管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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FACTFULNESS 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 ハンス・ロスリングほか著

1.はじめに

言わずと知れた、ミリオンセラー本です。

いつかは読みたいと思っていましたが、あまりの売れ方に少しアンチに傾いていました。

それでも、ここまで売れているには理由があると思い、ようやく手に取りました。

まず冒頭に、13個の3択クイズが用意されています。私の正解数は3問で、本書にあるように、サルが無作為に選ぶよりも低い正答率です。(ちなみに娘は4問、嫁さんは2問)

以下に1例を出します。

Q.世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどれくらいいるでしょう?

A.20%  B.50%  C.80%

正解は、本を買って確認いただければと思いますが、どれだけ自分の頭の中が古く、ドラマチックなイメージで占有され、事実を知らないかを認識できる良本です。

以下で、10個の思い込みの中から、印象的な部分を引用します。

2.内容

(1)分断本能:「世界は分断されている」という思い込み

  • 「極端な数字の比較」に注意しよう。人や国のグループには必ず、最上位層と最下位層が存在する。2つの差が残酷なほど不公平なときもある。しかし多くの場合、大半の人や国はその中間の、上でも下でもないところにいる
  • 「上からの景色」であることを思い出そう。高いところから低いところを正確に見るのは難しい。どれも同じくらい低く見えるけれど、実際は違う

(2)ネガティブ本能:「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

  • 暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目も厳しくなった。昔に比べたら大きな進歩だ。しかし監視の目が厳しくなったことで、悪いニュースがより目につくようになり、皮肉なことに「世界は全然進歩していない」と思う人が増えてしまった。
  • 思い出や歴史は美化されやすい。みんな1年前にも、5年前にも、50年前にも、いま以上に悪い出来事が起きたことを忘れてしまう。「世界はどんどん悪くなっている」と考えれば不安になり、希望も失いがちになる。でも、それは思い込みに過ぎない。

(3)直線本能:「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み

  • 数字がまっすぐ上昇しているように見えても、そのグラフは直線なのか、S字カーブなのか、こぶの形をしているのか、倍増のグラフなのかはわからない。2つの点を線で結ぼうとすると、かならず直線になる。しかし、点が3つ以上あれば、「1,2,3」と増える直線なのか、「1,2,4」と増える倍増なのかを知ることができる。

(4)恐怖本能:危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み

  • 地震・戦争・難民・病気・火事・サメによる被害・テロなどは、関心フィルターを通り抜けやすい。めったに起きないことのほうが、頻繁に起きることよりもニュースになりやすいからだ。こうしてわたしたちの頭の中は、めったに起きないことの情報で埋め尽くされていく。注意しないと、実際にはめったに起きないことが、世界ではしょっちゅう起きていると錯覚してしまう。
  • 子ども向けワクチンや、放射線被ばくや、化学物質について、事実に基づいた理解を広めるのは、いまだにとても難しい。多くの人は、よくわからないものを疑い、反射的に怖がってしまう。データを見せても、なかなか信じてもらえない。
  • 恐怖本能は、正しい使い方をすれば役立つこともある。しかし、世界を理解するにはまったく役に立たない。恐ろしいが、起きる可能性が低いことに注目しすぎると、本当に危険なことを見逃してしまう。「恐怖」と「危険」はまったく違う。恐ろしいと思うことは、リスクがあるように「見える」だけだ。一方、危険なことに確実にリスクがある。
  • リスクは、「危険度」と「頻度」、言い換えると「質」と「量」の掛け算で決まる。リスク=危険度×頻度であり、「恐ろしさ」はリスクとは関係ない

(5)過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み

  • 「人の命が懸かっているときに、時間や労力の優先順位にどうのこうの言うんじゃない。お前はなんて無慈悲なやつなんだ」と思うも多いだろう。しかし、使える時間や労力は限られている。だからこそ頭を使わないといけない。そして限られた時間や労力で、やれるだけのことできる人が最も慈悲深い人だと思う。
  • 何かの重大さを勘違いしないために最も大切なのは、ひとつの数字だけに注目しないこと。もし数字をひとつだけ見せられたら、必ず「それと比較できるような、ほかの数字はないんですか?」と尋ねよう。ある程度ケタの数が増えると、ほかの数字と比較しない限り、どんな数でも大きく、重大に見えてくる。
  • 人口は国によって千差万別なのだから、国全体の二酸化炭素排出量を比べるのは不毛だ。もしそんな論理がまかり通るのであれば、人口500万人しかないノルウェーは、国民ひとりがどれだけCO2を排出しても、多めに見てもらえることになる。つまり、CO2排出量という大きな数字は、人口で割ることによって、比較可能な意味のある数字になる
  • ひとつしかにあ数字をニュースで見かけたときは、必ずこう問いかけてほしい。できるだけ、量ではなく割合を計算しよう。その後で、数字が重要かどうか判断すればいい
  1. この数字は、どの数字と比べるべきか?
  2. この数字は、1年前や10年間と比べたらどうなっているか?
  3. この数字は、似たような国や地域のものと比べたらどうなるか?
  4. この数字は、どの数字で割るべきか?
  5. この数字は、ひとりあたりだとどうなるのか?

(6)パターン化本能:「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み

  • 国は違っても所得の同じ人のあいだには暮らしぶりに驚くほどの共通点があることがわかるし、国は同じでも所得が違えば暮らしぶりが全く違うこともわかる。人々の暮らしぶりに一番おおきな影響を与えている要因は、宗教でも文化でも国でもなく、収入だということは一目瞭然
  • ある集団の過半数になんらかの特徴があると言われれば、その中のほとんどの人に何かしらの共通点があるように聞こえてしまう。だが、「過半数」とは半分より多いという意味でしかない。51%かもしれなし、99%かもしれない。
  • とんでもないしくじりをしないためには、あなたの経験が「普通」ではないかもしれないことを肝に銘じておいたほうがいい。くれぐれも、レベル4の経験が世界のほかの場所に当てはまると思わないように。特に、自分の経験をもとに、ほかの人たちをアホだと決めつけないでほしい

(7)宿命本能:「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

  • 宿命本能を抑えるためには、ゆっくりとした変化でも、変わっていないわけではないことを肝に銘じるといい。1年間の変化率に惑わされてはいけない。たとえ1%だとしても、前に進んでいることには変わりない。
  • 知識をアップデートしよう。賞味期限がすぐに切れる知識もある。テクノロジー、国、社会、文化、宗教は刻々と変わり続けている。

(8)単純化本能:「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

  • 病院があっても妊婦がそこにたどり着かなければ何の役にも立たない。救急車もなく、救急車が通れる道路もなければ意味がない。それと同じで、いい教育に必要なのは、教科書をたくさん与えることでも教師を増やすことでもない。学びにいちばん大きく影響するのは電気だ。電気があれば、日が暮れたあとに宿題ができる。
  • やたらめったらとトンカチを振り回すのはやめよう。何かひとつの道具が器用に使える人は、それを何度でも使いたくなるものだ。でも、ひとつの道具がすべてに使えるわけではない。あなたのやり方がトンカチだとしたら、ねじ回しやレンチや巻き尺を持った人を探し、違う分野の人たちの意見に心を開いてほしい。

(9)犯人捜し本能:「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み

  • 世界の深刻な問題を理解するためには、問題を引き起こすシステムを見直さないといけない。犯人捜しをしている場合ではない。もし本当に世界を変えたいのなら、犯人捜し本能は役に立たない。
  • 便利なものをすべて手放して、ジーンズやシーツを手洗いする覚悟が、あなたにはあるだろうか?あなたにそれができないのなら、どうして彼らに不便でもがまんしろなんて言えるのだろう?犯人を探し出して責任を押し付けても仕方がない地球温暖化のリスクから地球を守るのに必要なのは、現実的な計画だ。
  • 犯人ではなく原因を探そう。物事がうまく行かないときに、責めるべき人やグループを捜してはいけない。誰かがわざと仕掛けなくても、悪いことは起きる。その状況を生み出した、複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐべきだ。

(10)焦り本能:「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

  • データそのものの信頼性と、データを計測し発表する人たちの信頼性を守ることがとても大切。わたしたちはデータを使って真実を語らなければならない。たとえ善意からだとしても、拙速に行動を呼びかけてはいけない
  • 「いましかない」という焦りはストレスの元になったり、逆に無関心につながってしまう。「なんでもいいからとにかく変えなくては。分析は後回し。行動あるのみ」と感じたり、逆に「何をやってもダメ。自分にできることはない。あきらめよう」という気持ちになる。どちらの場合も、考えることをやめ、本能に負け、愚かな判断をしてしまうことになる。
  • 小さな歩みを重ね、計測と評価を繰り返しながら進んでいくしかない。過激な行動に出てはいけない。どんな社会貢献に携わっていても、すべての活動家はこのリスクを肝に銘じておいたほうがいい。リスクに関してオオカミ少年になってはいけない

(11)ファクトフルネスを実践しよう

  • 何よりも謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。
  • 謙虚であるということは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくこと。自分の知識が限られていることを認めること。堂々と「知りません」と言えること。新しい事実を発見したら、喜んで意見を変えられること。謙虚になると、心が楽になる。何もかも知っていなくちゃいけないというプレッシャーがなくなるし、いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい
  • 好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し、受け入れるということ。自分の考えに合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めること。答えを間違っていても恥とは思わず、間違いをきっかけに興味と持つこと。好奇心を持つと心がワクワクする。好奇心があれば、いつも何か面白いことを発見し続けられる
  • いくら良心的な報道機関であっても、中立性を保ってドラマチックでない世界の姿を伝えることは難しいだろう。そんな報道は、正しくても退屈すぎる。メディアが退屈な方向に行くとは思えない。ファクトフルネスの視点でニュースを受け止められるかどうかは、わたしたち消費者次第だ。世界を理解するのにニュースは役に立たないと気づくかどうかは、わたしたちにかかっている。

3.教訓

改めて書くまでもありませんが、自分の意見や考えを持つことは、非常に重要です。

仕事においては、その考えや理論を元に仮説を立て、それが正しいのかを検証することになりますが、世界でさかんに報道されている題材となると、もの珍しい極端な事例に脳内が専有されてしまい、実際の姿とかけ離れたイメージが出来上がってしまいます。

同じことが、昔の経験にも言えると思います。

「昔の自分たちのやり方はこうだった」というイメージが強く残っていると、当時の記憶が美化されてしまい、過去からの改善の積み重ねによって今では当時と全然違う業務フローになっているのに、「常識的にはこのやり方だよね」とか「昔の方がよかった」と、ついつい言ってしまうことがあります。

すると、「あの人はわかっていない」と直近の現場を知る人の心の中で思われてしまいます。

そうならないために、今ここで何が起こっているのかの現実を把握することと、常に新たな情報を意識的に取り込むことをしっかり意識していきたいと思います。