくことにできたりします。
  • 「このときは調査用紙にこう書いてあったけど、今どう?」という聞き方で入るのがポイントです。解決の状態にまで行っていなくても、何かが動き出していることが多いですから、その動き出していることを取り上げていくことがすごく大事です。
⑤コーピング・クエスチョン(サバイバル・クエスチョン)
  • この質問は、クライエントを囲む状況が悲惨と言ってもいいくらい大変なとき、ポジティブな面を引き出していくのがちょっと困難だとこちらが感じるときにするものです。
  • その状況が大変だということにジッと共感し、それを受け止める。「大変ですよね」ということをちゃんと相手にフィードバックして、「それでも投げ出さずによくやってこられた。いったどうやって投げ出さずにやってこられたのですか」とコーピング(coping)、つまり「どうやって対処してきたか」をたずねるのです。
  • コーピング・クエスチョンの中にはコンプリメントを入れていくのが効果的です。大変な状況にある人は、こちらがどんなにコンプリメントを入れても、「でも、まだだめなんです。全然できていないんです」と言い続けます。それでも、その方ができてきること、役に立っていることすべてに、根気よくコンプリメントを入れていきます。大変な状況には、コンプリメントが必要なのです。

(4)ステップ4:介入

  • 介入にはさまざまな方法がある。
  • 「プリテンド・ミラクル・ハプンド」は、「奇跡が起こったかのように振る舞う課題」です。「次に面接に来られるまでのあいだの1日あるいは2日を選んで、その日はあたかも奇跡が起こったかのように振る舞ってみてください。そうしたら、どんなことが起こるか、まわりの反応やあなた自身の内的なものも含めて観察して、次回報告してください。」 この課題は、ものすごくパワフルです。しばしば、その1日だけじゃなく他の日にも奇跡が起こり、劇的に改善する場合が多いのです。

(5)ステップ5:ゴール・メンテナンス

  • クライアントが「ここの部分は、ほんのちょっとだけ良くなった」という話をしてくれたら、すかさず「へぇ、すごい。そんなことが起こったんですか」とコンプリメントを入れて、「何をやったらそうなったんですか?」と意図的例外を聞き出し、「それ、いいですね。またやってみませんか。続けてみましょうよ」とドゥ・モア課題を出します。そうやって面接を続けて、クライエントがゴールに到達したと感じたならば、そこで面接は終わります。
  • 毎回「どうなればよろしかったんでしたっけ?」「治ったときって、どういうときのことを言うんでしたっけ?」という話をやっているケースもあります。ゴールは1回立てればそれでいいというわけではありません。良くなってきていればいいのですが、「うまくいってないな」という感じでしたら、毎回「ゴールは何だ」という話を展開し続けていきます

3.教訓

実際、図2(2)に示されているように、多くの心理療法は「過去の経験や出来事が現在の状態をどのように形づくったのか」を探り、そこから対処法を考えていくアプローチが中心だと思います。しかし、本書を読むことで、ブリーフセラピーはその時間軸や視点、アプローチ方法がまったく異なることを理解できました。

ゴールとは何か、夢とはどう違うのか、ゴールに向かうために何が役立つのか、そしてどうすればゴールテープを切ることができるのか――こうした問いに対して、新たな学びが次々と得られました。

中でも特に印象に残ったのが「コンプリメント」です。これまでは「ほめる」「労う」といった表面的な理解にとどまっていました。しかし本書では、どのような場面でどのように伝えるのかが豊富な事例とともに示されており、「あぁ、こんなところまで評価するのか」と腑に落ちる瞬間が何度もありました。
さらに、コンプリメントの方法は決して一律ではなく、カウンセラー自身のキャラクターに合った自然なスタイルでよい、自分に合ったコンプリメントの仕方を見つけていってほしい、という記述にも励まされました。
単にカウンセリング理論の一つを理解するだけでなく、物事の捉え方や対話の姿勢そのものにまで影響を与えてくれる、非常に印象深い一冊でした。