管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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50代からの幸せな働き方――働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法 高尾義明 著

1.はじめに

ジョブ・クラフティングは、多くの人にとって、あまりなじみのない言葉かもしれません。本書の冒頭に以下のように説明されています。

自分の仕事を主体的に捉え直すことで、自分らしさや新たな視点を入れて、やらされ感のある仕事をやりがいのあるものへと変えていく考え方のことです。一言で伝えるときには、「仕事の中に自分をひと匙入れる」というたとえを用いています。

自身はキャリアコンサルタントの勉強をする中でこの言葉は知っていたものの、私もあと数年経てば50歳になりますので、より深く理解しようと思い購入しました。

以下では特に重要と感じた部分を引用していきます。

2.内容

(1)ジョブ・クラフティングの基礎

  • ジョブ・クラフティングとは、「働く人たち一人一人が、自らの仕事経験を自分にとってよりよいものにするために、主体的に仕事そのものや仕事に関係する人との関わり方に変化を加えていくプロセス」のこと。重要なポイントは、①主体的に変化を加えることと、②変化の目的を自分で考えることにある。
  • 変化が小さければ自分以外の周りの人からは変化を捉えてもらえないかもしれない。しかし、ジョブ・クラフティングで大事なのは、自分自身が主体的に行ったかどうか。自分自身では、変化を加える前後に違いをはっきり捉えることができるはず。
  • ジョブ・クラフティングには、自分自身の心の中だけで変わるものも含まれている。いいかえれば、物理的な変化だけでなく、仕事や人の見方を変えるといった認知的な変化もジョブ・クラフティングだということ。
  • ジョブ・クラフティングで大事なのは、自分で何かを変化させることができるという実感を持てるかどうかであり、その変化の大小にこだわる必要はない。

(2)ジョブ・クラフティング・マインドセット

  • 自分は(ジョブ・クラフティングを通じて)仕事を変えることができる、というジョブ・クラフティング・マインドセットが、ジョブ・クラフティングの実践を左右する。
  • 近年、人事・実務の世界では、ホームとアウェイを行き来する越境は、個人の学習・成長を促すことにつながるとして注目されている。社外での勉強会への参加や社会人大学院などへの通学、ボランティア活動、副業(複業)などが典型的なものとして取り上げられている。

(3)最初の一歩を踏み出し、習慣化を図る

  • 最初は周りに影響しない範囲で自分が進めていく仕事の段取りを小さく変えることから始めるといい。ポイントは、自分で自分のために変えること
  • 2つ目はの方法は、周囲を見渡しても誰も手を付けていない雑用を、自分が無理なくこなせる範囲で積極的に引き受けてみること。雑用に意識的に取り組むことで、自分が得意なことが見えてくるかもしれない。
  • 身近な人たちに自分が何かを提供しており、どのように役にたっているかを考えることは、認知的クラフティングのきっかけになる。
  • 自分の仕事を俯瞰する際に注意すべきポイントは、過去の自分の仕事や他の人の仕事と比較してはいけないということ。「以前の職場で働いていたときの方がもっと大きな貢献ができていた」「同期は自分よりずっと活躍している」などという比較は無意識に行ってしまいがつだが、ここは視点を変える。皆さんもそれぞれの持ち場で何らかの貢献をしている。
  • ささやかなものであるからといって、簡単に継続できるわけでもない。小さなジョブ・クラフティングだとしても、それが習慣化するにはある程度の日数や回数が必要。小さなジョブ・クラフティングから初めて、小さな変化を積み重ねていくことが、「自分で仕事やその環境を変えられる」というジョブ・クラフティング・マインドセットにつながる。すぐに効果が出なくても、焦らず継続することが重要。

(4)ジョブ・クラフティングを継続・発展させる

  • いずれの異動でも、仕事の内容や仕事で接する人たちが変わってくる。異動は新たなジョブ・クラフティングを始めるフレッシュスタートの機会にもなる。また、環境が大きく変化した場合には、業務自体を変えるクラフティングよりも、人との関係性に関するクラフティングの方が着手しやすい。
  • ジョブ・クラフティングがもたらす過剰がある種の副作用をもたらし、持続可能性を低下させることを示している。そうした過剰には、①こだわり”すぎ”、②偏り”すぎ”、③抱え込み”すぎ”の3つの「すぎる」とわかりやすく表現されている。
  1. こだわり”すぎ”:結果として働き”すぎ”になり、負担が過大になってしまうと、ジョブ・クラフティングが持続可能でなくなってしまう。
  2. 偏り”すぎ”:偏りすぎによって、他の人の意見を取り入れて仕事の成果や生産性がいっそう向上する可能性が失われたり、他の人に対して頑なな態度を取ることで周りからの眼が厳しくなったりすることもあるかもしれない。
  3. 抱え込み”すぎ”:自らの想いを大事にしすぎると、部下や若手になかなか任せることができず、周りからは抱え込み”すぎ”とみなされることもある。自分のこだわりや強みをいかに発揮するかとともに、それをどう継承していくかという意識も求めれられるようになる。
  • 自分の仕事に対する他者からの期待が変えられそうにないならば、ジョブ・クラフティングを行う前に変化や工夫の内容について話してみるとよい。そうした話し合いが、関係性クラフティングのきっかけになるかもしれない。
  • どういった目的で何に力を注いでいるのかが周りから見えにくいと、それがチームや組織にプラスに働くことを意図したものであっても、自分勝手に仕事をしていると受け取られる可能性もある。
  • ジョブ・クラフティングの幅を広げるという観点から言えば、DXにこだわる必要はない。あくまで自分起点であることがジョブ・クラフティングの大原則。スキル・クラフティングの際は、まずは自分が関心を持てる対象について検討するのがよい。
  • 常識や文化の違う場や状況を経験することで、新しいものの見方に触れたり、自分の当たり前を疑う機会に直面したりすることで、ジョブ・クラフティングの幅が広がるということもある。
  • クラフティングとは、自分起点で変化を生み出しながら、物事の捉え方を変え、対象との関わり方を変えること。このようにクラフティングを捉えるならば、変化させる対象は仕事だけに限定されない

(5)職場や組織からのサポート

  • ミドル・シニア層なら自分でできるだろうと考えがちだが、そういう人は多数派ではない。ミドル・シニア層自身がそのような立場になるのは初めてであり、不安や迷いを抱えていることが多いから。具体的にどうすればよいかを示せなくても、上司がサポートする姿勢を示すことは、ミドル・シニア層が前向きな変化に向かう支えになる。
  • もちろん、ミドル・シニア層が変わることを期待していても、そうした全員が短期間に良い方向に変わるということは相当難しい。それでも、小さな変化を捉えながら、彼らが変わりうるという信念を持ち続けようとすることが大事
  • ジョブ・クラフティングの最も有効な伝え方の1つは、上司などの支援者自身が、自分がひと匙を入れているところを見せたり、自分の取った行動をジョブ・クラフティングの観点から解説すること。それが、部下や後輩のジョブ・クラフティングの促進に弾みを付けることになる。
  • 年齢を重ねるとともに、同じ年代間の個人差は拡大していく。にもかかわらず、「50歳以上の人は・・」といった、年齢によるストレスタイプが当てはめられることも少なくない。そうした高年齢者に対するステレオタイプの当てはめはエイジズムと呼ばれ、一種の差別であるとされている。年齢包括的な職場風土の醸成がこれから重要な課題になる。

3.教訓

自身も最近異動を経験し、同じ会社でありながら違う事業だと文化も考え方も全く異なる環境に身を置いています。越境学習をしているようなもので、そのため2(4)の内容は特に身に沁みました。

今の苦境を相談していた社外の友人からも「異動は転職みたいなもの。まずは周囲を伺って、人間関係の構築から始めればいい。」と、ほぼ同じようなことを言われ、ものすごく納得感を得ました。

確かに、以前の部署での仕事と今を比較してしまっています。この状況のまま今の仕事を続けるのかはわかりませんが、どこに向かっていくにしろ、「自分で仕事や状況を変えられる」というジョブ・クラフティング・マインドセットは持ち続け、何かひと匙足してみよう、と焦ることなく向き合っていきたいと思います。