管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま 増田弥生 金井壽宏 著

1.はじめに

本書の冒頭で、”本書は「もうひとつのリーダーシップの旅」である、と書かれています。

その言葉に過剰な期待をしてしまったせいか、先に読んだほうにインパクトを強く感じたからか、「リーダーシップの旅」のほうが強く印象に残りました。

一方で、リーバースやナイキで実際にHRMの責任者を務めた方の言葉なので、重みを感じることも数多くあり、印象的だった部分を引用して紹介していきます。

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2.内容

(1)リーダーは自分の中にいる

  • リーダーシップは「みんなのテーマ」。会社や組織のみならず、日常のあらゆる画面にリーダーシップは満ちあふれており、人はひとりで生きているのでない限り、あらゆる場面でリードしているか、されているかだ。
  • 誰かが何かを語り、権力や権限や組織の仕組みによってではなく、その人の語る内容や言行一致の行動によって、周囲の人が「この人にならついていってもいい」と思って喜んでついていったとき、社会的影響力としてのリーダーシップは存在する
  • 働く組織においてリーダーと言うときは、肩書や立場を指すことが多いが、リーダーシップは発揮するものであり、行動の形、存在の仕方。
  • 組織開発の世界では、組織には、維持すべきことと、新しく始めるべきことと、やめるべきことがあると言う。どんな会社にも、維持しなくてはならないことは必ずある。組織の価値観や理念、それを取ったらその会社でなくなるというものは守らなくてはいけない。しかし、新しく始めるべきこととそのためにやめるべきことも間違いなくあるのであって、そうした動きを牽引し、組織の細胞を活性化していくのがリーダーの役割。
  • リーダーシップは役職や肩書がないと発揮できないものではない。ある人が組織全体にとって必要とされることを見極め、自らイニシアティブを取って行動し、その行動が組織に価値をもたらしたとき、リーダーシップは発揮したと言える。

(2)グローバル時代のリーダーシップ

  • イニシアティブを発揮しづらいのは、自分で自分を枠にはめてしまっているから。しかし、こういった枠は、自分の思い込みである場合がほとんど。自分ではめた枠はどんどん外していったほうがいい。でなければ、いつまでも小ぢんまりとしたままで、自分の成長につながらないし、本当の枠を越えそうになったら、誰かが「こら」と言って止めてくれるから大丈夫。
  • イニシアティブは会社や組織のためによかれと思って発揮するもの。たとえ失敗に終わったとしても、会社や組織のためを思ってやった結果だから、成果はゼロで終わるのではなく、0.1か0.2ぐらいにはなる。失敗から学ぶこともできる。そして万が一当たったら、5や10につながる可能性がある。だから失敗を恐れる必要はない。
  • 日本人のリーダーシップ・アイデンティティには日本人らしさも含まれてしかるべきであって、そこが欠けていると、あるがままの自分を受け入れられない。自分を受け入れられない人は、他者も受け入れられないため、多様な価値観が重んじられる組織ではうまくやっていきにくくなる。
  • コミュニケーションとは、自分の思いが相手に正確に伝わり、それが相手の具体的な行動につながって、ようやく完結するもの。「これをやってよ」と言っただけでは、コミュニケーションではなく伝言。相手の行動がゴールだとしたら、自分の位置を相手の腹に落ちる形で発信しなければならない。こうした言語化の力がないと、組織はリードできない。
  • 上司が部下に倒して「なんべん言ったらわかるんじゃ」と言ったら、これは上司の敗北宣言であって、「言う」と「伝える」の違いをその上司はわかっていない。相手側のアクションまでを含んだコミュニケーションは、リーダーシップそのものと言ってもいい。
  • プライベートで感情を抑えすぎているといつか爆発するように、組織内で抑えられている感情は必ず形を変えて出てきて、組織に悪影響を及ぼし、パフォーマンスを低下させる。だから、感情表現を悪いこととみなさない雰囲気を組織の中に作ったほうがよい。もっとも、そのためには、個人が客観的に感情を表現できるようになることが必要だし、組織の側にも、個人の感情を受け止められるだけの成熟が求められる。
  • 「人は存在するだけでは50%生きているとしか言えない。100%生きるためには思い切り自己表現することだ」。自分を明確に表現できることはリーダーにとってとても重要。自分が誰であるか、自分が目指す場所はどこになるのかを語れてこそ、周囲の人たちを巻き込むことができる

(3)リーダーとしてより良く成長する

  • 「今ここ」の瞬間のありのままの自分でいると、自分の魂レベルと感情レベルと思考レベルがいずれもずれないので、周囲から見ても軸のぶれていないリーダーとなり、職場での判断軸も明らかになっていく。リーダーがありのままでいないと、周囲の人も居心地が悪く感じて、自分のありのままを出しにくくなり、本来持っている力を発揮しづらくなる
  • この世に生まれてきた、あるがままの自分を全人格として認知してほしい。こうした認知は、認知する側がまず自分をよく知り、自分らしくていいのだと思わなければできない。自分が自分であることをよしとしない人は、他者が他者であることをよしとできない
  • 自己受容とは、自分をあるがままに受け入れつつ、足りない部分を成長の余地とみて努力すること、そして努力する自分を愛おしく認知しながら成長させていくこと。自分の成長過程を認めるなどというと、人に弱みを見せるようなことはできないとか、リーダーとしての面目にかかわると感じる人がいるかもしれないが、そういう無用のプライドを捨てられないリーダーほど、振り向いたら後ろに誰もついてきていないという事態に陥りやすい
  • フィードバックを受けるためには、自分から率先垂範で周囲に対してフィードバックを出すことも大事。その際にベースとなるのは、相手の成長を心から願う気持ちであり、相手との間に信頼関係が築けていることが前提。

(4)リーダーシップのベース

  • しめくくりに、会社員だと想定したうえで、いくつか質問してみたい。
  1. あなたが初対面の人たちの前で自己紹介するとしたら、自分のことをどんな風に説明しますか。想像して答えてください。ただし、国籍、年齢、出身地、家族構成、あるいは名刺や職務経歴書に記載されているような情報には触れないでください。
  2. 現在勤めている会社からあなたが去ったとしたら、職場から何が失われますか。想像して答えてください。
  3. あなたが勤めている会社を今すぐ去ることになったとします。5年後、あなたは会社に何を残した人物として紹介されたいですか。想像して答えてみてください。
  4. あなたは故郷を離れて都会で暮らしているとします。久しぶりに実家に戻ると、おじいさん・おばあさんや甥っ子・姪っ子に、「今どんな仕事をしているの?」と質問されました。実際に聞かれたつもりになって答えてください。
  • 相手を理解するためには、自分をよく理解するという経験が欠かせない。出した質問のような自問自答を繰り返し、自分自身への理解を深めた人でないと、相手を理解しようにもその方法がわからない。自己理解ができている人が、相手に対する思い込みや決めつけを捨てて、相手の言うことに好奇心を持って耳を傾けることができてこそ、その相手をよりよく理解できる。
  • 自己受容は、人を巻き込んでいくプロセスにも欠かせない。なぜなら、自分自身を巻き込めない、つまりその気にさせられない人に、他者を巻き込んで、その気にさせることはできない。「自分を巻き込む」とは、表現を変えれば、自分が心の底から何かを信じて行動できる状態であり、そういうときに、他の人はその人を信じてついていこうという気になる

3.教訓

確かに、最後の4つの質問に、明確に答えられない自分がいます。すなわち、自分自身への理解が深まっていない状態なんだな、と痛感しました。

まずは自分が何をしていて、どこに持っていきたくて、といったことが言語化できないと、周囲の人がついていきようがないのは明白です。それは、自分がフォロワー側になることを想定すれば、おのずとわかることです。

そして、「それ言ったよね」と言っても仕方がないことを改めて認識しました。これはマネジャーとしてだけでなく、家庭において子供に対しても配偶者に対しても、そして年老いていく親に対してもそうだと思います。相手が理解し行動につながってはじめて、伝えたことが意味を成します。

ただ、その状態を目指すためにカッコつけたり背伸びしたりすると、相手にもそれが伝わり、自然なコミュニケーションから遠ざかっていくんだと思います。完璧を目指そうとせず、時には自分がわかっていない部分も認めながら、地に足のついた双方向のコミュニケーションを目指したいと思います。