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1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術 伊藤羊一 著

1.はじめに

これまで、表題が命令形になっていたり、”ヤバイ”、”すごい”という言葉が入っているような本は、個人的には敬遠してきました。

しかし、いくつかの書店で平積みになっているので以前から気になっていて、ブックオフでセール特集の棚に並んでいたので手に取りました。

話し方やプレゼンの仕方のテクニックが書かれた本ではなく、聞き手の立場から見た受け入れやすさ、動きやすさに焦点が当たっています。また、最後の「実践編」では、相手の巻き込み方などサラリーマン検定的に有用な内容にも触れられていて、タイトルほどの威圧感はありませんでした。

2.内容

(0)序章

  • まず1つ気づいてほしいのは、そもそも、「人は、相手の話の80%は聞いていない」ということ。でも、それが当然。どんなにプレゼンがうまくなっても、これらの言うことを100%理解してくれる、なんてありえない。
  • ここで言うプレゼン力とは、人前で発表するスキルでも、話すスキルでもない。人に「動いてもらう」力。そのために必要なのは、「1分で話せるように話を組み立て、伝えよう」ということ。

(1)STEP1:「伝える」ための基本事項

  • 人に何かを伝える際、「そもそも何のために自分はここにいるのか?何のためにプレゼンするのか?」ということを明確に意識しながらできているか?なぜ意識しなければいけないかというと、それは「聞き手を動かすため」。
  • 「何のためにプレゼンをするのか」「聞き手はどんなイメージか」を考えた後、次に考えるべきは「ゴールは何か」。このプレゼンを通じて、「聞き手をどういう状態に持っていくか」「どこをプレゼンのゴールとするのか」を言語化する。
  • すべてのプレゼンは、ゴールを達成するためにある。聞き手のことを考え、聞き手をどういう状態にもっていきたいかを見定めてから、それを実行するために何をすればいいか、何を伝えればいいのかを逆算で考えていく
  • そもそも、「理解してもらう」というゴールがおかしい。伝える側が聞き手に、「理解したうえで、どうしてほしい」のか、君が動くのか私が動くのか、どうすればいいのか、ということを必ず考えなくてはならない。

(2)STEP2:1分で伝える 左脳が理解するロジックを作る

  • 「考える」とは、自分の中にあるデータや自分の外にあるデータを加工しながら、結論を導き出すこと。
  • 「悩む」と「考える」は、明らかに違う。「悩んで」いても結論は出てこない。この「無限ループ」を避けるためにも、機械的に「考える」=結論を出す習慣を作る。そのために自分に問う。黄金の質問は、「だから何?」「本当か?」「ファイナルアンサー?」。
  • プレゼンというのは、自分が伝えたいことを「伝えていく」行為ではなく、「相手の頭の中に、自分が伝えたいことの骨組みや中身を”移植していく”作業。
  • 主張と根拠を言うとき、聞いている人にとって、意味がつながっているとすぐにわかるようにすることが大事。この「主張と根拠の意味がつながっている」のがロジカルということ。
  • 意味が通じるかどうかは、聞き手が決めること。話すあなただけが理解できるのはダメで、聞き手がそう判断できるかどうかが大事。
  • たくさん話したくなるのは、調べたこと、考えたことを全部伝えたい!、頑張った!と思ってほしいという話し手のエゴ。でも、聞き手は、必要最低限の情報しかほしくない
  • プレゼンの場では、笑いはいらない。ビジネスで面白いのはロジック。相手は、あなたのロジックを聞きに来ている。

(3)STEP3:相手を迷子にさせないために「スッキリ・カンタン」でいこう

  • 私たちは、何か熱量を持って伝えようとするとき、ついつい、多くの言葉を使おうとする。ただ、聞き手が集中して聞いてくれていなければ、多くの言葉を使うと逆にノイズとなってしまう。
  • 資料を紙で渡して、1対1や少人数で説明する際にはこの限りではないが、それでも字が多くて読むのが大変な資料を渡すと、相手は資料を読むのに集中してしまうので、必然的にあなたの説明を聞かなくなる。話を聞いてもらうためには、資料の文字は少なく、すっと頭に入るようなものがよい。
  • 大人でも、少し難しい言葉を使うと、すぐに迷子になってしまう。迷子になってしまうと、すぐにチャンネルを変えられてしまう。専門用語以外は、可能な限り中学生でもわかる言葉を使って番組を作り、絶対に迷子にならないようにする。

(4)1分で動いてもらう

  • ピラミッドストラクチャーは、「①結論」→「②根拠」→「③たとえば」の3段で作る。
  • まず主張と根拠のピラミッドを作りロジックで「左脳」を納得させ、次に写真や図や「たとえば」という言葉を使ってイメージを創造させて「右脳」を刺激する。これにより聞き手は話を理解し、よりこちらに思いを向けてくれる。
  • 自分の伝えたいことを、一言のキーワードで表す」。そうすることで、その一言に自分の伝えたい内容を包み込む。
  • 人前で話すときのポイントは4つ。
  1. 視線:しっかりと聞き手を見る
  2. 手振り:多少動きをつける
  3. :「相手と対話するように」声を届ける
  4. 間合い:話の区切りで、普段より3秒ほど長く間をとってみる
  • 優れたビジネスリーダーは、「メタ認知力」が優れている。ビジネスリーダーは人を巻き込んでいく必要がある。その時、自分の都合や思いだけでは周囲がついてこない。自分自身の行動や振る舞い、言葉などを相手に合わせて少しずつ修正していくことで、結果として周囲もフォロワーとしてそのリーダーについていくことになる。
  • 「根回しやアフターフォローをすることはカッコ悪いことだ」と思っているのは仕事の本質から外れている。つまり、あなたはカッコいい・悪いで仕事をしていないか?ということを問いたい。

(5)伝え方のパターンを知っておこう

  • 聞き手は、あなたが望むゴールにいない。その聞き手に変化を促し、動かしていく。それは簡単なことではない。あなたが心の底から強く思うことを、情熱をもって自分の存在をかけて語るからこそ、聞き手は心から動かされ行動に移す
  • 「正しいことを言うだけ」では相手は動かない聞き手が、あなたが設定したゴールまで動いてはじめて、あなたの目的は達成する。つまり「動かしてなんぼ」の世界。成果はそれだけで測られ、それ以外のことは重要ではない。

(6)実践編

  • まず大事なのは、相手の問いが何なのかを認識すること。まずは落ち着いて相手の質問を聞いて、YES/NOで答えればいいか、アイデアを聞かれているか、懸念点を答えればいいのか、といった答え方をとらえる。
  • 会議では、またビジネスパターンのスタンスとしても、「ポジションを取る」ことは大事。誰かが何かのポジションを取らないと、まったく議論は進まない。なんとなくその場の空気が物事がよくない方向に決まってしまうこともある。
  • 前向きな何かを作り出す部分については、上の職階の人は、部下たちの意見を求めている。上司である自分が何か意見を言ったら、すべてそう決まってしまうことこそ怖いことはない。だから、部下をしっかり自分のスタンスを明確にし、上司に応えるべき。
  • 突っ込みたいという相手には、突っ込んでいただく。それでその意見も取り込んでいく。そうすれば「共同作業」になる。つまり「共犯」になるので、否定しづらくなってくる。そういう道をあらかじめ作ってコントロールする。
  • 「伝わらない」「わかってくれない」「相手がきょとんとしている」ということのきっと7割くらいは「声が小さい」というただそれだけの理由ではないか。目の前の人、自分から一番遠い人に、「声」というボールを届けるような意識で話してみる。
  • 1対1で提案なり相談するのは、一発勝負の場というより「対話」しながら「結論を一緒につくれる」機会。だから完璧にプレゼンしようとするのではなく、しっかり対話ができる場を持ち、一緒に結論を作っていくことを目指す。
  • 「うちの上司は、何を言っているかわからない」と匙を投げてしまってはいけない。そんな場合は、上司の言いたいことを整理するのも部下の役目。そのためのやりとりはあなたが主導権を握るとよい。
  • 上司だから言うことを聞く。どうせ自分の意見は聞き入れられない。だから黙って上司の意向を待つ。これではあなたは単なる作業者になる。そうではなく、しっかりと自分の意見を言う。それが間違っていてもいい。これが上司との信頼関係をつくるうえで重要。「配慮はしても、遠慮はするな」ということ。
  • 自分の意見をちゃんと持つことが主観。これを伝えることで対話が始まる。そのうえで、相手の意見と戦うのではなく、上司はどんな意見を持っているか、まぜそう言っているのか、自分の意見とどう異なるのか、どこをどうすると合意できるのか、といったことを考えるのが客観の自分。
  • 営業の仕事は、自分の会社の商品やサービスを売り込むことではない。相手の課題を解決するのが営業の仕事。ここに気づく人は営業の成績が上がるし、かつお客さまの信頼を得ることができる。まず、相手のニーズに応える。結果として信頼関係が生まれる。それが取引に結び付く。

3.教訓

この本の直前に読んでいたのは、「群集心理」でした。

びっくりしたのは、その本から得た「教訓」に書いたことと、かなり似た内容だったことです。

bookreviews.hatenadiary.com

個人的には、1分で話すことにも伝える技術にも焦点が当たっているわけでもないように感じており、もっとソフトなタイトルにしたほうが内容とも語り口ともマッチするように思います。

そこは、読者を振り向かせるように訴求するには仕方ないのかなと感じますが、私と同じようにタイトル名だけで毛嫌いして読んでいない人がいるかもしれません。

そこを横に置いて一度手に取れば、相手に単に理解してもらうだけでなく、相手に動いてもらうことがゴールであることがよくわかる良本でした。

www.yomiuri.co.jp