管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

現役課長が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

ロジャーズ クライエント中心療法 カウンセリングの核心を学ぶ

1.はじめに

カール・ロジャーズ氏は、現代カウンセリングの礎を築いた人物とも言われます。

ja.wikipedia.org

そして、そのロジャーズ氏との直接議論をされた佐治守夫さんが編者となっていて、カウンセリング理論を学ぶ一助となると紹介され、購入しました。

以下では、全体で8章あるうちの、第2章「非指示的療法」、第3章「クライエント中心療法」に焦点を絞り、印象的だった部分を引用していきます。

2.内容

(1)非指示的療法

  • セラピストの適性
  1. 客観性:過度に陥らない共感的同一視の能力、純粋に受容的で関心のある態度、道徳的判断を下すこともなく、動揺したり恐れたりすることもない、深い理解を含んだ態度
  2. セラピスト自身の自己理解:自分自身、自己の顕著な情動様式、自分自身の限界と短所についての健全な理解
  3. 心理学的知識
  • ある程度カウンセラーが巻き込まれることを認めるが、クライエントの要求に敏感であること、そして自分というものの同一性を保てるよう十分にコントロールできるようにすること。
  • クライエント自身の成長・発展を目指すために、カウンセラーはその時間はクライエントの時間であるということを肝に銘じ、自分自身の先入観や欲望を押し付けるようなことはすべきではない。
  • 指示的アプローチの立場では、いかにカウンセラーがその作業をうまくやってのけたとしても、そこから得られる結果は、クライエントをカウンセラーに依存させているものだけということ、同時に、その方法ではクライエントは将来生じて来るかもしれない問題に対して相変わらず自分を信頼してことに当たることができないだろう、ということが予測される。
  • ①カウンセラーの会話だけを読んで、面接の要点、一般的な傾向をとらえることができれば、この面接は明らかに指示的。②クライエントの項目だけを読んで、面接の全体像を適切にとらえることができれば、それは明らかに非指示的。③いずれか一方だけを読んで全体像がほとんど得られないならば、どっちつかず。
  • カウンセラーが習得するうえで最も難しい技術は、クライエントが語る知的な内容にだけでなく、表現されている感情に注意を向けて応答する技術。面接を方向付けないような中立的な応答。クライエントが明らかに感じているものに直接応じること。クライエントが表現している態度を単純に再構成して感情を明確化し、自分が理解されているということをクライエントが実感するようにする。
  • カウンセラーがクライエントの陳述に対して知的な基盤で応答している限り、クライエントの真の考えや言葉ではなく、カウンセラーの考えや言葉で問題を決定し解決することになる。一方、感情に対して注意を払いその要素に応答するなら、クライエントは深く理解されていると感じて満足を覚え、さらに進んだ気持ちを表現するようになり、効果的・直接的に問題の情動的な根幹へ導いていく
  • クライエントが自ら語る言葉の中にほのめかされているか、もしくはカウンセラーが、クライエントが持っていると判断した態度、しかもクライエントが未だ抑圧している態度を、カウンセラーが言葉で明確に表現してしまうことはクライエントにとって極めて強力な脅威になるように思われ、憤まんや抵抗を生じ、場合によってはカウンセリングを破壊し去るかもしれない。カウンセラーはあまり急ぎすることなく、表明されるがままに情動的態度に応答していくように留意
  • 「いったいどうしたらいいのでしょうか」と解答を要請するクライエントは、解答を望んでいるのではない。クライエントは、自分の能力と欲求に応じて自分で解答を見出す場合に満足を覚える
  • 洞察は、個人が十分な心理的力の強さを発達させて新しい知覚に耐えられるようになってはじめて、少しずつ生起する。この洞察が純粋なものであるならば、そに基づいて新しい方向で何かを実行するという動きが出てくる。この洞察が発達すると、自分のうちにある抑圧された衝動をも認知できるようになる
  • たしかにカウンセラーは、クライエントに1,2回会うと、その問題を指摘したいという誘惑にかられる。しかし、この解釈が的確であればあるほど、かえってクライエントに拒否され、以後クライエントを防衛的にさせてしまう。あくまでも、洞察はクライエントによって達成される過程。

(2)クライエント中心療法

  • ロジャーズは、まず第一に重要なこととして、「個人の価値と意義に対してカウンセラーによって保持されている態度」を取り上げる。一人ひとりの人間の持つ重み、そのかけがえのなさをカウンセラーが十分に認識しているかどうか。そして、カウンセラーが一人ひとりの人間を価値ある存在として認めている場合には、その認識が行動のレベルで明らかかどうか、つまりセラピー場面でのクライエントに対するカウンセラーの一つひとつの応答・態度・語調等々の中に、そうしたカウンセラーの価値観が認められるかどうかを問う。
  • 「非指示的」という「技法」を、「技法」という技術的なものとしてではなくて、心からのクライエントに対する態度として現存させることができるかどうかが、「個人の価値や意義」に対するカウンセラーの価値観・人間観を図る「ものさし」にもなるし、逆にクライエントに対する尊敬の念無しでは、クライエント中心療法を「技術的」に学ぶことはできない。
  • 第二に重要な点は、クライエントの自己指示(self-direction)の能力をどこまで信頼できるかという点。その個人の人生を決めるのは、その人自身であることをどこまで深くカウンセラーが感じ取っているのか。また、逆に、個人の生き方の誤りをカウンセラーが導くのは当然であると思っているのか。この点の差異が、クライエント中心療法を学習する際のポイント。
  • 「非指示的」という公式化は、カウンセラーの側の受動性とは同じでない。「非指示的」でありながら、クライエントに対する積極的な関心を伝えること、この両者を矛盾なく成し遂げるカウンセラーの役割についての公式化が、感情移入的なクライエント理解に実現されていく。
  • 「感情移入的な理解」の内容は、「カウンセラーが、可能な限りにおいてクライエントの内部的照合枠を身につけること、クライエントが世界を眺めているままにその世界を知覚すること、クライエントが自ら眺めているままにクライエント自身を知覚すること、そのようにしている間は外部的照合枠に基づく一切の近くを排除しておくこと、そして、この感情を移入して理解したことをコミュニケートすること」を指している。
  • クライエント中心療法においては、セラピストの目的は、クライエントが自分の不適応の心因的な様相についての診断をなし、その診断を経験し受容することができるような諸条件を準備すること。

3.教訓

実際の1on1や、マネジメント研修でのロールプレイなどで面談をしても、振り返ってみると事実に関心が向いた質問をしがちで、なかなか感情に寄り添うことがうまくできません。

また、これまでの面談では、自身の世界観に基づき解決志向になって相手を導いていく形が多くなってしまっていたと感じています。

そうではなく、相手と同じ世界を見るようにして相談相手自らがよりよい選択を取れるようにサポートすることを意識したいと思います。

相談相手が「いったい何を経験しているだろう」「それに対してどういう想いを持っているんだろう」と興味を持ち続け、わかった、と思ってしまわないよう、常に相談相手に関心を向けることを意識したいと考えています。