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ビジネスで失敗する人の10の法則 ドナルド・R・キーオ著

1.はじめに

著者はコカ・コーラ社の社長を務めていた方だけに、ビジネスの現場に即した内容となっています。

基本的には、ビジネス書籍は、こうすればよいといったアドバイス形式で記載されることが多いですが、本書は「こうすれば簡単に失敗できる」ということが平易に書かれています。

なお、本書の序文は、ウォーレン・バフェット氏によるものです。

2.内容

(1)リスクをとるのを止める

  • 現状に満足していると、リスクを取るのをやめたいという誘惑が強くなり、ほとんど抵抗し難いほどになる。そうなれば、失敗はほとんど避けがたくなる。

(2)柔軟性をなくす

  • 失敗したいのであれば、柔軟性を否定すべき。しかし、明確にしておきたい点がある。柔軟性自体に価値があるわけではない
  • 柔軟性と適応力は、企業の指導者に不可欠な資質であり、管理能力や業務能力、技術力といった個々の能力を超えるものである。要するに、ダーウィンがいう適者生存のカギになるのが柔軟性と適応力なのである。

(3)部下を遠ざける

  • いつも偏執的に悪いニュースを求め、問題があればすぐに経営陣に伝わり、素早く行動して悲惨な結果になるのを防げるようにしておくのは損の無い方法。
  • 定義上、組織の進歩はすべて問題解決の努力から生まれるのであり、そしてもちろん、問題があることを知らなければ、問題の根源を見極めることもできない

(4)自分は無謬だと考える

  • 経営方針や経営戦略は、上層部からの命令として現場に伝えられるだけであれば、失敗する運命にある。失敗する確率を高めたいのなら、自分の判断はいつも完全に正しく、間違っている可能性などないと主張すればいい。自分の知らない何かを一つか二つ、他人が知っている事実を否定すればいい。失敗したいのであれば、無謬の指導者を装うといい。

(5)反則すれすれのところで戦う

  • かなりの経営者は「これは正しいことなのか」とは質問しなくなり、「これは合法なのか」と質問するようになった。こうなればあと一歩で、「これをやってもばれないか」と質問するようになる。そうなった企業は最後に悲劇になる。
  • 誰でも他人に認められたいと願っている。だが、有名人をもてはやす風潮に誘惑されて、倫理上、越えてはいけない一線を越えるようなことをしないよう注意するべき。

(6)考えるのに時間を使わない

  • 考える時間を取るのはたぶん、各自の会社にとって、各自のキャリアにとって、各自の人生にとって、最善の投資だ。
  • 何かを「知っている」というとき、それがどこまで確実だと言えるのか、慎重になった方がいい。人間には確認の罠と呼ばれる心理的な偏りがある。あらかじめ確立した見方を確認できる事実だけを探し、その見方が間違っている可能性を示す事実は探さないという偏りである。
  • 人間は感情の生き物なのであり、何かの活動をはじめて事態が進みだしたとき、興奮状態になって止めるのは難しくなる。意思決定にあたっては、集団願望に陥って、全員が目標を達成しようと熱心になるあまり、まともに考えられなくなることがある。
  • 誰かが立ち止まって考えない限り、同じ間違いを何度も繰り返すことになる。考える時間を取らないのは、失敗をもたらす確実な方法である。何らかの種類の失敗があれば、周囲を見回して責任を押し付けるか、言い訳を見つけるか、誰かを罰すればいい。

(7)専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する

  • 経営幹部が外部のコンサルティング会社が立てた事業計画に書かれているので仕方がないと語ることがある。何とも臆病で卑怯な態度だと思う。新しい事業計画を実行するというのであれば、自分が責任を負わなければならない。それに、責任を負うのを避け、自分の権威を放棄して社外の専門家に頼るのであれば、事業計画をうまく実行することなどできないだろう。

(8)官僚組織を愛する

  • 企業は子供の遊び場ではない。好き勝手を許すわけにはいかない。規則や慣例をしっかりと定めて、すべての部分が適切に調和の取れた動きをするようにしなければならない。しかし長年のうちに、避け難いと思える結果が生まれてくる。規則や慣例が一人歩きするようになり、それで達成しようとした目的よりも重視されるようになる。硬直的で役に立たない儀式になり、組織の活力をそぐようになる。
  • こうした儀式を司る官僚は、命がけで儀式を守るようになる。少しでも変えれば、自分の力と権威が損なわれるからだ。官僚は徐々に、あらゆる進歩に抵抗し、失敗を保証する力だけを持つにすぎなくなり、往々にして実際に、その力だけを行使するようにもなる。
  • がちがちの官僚制がやっかいなのは、自らは生産的な仕事をほとんどしていないのに、他人の仕事を明らかに妨げるから。官僚は自分の縄張りを守ることに必死になっているので、必要不可欠な情報の流れを遮り、会社が成功する機会を奪ってまで、自分の成功を追求する。

(9)一貫性のないメッセージを送る

  • パスの失敗はパスした側の責任。パスをする際に適切に合図を送っていれば、受け手はメッセージを受け取って、ぴったりの位置までぴったりのタイミングで走り、パスを受け取れたはずだ。これと同じで、責任は経営者側にある。各地の事業を率いるリーダーが全員、同じメッセージを正しく受け取るようにしなければならない。

(10)将来を恐れる

  • リスクを取るのを止めるリスク以上に、企業の力を弱める病が「恐れ」である。将来を慎重に警戒することと、将来をともかく恐れることの間には、天地の開きがある。フランクリン・D・ルーズベルト大統領は大恐慌時の就任演説で、「我々が恐れなければならないものはただ一つ、恐れそのものである」と語った。
  • 悲観論者によれば、世界は混沌の中で生まれ、それ以降、下り坂を下がり続けているという。しかし、人間が生きていくには希望が欠かせない。明日があると考え、生き続けていかなければならない。失敗したいのであれば将来を恐れるといい。成功したいのであれば、将来を楽観し、熱意を持って将来に立ち向かうべき。

3.教訓

表題は”10の法則”となっていますが、本には11番目の法則が記載されています。

それは、(11)仕事への熱意、人生への熱意を失う、というものです。

  • ほとんどの人は何か意味のあることを達成したいという強い欲求、情熱を持っており、達成できる可能性が低くても情熱は失わない。難しいパズルを与えれば、必死になって解いてくれる。
  • 夢は望んでいるだけでは夢のまま。夢を自分が実現すると考え、実現できる人間になると決意し、実現したときにどうなるかを思い描くようにすれば、実現する可能性が高まる。
  • 「現実的になれ」という助言が適切な場合も確かにある。だが、こうした批判を受け入れる前に、少し考えてみるべき。現実的になるというのは、安易な道を選んで、高い理想に向かうのを諦めるという意味ではないのかと。普通のものではない目標を目指しているとき、周囲の人たちはその目標をまだ理解できていないという場合もある。

逆説的な内容ですが、失敗する方法を理解することが、失敗しない近道だと理解しています。