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反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 草薙龍瞬 著

1.はじめに

タイトルは「反応をしない」となっていますが、単に応答しない、ということではなく、意味するところは、いわゆる「脊髄反射しない」=「考えることなく感情だけで反応しない」ということだと理解しています。

すなわち、頭で考えて正しく理解し、自分の軸でとらえ、無駄に判断・比較やマイナスの反応をしないことが重要だという内容です。

2.内容

(1)反応する前に「まず、理解する」

  • 「ある」ものは「ある」と、まず理解すること。わたしには満たされなさ・未解決の悩みがある、と理解すること。解決への希望はそこから始まる。
  • 「反応」こそが悩みの正体。心の反応こそが、人生のトラブル・悩みを引き起こしている。となると、私たちが日々心掛けなければいけないことは、「ムダな反応をしない」こと
  • 「心は求め続けるもの」、それゆえに渇き続けるものと理解する。すると、「このままではいけない」「何かが足りない」という得体のしれない欠落感や焦り、心の渇きが収まって、「人生はそういうもの」と大きな肯定が可能になる。
  • 心の状態を3種類に分けて理解する。
  1. 貪欲:過剰な欲求に駆られている状態。求めすぎ、期待しすぎ。人間関係をめぐる不満は、たいていは「求めすぎる心」から来ている。貪欲に支配されると、自分自身が苦しいし、関わる相手も必ず不幸にしてしまう。
  2. 怒り:不満・不快を感じている状態。放っておくと怒りは徐々に蓄積される。怒りっぽさや気難しい性格となって、年を取るほどに外に現れてくる。「怒りがある」と理解して怒りを洗い流していけば、心はすっきりと軽くなっていく。
  3. 妄想:想像したり、考えたり、思い出したりと、アタマの中でぼんやりと何かを感じている状態。さっきまで脳裏に浮かんでいた映像は存在しない。「さっき見ていたものは妄想である」「今見ているのは視覚(光)である」とはっきりと意識する。
  • 「正しい理解」に「反応」はない。ただ見ているだけ。動揺しない、何も考えない、じっと見ているだけ。そういう徹底したクリアな心で、自分を、相手を、世界を理解することを「正しい理解」と表現している。

(2)良し悪しを「判断」しない

  • 判断する心には、わかった気になる気持ちよさと、自分は正しいと思える(承認欲を満たせる)快楽がある。判断がただ気持ちよいだけなら問題ないのかもしれない。しかし、その思いに執着しすぎると、自分か誰かが激しく苦しめられることになる。
  • 苦しんでいるのが、自分であれ相手であれ、誰かが苦しんでいるなら、何かが間違っている。「このままではいけない」と目を醒ます。これらの「執着」を手放さなければ、自分も相手も苦しみ続けてしまう
  • 自分が正しいと執着してしまったら、その時点で”漫(自分の価値にこだわる心)”が生まれる。「正しい理解」とは、「正しいと判断しない」理解。そんなことより、「真実であり、有益である」ことのほうが大事だと考える
  • 「人は人、自分は自分」という明確な境界性を引く。この考え方ほど大事なことはない。自分の心は、自分で選ぶこと、決めること、常に自由に、独立して考える。
  • 世の中には、たくさんの心優しい人、良心的な人、親切な人がいるもの。人を否定するという発想すらなく、毎日を一生懸命生きている人が大勢いる。執着から一歩離れて外の世界を見渡してみれば、その「否定的判断は」もう存在しない
  • どのような状態であっても、自分を否定するという判断は手放すこと。むしろ、今何をなすべきか、何ができるかという”この瞬間”だけを考える。「過去を引きずる(過去を理由に今を否定する)」というのが、それ自体、心の煩悩・邪念・雑念。落ち込まない、凹まない、自分を責めない、振り返らない、悲観しない。
  • 「自分はまだまだ」と感じている人はたくさんいるが、その「まだまだ」こそは必要のない判断・妄想。「自身が欲しい」とも考えない。わたしはわたしを肯定する、そして今できることをやっていこうと考える。

(3)マイナスの感情で「損しない」

  • 「自分は正しい」という思いには、”漫(自分を認めさせようという欲)”も、常に働いている。だから異なる意見をぶつけられると、自分自身が否定された気がして、怒りで反応してしまう(だから自信がない人ほど怒りやすい)。相手と自分の反応を分けて考える、相手の反応は相手にゆだねるーこれが人間関係で悩まないための基本
  • 相手と同じ反応を返せば、相手との反応の応酬になってしまう。問題は、相手に負けないことや我を通すことではなく、反応することで確実に「自分の心を失う」こと。「つい反応してしまう」状況にあってこそ、あえて大きく息を吸って、吐いて、覚悟を決めて、相手を「ただ理解する」ように努める。
  • 心の内側を見つめて、なるべくクリアな心を保つという”仏教的な”生き方に照らせば、「しなくていい判断は、しないほうがいい」ことになる。人間にとって一番大切なのは、「心に苦悩を溜めない」こと。どんな幸福感も、苦悩(という反応)によって、いつも台無しになってしまう。
  • ただ、伝えることで相手が理解してくれる可能性があるなら、「理解してもらう」ことを目的にすべき。「こういうことはやめてほしい」と思うなら、「やめてほしい」と伝えること。そこまでが自分自身にできること。それを相手がどう受け止めるかは相手の領域。大切なのは、「理解してもらうこと、理解し合うことが大事」という理解。

(4)他人の目から「自由になる」

  • 承認欲があるのは当たり前。問題はそこからなぜ「他人の目を気にしてしまうのかの理由、プロセス。①「認められたい」(自分の価値にこだわる)欲求がある⇒②その欲求で反応して「どう見られているのだろう」と妄想する。つまり”承認欲が作り出す妄想”が「気になる心理」の正体
  • 妄想には際限がない。今の時代は、煩悩を刺激するさまざまな映像や情報がいくらでも飛び込んでくる。そうして心にインプットされた”反応の記憶”は、自分でも予期しない形で脳裏によみがえる。ただ、それらは全部「妄想」。「妄想は妄想にすぎない。何が思い浮かんでも反応しない」という覚悟が大事
  • 「比較」というのは、実はとても不合理な思考。①比較という心の働きはそもそも実在しない妄想でしかないこと、②比較しても自分の状況が変わるわけではないこと、③比較によって安心を得たいなら、絶対・完全に有利な立場に立たなければいけないが実際には不可能であること。
  • 承認欲はモチベーションとして利用するだけで、「目的」そのものにしてはいけない。他人が認めてくれるかどうかは、他人が決めることであって、自分がコントロールできるものでない。他人の評価を「目的」にしてしまうと、そこから「他人の目が気になる」心理に突入してしまう。
  • 「正しい努力」とは、いわば「外の世界」を忘れて、「自分の物事に集中」して、そのプロセスに「自ら納得できること」。これが成果を運んでくれる。
  • 実は、心というのは、何かに触れれば必ず反応するもの。あなたが期待するほど、心は強くない。外を歩けば反応する、人を見れば反応する。反応すれば、いろんな雑念が溜まる。心は本来そういうものだと心得ておく。
  • 取り組むときは「無心」でやる。いっときに、1つの物事を心を尽くしてやるというのが原則。自分のなすべきことがわかっている、心をリセットして集中する、やり遂げたあとに納得が残る。それだけですっきり完結。

(5)「正しく」競争する

  • 競争という現実を否定せず、むしろその中にあって、自分はどんな心を保つのかを確立する。つまり「勝つ」という動機以外で、競争社会を生きていくこと。勝ち負けという二者択一の価値観ではなく、別の価値観をもって競争社会の中を生きる
  • 「そうはいっても、また現実の中に戻らなくては、競争に巻き込まれてしまうのでは」と思う人もいるかもしれない。しかし私たちが目醒めるべきは、競争という現実、社会の現実に対して、日頃どんなここころで向き合っているかという、最も根源的な部分。外の世界は二の次で、それよりも自分の反応、今の心の状態に気づくこと、どんな心で外の世界に対峙しているかを理解すること。
  • 世界に対する向き合い方は、慈・悲・喜・捨と呼ばれる4つの心がけ。この4つを働く動機、生きる目的に据えるなら、「競争」という現実の中で、欲と怒りと妄想とに駆られて生きてきた自分から、ちょっと自由になれる。
  1. :相手の幸せを願う心。
  2. :相手の苦しみ・悲しみをそのまま理解すること。
  3. :相手の喜び・楽しさをそのまま理解すること。
  4. :手放す心、捨て置く心、反応しない心。「中立心」ともいう。
  • ブッダは、人が「道を成就する(目的を達成する)」うえで、5つの妨げに気をつけなさいと語る。すなわち①快楽に流される心、②怒り、③やる気の出ない心、④そわそわと落ち着かない心、⑤疑い。「正しい努力」から「5つの妨げ」を引いた残りが、ありのままの自分。
  • 「自分には大切な目標がある」「どうしても結果を出したいことがある」というなら、なるべく「反応に逃げない」ことをルールにする。手を伸ばしたいのをぐっと我慢する。
  • 「快を見つける」というのは、仕事や作業を「積極的に楽しむ」ということ。あえて快で反応してみせること、楽しんでいるぞを務めて意識すること。ここは本書のテーマである「反応しない」というのと逆のアプローチをとる。
  • 人間だから弱さはある。妥協もする。快楽や怠惰に流されることもある。それは事実なのだから否定してもしようがない。本当の自分とは”頑張れる自分”から”弱い自分”を引いた「等身大の自分」を、ありのままの、否定しようのない自分として受け容れることが正解。
  • 人は3つの執着によって苦しむ。
  1. 求めるものを得たいという執着(だが叶わない)。
  2. 手にしたものがいつまでも続くようにという執着(やがて必ず失われる)。
  3. 苦痛となっている物事をなくしたいという執着(だが思い通りにはなくならない)。
  • 嫉妬から自由になるというのは、まずは相手に目を向けている状態から「降りる」こと。相手は見ない。「相手は関係ない」と考えて、怒りからも降りる。さらに「他人と同じ成果を手に入れたい」という妄想からも降りる。そうやって、嫉妬という感情から、まず完全に降りてしまう。
  • もし、かつて自分が目指した成功や勝利を手にしている人をみかけたら、「よく頑張ったんだな」と認める。”悲の心”に立って、その人がどれだけ努力してきたかを感じ取る。そのとき「敬意」が生まれる。もし相手に嫉妬めいた感情や負い目を感じたら、「わたしには違う役割がある」と考え方を切り替える

(6)考える「基準」を持つ

  • ブッダは、外の世界には答えはないと言う。どのような価値観も思想も宗教も、みな人間の心が作り出したもの。でも、自分自身の心とは違うもの。ときにそれらに救われるように感じることがあるとしても、やはり自分自身の心の闇・苦悩は、最後は自分自身で乗り越えていくしかない。そのためには、自分自身の心の内側・奥底に、正しい生き方、よりどころを確立しなければいけない
  • 人は常に何かを追いかける。手に入らない現実に苦しむ。失われる現実に悩む。しかし、現実の中で現実に飲まれない心を持とう、苦悩を超えた「納得の境地」にたどり着こうと考える。「納得」というのは主観的なもの。私たちが自分に「よし」と思えれば、それで上がり
  • ブッダが教えるのは、現実を「変える」ことではない。「闘う」ことでもない。現実は続く、人生は続いていく、そうした日々の中にあって、せめて自分の中に苦しみを増やさない、「納得できる」生き方をしようと考える。
  • 人間が抱えるどんな悩み・苦しみも、きっと解決できる。必要なのは、その方法であるーそれがブッダのメッセージ。「方法」とは心の使い方のこと。反応して苦しむのではなく、正しく理解し、苦しみの反応をリセットし、人生に最高の納得をもたらす考え方・生き方のこと。

3.教訓

率直な感想として、「言っていることはわかる。しかし、これができれば苦労はしない。」と思った方が多いのではないかと思います。

一方で、逆説的には、このような本がベストセラーになるということは、いろいろと余計なことを考えてしまうのが人間の真理で、他の人も同じようなことで悩んでいるのだな、ということも客観的に理解できます。

この本を読んだ瞬間から、副題にある通り、あらゆる悩みが消えて無くなる、とまでは思いませんが、以下の考え方自体は納得感があり、自信がない人ほど怒りやすい、という部分にも共感できます。

  • 「人は人、自分は自分」という明確な境界線を引く
  • 相手の反応は相手にゆだねる
  • 他人が認めてくれるかどうかは他人が決めること、自分でコントロールできない
  • 頑張れる自分から弱い自分を引いた”等身大の自分”を否定せずに受け容れる
  • 成功している人を見たら頑張りを認めたうえで「自分には違う役割がある」と考える
  • 現実を変えるために闘うのではなく、自分が主観的に納得できる生き方を考える

アンガーマネジメントの観点でも有益な内容だと感じていますので、少しずつでも取り入れて、今後の業務に活かしていきたいと考えています。

また、少しジャンルは違いますが、言わんとしていることが「7つの習慣」に近いものを感じました。

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