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ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? ダニエル・カーネマン著


 

1.はじめに

前回は、本書の上巻を紹介しました。

第3部の「自信過剰」が、上巻と下巻にまたがりますので、その続きとして案内します。

 

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2.内容

(3)自信過剰

  • プロフェッショナルの直感的なスキルの習得は、基本的には質の高いフィードバックをすぐに得られるかどうか、そして練習し実践する機会が十分にあるかどうかにかかっている。
  • 自分たちのケースに固有の情報を持っている場合、そのケースが属するクラスの統計データも知っておこう、と考える人はめったにいない。そして、初めて外部情報に触れたとき、全員がそれを無視する。「くそおもしろくない」統計情報は、個人的な印象と一致しない限り、簡単にゴミ箱行きになりやすい。内部情報に基づくアプローチと対立する場合、外部情報に勝ち目はない。
  • 当初予算の見込違いは、必ずしも無知に起因するわけではない。非現実的な計画を立てる人たちは、多くの場合、その計画を上司または顧客に是非とも承認させたいと考えている。彼らは、一旦承認された計画は、単に予算不足や納期遅れが起きただけで中止や放棄に至ることはめったにない、と知っている。
  • 多くの人は、過去の分布に関する情報を軽視または無視しがちであり、この傾向がおそらく予測エラーの主因だと考えられる。したがって、計画立案者は、入手可能なすべての分布情報が十分に活用できるように、予測問題の枠組みを整える努力をしなければならない。自分たちの計画とよく似た他の試みの分布情報を活用することは、外部情報を求めることに他ならず、計画の錯誤の有効な治療法となる。
  • 多くのデータから、個人や組織が進んで大きなリスクを取るときには楽観バイアスが関与していること、それも時には決定的な役割を果たしていることがうかがわれる。リスクを取る人は、たいていは自分が失敗する確率を過小評価しており、猪突猛進した末に、本当の確率を思い知ることになる
  • 現在検討中の計画が失敗したと想定して要因分析する「死亡前死因分析」には、大きなメリットが2つある。1つは、決定の方向性がはっきりしていくると多くのチームは集団思考に陥りがちになるが、それを克服できること。もう1つは、事情をよく知っている人の想像力を望ましい方向に解放できること。「見たものがすべて」という思い込みと無批判の楽観主義というバイアスのかかった計画から、いくらか損害を減らす役に立つことだろう。

(4)選択

  • 損失は利得より大きく感じられる。このような人々を「損失回避的」と定義する。
  • 選好は一定不変ではない。参照点が変われば選好は変わる。変化に伴うデメリットはメリットより強く感じられ、現状維持を好むバイアスを誘発する。損失回避性が意味するのは、選択には参照点を好むバイアスが強く働くということに過ぎない。
  • 「悪は善より強し」という論文では、「人間は悪い感情、悪い両親、悪い評価を、よい感情、よい両親、よい評価よりもずっと詳しく検討するもの。悪い印象や悪いステレオタイプは、より印象やよいステレオタイプより容易に形成され、しかもなかなか取り消されない」と総括している。
  • 損失回避は現状の変更を最小限にとどめようとする強い保守的な傾向であり、組織にも個人にも見受けられる。近所付き合いや結婚生活や職場で安定した状態が維持されるのは、こうした保守的な傾向が寄与していると言えよう。言うなれば損失回避は、私たちの生活を参照点近くにとどめおく重力のような存在。
  • 悪い目しかないときに自分がどう選ぶかを考えてみると、利得がかかっているときにリスク回避になることの裏返しで、損失しか選べない状況ではリスク追求的になることがすぐにわかる。八方塞がりになった人々が絶望的な賭けに出て、大損を免れる一縷の望みと引き換えに、高い確率で事態を一層悪化させる選択肢を受け入れる。確実な大損を受け入れるのはあまりに苦痛が大きく、それを完全に避けられるかもしれないという望みはあまりに魅力的である。その結果、起死回生の一手を打つしかないという決断に立ち至る。
  • めったに起こりそうもない出来事は、無視されるか、または過大な重みを付けられる。起こりそうもない結果に過大な重みを付けるのは、システム1の仕業である。感情と鮮明性は、利用可能性、確率判断に影響を及ぼす。めったに起きないが無視できない出来事に私たちが過剰に反応するのはこれにより説明できる。
  • 他にもっとよい投資先があるにもかかわらず、損を出している勘定に追加資金を投じる決断は、「サンクコストの錯誤」として知られる。事の大小を問わず、高くつく誤りである。
  • 行動して生み出された結果に対しては、行動せずに同じ結果になった場合よりも、強い感情反応が生まれる。この感情反応の中に、後悔も含まれる。
  • 革新的な治療法と標準的な治療法では、結果論では標準的な治療法を選ぶことの方が想像しやすく、標準的でない方は「選ばなければよかったのに」ということになりやすい。確かに、あえて革新的な治療法を選んでうまくいけば、高い評判が得られる。だがその潜在的なメリットは失敗したときの代償と比べれば小さい。一般的に、治療はうまくいくものと考えられている。
  • あらゆるリスクの増加は絶対に認めないという「トレードオフのタブー視」は、安全のための予算を有効活用する賢い方法とは言えない。トレードオフへの抵抗は、安全を最適化したいという願いよりも、後で後悔したくないという利己的な恐れに動機づけられていることが少なくない。
  • 後悔は後知恵バイアスとセットになっていることが多いので、あらかじめ後知恵を排除しておくとよい。私自身は後知恵対策として、長期的な結果を伴う決定を下す際には、徹底的に考え抜くか、でなければごくいい加減にざっくりと決めるか、どちらかにしている。中途半端に考えるのが一番よくない
  • より広い総合的な枠組みで考える方が、合理的な判断が下されやすい。そして並列評価は、明らかに単独評価より広い枠組みである。ただし、並列評価で並べるものを決める立場の人が、あなたの選択に関して既得権益を持っている場合などには注意しなければならない。例えば、セールスマンは、商品の見せ方を操作して顧客の選好に大きな影響を与えることができる。
  • ガソリンスタンドで現金払いとクレジット払いで料金設定を変えるべきかという問題を議論したとき、「クレジット割り増し」でなく「現金割引」と表示すべきという意見が出た。人間は割り増しを払うより割引を容認する方がたやすい。両者は経済学的には同じだとしても、感情的には同じでない

(5)2つの自己

  • 私たちは、苦痛にしろ快楽にしろ、その持続時間についてはちゃんと好き嫌いがある。だがシステム1の機能の一つである私たちの記憶は、苦痛または快楽が最も強い瞬間(ピーク時)と終了時の感覚とで経験を代表させるように進化してきた。また、持続時間を無視するため、快楽を長く苦痛を短くしたいという好みを満足させることはできない。
  • そのとき注意が向けられていた生活の1要素が、総合評価において不相応に大きな位置を占める。これが「焦点錯覚」である。焦点錯覚は次の一文で表すことができる。「あなたがあることを考えているとき、人生においてそのこと以上に重要なことは存在しない」。

3.教訓

上巻の続きの感想として、文字にして改めて見ると、根拠のない自信過剰や、自分が合理的でない選択をしてきたことは多いと考えます。例えば、

  • 安くシステムを作ろうとお化粧してみても、結局は予算が膨らみ、他の事例と同じかそれ以上にコストがかかってしまう。
  • うまくいっているときは、誰もそれがうまくいかなくなるとは想像できない。
  • 後で批判されるかもと考えると、なかなかリスクを取ろうと判断できない。
  • ここまでやったのだからと考え、今さら中止できずにもうひと頑張りしてしまう。

また、リスクをすべて潰しにかかろうとすると、いつまで経っても決断できず時間を浪費するばかりか、その対策費用としてのコストも無尽蔵に増加していきます。

これは以前に読んだ、80対20の法則にも通ずる話であり、簡単に頭には浮かぶが実際にはあまり起こりそうにないことを排除するなど、バイアスに引きずられないように意識することの重要性を再認識しました。

どうせ後悔するなら、自ら行動して、自ら決断してからの方が良いと考えたいと思います。

 

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