管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門 松尾 睦 著

1.はじめに

関心があり読んでいる本の中に、コルブ氏の「経験学習」について言及されている本が多く、ずっと探していますが、なかなか手に入れることができません。

そんななか、丸善丸の内本店で、現在「4つの視点で考えるビジネスの未来」という特集をしており、「組織づくり」のテーマの中で、タイトルに「経験学習」を含む本書が目に留まりました。

以下では、特に印象的だった部分を引用して紹介していきます。

2.内容

(1)成長とは何か

  • 能力的成長に比べて、やや見えにくいのが精神的成長。精神的成長とは、仕事に対して適切な「思い」を持つようになることを指す。ここでいう「思い」とは、信念や価値観であり、「大事に思っていること、こだわっていること」。「適切な思い」とは、自分のことだけでなく、他者のことも配慮できること
  • あるレベルまで成長した30代以降に、成長が止まってしまう人がいる。それは、昔のやり方に固執してしまうからだが、環境が変化しているのにもかかわらず、過去に成功した手法に頼り、それをさらに強化して対処しようとする性向を、「能動的惰性」と呼ぶ。私たちは、どうしても慣れ親しんだ仕事のやり方に頼ってしまいがちだが、ここで必要になるのが「アンラーニング」という考え方。アンラーニングとは、一度固まった知識の塊をほぐし、必要のないものを捨て、知識を組みなおす作業

(2)経験から学ぶ

  • 人は自分の力だけで学んでいるわけではないという点に注意をする必要がある。異動したり、プロジェクトに参加するとき、そこには必ず他者がいる。職場の同僚や先輩・上司から聞いた経験談や、経験に基づいたアドバイスは、人が何かを成し遂げるときの助けになっているはず。
  • コルブが提唱する経験学習サイクルによると、人は以下で学んでいる。ここでいう経験は、自分自身が体験する直接経験と、他者を観察したり、アドバイスを受けたりする間接経験の両方を含む。
  1. 「具体的経験」をした後、
  2. その内容を「内省し(振り返り)」
  3. そこから「教訓」を引き出して
  4. その教訓を「新しい状況に適用する」
  • 熟達を研究するエリクソンらは、個人の成長をさせる練習や仕事のやり方を「よく考えられた実践」と呼び、次の3つの条件を挙げている。
  1. 課題が適度に難しく、明確であること
  2. 実行した結果についてフィードバックがあること
  3. 誤りを修正する機会があること

(3)経験から学ぶための3つの力

  • 行為中のリフレクションが、行為後のリフレクションの質を決める。行為中のリフレクションが十分でないと、行為後のリフレクションの効果が半減してしまう。惰性で行った仕事を振り返っても、そこから得られる教訓は限られている。自分の頭で考えながら集中して行った仕事を振り返ることで、はじめて意味のある教訓を引き出すことができる
  • 成長が止まってしまう昔のヒーローは、変なプライドがあって、相手に素直に聞くことを恥ずかしいと感じる。その結果、知らず知らずのうちに、モノを見るレンズが曇ってしまう
  • 優れたマネジャーは、会社や上司から与えられた仕事に関心や興味を感じない場合、自分なりの目標を設定し、仕事で意味づけを変えていた。すぐには関心がわかないような仕事でも、仕事の背景を考えて、新たな意味を付け加えることで面白さを感じることができる。上からの目標を受動的に受けるだけでなく、積極的に新たな目標を設定すると、仕事に意義が生まれる

(4)「思い」と「つながり」

  • 「他者のために頑張ることが、自分の成長につながる」、「自分が成長することで、結果的に他者の役に立つ」という相互補完的な関係が見られる。他者に奉仕することを自身の目標とし、それを達成することが、他者からの評価や自分の喜びになるとき、「自分への思い」と「他者への思い」が融合される
  • 他部署や他組織にいる誠実で有能な他者と、情報をやりとりしながら損得を超えた関係を構築することで、「幅広い視点からのフィードバック」や「本音で語られる、率直で本質的なフィードバック」を得ることができる。こうした「つながり」は、私たちがより高い目標に挑戦し、自身の活動を振り返り、仕事のやりがいや意義を見出すことを促してくれる。
  • 自分の利益を意識せずに、自分とは異なる世界にいる人々と、誠実な態度でつきあうことで深い関係を築くことができる。誠実に対応するということのほかに、マネジャーが重視していたことは、自分から発信することと、他者の意見に真摯に耳を傾けること

(5)学ぶ力を育てるOJT

  • 普段の仕事の中で声をかけることが大事。挨拶するということは心を開くことを意味する。個人の情報を常に頭に入れておいて声をかける。声をかけるということは「あなたのことに関心を持っている」ということ。畑に「肥え」をまいて育てるのと同じように、人間も「声」をかけると育つ
  • ミーティングでは、とにかく相手の話を聞くことが大事。Listen, Listen, Listen。そして、聞いているときはできるだけメモをとる。真剣に聞く。しっかり聞いて、「聞き切った」と思えた後にちょっとアドバイスする。しっかり聞いた後にアドバイスすると、その内容がスーッと相手の心に入るが、聞き切らないうちにアドバイスすると心に入らない。相手の立場になりきること。
  • 他者を交えて経験のリフレクションをする利点は、意見やアドバイスなどのフィードバックが得られるということ。自分では気づかない考え方や価値観などを指摘してもらうことにより、当たり前に思っていた自分の持論を意識化することができる。このとき留意したいことは、コメントをする他者(上司や同僚)は、①率直な意見を、②建設的に伝えること

3.教訓

月例報告のような定期的なタスクは、放っておくと“ただの作業”になりがちです。そうなると、「いかに無難に、効率よく終わらせるか」という発想に偏り、業務の本質的な意味づけが薄れてしまいます。

もちろん、効率化を考えること自体には価値があります。ただ、自分なりの意義づけを行い、単なる「作業」を「魂のこもった、意味のあるアウトプット」へと昇華させていかないと、結果として上席からの指摘が増え、かえって時間を奪われることにもつながりかねません。

上司からのフィードバックは、本来であれば「気づき」を促す大切な機会です。しかし、その伝え方やタイミング次第で、組織が成長するのか、それとも停滞してしまうのか、大きく分岐してしまうと感じます。

たとえば、部下が期限通りに提出しても、上司が未決箱に溜め込んでなかなか目を通さない。そして締切直前になって突然、「なんだこれは!」と声を荒らげ、大量の赤字を入れて自分のテイストに書き換えてしまう。こうしたことが繰り返されれば、部下は「どうせ直される」と感じ、期限を守る意欲も主体的に考える気持ちも失われてしまいます。

必要なときに、適切なスピード感で、建設的に意見を伝え、相手の言い分にも耳を傾ける。そんな関わり方ができる人でありたいと思いますし、そうした関係性をつくれる組織でありたいと強く感じます。