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MINDSET マインドセット「やればできる! 」の研究 キャロル・S・ドゥエック著

1.はじめに

「やればできる!」という言葉は、だれでも一度は耳にしたフレーズだと思います。

最近では、お笑いコンビであるティモンディの高岸さんが、オレンジ色の服を着てガッツポーズをしながら言う画面をテレビで見たことがあるという人も多いと思います。(実は、同氏出身校の済美高校の校歌に登場し、それがルーツのようです)

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本書では、「やればできる」が「当たって砕けろ」と同じ意味合いで使われておらず、また、やみくもに突き進む精神論をかざしている内容でもありません。

砕けると想像するから取り組まないとか、一度砕けたから今後背を向けるとか、自分には能力がないと思い込むとか、そういった考え方を否定し、砕けることも前提に、砕けたけど次はどうしようか、としなやかに考えることの重要性が説かれています。

以下では、印象に残った点を引用していきます。

2.内容

(1)マインドセットとは何か

  • 思い通りにいかなくても、いやうまくいかないときにこそ、粘り強い頑張りを見せるのが「しなやかマインドセット」の特徴。人生の試練を乗り越える力を与えてくれるのは、このマインドセット
  • いやなことがあれば、誰でもみな落ち込む。それはマインドセットとは関係ない。そんなときでも、マインドセットがしなやかな人は、自分をダメと決めつけてさじを投げたりしない。苦境に追い込まれても、失敗を恐れずに試練に立ち向かい、こつこつと努力を積み重ねていく。
  • 硬直マインドセットの人は、自分が他人からどう評価されるかを気にするのに対し、しなやかマインドセットの人は、自分を向上させることに関心を向ける。マインドセットは自分で変えることができる。

(2)マインドセットでここまで違う

  • マインドセットのことがわかりはじめると、新しい世界が開けてくる。能力を固定的にとらえる世界では、自分の賢さや才能を証明できれば成功、自分の価値を確認できればそれが成功。一方、能力は伸ばせるものと考える世界では、頑張って新しいことを習得できれば成功、自分を成長させることができれば成功。
  • 学ぶことを重視するしなやかマインドセットの学生は、学べるチャンスをしっかりとらえて逃さなかった。ところが、硬直マインドセットの学生は、自分の弱点をさらすのを嫌った。硬直マインドセットは人間を学習から遠ざけてしまう
  • ある一時点での評価では、人の能力を知るのにはほとんど役に立たない。いわんや、これから伸びていく潜在能力などわかるはずもない。1回の評価では先々のことまでわかってしまうと思うから、硬直マインドセットの人は切迫感に駆られる。今すぐに完璧にできなければいけないと思ってしまう。
  • 失敗を何かのせいにしないかぎり、その人は失敗者ではない。つまり、自分が間違いを犯したことを認めることができれば、そこから教訓を得てまだまだ成長していける
  • 努力することが怖い理由は2つある。
  1. 硬直マインドセットの人は、才能に恵まれているものに努力は不要だと思っている。だから努力が必要というだけで自分の能力に疑念を抱いてしまう。
  2. 言い訳のしようがなくなるから。それほど頑張ったわけでなければ、「やればできたはずなのに」と言える。
  • 努力が大切なのは確かだが、だからといって努力ですべてが解決するわけではない。努力すればなんでもうまくゆくわけではないこと、努力しても同じように報われるわけではないことも心に留めておこう。
  • マインドセットがしなやかならば、必ずしも自信など必要としない。得意だと思っていないことにでも、果敢に飛び込んで行ってやり抜いてしまえる。得意ではないからこそ、あえて挑戦しようとすることさえある。うまくできる自信がなくても、尻込みせずに、楽な気持ちでトライできる。
  • 自分の置かれている立場をありのままに認めたうえで、自分の知的能力や人間的資質が失敗した経験で決まってしまうわけではないことを理解しよう。その体験から何を学んだか、あるいは学べるか。どうすればそれを成長に結びつけるできるかを考える習慣を身につけよう。

(3)能力と実績のウソホント

  • 訓練をほとんど、あるいはまったく受けなくてもできてしまう人もいるが、だからといって、それ以外の人は訓練を受けてもできないというわけではない。場合により、もともとできた人よりもはるかにうまくできるようになる
  • ステレオタイプが呼び覚まされると、そのとおりになるのではという不安が生じて心が動揺する。影響されるのはだいたいが硬直マインドセットの人たち。マインドセットがこちこちだと、どんなレッテルを貼られても平静ではいられない。
  • 人が自分より優れた業績をあげたときを思い出そう。その人は自分よりも頭が良くて才能が豊かだから、そうしたことができたのではと思ったのでは?次からは才能の差ではなく、やり方が優れていたから、研究熱心だったから懸命に練習したから、つまずいてもくじけなかったからできたと考えよう。

(4)スポーツ チャンピオンのマインドセット

  • 生まれつきの才能に恵まれた根っからのアスリートは確かに存在する。けれども、そうした才能が仇になることもある。マインドセットが硬直した人間は、いつも才能をほめられていて苦労や努力をする必要がない、となりやすい
  • 才能を鼻にかけて、自分を特別な人間だと思い込んでいる人がいる。そのようなマインドセットの人は、物事がうまくいかなくなったとたんに、集中力や能力を失い、自分の求めるものを台無しにしてしまう。
  • 能力があれば、頂点にたどり着けることはできる。けれど、しっかりした人格が備わっていないと、そこに留まり続けることはできない。よほどしっかりした人格の持ち主でないと、トップの座についた後も、それまで通りかそれ以上に努力し続けるのは難しい

(5)ビジネス マインドセットとリーダーシップ

  • 生まれつきの才能を重んじる環境にいる人間は、有能な人物という自己イメージが脅かされたとたんに危機的状況に陥る。自分の非を認めて行動の改善を図ろうとはしない。襟を正して投資家や大衆と向き合い、自分の誤りを認めようとせずに、嘘をついてごまかすほうに走ってしまう。
  • 部下をけなすことで相対的に自分の権力、能力、価値を大きく感じたいという上司の欲求のあらわれ。こうした上司は部下を傷つけてますますダメにしてしまう。すると、それだけ自分が有能に感じられてくる。
  • しなやかマインドセットの経営者は、人間の、自分の、そして他者の潜在能力と成長の可能性を信じるところから出発する。そして、自分の偉大さを証明する舞台として会社を利用するのではなく、自分と従業員しして会社全体が成長していく兼動力として会社を活かす。
  • 何事にもオープンな姿勢を保っていられること、変化を積極的に受け入れ、新しいアイデアを、その出所に関係なく取れ入れられる勇気こそが真の自信。本当の自信はマインドセットー成長しようとする気構えーにこそ表れる。
  • どのような決定を下すか話しあうとき、しなやかグループのメンバーのほうがはるかに率直に自分の意見を述べ、ためらうことなく反対意見を表明する。グループ全員に人の意見から学ぼうという姿勢がみられる。それに対して硬直グループでは、自分と相手とではどちらが頭が良いかを気にしたり、アイデアを出しても叩かれるのではないかを恐れたりして、実りある議論は生まれない。

(6)つきあい 対人関係のマインドセット

  • すべてを許すなんてもちろん無理だが、相手を恨んでいるかぎり、新たな一歩を踏み出すことはできない。しなやかマインドセットの人たちがまずしようとしたのは、相手を許すこと。
  • 努力を怠りがちになるの背景には、以心伝心で通じるはずという期待がある。一心同体なのだから、わざわざ言わなくても、こちらが何を考え、何を感じ、何を求めているか、わかってくれて当然だと。でもそんなことはあり得ない。説明しなくても通じると思っていると、とんでもないことになる
  • 人間関係は、育む努力をしないかぎり、ダメになる一方で、決して良くなりはしない。まず、お互いの考えや希望を正確に伝えたうえで、矛盾する点をはっきりさせ、解決していくこと。
  • 他人の失敗や不幸で自尊心が脅かされるということはない。だから、困っている人に同情するのはそれほど難しいことではない。優越感を感じていないと自尊心を保てない人にとって一番厄介なのは、他人の長所や成功を認めること

(7)教育 マインドセットを培う

  • 頭の良さをよめると、学習意欲が損なわれ、ひいては成績も低下する。成功するのは賢いからだとすれば、失敗するのは頭が悪いせい、という硬直マインドセットに縛られてしまう。
  • ほめるときは、子ども自身の特性をではなく、努力して成し遂げたことをほめるべき
  • 子どもに本当のことを告げるだけでなく、失敗から何を学ぶべきか、将来成功を勝ち取るには何をしなくてはならないか、ということも教える。気落ちしている子どもを思いやりながらも、まやかしのほめ言葉で慰めたりはしない。そんなことをしても将来の失望を招くだけ。
  • しなやかマインドセットの親が「わが子にがっかりだ」と言うのは聞いたことがない。晴れやかな笑顔を浮かべて「わが子はこんな人間に成長するなんてびっくりです」と驚きを語る。
  • 子どもがヘマをしたときの、自分の行動や言葉に注意しよう。建設的な批判とは、どうすれば悪いところを直せるかを、子どもに理解させるようなフィードバック。レッテル貼りや、ただ責めるのとは違う。

(8)マインドセットをしなやかにしよう

  • 頭の中にあるチェックシートの枠組みを形作っているのがマインドセット。それが解釈全体を一定の方向に導いていく。マインドセットが硬直していると、内なる声は自分や他人の品定めばかりするようになる。硬直マインドセットの人が受け取った情報をどのように解釈するか調べてみたところ、どんな情報に対しても、逐一極端な評価を下していることが明らかになった。
  • 結局、多くの硬直マインドセットの人が気付くのは、自分を特別な存在だと思っていたのは、実は単なる鎧に過ぎなかったということ。初めのうちはその鎧が自分を守ってくれるかもしれないが、そのうちに鎧のせいで成長を阻まれ、自己防衛の戦いに駆り出され、喜びを分かち合う人間関係を築けなくなってしまう。
  • ちっとも努力しない子だけが問題なのではない。頑張りすぎる子や、間違った目的のために頑張りすぎる子もやはり問題を抱えている。毎晩深夜まで勉強しているような子どもたちは、一生懸命に勉強してはいるが、マインドセットがしなやかではない子の典型と言える。学ぶことが好きなのではなく、自分の能力を親に証明しようとしている場合が多い。
  • 学校の勉強も、何から何までめいっぱい頭に詰め込むのではなく、そこから何かを学び取ることを目標にさせる。しだいに、学んで得た知識をもとにして、さまざまな角度から物事を考えるために勉強するようになってくる。
  • 子どもは何か言いたくても、親が耳をふさぎたがっていれば口をつぐんでしまう。わが子が言葉や行動で伝えようとしていることに耳を閉ざしてしまうと、わが子の居場所がわからなくなってしまうマインドセットをしなやかにして、しっかり耳を傾けよう。
  • 失敗するときは失敗する。しなやかマインドセットの人はそのことを百も承知。だから失敗しても自分を責めずに、この教訓を次のときにどう活かそうかを考える。そうやって少しずつ進歩していけばよく、自分を審判にかける必要はない。
  • ルールをきちんと守ってくれなくても、おおらかな気持ちでいられるようになることも大切。決めたルールは、相手が自分を尊重しているかどうかを試すテストではない。気持ちにだんだんゆとりが出てくると、そのうち笑ってすませられるようになるかもしれない。
  • 人のマインドセットは、小手先のテクニックで変えられるようなものではない。マインドセットが変化するということは、ものごとの見方が根底から変化すること。評価する者と評価を下される者という関係から、学ぶ者と学びを助ける者という関係に変わる。成長するためには十分な時間と努力と支えあいが欠かせないあなたが今、変わるべきときなのかどうか、それを判断するのはあなた自身

3.教訓

本書では、仕事に関する場面だけでなく、スポーツ、夫婦関係、子育て・教育など、様々な事例を学ぶことによって、ものごとの見方がいかに大切か、多くの気づきを得ることができます。

自身でも、能力があったから努力せずに管理職になった、とは考えていないですし、むしろ管理職になってからのほうが、考えないといけないと思う領域や読書する量も増え勉強を続けていますし、だからこそ本書にもめぐり逢い、

難しい課題に出会った際、「わからない」「できない」と言うのは簡単です。何がわかっていないのか、どうすればできるようになるかを頭を柔らかくして考え、解決に向かうことに付加価値があり、収入という対価の源泉となります。

また、仕事において、すべてを完全に解決できることはそれほど多くないと思っており、さまざまな時間や資源の制約の中で、失敗することもあれば、切り捨てないといけないことに遭遇することもあります。

それでも、そこに立ち止まらずに、ではどうしたらよいかと次に向かっていく考え方をしっかり持つことを、これからも意識したいと考えています。

本書は、仕事場でのふるまい方だけでなく、配偶者や子どもに対する接点の持ち方など、単にビジネス書というジャンルを超えた良書で、皆さんも手にすることをおすすめします。