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リーダーシップ論 ジョン・P・コッター著

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リーダーシップ論第2版 人と組織を動かす能力 [ ジョン・P.コッター ]
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1.はじめに

私が読んだのは、第2版でなく、中古で購入した初版です。

タイトルは「リーダーシップ論(原題:WHAT LEADERS REALLY DO)」ですが、リーダーシップについて体系的に語っているのではなく、著者のテーマの異なる論文を集めた内容に、序章として「リーダーシップの未来」を加えた内容となっています。

すなわち、リーダーとマネジャーの違いや、マネジャーの行動分析など、内容の半分程度はマネジメントの内容になっています。

2.内容

(1)序章:リーダーシップの未来

  • 重要な組織変革を成功に導くのはそれがどのような手法であれ、息の長い仕事であり、複雑な8段階のプロセスからなる。変革がトントン拍子に手際よく進むことはありえない
  1. 危機感を醸成する
  2. 変革プロセスを主導できるだけの強力なチームを作る
  3. ふさわしいビジョンを構築する
  4. 構築したビジョンを組織内に伝達する
  5. 社員がビジョン実現に向けて行動するようにエンパワーメントを実施する
  6. 信頼を勝ち取り、批判を鎮めるために、短期間に十分な成果を上げる
  7. 行動に弾みをつけ、その余勢を駆って変革を成し遂げるうえでのより困難な課題に挑む
  8. 新しい行動様式を組織文化の一部として根づかせる
  • リーダーシップを持たないエグゼクティブは、とうてい成功などできない。リーダーシップに欠ける人々が、周囲の危機感を十分あおるよなことはまずない。変革を主導するには、組織全体が一枚岩で臨む必要があることをよく理解していない。
  • マネジメントの基本目的は、現在のシステムをうまく機能させ続けることである。これに対してリーダーシップが目指すものは、そもそも組織をよりよくするための変革、とりわけ大変革を推進することである。
  • 自分の部下との関係だけに気を取られ、他の人々、つまり変革ビジョンを実行しようとしている人材開発部門やIT部門のスタッフ、マネジャーの多くをないがしろにすると、失敗することになる。
  • 命令するという仕事はさほど重要でなくなっている。周囲の人々と仕事のうえで良好な関係を築くことが、課題として重みを持つようになってきている。「良好な関係」とは、当然ながら直属の部下にとどまらず、幅広く多くの人々との関係を指している。そして、事業の繁栄のためには、上司との関係をも積極的にマネジメントしなければならない。
  • 上司をうまくマネジメントすることは、上司の人となりと置かれた状況を理解し、自分自身とそのニーズを客観的に判断したうえで、ニーズにもスタイルにも適した関係を築き上げ、その関係を長く保つということだ。
  • 変革の実現に威力を発揮するのはインフォーマルな人的ネットワークであって、フォーマルな階層が生かされるのは安定した環境においてである。このため、過渡期や変革期には、フォーマルな役割や人間関係というのは、大切なもののほんの一部に過ぎない。

(2)第1章:リーダーとマネジャーの違い

  • 複雑な環境にうまく対処するのがマネジメントの役割である。これに対してリーダーシップとは、変革を成し遂げる力量を指す。昨日と同じことを繰り返していたのでは、あるいはそれを少しばかり改善したくらいでは、もはや成功を手にすることはできなくなっている。こうした新しい環境を生き抜き、競争の勝者となるためには、これまで以上の大変革が求められる。
  • マネジメントの武器はコントロールと問題解決である。リーダーシップがビジョンを達成するための手段は、動機づけと啓発である。価値観や感性といった、根源的ではあるが往々にして眠ったままの欲求に訴えかけることで、大きな障害をも乗り越え、皆を正しい方向に導く
  • 針路決定と計画の策定は混同されがちだが、両社は決して同じではない。計画とは演繹的な性格を持つマネジメント・プロセスで、変革を実現するためではなく、目標通りの結果を生むために作られる。これに対して針路の決定とは、どちらかというと帰納的であり、リーダーは幅広いデータを収集して、そこからさまざまな事柄の説明根拠となるパターンや関係性を見つけ出す。
  • 「人心の統合」は「組織編成」とは違う。メンバーの力を結集するのは、いかにうまく設計するかということよりも、いかにうまくコミュニケーションを図るかという側面が強い。コミュニケーションの相手は、部下にとどまらず、上司、同僚、他部門のスタッフ、顧客等にまで及ぶ。
  • 変革への道のりは決して平坦ではない。あえてその茨の道を進もうという、熱意あふれる行動が欠かせない。組織変革が成功するかどうかは、組織メンバーからこうした熱意意を引き出せるかという、リーダーの力量いかんにかかっている。
  • たくさんのリーダーがうまく共存しながら活動するには、健全なカルチャーを育んでいる企業に特有の、インフォーマルで緊密な人間関係が役に立つ。インフォーマルな人間関係のほうが、非日常的な活動や変革に関わる調整を数多くこなせる。大切なのは、対話と強調から、バラバラで矛盾しあうビジョンではなく、調和のあるビジョンが生まれるという点だ。

(3)第2章:人を動かすパワーをどう獲得し行使するか

  • 命令や職務上の権限だけでコントロールしようとしてもうまくいかない理由は以下の2つ。
  1. マネジャーは、フォーマルな権限が及ばない人々にも依存している。
  2. 今日の企業では、たとえ上司からであっても、次々と出される命令を黙って聞き入れ、忠実に従う社員などほとんどいない。
  • 有能なマネジャーは、その職務に伴う依存関係にうまく対応するために、4種類のパワーを生み出すか、強化するか、維持している。
  1. 相手に感謝してもらえるような行動を取る:それがうまくいけば、その相手は一定の範囲内でマネジャーに影響力を行使されても構わないと感じる。
  2. ある分野の「専門家」としての評判を高める:経験や知識があると信頼されれば、その分野の仕事で頼られることが多くなる。こうしたパワーを獲得するには、目に見える実績が必要である。マネジャーの功績が大きく目立ったものであるほど、得られるパワーも大きくなる。
  3. 周囲の人々が知らず知らずのうちに一体感を感じるようにすること:マネジャーを理想的な人物だと認識し、無意識のうちにもそう思えるほど、そのマネジャーへの帰属意識が強まる。
  4. マネジャーに依存することで助けられ、守られていると実感させること:依存しているという自覚が強いほど、そのマネジャーに協力しようとする。

(4)第3章:上司をマネジメントする

  • なかには、あたかも自分が上司からあまり頼られることがないかのように振る舞う人がいる。彼らは自分の上司が仕事をこなすうえで、どれだけ部下の助けを必要としているかがわかっていない。また、上司が部下の行動いかんで深刻な痛手を受けること、そして部下の協力、部下への依存、部下の誠実さをどれほど必要としているかをわかろうとしていない。
  • 逆に、自分はあまり上司に依存していないと考える人もいる。直属の上司は、多くの重要な役割を担っている。しかし、なかには、上司が提供するような重大な情報や資源は必要ない、自分は他者には依存していないと考えなければ気が済まない人間もいる。
  • ただし、上司も人間に過ぎない。きわめて有能な者たちは、この事実を認識し、自分のキャリアと昇進には自らが責任を負っている。こうした有能な者たちは仕事に必要な情報や支援を得るためには、上司が与えてくれるのを待つのでなく、必ず自ら進んで得るという姿勢を取っている。
  • 上司の目標、プレッシャーはどんなものか、得意不得意は何か、どのような仕事のスタイルを好むのか、情報収集の方法はメモか会議かあるいは電話を好むのか、などに対する認識を持たずに上司に接するのは、目をつぶって歩いているようなもので、不必要な衝突や誤解、問題を必ず招く
  • 上司と部下の関係において、上司の占める割合は半分でしかない。残りの半分は部下自身が占めており、部下が自分で直接マネジメントできる部分である。したがって、効果的な仕事上の関係を作っていくためには、部下自身が自分のニーズや強み、弱み、またスタイルをよく把握しておくことが不可欠になる。
  • 反依存的態度も過剰依存的態度も、「上司とは何か」ということについて、非現実的な幻想を抱き、いずれの態度も「上司も人間であり、普通の人々と同様、不完全で過ちを犯す」という事実を見落としている。上司とて無限に時間があるわけでも、百科事典並みの知識がわるわけでもなく、超能力があるわけでもないし、不倶戴天の敵というわけでもない。
  • 上司が何を求めているかを、明らかにするのは最終的には部下の責任であるといえる。上司の求めることは、大まかなことから非常に具体的なことに至るまで多岐にわたる。話し合いをすることで、上司の期待している点を事実上すべて明らかにすることができる場合が多い。

(5)第4章:変革プロセス その8段階

①緊急課題であるという認識が不徹底
  • 変革の実行のためには、新しい制度を作り出す必要があり、またそのためにはリーダーシップが必須となる。真の意味でリーダーシップのある人材を昇進させるか、もしくは外部から登用しない限り、変革プロセスの第一段階は何の成果ももたらさない。
  • 肝心なことは、「未開拓の領域に踏み込むよりも、現状を維持することの方が危険は多い」と認識させることである。
  • 安全策を講じたところで依然危険は存在する。危機意識が十分に浸透しなければ、変革プロセスの成功は望めないし、投機的な企業の将来が危険にさらされる。
②推進チームの指導力不足
  • 要となる当該事業部門ではなく、人事部や企画部などのスタッフ部門の幹部がチームを率いてしまっている場合もある。その人がどれだけ逸材で献身的であっても、当該部門からリーダーが出ない限り、グループが必要な威力を発揮することはありえない。
③ビジョンの欠落
  • 的確なビジョンがない変革プログラムは、紛らわしく矛盾するような数々のプロジェクトの乱立になりがちで、その結果、組織を誤った方向に導いたり、あるいはやみくもに進めさせるということになりかねない。失敗した改革では、たいてい計画や方針やプログラムばかりが羅列されていて、ビジョンが欠けている。
  • 5分以内でビジョンを他の人に説明できない、あるいは相手から理解と関心を示す反応が得られないのであれば、変革プロセスのこの段階を完了したとはいえない。
④社内コミュニケーションが絶対的に不足
  • 何百、何千という人々が、短期的犠牲を払ってまでも進んで協力してくれない限り、変革は不可能である。社員はたとえ現状に不満足だったとしても、変革が実現するとの確信を得ない限り、自ら犠牲を払おうとしない。信頼に足る十分なコミュニケーションなくして、彼らの心や関心を捉えることなど決してできない。
  • コミュニケーションは言葉と行動の両方で行われるものであり、ことに行動は最も説得力のある手段となることが多い。つまり、自分の言葉とは裏腹な行動を取る経営幹部こそ、変革を潰してしまう元凶なのである。
⑤ビジョン実現の障害を放置
  • 推進チームは、新しい方針を上手に伝えることによって、ある程度までは他の社員たちに新しい行動を起こさせることはできる。しかし、コミュニケーションだけでは十分ではない。刷新を実行するには、障害を取り除くことも不可欠である。もっとも、多くの場合、障害物は実際に存在しているものである。
  • どの組織でも、変革プロセスの前半においては、すべての障害を排除するだけの勢いも力も時間も持ち合わせていないものである。しかし、重大な障害には立ち向かい、取り除かねばならない。人物を処分するというアクションを避けてはならない。社員のやる気を引き起こし、変革プログラムに対する信頼を維持するためには必要なのである。
⑥計画的な短期的成果の欠如
  • 達成可能な短期目標を設定しないと、変革の勢いを失うというリスクがつきまとう。このまま進めば期待通りの成果を得られると確信できるような証拠を目にすることができなければ、ほとんどの人は遠い道のりを歩き続けようとはしない。短期間で成果を上げられない場合、多くの人は投げ出してしまったり、また変革に抵抗する勢力の側についてしまうだろう。
⑦早すぎる勝利宣言
  • 反対者は一緒になって祝う。祝勝会が終わると、反対者は戦いは勝利のうちに終わったのだから、兵士たちは自分の家に帰りなさいと声をかける。疲れ切った兵士たちは、自分たちは勝ったのだと思い込んでしまう。一度自分の家へ戻ってしまうと、彼らは再び戦艦へ乗り込もうとは思わない。そしてまもなく変革は座礁し、過去が再び忍び寄ってくる。
  • 変革を成功に導くリーダーは、勝利宣言する代わりに、短期間で結果を出したことで得られた信頼感を追い風に、より大きな問題に立ち向かう
⑧変革の成果が浸透不足
  • 変革を企業風土の中に制度として根づかせるためには、新しいアプローチ、行動様式、考え方などが業績改善にどれだけ役立ったかを社員に意図的にアピールすること。業績改善との関連性についての判断を社員任せにしてしまうと、とんでもない勘違いをしてしまうことがある。
  • 次世代の経営陣に新しい考え方がしっかり身に付くよう、十分な時間をかける。昇格の基準が変わらないままでは、変革の効力は長続きしない。

(6)第5章:変革への抵抗にどう対応するか

  • 一般に、社員とマネジャーの間には強い信頼関係は存在しないため、変革時には誤解が生まれやすい。すぐに察知して打ち消さなければ、誤解が反発へと発展する
  • 仕事の中身がガラリと変われば、行動様式を改めなくてはならないし、今の仕事や付き合いにおいて満足していたものも手放さねばならない。このため、アレルギーのある人が大きな変革を迫られると、自分でもはっきりと理由がわからないまま、激しく抵抗してしまうことがある。
  • 抵抗しそうな相手を、計画・実行段階で巻き込んでおくと、機先を制して抵抗を抑え込める場合が多い。参加促進型の変革は、影響を受ける人々の意見に耳を傾け、そのアドバイスを取り入れながら進められる。
  • 変革を進めるうえで一番多い失敗は、どのような状況下でも1つの戦略に固執してしまうことである。
  • 一本筋の通った戦略を持たない組織改革が、どんな問題にぶち当たるかは、言わずもがなである。例えば、計画を事前に詰めないまま拙速で実行してしまうと、予期せぬ問題に足を取られがちである。大勢の人々を巻き込む変革を短期にやってしまうと、普通は行き詰まりを見せるか、参加が形骸化するかのどちらかである。

3.教訓

訳者あとがきにもあるように、変革を推進するリーダーシップについて記載されているのは、1・4・5章です。

今、まさに自身が、支店ごとに人手をかけている業務を、本部でシステム的に集約しようとしているプロジェクトに参画していて、第1弾をリリースしたばかりで次のステップに進もうとしているところなので、かなり実感を持って読み進むことができました。

当然ながら、変革により今までのやり方とは変わるので、将来的な負担減にはなっていいくものの、新しい業務フローを覚えたり、予算の制約などで既存機能の一部が使えなくなったりするため、短期的には不便さを感じることはあります。

また、変革の初めの段階で、「変えるならなぜ現場の意見を聞いてくれなかったのか」「本当は本部が楽になりたいだけではないのか」など、色んな声が出るのも事実です。

本書を読み、将来ビジョンを確り示したうえでコミュニケーションを取ることの重要性を再認識しました。

 

そして、リーダーシップは、必ずしも役職者に求められるものではありません。

担当者でも個別案件単位のリーダーとしての役割を求められることもありますし、担当者時代では上司が何を考えているのかわからなかったことがこの本には書かれていることもあり、現在マネジメント職に就いている方だけでなく、これから目指す方にとっても有益な内容である点がおすすめのポイントです。