1.はじめに
- 本を読むきっかけ:「世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた」の”人材編”のなかで採り上げられていたこと。また、楠木健氏が監訳を務めていること(アダム・グラント氏の著書が代表例)。
- この本から何を学びたいか:個人商店の集まりではなく、チームとして機能させるために必要なこと
- この本を読んでどうなりたいか:担当者の延長線としてのマネジャーでなく、真の意味で組織を成長させるマネジャーを目指すこと
2.内容
(1)スキル1:安全な環境をつくる
- 私たち人間は、言葉以外の方法で「帰属のシグナル」を送ることで、「安心できる関係」を構築している。以下のシグナルをすべて合わせると、最終的に「あなたはここにいて安全だ」というメッセージになる。
- エネルギー:目の前で起こっている他のメンバーとの交流を大切にしている。
- 個別化:メンバーを独自の存在として認め、尊重している。
- 未来志向:関係はこの先も続くというシグナルを出す。
- 言葉はノイズだ。チームのパフォーマンスを決めるのは、「ここは安全な場所だ。そして私たちはつながっている」というメッセージを伝えるしぐさや態度なのだ。
- ただ優秀なメンバーを集めるだけでは、チームの化学反応は起こらない。明確な帰属のシグナルを継続して受け取ったとき、チームは真の力を発揮する。つまり、チームの化学反応は、謎でも運でもないということだ。そこには決まったプロセスが存在し、正しいやり方を守っていれば、誰でも達成することができる。
- 成功しているチームは、みんなハッピーな仲良しグループだと思われていることが多いが、それは大きな誤解だ。彼らの目的は、ハッピーになることではなく、難しい問題を解決することだ。そのために彼らは協力し、努力を惜しまない。この目的を達成するためには、ときには言いにくいこともはっきり言わなくてはならない。
- 以下の3つの明確なメッセージが無意識の脳を刺激し、「ここは安全な場所だ。ここなら私たちは頑張れる。」という気持ちになる。
- あなたはチームの一員である
- このチームは特別であり、高いレベルが期待されている
- あなたにはそのレベルに到達する力があると信じている
- コミュニケーションの頻度と、机の距離の間には、密接な関係がある。距離が8メートルより近くなると、コミュニケーション頻度が急激に高くなる。つまり、距離の近さがつながりを生むということ。ただ物理的に近づくだけで、つながりへの欲求が一気に強くなる。
- 会話でやってはいけないのは相手の話をさえぎることだ。もちろん、話をさえぎることが絶対的に悪いというわけではない。たとえば創造的な作業では、どんどん口を出すことで創造性が刺激されることもある。大切なのは、お互いに興奮して発言が飛び出すという状況と、ただ相手の気持ちに鈍感なために口をはさむという状況を区別することだ。
- 自分の完璧さを誇示するのではなく、会ったばかりの私に内心の恐怖を告白したのだ。これは弱さの表れではない。むしろ会話の相手とより深いつながりをつくる手段だ。弱点を正直に告白された相手は、思わずこう言わずにはいられない。
- すべての人に発言の機会を与える。しかし、どんな立派なしくみをつくっても、リーダーに聞く気がなければ無意味だ。いちばん大切なのは、本気でメンバーとのつながりを求め、すべての意見に耳を傾けるリーダーの存在だろう。
(2)スキル2:弱さを共有する
- 成功するチームの例と見ると、彼らは気まずい瞬間を意図的に作り出し、メンバーにわざわざ痛みを与えている。円滑な協力関係の対局にある行為ではあるが、おもしろいことに、この気まずい瞬間があるからこそ、互いに信頼し、結束力のあるチームが生まれる。
- むしろ「自分には弱点があり、助けが必要だ」という明確なメッセージがチームの中で当たり前の態度になれば、不安や恐怖を忘れ、お互いに信頼し、協力して働くことができる。反対にリーダーが弱さを隠すと、他のメンバーも同じようにする。そうなると、どんなに小さなタスクでも、不安を生むきっかけになる。
- メンバーの誰かが弱さを見せると、チーム全体がリラックスした雰囲気になる。つながりが深まり、信頼感も深まる。誰もが「弱さを見せる」というモードを感じ取り、「このチームでは強がらなくてもいいんだ」と安心するからだ。そこから思いやりと助け合いの精神が生まれる。
- 確実に遅刻しそうなときに、「みんな急げ!教官に怒られるだろう!」と言うか、それともチーム全員でいったん立ち止まり、「もう怒られることは確実だ。それならここで装備を見直し、完璧な状態で集合できるようにしよう。」と言うか。後者のように考える人物は、自分のことではなく、チーム全体のことを考えている。
- 自分が主役になりたいという気持ちをいましめ、共演者の助けになること(サポートする、助ける、信頼する、聞く)をルールとする。面白いことを言いたい、主役になりたいという気持ちを捨てなければならない。
- リーダーとして、もっとチームに対して責任を持たなければならない。ここでの問題は、人間は権威に弱いということだ。上官から何かを命令されると、ほとんど本能的に従ってしまう。たとえその命令が間違っていたとしても。つまり、誰かが誰かに命令するという意思決定法はとても危険だということだ。誰もがリーダーになる必要がある。上からの命令に従うだけでは駄目だ。自分で考えて動けるようにならなければならない。
- そもそも、いつでも正しい人なんて存在しない。それでも、自分の行動を厳しく振り返り、真実を追求することを習慣にしていれば、全体像が見えるようになってくる。お互いに自分の経験や失敗を話すのはそのためだ。自分の行動が他のメンバーにどんな影響を与えるのかがわかり、しだいにチーム精神が育っていく。互いに協力し、チームのポテンシャルを最大限に発揮できるようになる。
- 成功しているチームは、チームワークが生まれるのを偶然に任せたりはしない。メンバーに期待されていることを明確にしている。そして言葉や態度で、協力することの大切さを何度も伝える。
- 何かネガティブなフィードバックを与える必要があるのなら、それがたとえささいなことであっても、直接会って伝えなければならない。フィードバックを与えるほうも受け取るほうも、メールやSNSでやり取りしたほうがずっと簡単だ。それでも直接伝えた方がいい。お互いに気まずさときちんと向き合うことで絆が生まれ、それに誤解されることなく、こちらの意図をはっきり伝えることができる。
- 弱さを見せられる環境をつくるうえでは、「何を言うか」ではなく、「何を言わないか」がカギになることが多い。それはつまり、自分なら簡単に解決できると思っても、何も提案せずに黙っているということだ。なぜなら彼らは、ここでの主役は自分ではないということを知っているからだ。
- 正直なフィードバックを与えるのは簡単な仕事ではない。少しでもやり方を間違えると、相手を傷つけ、やる気を奪ってしまう。フィードバックを与えるときは、問題点だけを具体的に指摘し、相手の性格や人間性にまで話を広げないこと。そうすれば、言われたほうも「安心と帰属意識」を失わずにすむ。
(3)スキル3:共通の目標を持つ
- モチベーションは個人の資質ではなく、「①ここが自分の今いる場所」「②ここが行きたい場所」の2つの対象に注意を向けるというプロセスの結果だとわかる。「理想の未来」は、目標や態度に置き換えることもできるだろう。大切なのは、現実と理想をしっかりとつないでおくことだ。理想を物語にして、何度も語ることだ。
- どんなに立派な言葉でも、1回しか伝えないのでは意味がない。小さなシグナルを常に送り合い、チームとしての目標をメンバー全員で共有するのが大切だ。気の利いたことを言う必要はない。一見すると「当たり前」の内容を、ぶれずに伝え続けていくことに意味がある。
- メンバー同士の交流の悪い例は、2つのうちのどちらかだ。1つは相手にも仕事にも興味がないこと。「仕事だからやっているだけだ」というような態度だ。もう1つは怒っていること。相手に対して怒っているか、または起きたことに対して怒っている。もしその状態になったら、背後にはもっと深い問題がある。いちばん大切な仕事は、お互いを思いやること。
- 個別の標語は、どれもいたって普通のことしか言っていない。しかしそれが集まり、何度も繰り返し聞かされ、さらに行動でも手本を見せられると、チームの文化を決定づける大きな力を持つようになる。
- 成長したいのなら、優先順位を言葉で表現するべきだ。さらに、その優先順位を守るために必要な行動も、言葉ではっきり表現する。
3.教訓
全部自分でやろうと思ったり、マネジャーとして威厳を見せないといけないと考えたり、格好だけ取り繕っても、何もいいことが無いことがよくわかりました。
今回紹介されている以下の3つのスキルは、自身でもあまり実践できていない内容で、今後のチームビルディングとして非常に参考になる内容でした。
- 安全な環境をつくる
- 弱さを共有する
- 共通の目標を持つ
とくに、3に関しては、「パーパス経営」としても注目されています。
最近、実際に自社でもそれぞれのチーム単位で「ありたい姿を明文化する」ことが始まりました。また、短期的な目標だけでなく、中長期的な目標も設定することが奨励されています。
チームの方向性を一致させるためには、明文化されそれが繰り返し語られれていることで、全員の共通理解を作り上げていくことが重要であると認識できました。