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兵法三十六計 檀道済 著 守屋洋 解説

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1.はじめに

中国で西暦400年台に書かれた兵法書です。

中国出自の兵法書と言えば「孫子」が有名で、「孫子」は戦う前の心構え、態勢や主導権といった戦略全般を取り扱うのに対し、「兵法三十六計」は実際の戦い方や行動そのものといった戦術面に特化している内容です。

また、本書は、三十六計そのものの解説は少量に留まり、それを実際に応用した、三国志項羽劉邦の時代や、第二次世界大戦時の実例がふんだんに紹介されている内容となっています。

以下では、三十六をすべて紹介するのでなく、印象に残った記述だけ、解説からだったり実例からだったり、また著者の意見だったりと、統一感のない形ではありますが引用します。

2.内容

  • 策略は、客観的法則の中に含まれているものであり、したがって客観的法則に基づいて行使されなければならない。現実の中にある矛盾を把握すれば、臨機応変に策略を使いこなすことができる。現実を無視してかかれば、必ず失敗を免れない
  • 「やるぞやるぞ」と見せかければ、相手も警戒を怠らない。ところが、やるぞというのは見せかけだけで、一向に行動を起こさない。これを繰り返しているうちに、やるぞという構えを示しても、相手はまたかと思って警戒しなくなる。そこで、相手の油断を見澄まして、一気に叩く。
  • 内部対立、内部抗争、すべて組織としての体力を弱め、業績の低下を招いてしまう。隙を与えたら付け込まれる。だから、隙を与えないような、慎重な対応が望まれる。
  • 仮に相手が内部抗争にあけくれていても、こちらが下手に進攻の構えを見せたりすれば、かえって団結させてしまう可能性がある。じっと静観して内部抗争を待つというのは賢明な策である。だが、実際問題として、出ていくか静観するかの判断は難しい。静観したばかりに、みすみすチャンスを逃してしまうというケースも十分にありうる。
  • 友好的な態度で接近し、相手が警戒心を解いたところを見澄まして一挙に襲い掛かる。あくまでもにこやかな態度で接するのは、相手の警戒心を和らげるための方便であることは言うまでもない。
  • 戦いであるからには、必ず損害を覚悟しなければならない局面が生じてくる。そんな時、損害を最小限に食い止めなければならないことはもちろんであるが、それと同時に、損害を上回る利益をどこかで埋め合わせをつける。局部的な損害にくよくよせず、その損害を捨て石として活用し、より大きな利益をつかむ
  • 目標追求という大前提は、あくまでも崩してはならない。と同時に、情況の許す範囲で戦果の拡大に努める柔軟性も持たなければならない。そのためには、冷静な情況判断能力が必要とされる。
  • エサをばらまく方よりも、むしろ食いつく側に大きな責任がある。利益をちらつかされても、その裏に潜む「害」を思いやるだけの冷静な判断力を持ちたい
  • チームに活を入れるときには、あらかじめ了解を得て「叱られ屋」を一人作って起き、もっぱらその人物ばかりを叱りつける。それが主将とかベテランであれば、一層効果が上がるに違いない。
  • 客の座(受動の状態)にとどまっているうちは軽挙妄動せず、隠忍自重して時を待たなければならない
  • 先制攻撃をかけるとき、予め二段構え、三段構えの作戦を用意しておくことが望ましい。頭の中で組み立てられた作戦計画を活かすためには、機敏な対応能力を備えていなければならない。思考が硬直していたのでは、外界の変化に対応できず、二の矢、三の矢を有効に発することができない
  • 凡庸な将帥ほど、進むことを知って退くことを知らない。そんな人物を「匹夫の勇」と呼んで軽蔑する。組織の責任者に望まれるのは、進む勇気ではなく、退く勇気。勝てはしないが敗れることもない。打撃を避け、戦力を温存し、次の戦いに備えることができれば、逆転勝利も夢ではない

3.教訓

最後の引用が、いわゆる「三十六計逃げるに如かず」の由来です。

それ以外にも、相手の警戒心を解く、情況に応じて利と害を見極める、一旦時を待つ、といったことは、日常の仕事としても生かせる内容が多くあると感じました。

例えば、新たな社内システムや、対外サービスを導入する際も、それ単独の利害や損益を計算していただけでは、なかなか決裁が下りないことがあります。また、何かを変えようとするときには、既得権益者から警戒されることもあります。

そんなとき、既存のシステム・商品と組み合わせた相乗効果を考えたり、その後の大きな果実をつかむ展開としての第一歩であるとして、相手の心理的ハードルを下げるように持っていき、自分の考えたシナリオに近づけるように努めます。

それでも勝ち目がないとわかれば、固執することなく潔く取り下げ、違うやり方を考えることに時間を使う、という柔軟性も持ちたいと思います。