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現代語訳 学問のすすめ 福澤諭吉 著 齋藤孝 訳

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現代語訳学問のすすめ (ちくま新書) [ 福沢諭吉 ]
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1.はじめに

ご存知の方も多いとは思いますが、福澤諭吉さんは慶應義塾大学創始者です。

天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」から始まる本書は、あまりにも有名かと思います。

もともとは1冊の本でなく、数年かけて17編を刊行し、最終的に1冊に合本されています。

2.内容

初編:学問には目的がある

  • 人は生まれたときには、貴賎や貧富の区別はない。ただ、しっかり学問をして物事をよく知っているものは社会的地位が高く豊かな人になり、学ばない人は貧乏で地位の低い人になる。
  • ここでいう学問というのは、ただ難しい字を知って、わかりにくい昔の文章を読み、また和歌を楽しみ詩を作る、といったような世の中で実用性のない学問を言っているのではない。一生懸命にやるべきは、普通の生活に役に立つ実学である。
  • 自由とわがままの境目は、他人の害となることをするかしないかにある。ある人がやりたい放題やるのは、他の人の悪い手本になって、やがては世の中の空気を乱してしまう。人の教育にも害になるものであるから、浪費したお金はその人のものであっても、その罪は許されない。
  • もしも国民の水準が落ちて、より無学になることがあったら、政府の法律もいっそう厳重になるだろう。もし反対に、国民がみな学問を志して物事の筋道を知って、文明を身に付けるようになれば、法律もまた寛容になっていくだろう。法律が厳しかったり寛容だったりするのは、ただ国民に徳があるかないかによって変わってくる

第2編:人間の権理とは何か

  • 文字は学問をするための道具にすぎない。例えば、家を建てるのに、かなづちやのこぎりといった道具がいるのと同じ。かなづちやのこぎりは建築に必要な道具ではあるけれども、道具の名前を知っているだけで、家の建て方を知らないものは大工とは言えない。
  • 人と人の関係は、本来同等だ。ただし、その同等というのは、現実のあり方が等しいということではなくて、権理が等しいということ。

第3編:愛国心のあり方方

  • 独立とは、自分の身を自分で支配して、他人に依存する心がないことを言う。自分自身で物事の正しい正しくないを判断して、間違いのない対応ができるものは、他人の知恵に頼らず独立していると言える。
  • 独立の気概が無い者は、必ず人に頼ることになる。人に頼る者は、必ずその人を恐れることになる。人を恐れる者は、必ずその人間にへつらうようになる。常に人を恐れへつらう者は、だんだんとそれに慣れ、面の皮だけがどんどん厚くなり、恥じるべきことを恥じず、論じるべきことを論じず、人を見ればただ卑屈になるばかりとなる。

第4編:国民の気風が国を作る

  • そもそも事をなすにあたっては、命令するより諭した方がよく、諭すよりも自ら実際の手本を見せるがよい。

第5編:国をリードする人材とは

  • そもそも勇気というのは、ただ読書して得られるものではない。読書は学問の技術であって、学問は物事をなすための技術にすぎない。実地で事に当たる経験を持たなければ、勇気は決して生まれない。

第6編:文明社会と法の精神

  • 政府が法を作るにあたっては、なるべく簡単にするのがよい。既に法が定まった以上は、必ず厳格にその狙いを実現しなくてはならない。人民は政府の定めた法律を見て不都合だと思うことがあれば、遠慮なくこれを論じて訴えるべきである。既に法を認めて、その法の下にあるときには、その方についてあれこれ勝手に判断せずに、謹んでこれを守らねばならない。

第7編:国民の2つの役目

  • 国法はたとえ不正不便なものであっても、その不正不便さを口実にして破っていいということはない。実際に不正不便な箇条があれば、一国の支配人である政府にその旨を説いて、静かにその法を改めさせるべきである。政府が自分の意見に従わなければ、一方ではさらに力を尽くして説得し、一方では現状の法に我慢して時機を待つべきである。

第9編:よりレベルの高い学問

  • 今の学生は、昔から能力のある人物より文明の遺産を受けて、まさしく進歩の最前線にいるのだから、その進むところに限界を作ってはいけない。今より数十年後、後の文明の世では、今われわれが古人を尊敬するように、その時の人たちが我々の恩恵を感謝するようになっていなくてはいけない。要するに、我々の仕事というのは、我々の生きた証を残して、これを長く後世の子孫に伝えること。

第10編:学問にかかる期待

  • 人間たる者は、ただ自身と家族の衣食を得ただけで満足してはならない。人間にはその本性として、それ以上の高い使命があるのだから、社会的な活動に入り、社会の一員として世の中のために努めなければならない。

第12編:品格を高める

  • 学問で重要なのは、それを実際に生かすこと。実際に生かせない学問は、学問でないのに等しい。
  • 人間の見識品格は、深遠な理論を議論して高まるものではないし、また広い知識を持つことだけで高まるものでもない。見識品格を高める要点は、物事の様子を比較して、上を目指し、決して自己満足しないようにすること。

第13編:怨望は最大の悪徳

  • 怨望は、諸悪の根源のようなもので、どんな人間の悪事もここから生まれてくる。猜疑、嫉妬、恐怖、卑怯の類は、すべて怨望から生まれてくる。それが内向的に表れると、ひそひそ話、密談、内談、策略となり、外に向けて表れると、徒党、暗殺、一機、内乱となって、少しも国にプラスとなることがない。災いが全国に広まるに至っては、自分も他人もひどい目に会う。怨望とは、公共の利益を犠牲にして私怨をはらすもの。

第14編:人生設計の技術

  • 「世話」という言葉には2つの意味がある。1つは「保護」という意味、もう1つは「命令」という意味。保護と指図とは、究極的には両方とも一緒のもの。また、その範囲はぴたりとして寸分の狂いもあってはならない。

第15編:判断力の鍛え方

  • 物事を軽々しく信じてはいけないのならば、またこれを軽々しく疑うのもいけない。信じる、疑うということについては、取捨選択のための判断力が必要。学問というのは、この判断力を確立するためにある。

第16編:正しい実行力をつける

  • 心が高いところにあって働きが乏しい者は、常に不平を持たざるをえない。仕事を求めるに当たって世間の仕事を一渡り見てみると、自分にできるような仕事はすべてみな自分の心の基準に満たないものなので、その仕事に就くのは好まない。かといって、自分の理想にかなうような仕事にあたるには実力が足りない。こうなってもその原因を自分に求めようとせず、他を批判する。
  • 非常に大きなことからとても細かいことまで、他人の働きに口を出そうとするならば、試しに自分をその働きの立場において、そこで反省してみなければいけない。あるいは、職業が全く違ってその立場になれない、というのであれば、その働きの難しさと重要さを考えればよい。

第17編:人望と人付き合い

  • 人望とは実際の力量で得られるものではもとよりないし、また財産が多くあるからといって得られるものでもない。ただ、その人の活発な知性の働きと、正直な心という徳をもって、次第に獲得していくもの。

3.教訓

各編の見出しがわかるように要約したものではなく、各編の中で自身の心に引っかかった文章のみを抽出しています。

本書の内容自体は、国法だったり、官民の違いだったりが主眼となっていますが、1企業として捉えたとして、本部が定める運営・ルールと、現場での実運用という関係性にも応用できると考えます。

私は現在、本部でルールを定める立場にあります。

あらゆる面において100点満点の整合性の取れたルールを作ることは現実的に困難です。だからといって、ルールは定めずに現場の運営に任せる、というのは、ある意味責任放棄に近くなります。

そこで、一旦行動指針を示した上で、それでいて実運用にそぐわないケースが出てくるのであれば都度ブラッシュアップしていくという、柔軟性のある考え方を持つことが大切だと思います。