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フェルマーの最終定理 サイモン・シン著

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フェルマーの最終定理 (新潮文庫 新潮文庫) [ サイモン・シン ]
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1.はじめに

フェルマーの最終定理」は、一般的にはあまり耳にしない言葉だと思います。

ところが、直角三角形の辺に関する「ピタゴラスの定理三平方の定理)」であれば聞いたことがある人が多いと思います。

その式は、x^2+y^2=z^2(^はべき乗の意味です)で表され、3:4:5の長さを持つ直角三角形について、授業で学んだという読者の方もおられると思います。

フェルマーの最終定理とは、3 以上の自然数 n について、x^n + y^n = z^n となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない、という定理のことで、本書はフェルマーの死後330年間解き明かされなかった問題が、アンドリュー・ワイルズ氏によって証明されたことについてドキュメンタリー番組としてBBCで放送されたのち、書籍化されたものです。

2.内容

本書では、数の論理という題材について、古代ギリシャまで遡って、現代まで紡がれるストーリーとして壮大に描かれています。

そのあらすじについては、Amazonのトップレビューを読んでいただければわかるので、ここでは省略します。

ここでは、特に印象に残った点を絞って、以下に引用します。

  • いかなる定理も、それを使うためにはまず厳密な証明が必要である。さもなければ、その定理を使って導かれた新たな定理は、いつ崩れてもおかしくない砂上の楼閣になってしまうだろう。定理に欠陥があったとしたら、その定理を前提として作られた定理はすべて欠陥を持つことになり、数学の大きな領域がごっそり崩れ去ってしまうだろう。定理こそは数学の土台である。
  • 有限個の数から得られた証拠に基づいて無限個の数にまで理論をあてはめることは、危険な(そして容認できない)ギャンブルなのである。たとえ1から100万までの数について確かめたとしても、無限までのすべての数に関する予想を証明したことにはならない
  • 数学における橋には莫大な価値がある。橋が架かれば、別々の離れ小島に住んでいた数学者同士が、互いにアイディアを交換し合ったり、相手の作り出したものを詳しく調べたりできるようになるからだ。数学とは、無知の海に浮かぶ知識の島々からなる世界である。島のそれぞれが独自の用語体系を持っているため、島が違えば住民の話していることもさっぱりわからなくなる。
  • 大事なのは、どれだけ考え抜けるかです。考えをはっきりさせようと紙に書く人もいますが、それは必ずしも必要ではありません。特に、袋小路に入り込んでしまったり、未解決の問題にぶつかったりしたときには、定石になったような考え方は何の役にも立たないのです。新しいアイディアにたどり着くためには、長時間とてつもない集中力で問題に向かわなければならない。その問題以外のことを考えてはいけない。ただそれだけを考えるのです。それから集中を解く。すると、ふっとリラックスした瞬間が訪れます。そのとき潜在意識が働いて、新しい洞察が得られるのです。
  • 帰納法とはドミノ倒しみたいなものである。無限に続く1つ1つの場合を、無限に続くドミノ倒しだと想像してみればよい。ドミノを1つ1つ倒してゆこうとすれば、時間も労力も無限にかかってしまうだろう。それに対して、帰納法を使えば、最初の1つを倒すだけですべてのドミノ牌を注意深く並べておけば、どこまでも続くだろう。最初の1つの場合を証明するだけで、無限に続くすべての場合を証明してしまえる

3.教訓

数学は大の苦手で、方程式や記号などが並んだ数式を見るのも嫌、という方の中には、読み進めるのが難しいと感じることもあろうかと思います。

自身は理系出身ではありますが、それでも数学的な表現の部分はほとんどわかりませんでした。昔から、同じ高校で理学部数学科を目指していた人たちには、当時から数学のテストでは全くかないませんでした。

ただ、本書をある数学者が残した命題を330年間かけて解き明かしたノンフィクションのドキュメンタリーとしてのみとらえるのではなく、仕事においての考え方や取り組み方としてとらえることができる、非常に示唆に富む内容だと感じました。

例えば、以下のようなことを今後意識していきたいと考えています。

  • 課題を明確にし、解決したいという信念があって、道は開ける。
  • まずは自分で考えて、理屈の土台を固める。そこがしっかりしていないと、その後の論理展開はうまく行かない。
  • 目に見えている範囲だけを考えていても、すべての答えは導けない。
  • 1つ1つしらみつぶしをするのでなく、まとめて解決できる方法を探る。