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フロー体験 喜びの現象学 ミハイ・チクセントミハイ著

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フロー体験喜びの現象学 (Sekaishiso seminar) [ ミハイ・チクセントミハイ ]
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1.はじめに

「フロー体験」とは、第2章から引用すると以下の通りです。

  • 心理的エントロピー(無秩序)の反対で「最適経験」呼ばれる状態
  • 意識の中に入り続ける情報が目標と一致している時、心理的エネルギーは労せずに流れ、自分が適切に行動していることに疑問を抱く理由もない。
  • 正さねばならない無秩序や防ぐべき自己への脅迫もないので、注意が自由に個人の目標達成のために投射されている状態。

要は、”流れ”に乗ってうまく進んでいる状態で、日本語では、「ゾーンに入る」という言い方の方が馴染みがあるかもしれません。

何をするときにも、自分の心の持ちようで楽しむことができる、ということが繰り返し書かれています。

2.内容

  • 幸福というものは偶然に生じるものではない。それは我々の外側の事柄によるのでなく、むしろ我々が事柄をどのように解釈するかによるものである。内的な経験を統制できる人は、自分の生活を決定することができるようになるが、それは我々の誰もが幸福になれるということとほぼ同じことである。
  • 最良の瞬間は普通、困難ではあるが価値のある何かを達成しようとする自発的努力の過程で、身体と精神を限界にまで働かせ切っているときに生じる。このように最適経験は我々が生じさせるものなのである。
  • 社会の統制から我々を解放するための最も重要な第一歩は、その時その時の出来事の中に報酬を見出す能力を身に付けることである。経験の一つ一つ、流れや生活の過程それ自体を楽しみ、その中に意味を見出すことを身につけるならば、社会による統制の重荷は自然に肩から落ちる。報酬がもはや外的な力に委ねられることが無くなった時、力はその人に戻ってくる
  • 人は現実に「外」で起こっていることとは無関係に、ただ意識の内容を変えるだけで自分を幸福にも惨めにもできる。障害や妨害にもかかわらず頑張り続けるというこの能力こそ、まさにその人に対し他社が尊敬の念を抱く最も重要な特質である。それはおそらく人生に成功するために最も重要な特質であるとともに、人生を楽しむための最も重要な特質であるからだ。
  • 「フロー体験」は努力を必要としないように見えるが、とんでもない。それはしばしば大きな身体的努力、または高度に訓練された知的活動を必要とする。それは熟練した能力が発揮されなくては生じない。わずかな集中の緩みがフローを消してしまうが、フローの継続中は意識は滑らかに働き、一つの行為は次の行為へと滞りなく続いていく。
  • 人々が楽しむのは統制されているという感覚ではなく、困難な状況の中で統制を行っているという感覚。人は保護された日常生活での安全を進んで放棄しない限り統制感を経験することはできない。結果が不確定であるとき、またその結果を左右することができる時にのみ、人は自らを真に統制しているかどうかわかる。
  • 注意の混乱や刺激への過剰関与は、心理的エネルギーがあまりにも流動的で不安定であるためにフローを妨害するが、過剰な自意識と自己中心主義は、注意が硬直し固定しているためにフローを妨げる。これらの両極端に傾く人は楽しむことができる、ものを学ぶことが困難であり、自己の成長の機会を奪われる。逆説的ではあるが、自己中心的な自己は、自由にできるすべての心理的エネルギーを新しい目標を認識するためにではなく、目先の目標の充足のために費やしてしまうの得、自己をより複雑なものにすることができない。
  • 楽しさは何をするかによるではなく、むしろどのようにするかによって決まる。
  • 会話において、言葉がうまく選ばれ、うまく並べられるなら、それは聞き手に喜ばしい体験を生み出す。語彙の豊富さと言葉の流暢さは、会社の経営者として成功するための重要な資質であるというのは、功利主義的理由のみに基づくのではない。巧みに話をすることは、すべての相互作用を豊かなものにし、またそれは誰もが身に付けることのできる能力である。
  • 書くことの効用は、手早く伝達することにあるのではなく、情報を創るところにある。内発的理由から、書くということは決して無駄なことではない。書くことは何よりも心に訓練された表現手段を与える。それは出来事や経験を将来容易に思い出し、再生できる記録になる。それは経験を分析し、理解し、秩序をもたらす自己との交信である。
  • もし人が、そうすべきであるという理由から、あるいは本を読んだり、ある筋道を強制されたと感じたならば、学習は本心に逆らうことになる。しかし、それが正しいという内的感覚から同じ筋道をたどることを決めるとすれば、学習は比較的骨の折れない楽しいものになる。
  • 環境にある様々な挑戦の機会と遊び、それを変化させる人々の経験の質は、不毛な現実の束縛を変更不能なものと感じ、それに生活を譲り渡している人の生活の質よりも、明らかに楽しく、同時に発展的。
  • ほとんどの人が退屈で無意味と考える作業の中に挑戦目標を見出す人もいる。ある職業に多様性があるかどうかは、究極的には実際の仕事の条件よりも、その人の仕事に対する立ち向かい方に関わっている
  • 仕事のうえでの摩擦は、面子を失う恐れから自分を守ろうとする気持ちによることが多い。自分自身の存在を証明するために、人は他者が自分をどのように扱うべきかについての目標を設定し、他者がこれらの目標を満たすことを強く期待する。しかし他者もまたまた、達成されるべき彼自身の厳格な目標を持っているから思い通りにはいかない。おそらくこの袋小路を避ける最良の方法は、上役や同僚の目標達成を助けながら、自分の目標を達成するという挑戦を設定することだろう。
  • 孤独に立ち向かう方法は、結果に大きな相違を生む。孤独であることを、他者とともにいる時には達成できない目標を達成する機会と考えるならば、人は寂しく思う代わりに孤独を楽しみ、その過程で新しい能力を身に付けることができよう。他方、孤独を挑戦と考えず、何としてでも避けるべき状態とみるならば、人はパニックに陥り心をより複雑なレベルへと高めることのない、気晴らしに頼ることになるだろう。
  • 拘束の受容がすなわち解放なのである。伝統に強いられるのではなく、自ら進んで伝統を受け入れることによって、自分が正しい選択をしたか、他者は自分たちより幸せかなどに心を煩わさせる必要は無くなる。その結果、大量のエネルギーが生き方を思い惑うことで消費されることなく、生活を充実するために解放される。
  • 無条件の受容は子供にとって特に重要。自分が親の期待に添えなかったら親が愛してくれなくなるという怯えは、子供の自然な無邪気さを次第に慢性の不安に置き換える。しかし子供が、両親は自分の幸福の実現を無条件に望んでいると感じるならば、彼は緊張を解くことができ、恐れることなしに世界を探索する。さもなければ、彼は心理的エネルギーを自分の防御に振り向けねばならず、彼がじううにできるエネルギーの量を減少させる。
  • ある共同体が良い共同体とされるのは、それが技術的に進んでいるから、または物質的豊かさに浸りきっているからではない。人々にできる限り多くの楽しみの機会を提供し、人々が絶えず増大する挑戦を追求することによって、その可能性を発達させる共同体が良い共同体である。
  • まず個々人の意識が変わるまで、社会変化は起こりえない。自分自身の生活をまず統制することを学ばずに、人々の生活を良くしようとする者は、物事のすべてを悪くするのが常である。
  • 厳しい肉体的試練を生き抜いた人々に共通した態度は、自分の運命は自分で握っているという信念を暗黙のうちに持っているということであった。彼らは自分自身の運命は自分の能力によって決定できることを確認していた。彼らは自己中心的ではない。彼らのエネルギーは、典型的には自分の置かれた環境を支配することにではなく、その環境の中で調和しながら行動する方法を見つけだすのに向けられる
  • 開かれた構えは、その人が客観的にものを見、他の選択可能性を知り、自分が周囲の世界の一部と感じることを可能とする。焦点はやはり個人の目標に置かれているが、その焦点は狭いものではなく、例え彼が達成したいと思うこととは直接には無関係に見える出来事にまでも注意を払い、それに適応できるように開かれている。
  • 周囲のものとの合一の達成は、楽しいフロー体験の重要な構成要素であるばかりでなく、逆境を克服する基本となる仕組みでもある。注意の焦点が自己から外れると、欲求不満が意識を混乱させることは少なくなる。心理的エントロピーを体験するときには内的混乱への注意集中を強いられるのであるが、自分の周囲に起こっていることに注意を払えば、ストレスが持つ破壊効果は減少する
  • 真剣に取り組まない限り、目標は多くの効果を生むことはできない。それぞれの目標は一連の結果を規定し、人がそれらを考慮に入れなければ目標は無意味なものになる。すべてのフロー体験についても同じことが言える。目標と目標が要求する努力の間には相互関係がある。目標は最初がそれが要求する努力を正当化するが、後になると目標を正当化するのは努力である。
  • 大量のエネルギーを一つの目標に投入する前に、基本的な疑問を問うてみるのは無駄ではない。それは私が本当に望んでいることなのだろうか。私はそれを楽しんでやっているのだろうか。近い将来、私はそれを楽しんでいるだろうか。私、そして他者が支払う代価はそれに値するだろうか。もしそれを達成したら、私は自分自身と折り合っていけるだろうか。

3.教訓

文章としては、市販の本というよりも学術論文のようで非常に読みにくく、自身でも数日かけて読むことになりましたが、語られている内容自体は非常に学ぶべき部分が多いと感じました。

実際にマネジメント職をしていると、思った通りに事が運ぶことの方がむしろ少なく、うまくいかないことが多いです。

しかしながら、外部環境のせいにするのではなく、その状態を自分でどうすれば楽しむことができるかを考え、孤独な状態もプラスと捉え、前向きな気持ちを持って対処したいと考えます。