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ブルー・オーシャン戦略 W・チャン・キム レネ・モボルニュ著


 

1.はじめに

今日の産業すべてを指す”レッド・オーシャン”に対し、”ブルー・オーシャン”とは、今はまだ生まれていない市場、未知の市場空間すべてを指します。

ブルー・オーシャン戦略は、血みどろの戦いが繰り広げられるレッド・オーシャンから抜け出すよう企業に迫ります。そのための手法は、競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にするというものです。

2.内容

戦略には機会とリスクの両方がつきもので、それはレッド・オーシャンだろうとブルー・オーシャンだろうと同じ。

ブルー・オーシャンを切り開いた企業は、競合他社とのベンチマーキングを行わず、その代わりに従来とは異なる戦略ロジックに従う。

ライバル企業を打ち負かそうとするのではなく、むしろ、買い手や自社にとっての価値を大幅に高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にする。

①アクション・マトリクス

次のような4つのアクションを通して、これまでの戦略ロジックやビジネスモデルに挑む。

  1. 取り除く:業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か。
  2. 減らす業界標準と比べて思い切り減らすべき要素は何か。
  3. 増やす業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か。
  4. 付け加える:業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か。
②優れた戦略に共通する3つの特徴
  1. メリハリ:すべての競争要因に力を入れず、特定の項目にだけ絞って力を入れる。
  2. 高い独自性:上述の4つのアクションを実践して、業界標準とは違った戦略プロフィールを築く。
  3. 訴求力のあるキャッチフレーズ:明快で人々の心に強く訴えかけるメッセージも優れた戦略には欠かせない特徴。

(1)第1原則:市場の境界を引き直す

①代替産業に学ぶ
  • 購買の判断を下す際に、我々は無意識にではあるが、代替材を比べている。例えば2時間ほど気ままに過ごしたいとしたら、映画館に足を運ぶか、マッサージを受けにいくか、近所のカフェで読書する、直観的にこうした比較をしながら判断をくだしている。
  • 当該判断ポイントを重んじて、その他を取り除く、減らすといったプロセスを経れば、新しい市場空間(=ブルー・オーシャン)を切り開ける。

⇒(例:プライベートジェットを共同所有しフライト時間の権利を得る)

②業界内の他の戦略グループから学ぶ
  • 顧客があるグループを離れて別のグループを選ぼうとする際に、何が決め手になるかを押さえる必要がある。

⇒(例:カーブス・・男性の目を気にせず、特殊な機器設定をする必要なく気軽に利用できる女性専用フィットネスを作る)

③買い手グループに目を向ける
  • ひと口に「買い手」といっても、実に幅は広い。
  • 製品やサービスの代金を負担する”購買者”は、実際の”利用者”とは異なる可能性があり、場合によっては購買の意思決定を大きく左右する”影響者”の関与もあるだろう。
  • 利用者へと視点を切り替えて、従来からの業界常識を問い直してみれば、新しい価値を解き放つための全く新しい手法が見つかる可能性がある。

⇒(例:インスリン注射器・・処方する医師向けでなく、利用する患者目線で機能開発する)

④補完材や補完サービスを見渡す
  • 製品やサービスは単独で利用されるのは稀である。たいていは、他の製品やサービスと併用することで価値が増大する。
  • 自社の製品やサービスを購入する際に、買い手がどのようなトータル・ソリューションを求めているかを見極めることがカギになる。そのためには、製品・サービスの利用前、利用時、そして利用後のシチュエーションを想像してみるといい。

⇒(例:映画館・・映画を見たい子育て世代のために託児所を併設する)

⑤機能志向と感性志向を切り替える
  • 感性志向の業界は、機能向上にはつながらないが価格上昇をもたらす、余計な要素を盛り込む傾向がある。こうした要素をそぎ落とせば、従来とはうって変わって、シンプルなコストも低いビジネスモデルを生み出し、顧客に喜ばれる。

⇒(例:QBハウス・・髭剃り・シャンプー・肩もみをせずカットに特化する)

  • 機能志向の業界は、完成に訴えかける要素を添えて、コモディティ化した製品に潤いを与えれば、新しい需要を呼び起こせる。

⇒(例:スターバックス・・単にコーヒーを売るのではなく、コーヒーを心ゆくまで楽しめるような雰囲気作りをする)

⑥将来を見通す
  • トレンドが顧客価値をどう変えるか、自社のビジネスモデルにどう影響するかと知恵を絞ることが求められる。視線を現在から将来に移して、将来の市場はどのような価値を生み出すかを予想すれば、積極的に自社の未来を切り開き、ブルー・オーシャンを支配できるだろう。
  • トレンドの先行きを見通すうえで重要な原則が3つある。①事業に決定的な意味合いをもたらす、②後戻りしない、③はっきりとした軌跡を描くという3条件を満たす。

⇒(例:CNN・・グローバリゼーションの流れにのり、24時間絶え間なくリアルタイムで世界のニュースを配信する)

(2)第2原則:細かい数字は忘れ、森を見る

  • 大多数のプランは戦略と呼べるものではなく、戦術の寄せ集めに過ぎない。それらの戦術は単独では意味があっても、全体としては競争を避けるのに役立たないのはもとより、卓越した地位につながる明確な方向性すら導かない。
  • 資料を作成するのではなく戦略キャンバスを描くプロセスに従えば、社内の幅広い人材の創造性を解き放ち、ブルー・オーシャンに着目した戦略を生み出せるだろう。そのような戦略は、理解やコミュニケーションが容易で、効果的な実行につながりやすい。

(戦略キャンバス、価値曲線については以下参照)bizgate.nikkei.co.jp

ステップ①:目を覚ます
  • よくある失敗は、競争の現状について見解の違いを解消しないまま、「いかに変えるべきか」という議論を始めるというもの。
  • だが幸いにも、自社の価値曲線を描くように経営陣に求めると、変わらなくてはいけない、との意識が芽生える。「既存の戦略を問い直さなくてはいけない」と気付かせる、いわば目覚まし時計のような役割を果たす。
ステップ②:自分の目で現実を知る
  • 次のステップではチームを現場に送り込み、マネジャーたちに自社の製品やサービスがどのように使われているか(あるいは使われていないか)を直に確かめさせる。
  • 直に確かめるという作業は、決して外部委託してはいけない。自分の目で確かめるのと、間接的に報告を受けるとでは、雲泥の差である。
  • 偉大なアイデアは、天賦の才能から生まれるというよりは、現場に足を運び、競争の土俵を問い直すというプロセスを通してもたらされる
ステップ③:ビジュアル・ストラテジーの見本市を開く
ステップ④:新戦略をビジュアル化する
  • 新戦略が定まったら、最後のステップとして、従業員みながすぐに理解できるように、コミュニケーションに工夫を凝らす。これを見れば、自社がどのような位置にあるか、明るい未来を切り開くためには何に力を注げばいいか、誰でもわかるようにする。
  • 投資判断を下す際にも、将来に向けた戦略プロフィールを参考にする。古い価値曲線から離れ、新しい価値曲線に近づくのに役立つアイデアだけが、投資適格とされる。

仮に現在、将来の事業ポートフォリオが安住者を柱としているなら、成長性は低く、レッド・オーシャンにどっぷり浸かっていると言える。安住者が利益を上げていれば、いまだにそれなりの収益性があるのかもしれないが、競合他社のベンチマーキング、模倣、熾烈な価格競争などに陥るおそれは十分にある。

PMSマップの説明は以下ご参照)

diamond.jp

(3)第3原則:新たな需要を掘り起こす

  • セグメンテーションを突き詰めて顧客の嗜好を満たそうとする企業は、ともするとターゲット市場を狭めすぎてしまうきらいがある。限りなく広いブルー・オーシャンを目指すなら、これとは逆の道筋を選ばなくてはいけない。顧客だけに目を奪われるのではなく、顧客以外の層に視線を向けるのである。そして顧客間の違いに焦点を当てるのではなく、買い手が共通して重んじる要素をテコとして使う。すると、これまでになかった新しい需要を掘り起こして、多数の新規顧客を得られる。
  • 非顧客層は、以下の3グループに分けられる。いずれかのグループだけに目を奪われるのえなく、3グループすべてを見渡し、共通点を探して潜在需要を解き放ち、規模の最大化を目指す
  1. 第1グループ:市場の縁にいるが、すぐに逃げ出すかもしれない層
  2. 第2グループ:あえてこの市場の製品やサービスを利用しないと決めた層
  3. 第3グループ:市場あら距離のある未開拓の層
  • できるだけ広大なブルー・オーシャンを手に入れるためには、既存の需要だけに気を取られずに非顧客層まで視野を広げ、新戦略を練るにあたっては脱セグメンテーションを図るべき。

(4)第4原則:正しい順序で戦略を考える

以下の順で考え、すべてYESとという答えにたどり着くまで練り直す。

  1. 買い手にとっての効用:大勢の人々に「是非とも購入したい」と思わせる理由はあるか
  2. 価格:多くの買い手を惹きつけて、十分な売上を得られるだけの価格になっているか
  3. コスト:多くの人々に買ってもらえるように戦略価格を設定したとして、果たして利益を上げられるだろうか。
  4. 実現への手立て:アイデアを大規模に展開するうえで、どのようなハードルがあるだろうか。
  • ブルー・オーシャンから最大限の利益を引き出すためには、まずは戦略価格がいくらであるかを見極め、続いてそこから望ましい利幅を差し引いて、目標とするコスト水準を算出する。コストプラス方式で価格を設定するのではなく、あくまでも「価格マイナス方式」でコストを導き出す。利益をもたらし、なおかつ他社から模倣されにくい仕組みにするためには、この原則を貫くことが必須。
  • 新しいアイデアに投資するのに先立って、関係者を啓蒙して、心配を取り除かなくてはならない。
  1. 従業員:新しい事業アイデアが暮らし向きにどう影響するかを従業員が心配している場合、その心配にうまく対処しておかないと、大きなしっぺ返しを受けるかもしれない。社内の足並みを揃えて、「アイデアの実行に伴う不安を理解する」と従業員に伝える努力をしなくてはならない。従業員たちと力を合わせて不安を和らげる方法を探し、役割、責任、報酬などが変わってもだれもが納得できるようにする。
  2. 事業パートナー:新しい事業アイデアによって売上や市場での地位が脅かされるのではないかと恐れて反発する場合がある。
  3. 一般消費者:アイデアがあまりに型破りで、これまでの社会規範や常識を揺るがす場合には、反感が広まる可能性がある。

(5)第5原則:組織面のハードルを乗り越える

①意識のハードル
  • 従業員たちに戦略変更の必要性をいかに目覚めてもらうかである。従業員にとってはなじみが深く、これまでは組織に利益をもたらしてきたのに、なぜ事を荒立てるのか、というわけである。
  • 現実を目の当たりにする、結果に触れる、感じ取る、といったことを伴わないと、人はその経験に心を揺さぶられず、すぐに忘れてしまう。数字が並んだだけの抽象的な資料を見せられる、というのはこの部類に属する経験である。
  • 現状を打ち破るには、業務の最も悲惨な一面を従業員に直視させる、というプロセスが求められる。惨憺たる業務成果を目の当たりにすると、動揺に襲われ、逃げ場がなくなるが行動は起こせる。この、身をもって実態を知るという経験が、意識のハードルを立ちどころに解消するうえですさまじい威力を発揮する
経営資源のハードル
  • 「重点領域」とは、少ない経営資源を投入しただけで、業績が著しく向上する可能性のある活動を指す。
  • 逆に「非重点領域」とは、多大な経営資源を要するが、業績押上効果は乏しい活動を意味する。どの組織にも、この両方がここかしこに見られる。
  • 「資源交換」とは、部門間でそれぞれの余剰資源を交換して、不足資源を補う試みである。今ある資源を適切に使いさえすれば、経営資源のハードルはすぐに乗り越えられるはずだ。
③士気のハードル
  • 前向きな熱意を多くの人に広めるためには、努力をいたずらに拡散させるべきではない。むしろ、組織に強い影響力を誇る中心人物だけに徹底して働きかけを行うほうがよい。中心人物とは、周囲の心を動かす力にあふれ、尊敬を集める、生まれながらにしてリーダーの素質を持った人々である。
  • 中心人物の士気を狙い通りに高め、そのモチベーションを維持するには、彼らの行動を繰り返し目立つように紹介するとよい。これが「金魚鉢のマネジメント」である。つまり、中心人物の行動(あるいは無為無策)が、まるで金魚鉢の金魚のように、すべて見通せるようにする。
  • 従業員に可能性を信じてもらわないことには、戦略転換は実現しない。そこで、目標を細分化して、さまざまな階層の職員が自分の仕事と関係づけて考えられるようにする
④社内政治のハードル
  • ハードルを乗り越えるには、次の2点を自問してみることが求められる。
  1. 大敵は誰だろうか。誰が戦いを挑んでくるだろうか。ブルー・オーシャン戦略によって最も大きな損失を被るのは誰だろうか。
  2. 守護神は誰だろうか。誰が一緒にスクラムを組んでくれるだろうか。戦略転換によって最も得をするのは誰だろうか。
  • 一人で戦ってはいけない。上役を含めて、広く様々な人々を味方につけて、ともに戦う。戦いが始まる前に守護神と幅広く手を組み、大敵を孤立させておくこと。そうすると、相手は戦うのをあきらめるか、早い段階で戦意を失う。

(6)第6原則:実行を見据えて戦略を立てる

  • 経営トップから距離があって、戦略立案に直に携わらなかった人々ほど、強い不安に駆られる傾向がある。戦略を日々実行するのは最前線で働く人々だが、彼らは自分たちの考えや思いに関係なく一方的に戦略を押し付けられると、憤りを覚えるかもしれない。戦略を立てた側が「すべて狙い通り」と胸をなでおろした瞬間、最前線では突如として歯車が狂いかねない。
  • だからこそ、人々の信頼と献身を得て自発的な協力を引き出すためには、初めから実行を見据えて戦略作りをしておくべき。そうすれば、信頼や協力の欠如、妨害行為といったマネジメント・リスクを抑えられる。
  • 研究によれば、人々は成果そのものと同じくらい、成果に至るプロセスを気に掛ける。「手続的正義」が保たれれば、成果への献身と満足も大きくなる。従業員による自発的な協力は、ただ仕方なく協力するのとはわけが違う。義務だから命じられた通りにするというのではなく、熱意と積極性を発揮して、あるいは自分の利益さえ犠牲にして、持てる力を出し切って戦略を実行しようとする。
  • 公正なプロセスは、関与(Engagement)、説明(Explanation)、明快な期待内容(clarity of Expectation)という互いに支えあう3つの要素(E)で成り立っている。戦略を実行に移す際に公正なプロセスを踏むのを怠れば、模範的な従業員から手ひどい反逆にあう。戦略の実行には従業員の協力が欠かせないにもかかわらず、彼らの不信を買い、抵抗を受けることになる。
  • しかしながら、公正なプロセスに従えば、問題児と見られていた従業員が模範生への早変わりする。そして上司や会社を信頼して、骨の折れる戦略転換にも熱心に取り組む。公正なプロセスが従業員の知性、感性を認め評価することにつながり、それが普遍的な価値を持つという点に経営者が目を向けることの重要性が、改めて浮き彫りになってくる。
  • 私たちは自分の知性が評価されていると感じると、進んで知識を出そうとする。アイデアや知識の溶融を積極化してはどうかと提案して、知性への期待に応えたいと感じる。同じように、感性が評価されると、戦略に共鳴してできるかぎりの貢献をしたいと願う。周囲からの評価は強いモチベーションを生み出し、義務感でなく自分から進んで協力しようとする
  • ただし、公正なプロセスを踏みにじると、自分の知識がないがしろにされた人は、憤りを感じてアイデアや専門性を抱え込む。優れた発想や創意工夫を誰にも紹介せず、日の目を見ないままにしてしまう。そのうえ、仲間の知的価値からも目を逸らそうとする。「私のアイデアが評価されなかったから、周囲のアイデアも評価するものか。戦略が決まっても関心もないし、信頼もしない。」となる。

3.教訓

自分自身は、ベンチャー企業に勤めているわけでも、経営計画や新商品開発に携わっているわけでもなく、既存業務の再構築(BPR)や法令対応が業務の中心です。

そのため、業務フローをペーパレスにしたり、法令改正に伴って顧客に確認する項目が増えたり、それを入力するためのシステムを変更したりと、現場に運営変更を求めることが多くあります。そのため、本書の第4原則の後半くらいからの内容は実感を持って理解することができました。

どうしても、「紙のままの方がわかりやすい」「何で面倒なことが増えるのか」といった反対の声が出ることもあります。それを防ぐために、運営変更の検討段階から意見を求めて一部を取り入れたり、いきなり全店展開するのではなくキーパーソンにだけ事前に説明して了解を取り付けたり、といったことを工夫しています。

しかしながら、時間が不足していたり、様々な要因で事前に情報を伝えることができなかったりで、毎回理想通りに進めることができるわけではありません。

それでも、できる限りの努力はして、円滑な業務移行を目指していきたいと思います。