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ロジカル・シンキング 照屋華子・岡田恵子著


 

1.はじめに

本書の狙いは、体系だった、しかもシンプルで実践的なロジカル・コミュニケーションの技術を習得することにあります。あえて著者が「技術」と呼ぶのは、これまでの経験から訓練を積めば誰でも身に付けられると確信しているからです。

単に凝ったテクニックやフレームワークだけが記載されているわけではなく、ちょっとした報連相でもすぐに活かせる考え方が豊富に記載されています。

2.内容

この後、MECEや、So What?/Why So?という用語を含めて内容に触れていきます。

当該用語について図示したものについて、以下のAmazonのリンクの「出版社より」の部分で説明していますので、ご参照ください。

(1)相手に伝えるということ

  • 自分がある文書を手にしたとき、あるいは人の話を聞いたとき、課題はこれで、それに対する相手の答えはこれで、自分にこれをして欲しいと言っているのだな、ということが自分の頭に明快に残るかどうか。これをクリアしてはじめてメッセージと言える。
  • 問題は、あなたが考えている結論が相手にとっても同様に明快なものなのか、あなたの考えている根拠が相手を納得させるのに十分か、そしてあなたの考えている方法で本当に相手が動くことができるのか、ということ。
  • 物事を具体的に伝えるのは、伝え手と受け手の共同作業であり責任だ。内容が具体的でないとき、ややもすると修飾語をいくつかつけて中身を膨らませて見せたい衝動に駆られる。しかし、それは空しい作業であることが多い。

(2)説得力のない「答え」に共通する欠陥

  1. 重複:理由が3つあると始まった話でも、1つ目と3つ目のポイントが同じではないかと感じてしまう場合、次第に聞き手の脳裏には「この程度の整理もきちんとすることなしに出された結論に、果たして信憑性があるのか、どこかに重大に判断ミスがないか」という猜疑心が芽生えてしまう。
  2. 漏れ:素人が聞いていても明らかな欠落があり、しかも、なぜその点について言及しないのかについて何の説明もないままに伝え手の考えの妥当性が主張されるケースにおいては、聞き手は次第に相手に対する不安感を募らせる。自分が気付いた点の他にも、この伝え手の説明には決定的な抜けや漏れ、落ち度があるのではないかという心理状態に陥り、たとえ伝え手の結論が妥当なものであっても、チェックモードに入ってしまう。
  3. ずれ:話の中に種類やレベルの違うものが混ざっているために、話が極めてわかりにくくなる。受け手がわかりにくいと思っているうちはよいが、伝え手も受け手も、本来の話の混在やずれに気づかないままに進んでしまうと、いつの間にか話がテーマから大きく外れてしまっていた、という結果になりかねない。
  4. 飛び:それぞれの要素から導かれる結論がつながらないと、受け手には伝え手の結論を理解するよりどころがなくなってしまう。そうすると、相手の理解を拒絶させてしまう。

(3)重複・漏れ・ずれを防ぐ

ある事柄を重なりなく、しかも漏れのない部分の集合体として捉えること、の英単語の頭文字を取って、”MECE”と言う。(Mutuall Exclusive and Colletively Exhaustive)

物事をMECEい整理する切り口をたくさん持っている人は、相手を説得する自由度をたくさん持っているというだけでなく、ユニークなMECEの切り口は、伝え手自身に新鮮なものの見方をもたらし、クリエイティビティを刺激してくれる。

MECEをもたらすフレームワークには、4C(顧客・市場:Custumor、競合:Competitor、自社:Company、チャネル:Channel)、4P(商品:Product、価格:Price、チャネル:Place、訴求方法:Promotion)などがある。

(4)話の飛びを無くす

「よって」「したがって」「このように」の前後で話に飛びがなく、伝え手の言いたい結論と根拠、結論と方法のつながりを、相手にすんなりと理解してもらうための技術が、"So What?/Why So?"。

So What?とは、手持ちの情報や材料の中から、「結局どういうことなのか?」を抽出する作業。「よって」「したがって」「このように」の前に述べた情報やネタの中から、自分が答えるべき課題に照らしたときにいえる重要なエキスを抽出する作業のこと。

Why So?とは、So What?したものに対して、「なぜそのようなことが言えるのか」「具体的にはどういうことか?」と検証・確認する作業のこと。

組織の中での情報の結節点に身を置く中間管理職のSo What?/Why So?の能力は、組織のコミュニケーション能力を大きく左右する。

特に、1つの業務・業界の経験が長ければ長いほど、それまでの経験や思い込みがバイアスとなって、事実を観察してWhy So?に耐えうるSo What?を導き出すことが難しくなることは肝に銘じることが大切。

(5)So What?/Why So?とMECEで「論理」を作る

  • 結論、根拠、方法といった「部品」を、ばらばらのままコミュニケーションの相手に提示するのでは、相手には部品間の関係が見えにくい。相手は頭の中の中でSo What?(結局どういうことなのか?)、Why So?(なぜそのようなことが言えるのか?) 、本当にMECE(漏れ・重複・ずれがない)か?といった思考を繰り返すことになります。これではなかなか「なるほど、わかった」という状態には至らない。
  • 結論は、自分の言いたいことの要約ではありません。結論が相手との間に設定された課題でなければ、相手から見るとその論理は的外れな答えになってしまい、何の価値もない。まず、結論が課題の答えになっていることを確認する。
  • 伝え手が結論を説明したとき、相手にとって「なぜならば」のつながりに唐突感がなく、自然に納得できる必要がある。正しい論理構造は、縦方向には結論を頂点に、上から下に向けてはWhy So?の関係が、また下から上にに向けてはSo What?の関係がなりたたねばならない。
  • さらに、正しい論理構造は、同一階層内に位置する複数の要素が、横方向に相互にMECEになっていなければいけない。
  • ただし、相手にとって冗長な階層化(縦方向)したり、たくさんの根拠や方法を並べてしまう(横方向)と、最初に聞いた要素は霞んでしまう。こうした感覚は、自分が受け手になるときには誰しも持ちますが、いざ自分が伝え手になったとたんに多くの人が相手が理解してくれるだろうと過大な期待をしてしまうので、注意が必要。

(6)論理パターンをマスターする

①並列型

並列型の論理パターンは、基本構造そのもの。

結論に対して、根拠や方法が、重複・漏れ・ずれがなくMECEに展開される点にある。

②解説型

  1. 課題に対する結論を導き出すために、相手と共有しておくべき「事実
  2. 「事実」から結論を導き出すための伝え手としての「判断基準
  3. 「事実」を「判断基準」で判断した結果、どのように評価されるのかという「判断内容

この3つの要素すべてが、結論に対する根拠となる。

MECEという観点からみれば、「事実」と、「判断基準」および「判断内容」に切り分けられ、前者が客観的、後者が主観的な根拠になる。

(7)論理パターンを使いこなす

  • ビジネスでは多くの場合、結論→根拠という順序を基本とすべき。なぜなら、最も重要な結論を最後に伝えるとき、そこまで相手の関心や興味が持続するのは、相手があなたのコミュニケーションに高い関心を持っている場合だけ、と考えた方がよいからだ。
  • しかしながら、根拠→結論という順序が適切な場合もある。たとえば、①相手が伝え手とは異なる結論を支持しており、いきなり結論から伝えると拒絶反応が大きい、②根拠を一つ一つ解説して合意を取り付け、相手が自ら結論に至るように誘導して相手のコミットメントを得る場合など。
  • まずは、最初に課題(テーマ)と相手に期待する反応を伝え、コミュニケーションの目的をはっきり示して、答え(本題)に入ろう。目的がわからないまま、長々と根拠を聞かされているのでは、肝心の結論に行き着くまでに「So What?(結局どういうことなのか?)」ということになり、論理構造の要素すべてをきちんと伝えられない可能性が高い。
  • コミュニケーションの目的は、結論を相手に納得させ、相手に期待通りの反応を取ってもらうことにある。「答えを出すために検討する」ことと、「答えを相手に伝えること(コミュニケーション)」とは全く異なる。
  • 表現の部分には「いかに論理的に書くか」「いかに論理的に話すか」という技術がありますが、まずは論理構成そのものがきちんとできていなければ、いくら表現上の工夫をしてみても、論理的にわかりやすいコミュニケーションにはつながりません

 3.教訓

冒頭の「はじめに」では、本書の筆者の狙いが「技術」だと触れました。

しかしながら個人的には、技術そのものというよりも、コミュニケーションとはそもそも何かという、基本的な考え方の解説の方に強い印象(特に本書7章最後の「論理FAQ」の部分)を持ちました。

その考え方を認識し、自分が話したいことよりも相手の聞きたいことを優先することが認識できれば、伝わる領域を確実に広げることができます。

立場上、いろいろな報告を受けることがありますが、その際、「どこまでこの話は続くのだろう?」、「結論から申し上げますという割になかなか核心部分が出てこない」という場面によく遭遇します。

また、かなりスクロールして全体を追っていかないと理解できないメールを受け取ることもあります。

話始めたりやメールを書き始めたりする前に、この話のポイントは何か、相手がどこまで知っていて何を知りたいのか等の整理をし、またいざ話を始めた際の相手の反応によって、自分が話そうと思っていたことをどこまで省略してどこを補足する必要があるのか考えて、相手にとって理解しやすいコミュニケーションを意識したいと思います。