1.はじめに
先日、以下の本のレビューをした際、改めてご案内しますとしていた本です。
読み継がれて、もう87刷になっています。
全体では31個の見出しから成ります。本ブログは要約記事ではありませんので、自分が気になった表現のみを引用しています。そのため、以下では見出しと本文の内容が一致していないところもあります。紹介していない部分が重要ではないということではなく、部下やプロジェクトメンバーなどと面談する機会が多い方は、手に取って全体を読んでいただくことをおすすめします。どこかしら刺さる部分があると思います。
2.内容
(1)聞き上手は話さない
- まず第一の修業は、相手の話を「素直に」聞くこと。相手に反論したいときも、話をよく聞いてあげると、相手の意見も自然とおだやかになり、反論しなくてもすむことのほうが多い。
(2)相づちを打つ
- 言葉と態度は逆のメッセージを発することはできるが、態度と態度で同時に反対のメッセージを発することはできない。だから、人は態度から判断する。だから相づちは肯定的なもの。聞き手の肯定的な態度が、相づちを打つことによって話し手に伝わる。
- プロのカウンセラーは、相手から直接非難されるような言葉を発せられても、「そうだね」と相づちが打てるように鍛えられている。自負心がよぎっても、次の瞬間には、たしかに言われてみればそうかもしれない、少なくとも、相手はそう思っている、と考え直し、「本当に、そうかもしれませんね」と言った。以後その相談者との面談はスムーズになった。
(3)避雷針になる
- ぐちを言うのは、そのぐちの内容が聞き手とはかけ離れたことだから。聞き手に関係の近いものだったら、それはぐちとは言わず抗議という。ぐちは溜まれば大きなストレスとなり、自分の体や人間関係を壊す。ぐちは聞き方によっては一番楽に相手のストレスを取る効果がある。ぐちを聞いてあげる人がそばにいると、だれでも大きなストレスを防げる。
- 今日から避雷針になって、関係者のぐちの聞き役になってみる。避雷針の役割ができれば、あなたも健康だし、ぐちった相手も健康になる。そのうえ、あなたは相手から好かれる。いいことずくめ。
(4)自分のことは話さない
- プロの聞き手であるカウンセラーは、自分のことを話さない。自分の話をしては、相手の話す時間を取ることになる。相手の話す時間を取らないというのは、聞き手の大原則。人間の感覚として、聞いている時間は長く感じられ、自分が話している時間は短く感じられるので、ついつい長い話をしがちになるもの。
(5)他人のことはできない
- 「遊ぼう」とか「聞いて」とかは、あなたが忙しいときに言われることが多い。「今忙しいからあとで」が、子供を失望させる。あなたにとって大切な人は、あなたが一番忙しい仕事より自分のほうを愛してくれているかどうかを知りたい。
- 要は相手のタイミングで遊び、相手のタイミングで話を聞いてあげる。これが相手に対してできる最大のこと。それ以外は、他の人のことはできない。
(6)聞かれたことしか話さない
- あなたが聞き手を続けていこうと思うなら、話し手の質問には話し手の立場に立って答えないといけない。聞かれたことに、あなたの立場から答えると、話が行違う原因になる。どう思うかと尋ねられても、あなたがした体験ではないので、実際には答えられない。
- 会話の流れの大切な鍵は、聞き手が会話の文法を判定すること。疑問形になっていなければ、聞き手に聞いているのではない。質問していないときに答えてはだめ。このキー(指標)を覚えておくと、決して論争になることはありえない。
(7)質問には二種類ある
- 納得する答えとは、1人ずつ異なる。人生の疑問に対する答えは主観的なもので、納得した答えがその人なりの正答。一般的な答えは、第三者の人々を納得させはするが、それは自分にとって何の答えにもなっていないのがほとんど。
- われわれが聞き上手になるコツの1つは、難しい質問、正解がわからない(あるいは正解がわかっていてもできない)質問を、正答が単一でわかりやすい質問から分離すること。私の先生は、正答のない、正答はその人の中からで、しかもその人の人間性を高めないと答えが出ないような質問に対しては、「むずかしいですね」としか答えない。
(8)情報以外の助言は無効
- 助言は相手の感情に訴えなければ意味がない。そのためには相手のことが個別にわかっていなければならない。相手の心がわかったときに、警告的な助言ではなくて安心感を与えるような助言、人間の知恵のひとことが言える。
- 聞き手は話し手より偉くはないことを自覚しているべき。それでもついつい人の悩みを聞くと、自分がその人より偉いと感じ、助言をしてしまうことが多いもの。話し手との平等性を確保している聞き手は、尊敬していい人。
(9)教えるより教えてもらう態度で
- 頭では学ばなければならないと思っていても、心がついていかないようなことを人間は学ばない。学びたいか、学びたくないかを決めるのは、頭ではなく当人の心だ、ということを覚えておく。これが聞き上手になるコツの1つ。
(10)聞き上手には上下関係なし
- 人間は聞くことによって相手を知るので、聞けないと相手の考えていることや情報がわからず、こちらの判断だけでものごとを決めていくので、部下はわかってもらった感じが持てない。人の話をよく聞く人が人格者ということになる。
(11)相手の話は相手のこと
- 「相手の話は相手のこと」が、温かい気持ちでできるためには、相手の心に対する理解が必要。家族や友だちなど自分にとって大切な人を失わないためには、常に相手を理解しようと心がけることが第一。
(12)評論家にならない
- 自我関与が低い発言は「評論家的」と言われている。「相手の話は相手のこと」と書いたが、これは相手の話と相手の存在を代替不可能と認めることであって、相手を突き放すことではない。自我関与の低い聞き方ばかりをしていると、相談者から敬遠されることがある。
- 相手の話をよく聞こう、理解しようとする人は、正しいことにのみ目を向けるのではなく、人間の弱い部分、影の部分に対しても理解がある。いわゆる評論家や正しいことばかりを言う識者とは違い、相手の悪の部分や弱い部分、影の部分も認められるということ。
(13)共感とは芝居上手
- 共感とは自分が主体ではないけれども、主体と同じレベルのもの。いいかげんな慰めの言葉は、相手の気持ちに対する共感性が欠如しているから言える言葉。これでは、相手は慰められるどころか、わかってもらえないという気持ちを増大させる。
(14)LISTENせよ、ASKするな
- 尋ねる(ASK)のと聞く(LISTEN)のとの一番大きな差は、「尋ねる」のが質問する人の意図に沿っているのに対して、「聞く」のは話し手の意図に沿っていること。だから尋ねてばかりいると、自分が望んでいる情報ばかりを集める結果となり、相手がその人なりの相手の立場から情報が得られなくなってしまう。当然のことにそこに集められた情報は情報収集者(聞き手)のバイアスが入り、偏りがち。
(15)話し手の波に乗る
- 流れに逆らわない第一は反論しないこと。逆の意見を言わないこと。これを簡単に行うには、「でも」「しかし」「けれど」というような、逆説の接続詞を言わないこと。「デモ」「デモ」とデモ行進するのは、けんかするときだとカウンセラーの卵たちに教えている。
- プロのカウンセラーは、自分に興味のない話をする来談者の場合は、相手の話の内容にも関心はあるが、それよりも、どうして来談者がその話をするのかということのほうに関心がある。
- どうして来談者はそれほどこれに惹かれるのだろうか、をカウンセラーは考えながら、彼の話を聞いていく。話題の内容だけでなく、話し手が語る感情や態度に乗れるように聞ければ、あなたの聞き上手も中級を卒業。
(16)言い訳しない
- 相手の抗議が正当である場合は、こちらの態度を改める絶好の機会。講義は相手の言い分が正当であるほど、こちらには痛くてきついので、ついつい素直に聞けなくなる。このようなときに聞き手が出してしまうのが言い訳。言い訳は自己弁護や自己満足にはなっても、相手の抗議する気持ちの解消には全く役立たない。
- 約束を破ったときは、言い訳ではなく、その10倍も約束を守ることによってしか信頼は回復されない。言い訳などせず、その相手のぐちや抗議をよく聞いて、相手が何によってそれを償ってほしいかを理解し、それを実行する以外に道はない。
(17)説明しない
- 「これだけ説明してもわかっていただけませんか?」というような場合は、相手の心がわかっていない。だから、この場合は、聞き手として失敗であるばかりではなく、話し手としても失格。
(18)したくない話ほど前置きがながい
- カウンセラーは「前置きが長いのは、話しにくい話」とわかっているので、来談者に調子を合わせて前置きの話を聞いている。自発的に来談した方たちは、必ずいつかは本題に入られるもの。本題で話される内容は、本人にとっては乗り越えなければならない課題を含んでいる。もし話し手が前置きの長い話をしだしたら、あなた自身が話しにくかった体験を思い出す。
- 開催するのがいやな会議で「それではこれから会議を始めます」というべきところを「それではこれから会議を終了します」と言い損なったりするのは、無意識の働きによるもの。人の話を聞いて「つじつまが合わない」「いつもと何か調子が違う」というように感じられたら、話し手の無意識が本題に入るのを嫌がっていると考えられる。
- 無意識に抑圧していることは、その人にとってはいやなことなので、それを強引に白日にさらしてしまっては話し手の心が傷ついてしまう。そうなれば、話し手の抵抗が高まり、ますます聞き手を避け、話をしなくなる。誰しも、強引に嫌なことをされると相手が嫌いになるだろう。そうなれば相手に対する信頼感が失せてしまい、相手との人間関係を絶ってしまう。
(19)聞き出そうとしない
- 話し手が話したいことだけをじっくり聞いていくだけ。そうすると来談者とカウンセラーの間に人間関係が生まれ、この人になら自分が誰にも言えなかった秘密を打ち明けられるかもしれないと思って話をしたくなる。秘密は話してしまうと風化する。今まで心の中でもやもやと生存し続けていたことが、風化し、自然に帰っていき、自分もふつうになれる。
- 「理屈が合わない話」は、理屈を論理で攻めては相手は話をやめるだけ。「へえー、それで、それで」とどんどん話をしてもらうと、話し手は自分自身で論理の矛盾に気づき、理屈を補っていく。それでも理屈に合わない話は、話し手は自分の気持ちを聞いてほしいだけ。
(20)秘密の話には羽がある
- 秘密は内容もさることながら、言えないこと自体が重要。内容がオープンになれば、解決の方向が見えるが、同時に破壊の方向も見える。秘密にするような事柄は、その人の変革を迫るが、しかしこれはとても恐ろしいこと。この怖さが秘密を重要事項にし、深い話にしてしまっている。
(21)沈黙と間の効用
- 沈黙や間は会話が途切れているのではない。心の中の会話がずっと続いている。心の会話が切れてしまえば、それこそ会話は成り立たない。ただの時間の無駄遣い。
3.教訓
あぁ、話を聞くってそういうことか、と改めて考えさせられる内容です。
本の帯にも、阿川佐和子さんの推薦文として、「自分が今までどれほど人の話を聞いていなかったかに気がついて、思わず吹き出してしまう」とあり、まさしくその通り、と感じました。
そして、内容の中では、共感することが特に難しいと感じています。同感、同情とも違います。
時には、自分が体験していないこと、自分が関心のない領域のこと、逆に自分のほうが詳しい内容についてのこと、など、様々な相談を受けることがあると思います。その時、第三者的になっても、わかったふりをしても、自分の価値観で話をしても、いきなり答えを教えても、相手の求める支援にはなりません。
相手がなぜその話をしたいのか、そう思い始めたのは何がきっかけか、いつからそういうことを考えているのかなど、背景を確認することが重要です。またそれをどのような表情・身振り・言い回しで話すかも確認し、相手が気にしていることや本当はこうしたいと考えていることを拾い、できれば自問自答し自己解決できる方向に促していく。これが理想に近いと思います。
そうすると、相手からは「話を聞いてもらえた」「方向性が見つかった」と感じてもらえると思います。まぁ、解決までの時間制約もあって、そんなにうまくいく話ばかりではないと思いますが、姿勢としては意識したいと考えています。
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