管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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実践!ウェルビーイング診断 前野隆司・太田雄介 著

1.はじめに

日本でのウェルビーイングの第一人者と言えば前野さん、というのが定着しつつあるように感じます。その前野さんが共著者としてウェルビーイングの診断について解説しているということで、一度しっかりと勉強してみたいと思い、手に取りました。

本書では、幸福度を高める11のカテゴリーとその構成要素について、1つずつ細かく説明があります。本ブログは要約ではないため、全要素に触れることはせず、印象に残った部分について、引用していきます。

2.内容

(1)ウェルビーイングとは

  • ”幸せの4つの因子”は、数多くの”幸せな心”について、統計的には因子分析という手法を用いて、”要はどんな要素が幸せな心につながるのか”を整理したもの。この4つの因子を満たすことで、幸せな心のあり方や心がけにつながってくる。
  1. やってみよう因子自己実現と成長の因子)
  2. ありがとう因子(感謝とつながりの因子)
  3. なんとかなる因子(まえむきと楽観の因子)
  4. ありのまま因子(独立と自分らしさの因子)

(2)個人における幸福度の高め方

  • ビジョンを描く力を高めるには、次の3ステップで物事を行うと効果的
  1. 小さくてもいいからビジョンを描き、行動する
  2. 視座を高める
  3. 大きなビジョンを描き、行動する
  • 自分が考えた根本的な意味が、正しいか正しくないかは関係ない。あくまで自分の中での意味づけなので、そこに不正解はない。あなたがそう思った、ということが大事。ぜひ物事の根本的な意味を考える習慣をつける。
  • 誰でも「相対的な強み」を持っている。「自分には強みはありません」と言うときの強みは「絶対的な強み」。言わば誰にも負けない強み。突き詰めれば各分野に1人しかいないので、絶対的な強みは大半の人は持っていない。これに対し「相対的な強み」とは、自分の中の強み。相対的な強みがない人はいない。
  • まずは1つのことに取り組むとき、他のことはしない状態に慣れる。たとえば食事中はスマホを見ない。いま食べているものを、じっくり味わいながら食べる。これは食事を満喫していることになり、満喫力を高めることにつながる。
  • 何かを頑張った経験は、必ず成長につながる。現状のパフォーマンスに満足していない人でも、新入社員の頃に比べれば、できることは格段に増えている。望む結果を得られなかった自分ではなく、「努力して成長した自分」に目を向ける
  • 正解がわからなくても、とにかく変えてみる。「どうせうまくいっていないのだから、とにかく変えてみよう」といった気楽な気持ちでやってみることが大事。逆に言えば、失敗するか成功するかは意識しない。変えること自体を楽しむつもりでやってみる。
  • 感謝には「感謝する」と「感謝される」がある。どちらも幸福度を高めることがわかっているが、より高めやすいのは「感謝する」。その意味では誰かに感謝するのは「その人のため」という以上に「自分のため」でもある。自分が幸せになるために、人に感謝する。感謝の反対は「当たり前」。人がしたことを「当たり前」としか思わない人は、感謝の気持ちから遠ざかっていく。
  • 職場の場合、許容力の高い人が多いか少ないかで、仕事のパフォーマンスも違ってくる。誰かが失敗やミスをしたとき、それを許さず批判する職場で働く人たちの幸福度は低くなり、生産性も低くなる。そもそも失敗した人を責めても、いいことは何もない。むしろ責められた人は委縮して、本来のパフォーマンスを発揮できなくなる。
  • 「許容力を高める」と言われて、「基準を下げること」と誤解する人がいる。そうではなく、ミスや失敗をダメなことでなく、よりよくするためのきっかけと捉えられるかどうか。
  • 人間は、それほど立派な生き物ではない。「にんげんだもの」と思えば人の失敗も許せるし、自分の失敗も許せる。幸せな人は、人に対して寛容になれる。逆に寛容になれば、自分も幸せになれる。
  • この人はここまでなら頼れる」と見極めるのも、信頼関係構築力。信頼とは相手に甘えたり、ベタベタな関係を築くことではない。相手のことを知り、適切な距離感を取りながら頼ったり頼られたりする。だからこそ信頼関係が幸福度を高めることになる。
  • 対話を行ううえで覚えておきたいのが、ウィリアム・アイザックス氏が挙げる4つのポイント。
  1. 聴く(listening)-邪魔せず、抵抗せず、ただ聴く
  2. 大事にする(respecting)-誠実さを持ち、全身で受け取る
  3. 保留する(suspending)-評価や判断を保留してみる
  4. 声に出す(voicing)-心からの真実の声を出す
  • 「何となく、いつもと違う気がする」「悪い予感がする」などとふわっとした状態でも言えるのがコミュニケーションの取れている職場。ふだんから議論とは違う「挨拶」や「雑談」「対話」を行っているから、言いやすい雰囲気が熟成されている。
  • 挑戦したい気持ちがあるのに諦めてしまうのは、失敗したときのリスクを恐れ、不安になるから。これを防ぐのが、紙に書き出す作業。書き出してみると頭の中で考えていたほど、たいしたリスクではないことに気づく。しかも書き出すことで、対策を講じることもできる。不安が的中したとしても、それほど大きな損害を出さずにすむ。
  • 大事なのは決めることで、それが論理的な理由でもコイントスで決めたものでも、決めてしまえば幸福度が高まる。逆に言えば、悩んでいる状態はそれぐらい幸福とは遠い状態にある。やるかやらないかで悩むのは、いわばアクセルとブレーキを同時に踏むのと同じ。
  • 「ニーバー」の祈り。「神よ、変えることのできないものを受け入れる平穏さを、変えることのできるものを変えるだけの勇気を、そして、変えられないものと変えられるものを区別する賢さを、われらに与えたまえ」。まさに楽観力とは何かを表している言葉。
  • 小さなことでもいいので、自分で決める。人間は人から言われるより、自分で決めていったほうが、幸福度は高まる。仕事の手順ややり方も、自分の裁量で決められる部分はある。
  • フレンドリーの正反対の態度が「暴言」。職場で暴言を吐くと、パフォーマンスが下がる。暴言を受けた人はパフォーマンスが6割ほど下がり、それを聞いている周りの人たちは3割ほど下がるという報告もある。暴言を吐く人がいると周りの人は「次は自分に矛先が向くかもしれない」と不安になるから。
  • 笑顔の人は周りの人たちを安心させる。逆に笑顔でなく、いつもムスッとした顔をしている人は、周りとのコミュニケーションが取りにくくなる。「あの人と話すのは面倒くさい」「嫌われているようで嫌だ」といった気持ちにさせてしまうから。
  • 「事実」と「解釈」を分けて考える。たとえば1年前に「大問題だ!」と思ったことの多くは、いまはたいした問題になっていないはず。問題を必要以上に重大なことと解釈しているため、情緒が安定しなくなることも少なくない。事実と解釈を分離することで解決することもある。
  • 問題を「自分がコントロールできること」と「できないこと」に分けて考えるのも1つ。コントロールできないことは、思い悩んでも解決にはつながらない。「コントロールできることに全力を注ぐ」と考えるだけでも、「すべてを何とかしなければ!」と思っているときより、落ち着いた状態で取り組める。
  • どんなことであれ、前提となる知識があったほうが物事はおもしろくなる。知るだけでもおもしろく、知った知識を仕事や生活の中で活かすことができれば、さらにおもしろくなる。そうすることで、おもしろがり力はどんどん高まっていく。
  • 健康診断の数値などと関係なく、「自分は健康」だと思っている人のほうが幸福度が高い傾向にある。極端な話、入院生活を送っていても「自分は健康」だと思っている人は、「いつも調子が悪い」と愚痴っている人より主観的には健康で幸せ。
  • 「挑戦」と「安心安全」はセット。失敗しても大丈夫という仕組みがあって初めて、安心して挑戦できる。逆に言うとリーダーが言ってはならないのが「何かあったら責任とれるのか」。この言葉は「安心安全」をなくし、「挑戦」を叩き潰す魔法の言葉。
  • 「自分らしい実績を上げている」と感じている人は幸せ。実績とは、世界中で自分しかできないことや、社会に大きなインパクトを与えることではない。たとえば「誰かを笑顔にした」「元気に挨拶した」、もしくは「バックオフィスとして営業を支えてきた」など、すべてが実績。
  • 職場の仲間と行動する場合、ともすると意識が不平不満の解消に向かいがち。だがこれだけでは幸せの方向には向かわない。基本的には「幸せを増やす」方向で考え、行動する。

3.教訓

帯にも記載のある「Well-Being Circle」は、このリンクから測定できます。そして1度測ったら終わりということではなく、定期的に(できれば1か月)に測り、その振り返りをすることが推奨されています。

確かに、直近に起こった嫌な出来事やうまくいっていないことに影響され、アンケートに入力する点数は変化すると思います。ただそのことは、短期的には気になることではあっても、中長期的に振り返ってみたときには大したことではなかった、ということも起こります。その意味で、自分がその時々で何にとらわれているのかが客観視できるという点では、定点観測することは重要だと感じます。あのチャップリンも「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という名言を残しています。

測定結果も参考にはなりましたが、結果そのものよりも、成長した自分に目を向ける、感謝する、寛容になる、決める、笑顔でいる、といった本書に記載された事項の重要性を再認識できました。なかなか難しいとは思いますが、誰かと比較するのではなく、主観的に物事を捉えていくことに考え方をシフトしていきたいと考えています。