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否定しない習慣 林健太郎 著

1.はじめに

まず最初に、本書でいう「否定」とは何かというと、単に"No"や"But"だけを示すものではありません。例えば、以下も否定に含まれます。

  • 相手の言葉や考え、行動の結果を認めない
  • 相手の話や意見を打ち消す、聞かない、奪って違う話をする
  • 相手のミス・失敗を責める
  • 悩みの相談などに対して真剣に向き合わない

相手の心理面から見ると、これらは「否定された」と無意識に感じる言動です。

何を言ったか、それが事実かどうかというより、どう受け取られるか、に焦点を当てることが重要です。

以下では、印象的だった部分を引用していきます。

2.内容

(1)気づかないうちに否定する人の心理

  • 実際に将来の夢を認めてもらって、いざ「どうしたらなれるか、一緒に考えよう」と言われると、実は、何一つ具体的に考えていなかった自分に気がついた。頭から否定されるとカチンとくるのに、いざ賛成されると何をしていいかを具体的に考えていなかった自分に気がつく。相手に現実を気づかせるには、こういうアプローチもアリなのだな、ということを知った。
  • 相手が話している途中でさえぎって話し出してしまう、相手が意見を述べたときに「それもいいけどさ」と自分の意見を言ってしまう、相手の話を聞くとき目を合わせないで別のことをしながら聞いている。これだって立派な「否定」。
  • 同じことを言っていても、別の角度から再解釈して言葉にする(リフレーミング)ことで、相手に与える印象を変えることができる。否定のキャッチボールはいっさいしないで、「もっといい方法でやらせてもらっていいですか?」と提案したら、すべてが丸く収まったというわけ。

(2)「否定しないマインド」のつくり方

  • 否定しないマインドをつくるための基本的な考え方は3つある
  1. 「事実だから否定してもいい」という思考はしない
  2. 「自分は正しい」という思考はしない
  3. 「過剰な期待」はしない
  • 「否定しているか、していないか」でも「あなたの言っていることが事実かどうか」でもなく、「言われた相手が否定されたと受け取るかどうか」ということ。言われた相手がどう受け取るのかを創造することが重要
  • 「相手が失敗したのは事実だから何を言ってもいい」と考えるのではなく、「事実であっても言われた相手がどう思うか」を考える。
  • 大事なのは、「意見の違い」=「否定」ではない、と認識すること。意見が違うことは当たり前にあること。やるべきことは、意見の違いを理解して、目的を共有すること。「共有する目的を見つけること」といったほうがいいかもしれない。
  • こちらの期待値からすれば圧倒的に低かったとしても、「その人なりに精一杯やっている」という事実は認めてあげないといけないのかもしれない。
  • よくよく考えれば、自分のほうが「そのこと」について、多少慣れているだけで、決して自分が相手より偉いわけでも、優れているわけでもない。次はうまくできるように「お願い(依頼)の仕方」を変える
  • 上からの立場で相手を感情で否定するのではなく、冷静に「できないのにはわけがあるよね」と考えることで、未来を変える建設的な発想につながるようになる。

(3)否定しない技術

  • 「否定しない」ための大事な技術に、「言葉を返す前にブレーキを踏む」がある。会話で「ブレーキを踏む」とは、まずは「黙りましょう」ということ
  • 黙って相手の言葉に耳を傾けることができたら、大原則として「相手が話し終わるまで黙ったまま」でいよう。話をさえぎった時点で、それはもう、立派な否定だと思う。相手が言いたいことを話し終わったなと思ったら、そこから、最低約2秒は沈黙を続ける。
  • 「何かいいことを言わなければ・・」なんて考えることによって、「そうは言ってもな」と「アドバイス」という名の「否定の言葉」が口から出てしまう。そこで「相手の言葉をそのままナレーションする」という「復唱」だけでも十分に会話は成立するし、相手は「そうなんですよ。それに・・」と、より詳しい話や、かみ砕いた説明を続けてくれる。
  • 「否定せざるを得ないものは否定する」「間違っているものは間違っている」というのは大事なことだし、正しいこと。ただ、ここでのポイントは「それをどう伝えるか」にある。その答えとしては、相手が言ったことそのものだけを「承認する」ことから始める。ここで大切な考え方は、相手が言った内容に同意する必要はないということ。承認するのは「相手がそう言っている」という事実だけ
  • 「否定しない」=「言いなりになる」ではない。相手の意見を否定しないうえで、ほかの候補を聞いてみたり、自分から「例えばこんな選択肢はどうかな?」と提案したりすればいい。「別のボールはある?」と相手の手持ちを確認すると、「こんなボールもあります」と、相手が自分で別のボールを出してくれる。
  • 確実な事実情報でない限り、どんなことでも「様々な解釈がある」と考える思考が大事。勝手に白黒つけるような、事実認定をしてはいけないということ。「かもしれない」をつけると見えてくる世界がある。
  • 話をしているとき、つい相手を否定してしまったらどうするか。リカバリーすればよい。「否定しているように聞こえたらごめんね」「今、否定しているように聞こえたよね?もう一度やり直していい?」このように「否定するつもりがなかったこと」を伝える。そして本当に伝えたかったことを言う。

(4)「否定しない自分」をつくる習慣

  • 「自分が否定してしまったシーン」を客観的な事実だけに集中して、丁寧に振り返ってみることからスタートしよう。そうすると、自分の否定という行為の中に、「願い」や「意図」があることが徐々に見えてくるはず。
  • 相手と会話をしているとき、相手にとって、「あなたは必要以上には必要とされていない」と認識する。あなたはそこにいるだけで、すでに役割をほぼ果たしている。あなたが能動的に何かをすることは求められていないのだと知ろう。あなただって、誰かに何かを話すとき、相手に求めているのは、「無条件に黙って自分の話を聞いてくれること」のはず

(5)「いい人間関係」をつくる会話の技術

  • 相手の話を引き出す「合いの手」の基本となるのは、次の5つ。極端に言えば、この5つを手元にメモしておいて、相手の話に合わせて順番に使うだけで、ほかに何も言わなくても会話が成立する。相手は、「あー、たくさん話せて満足」と満足感を覚えてくれる。
  1. そうなんですね
  2. もう少し詳しく
  3. ほかには?
  4. というと?
  5. だとしたら?
  • ずっと相手の目を見るのはNG。ズバリ、「話し始め」「相手の話の句点のタイミング」「話しおわり」で相手の目を見る。それで十分。こうすれば、相手は「ずっと見られている」というプレッシャーを感じないし、「全然目を合わせてくれない」とも思わない。
  • 相手がイエスと言うことがわかっていても、端折らず、口頭で許可を取ってから提案することが大切。さらに大事なことは、あなたの提案を受け入れるかどうかの選択肢は相手にあるということ。

3.教訓

本書を読むと、確かに、無意識に否定的な表現・言動を使ってきたな、ということが実感できます。

相手が話し終わってもいないのに自分の意見をかぶせてしまう、忙しいときは自分の仕事をしながら話を聞いてしまう、そういったことは誰も経験があることです。

また、自分で意識をしてみると、「でも」とか「そうは言っても」という前置きをしてから話し始めることが結構多いことに気づきました。これは、周囲の人もものすごく使っていることに気づくと思います。

ただし、明らかな間違いであれば否定しないといけなくて、それが言い方ひとつで否定として捉われない「リフレーミング」は、会得したいスキルの1つです。

相手に自分の話を静かに聞いてほしいと思うように、自分が相手の話をしっかり聞く。それを意識することが否定しないことの始まりかなと思います。