1.はじめに
著者の本多正識氏の話は、最近ではダイヤモンド・オンラインにも連載されていて、そこで本書に興味を持ったことがきっかけで購入しました。
本書には48のレッスンに加え、巻末に吉本の塾生に向けた「NSC心得(本多私案)」も収録され、そちらも非常に参考になります。ちなみにNew Star Creationの頭文字です。
以下では48全部ではなく、そのうち印象に残った部分だけ引用していきます。
2.内容
(1)殻を破るための「頭を柔らかくする」レッスン
- 頭の回転の速さはほとんどの場合、情報量に比例する。なぜなら、どんなに頭の回転が速くても頭の引き出しに情報が入っていなければ何も出てこないから。普段、自分には関わりのないジャンルの情報が、自分の本業や関心ごとに好影響を与えることはたくさんある。「思考のタネ」が、興味のないジャンルにたくさん眠っている。
- オリジナルになるために経験を積む行為が「真似」だと考えている。矛盾していると思うかもしれないが、むしろ、真似をした数で、オリジナルになれるかどうかが決まると言っても過言ではない。
- これまでの経験に誇りを持つのは非常に大事なことだとしても、それが余計なプライドに変わってしまい「自分はこれでいく」「このやり方は自分に合わない」と決めてしまうのは危険。真似してみて合わなければ、やめればいいだけの話。
- 「どの時間に取り組むか」。一見当たり前のことに思えるが、実はできていない人が多い。大事なのは「締切」とは別物ということ。締切は与えられるものだが、どの時間に取り組むのかは自分で決めるもの。ざっくり考える人の仕事はその分、質も粗くなる。「今日中」ではなんとなしくしか人は動けない。
- 言葉に詰まってしまう人の多くは、1回で正解を出そうとしてしまいがち。大事なことは、すぐに答えを出すことではなく、会話を続けること。
(2)状況を素早く理解するための「分析する」レッスン
- 頭の中にあるイメージを言葉にすると、具体的に考えることができる。人は自分で思っているよりも抽象的にしか物事を考えることができない。自分の考えていることを相手に正確に伝えるためには「具体的なイメージ」と「正確に伝える表現力」の2つが重要。この2つの条件を同時に満たす方法が「口に出して(言葉にして)考える」こと。
- 口に出すことのメリットは、「自分の矛盾に気がつける」こと。言葉にすることで、それまでなんとなく考えていたことも口に出したときから言葉として頭の外に出てくるので、「言語化」処理がなされ、矛盾や違和感に気づくことができる。
- もう少し自らのことを評価してもいい。自分に厳しすぎるとかえって自らの可能性を狭めてしまうことがある。それだと結果として、うぬぼれて自分を見失うことと同じ。
- 頭の回転を速くすることの中には、「タイミングを読む力」も含まれている。「ゼロから考える速さ」だけでなく「すでに準備していたことを素早く表現する速さ」も含まれる。
- 自分にとって馴染みがあるジャンルや仕事でも「できること」と「できないこと」は意外とはっきりわかれており、どこまでが自分の守備範囲か正確に知っておく必要がある。状況を読みながら、常に「自分が話せそうな内容化」「どんなことなら貢献できるか」など頭を動かしながらチャンスを見極めるようにする。
- 大事なことはアドバイスを聞いたあとの自分のアクションを決めること。聞く→できることを考える→実行のハードルを検討する→気になることは質問する→試せそうなときを考える。
(3)自分の必殺パターンを見つけるための「言い換える」レッスン
- お笑い芸人は「自分に合った答えの出し方」をそれぞれ持っており、パターンに合わせて常に論理的に答えを出している。何もないところからなんとか頭を捻って答えを出しているわけではない。行き当たりばったりの発想方法は「再現」することができず、たまたまで終わってしまい仕事が続かない。つまり、「発想力=ゼロから考えること」ではなく、「発想力=論理的に考えること」。
- ヤバイのような便利な言葉は非常にキャッチーだから、つい使いたくなる気持ちもわかるが要注意。自分が思っているニュアンスが相手に伝わっていないのであれば、まったく意味がないので、正しい表現を考える必要がある。当然だが、頭の回転の速さには、状況に合わせて言葉を選ぶ力が必要になる。
- 第二印象で勝負するためのコツは、第一印象を意識することをやめるだけ。人間誰でも、相手に自分のことをよく思ってもらおうとしてしまいがち、だが、それが自然なものでなければいみがない。第一印象で無理をしなければ、第二印象も自然と良くなっていく。
- 引き出しになり得る可能性が一番高いのは経験。誰もがたくさんの引き出しを持っている。違いがあるとすれば、その経験をただの「思い出」としてストックしているか、自分の引き出しとしていつでも取り出せるようにしているか。
(4)端的に情報を伝えるための「言葉を操る」レッスン
- 頭の中で生成されたものが、言葉というプリンタを通して人に伝わってはじめてアウトプットしたことになる。だから、「思いついたこと・考えていること」を「なんとなく」で終わらせないために正確に言葉にして発信することにこだわる。
- どんなに能力が高くても、状況に合った能力の使い方ができなければ宝の持ち腐れ。大事なのは、まるで鳥のように「全体の状況」を観察すること。四隅を意識できれば、それだけで満遍なく会場内を見渡すことができる。定期的に見る場所を決めておくことで、程よく冷静さを保つことができる。
- 「準備」には「専門性を高める準備」と「平均値を上げる準備」の2種類ある。頭の回転の速さに直結するという意味では「平均値を上げる準備」の方が圧倒的に大切。
- 不測の事態が発生しても、そのままネタとして利用し、瞬時に「つかみ」に変えてしまう。受け入れたうえで一言添える。会議での挨拶や披露宴のスピーチなどにも応用できる。
(5)1秒で答えをつくるための「洗練させる」レッスン
- 伝えることはそのままに、言葉を短くするというのは明確な技術。必要でない言葉は削れるだけ削る。
- 内容を削る
- 伝える内容は聞き手にとって重要な順に3つに厳選する
- 言葉を削る
- 「AはBです」の構文を基本に考えてみる
- 大げさに反応しすぎると周りが引いてしまう。「頭の回転が速い」と聞くと、その発言内容が重要なように思ってしまうが、状況に合ったテンションで相手に言葉を伝えられるかも大事。これはどのトーンで伝えるのがいいのか瞬時に判断する。
- 1秒で答えをつくれるようにするもの大事だが、それは同時に1秒で相手に理解してもらうことも意味する。そのためには「共感」が大きな要素になる。「共通認識」をどれだけ刺激できるかで、どれだけ「共感」が得られるかも決まってくる。
- どんなことにも言えることだが、「固執」は一歩間違えれば、停滞を意味する。誰だって生きていればたくさん気に入らないことがある。だが、そういった嫌いなものを排除していくと、いつしか自分の周りには自分の想像の範囲内のものしか残らなくなってしまう。だから、嫌いなものでも苦手な人でも、まずは肯定して、ほんの少しでもいいので味見してみる。
- 初対面や関係の浅い人のほとんどが自分に興味を持ってくれない。そんなときに、相手にわかってもらおうという意識では少し物足りない。相手がすごい人であればあるほど、自分はその他大勢のうちの1人だから、「絶対に自分のことをわからせる」くらいの気概が必要。
3.教訓
誰しも天性で1秒で答えを思いつくものではありません。また、仮に思いついたとしてすぐに口に出せるわけでもありません。
努力を重ね、いつでもリアクションできる準備を普段からしておくことで、その場にあった切り返しができることが、「1秒で答えをつくる」ことだと理解しました。
そのためには、単にインプットしてしまっておくだけではダメで、真似てみる、口に出す、その場の状況に合わせる、その場の反応を見る、ということを繰り返して、無理せずにありのままが出せるようになる、という「守破離」のような感覚かと思います。
自身でも、それほど大勢でないにしても人前で話す機会があります。その際、話し終わってみたら、自分がどこを見て話していたんだろう、誰がどんな反応をしてくれたんだろう、ということがわからないことが多いです。最近ではリモート参加型のことも多く、顔出しにしたとして、スマホに映る相手の表情を読み取るのには限界もあります。
一方的に話すのではなく、しっかり場の状況を見るために、四隅を見る・定期的に見る場所を決めておくことは意識したいと思います。