管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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カウンセリングとは何か 平木典子 著

1.はじめに

産業カウンセラー養成講座の受講のしおりの中で、いくつか紹介されている参考図書の1冊です。何冊か読んでみようと考えたとき、まずはその名もズバリのタイトルの本から始めようと手に取りました。

結論として、この本が公式テキストでよいのでは、というくらい、それこそ、”カウンセリングとは何か”について、実務に即した内容が基本から書かれています。

以下では、特に印象に残った部分を引用していきます。

2.内容

(1)面接開始前の段階

  • 来談者は、カウンセリングを受ける前から、カウンセリングの序奏・助走段階を体験している。カウンセリングは、問題や悩みを抱えた人が、自分1人ではそれを解決できないことがわかり、他者の助け、特に専門家の援助を得る必要を感じたときから事実上、始まっていると考えることができる。
  • 申込の時点では、カウンセリングに対する動機づけが高まっている人もいれば、全くない人もいるだろう。似たような問題でも、1人1人が感じている問題の重さや解決への意欲には差があるだろうし、カウンセリングを受ける必要は感じていても、問題の焦点が漠然としていることもあるだろう。1人で考えすぎた結果、問題があれこれと多方面に拡散してしまい、どれが問題の中核なのか捉えきれなくなっている場合とか、自分なりに問題を抱えていても、それが解決すべき問題なのか自信の無いときもあるだろう。
  • 来談者はカウンセラー(以下CO)と出会う前から、その人なりのプロセスをたどってカウンセリングの準備をしている。カウンセリングやCOについても多様で複雑なプラス・マイナスのバイアスを持って、申込の電話をかけるわけである。

(2)インテーク面接-カウンセリングの契約

  • インテーク面接によってカウンセリングに対するCLの動機づけが高まり、目標が明確になり、クライエント(以下CL)の心理的安定も得られる。第1回面接の後は、CLの心理的安定は抜群に上がることが証明されている一方、そのつたなさはCLの来談意欲を失わせ、次のカウンセリングにつながらないことも多い。
  • カウンセリングは目的を持った面接。したがって、COは、本題に入るための最初の問いかけが非常に重要であることを心得ている。面接の方向は最初の一言でほぼ決まる。それは、CLが話そうと思っていることを十分話せるようにしながら、同時にCOが知る必要があることも話してもらえるような問いかけ。
  • COの最初の問いかけに対してCLが述べる、カウンセリングを受けたいと思っている内容や理由などの最初の一区切りの話、あるいは最初の15分ぐらいの陳述を主訴と言う。主訴には、CLが最も気になっていること、問題としていること、繰り返し考えたこと、解決の試み、援助の必要などが凝縮されている
  • CLの話は、さまざまな事情が絡まり合ったうえでのものなので、それをどのように主訴としてまとめていくかは、COの問いかけにかかっている。例えば、「そのことについて、ここではどんな助けを欲しいと思っていますか」と尋ねてみる。すると、CLは自分が求めている援助についてはっきり自覚できるようになる可能性がある。
  • カウンセリングはプロセス。つまり、カウンセリングには、話す内容や課題があると同時にその解決のプロセスがある。そのプロセスとは、カウンセリングの進行や経過、成り行きだけでなく、その背後にあるCOとCLの関係の流れでもある。カウンセリングとは、単に課題を解決してよい成果を得ることだけでなく、むしろCLが解決のプロセスを体験し、それにより自律や成長が促されることを言う
  • 面接の前半で、問題の本質が伺えないような場合、COはCLの緊張や不安、反発などに共感しながら、インテーク面接の意図を説明し、協力を求めてみる。それでも協力が得られない場合は、協力したくない気持ちについて話してもらう。その話の中で、カウンセリングへの怖れやよそで経験したカウンセリングへの怒りが披歴されることもあり、それを多少でも解消することができれば、CLは面接に前向きになれることもある。
  • ラポールを築くには、まずCOは、相手に対して積極的関心を持ち続ける。第2のポイントは、COが相手を共感的に理解すること。ロジャーズは、共感とは、CLの現象学的な世界へ入り込むCOの能力であり、CLの世界をあたかもCOの世界として体験し、そのとき「あたかも」の質を決して失わないことであると述べている。
  • 共感と同感の違いは、「あたかも」の質の有無にある。CLの体験や状態について、COは自分自身の感じや考えを持っていないわけではないが、それは横に置いて、相手の感じていることや考えていることをそのまま受けとめてみようとする。そこには、しっかり相手のことをありのままに受けとめながら、相手と同じようになってしまわない、相手に巻き込まれていない状態がある。それが「あたかも」の意味。
  • COになりたいという人の中には、相手のことがよくわかるとか共感できると自負している人がいるが、実は共感ではなく、同感・同情に基づく場合であることがほとんど。また、他者の問題を客観的に見て、善し悪しを判断してあげることができるので、COに適していると思う人もいるが、その人は同情や同感はしないであろうが、共感もできず、自分の考えや感じをいつも混ぜ合わせて相手のことを受け取っている可能性も高い。
  • COは、CLに対して積極的関心を持ち、まず、共感的理解をしようと努める。しかし、それがCLに伝わらなければ意味がない。そのためにCOは相手を受けとめて、さらに、受けとめたことを相手に伝えようとする。
  • 優れたCOの相づちには、実にバラエティに富んだニュアンスがあり、その響きの豊かさに驚くほど。COが無理なく共感できるようになると、COの反応のレパートリーも広がり、独自のものがつくられ、それにCLも心地よさを感じるもの。
  • 次にCOは、聴いたことを言語化して伝える。COは、非言語的な態度と短い反応だけでなく、意識して共感的言葉かけをし、共感を言語化する。つまり、共感をより積極的に伝える。
  • COがCLの言うことを邪魔しないで聴くことは非常に重要であるが、ただ黙って聴いていたりだけでは、CLは不安になることがある。COから反応は返ってくるのだが、自分の言ったことの中で、何をどのようにわかってくれたかが不明なので物足りなかったり、COの短い反応や沈黙は、無関心や批判なのではないかと誤解することもある。COがCLの言ったこと、感じていることをどう受けとめたかを返すと、不安を取り除くことができ、共感や理解が伝わりやすくなる
  • CLにとって、積極的な関心を示され続け、共感をもってじっくり聴いてもらうことは、特別な体験。それは、CLの自由な自己開示を促進させ、ラポールの形成を育み、CL自身が問題や悩みについてより深く考え、思いをめぐらす機会ともなる。さらには、自分の考えをまとめ、より深い意味を持つ事柄に思いを至らせ、カウンセリングの動機づけを高めることになる。
  • COは、オープンにされていない問題がありそうなのに、CLが自発的に話し出さない場合には、特に手遅れにならぬように尋ねていく。CLによっては、これらの話題をCOの側から提起してもらうことによって、やっと話しだせることも少なくない。

(3)面接の初期段階-独特な援助関係の確立

  • 面接の初期に、CLが緊張や不安を感じるのは当然。しかし一方で、CLはカウンセリングを受けることで、これまで苦しんできた問題から解放され、自分では見出せなかった問題解決の道が開けることに大きな期待を寄せている。CLの気持ちは「こんなところに来るんじゃなかった」という思いと「これでやっと助けが得られる」という思いのないまぜになった複雑なものであろう。
  • カウンセリングは、問題や悩みの解決についての最善の方法や方策を教えてくれるものと思っている人もいる。そんな人は、COにいろいろ質問すれば、何かアドバイスがもらえるものと思っている。実は、カウンセリングの初期段階におけるCOの主たる役割は、カウンセリングに臨むCLの状態を受けとめ、未経験の新たな自己探索と変化の道へCLを導入していくこと
  • COは、原則としてCLに代わって問題を解決してあげたり、CLが要求した問題の解決法をすぐに教えたりすることはない。むしろCOは、CL自らが問題解決の方向はそれでよいのか、自分にふさわしい目標が立てられているのかを吟味し、必要ならば自分に適した目標を立て直し、それを自らやりとげる力をつけるように援助する。その援助は、間接的で、一見不親切のようであるが、結果的に人の自律と成長を育むことになるような性格のもの
  • 相手をありのままに感じ、理解しようとするCOの接近は、CLに自分をありのまま感じ、理解する体験の場を提供する。そこでCLは、安心して自分を探れる場を得て、それまで気づかなかったことに気づき、知らなかった自分を見つめ、じっくり味わうことができる。その体験は、誰が何と言おうと「自分は自分である」ことを実感させ、その自分を確認すればするほど自分の独自性に目覚めていく。それは、さらに独自性をそれぞれ持つ他の人々の存在への思いやりに広がってゆく
  • もしCLが個人的な接触を求めたり、個人的な質問をした場合には、その動機を一緒に考えてみようとするだろう。CLの質問は、単なる好奇心から出ただけかもしれないし、COの専門性を確かめようとするものかもしれない。個人的な情報を知りたい気持ちには、COに対するCLの競争意識があって、優位に立てるところを探そうとしているのかもしれない。そうであれば、その動機もカウンセリングの大切なテーマになりうる
  • CLはときに、共感できないCLや好感を持てないCLに出会うこともあり得る。そのようなとき、自分の感情に気づいているCOは、一瞬でもそこに足踏みしてとどまり、自分の気持ちを冷静に見つめて確かめ、無意識の誤解や妨害的言動を防ごうとする。また、意識的に自分の状態や問題とも関連付けて考え、解決の方法を探ろうとする。少なくとも自分の気持ちを隠したり気づかないときよりは、自分が気づいている感情を横に置いて、CLとの関係がこじれないように努力できる
  • COが「中立性」を維持するための作業は、COの言動には表立って現れない、心の内なる個人的な作業。しかしCOは、一方で中立的にはなり得ない自分を自覚しつつ、もう一方で個人的な欲求に気づき、自分の感情をしっかり見据えることで、CLとの関係における自分の責任を確立しようと努力する。それは、ひいては、カウンセリングという「独特な援助関係」の要として、重要な機能を果たす。
  • 面接の初期では、CLは問題点をめぐって多方面から必要な自己開示をしながら、COの助けを得て、カウンセリングの領域と方向をある程度明確にしていく。つまり、初期の面接の課題は、主訴をめぐってその後どんなことを考えていくことにするのかの目安を立てること。初期の段階でCOは、いわばカウンセリングへの巧みな「仕切り」をすることになると言えるだろう。

(4)面接中期の課題-自己探索

  • COは専門家として、知識と多くの経験を持っている。その意味で、CLが気づく前に、CLにそって問題の焦点をある程度洞察し、問題解決の方向についていくつかの仮説を立てている。COはCLの準備体制ができるのを待ち、相手にとって遅すぎも早すぎもしないペースで、自己探索を促していく
  • カウンセリングの中期に、自己探索によってCLが達成すべき課題は大きく2つある。1つは自己洞察を深めること、もう1つは具体的な問題解決(変化)を始めること。
  • 早すぎる解釈は、CLに脅威や反発を感じさせる可能性もある。実際、触れたくないところに触れられたと感じて解釈に反論を述べたり、言われていることがわからずに無視するCLもいる。また逆に、解釈を示されたことによって、COが自分の知らないことを知っていると考えたり、COが何かを教えてくれるだろうと期待して依存的になることもある。
  • 重要なのは、早すぎる解釈によって、CLが非常な苦痛を味わったり、大きな抵抗を起こして、変化が著しく妨げされたりしないようにすることであり、CLが自分の心をより深く探り、現実を見つめようとする準備ができたタイミングに、適切な解釈が提供されること
  • 抵抗とは、CLが無意識のうちに、自由に自己開示することをやめたり、問題解決や言動の変化とは逆の態度や行動を起こすことを言う。CLは問題解決や変化を求めてカウンセリングを受けにきているのだから、解決や変化には積極的・協力的になるはずだと思われる。ところが、人間は変わるということに対しては、恐れや不安を持つのが普通
  • 抵抗はカウンセリングの中では、起こってはならないことではない。抵抗の気持ちは、CLの無意識ではあるが何らかの重要な状態を表現しているわけであり、むしろ起こって当然と言えないこともない。それを意識化し、ともに考えていくことが、CL自身やときにはカウンセリングの問題を考える重要な手がかりになる。COはCLの躊躇や抵抗を大切な状態として受け入れ、一緒に考え、解決していく
  • 話の内容は「あの時・あのこと」であっても、語っている人は、今どんな気持ちであり、今どう思っているかを話している。COは、共感することで、「あの時」のCLを受容している。しかし、面接中期になると、共感のやり取りにも「今・ここ」の気持ちが出てくる。
  • カウンセリングで活用される直面化・対決は、COがCLのために、COと協働して取る言動であり、暴力的な意味はない。CLの矛盾、感じていることと言っていること・言っていることとやっていることの不一致について本人の気づきを促し、そこに関心を向けることでCLの成長を助けようとするかかわり。もちろん、直面化を行うには、CLにその準備ができていること、その気があることが前提となる。
  • 防衛の早すぎる指摘は、非難や攻撃と取られたりしかねない。CLがCOに非難されたと思って、さらなる防衛を固めるようであれば、ことは複雑になる。COもCLも混乱して、カウンセリングが後退するかもしれない。もちろん、それまでの良好な関係を取り戻す術はないわけではないが、防衛に対する直面化は、タイミングを得て、CLの性格や行動傾向にそって、受け入れられやすい言葉づかいで行う。

(5)面接後期に来る課題-具体的行動変容をめざす

  • カウンセリングは、目的を持ったCOとCLの面接。したがって、その目的がある程度達成されないとカウンセリングは終わらない。では、カウンセリングの目的とは何か。CLの問題や症状がなくなり、日常生活の中で気持ちや行動に変化が現れて、カウンセリングの必要がなくなることが理想。
  • この段階のカウンセリングにおいてまず明確にすべき課題は、今行っているカウンセリングの目標は何であったか、それはCLにとってどれほど達成されたか、もし達成されていないとするならばなぜなのかを再確認すること。
  • 理解や洞察が深まっても、変化の具体的内容が不明確であったり、変化に対して躊躇の気持ちがあると、カウンセリングが停滞したような状態になる。そのようなときは「変化の目標の明確化」「行動変容への援助」が必要になる。
  • COは、漠然とした目標を、より具体的で、CLが望み、かつ実現可能なものにするための助けをする。自己理解から、自分で納得のいく目標設定の次元への橋渡しをする必要があり、新しい目標を確認しあって、カウンセリングの方向を明確にしていく。
  • とりたい行動、具体的変化の行動はほぼ明確になっているにもかかわらず、次の一歩が踏み出せない場合は、ちょっとした後押しが必要。CLが具体的行動をとるだけの能力があるときには、励ましの声をかけて、先に進めるようにする。CLがその気になるように励まし、行動を起こす気になるように援助することは、非常に重要な、優れたかかわり。
  • 話し合いによってCLの変化の目標が本人自身に明確になっていくことが重要なのであって、COが目標を決めてあげたり、変化を押し付けたりするとすれば、それは全く逆効果。目標を設定するプロセスでも、CLの気持ち、意思、主体性は大切にされる。
  • 変化の目標が明確になり、CLがその目標を実現しようと決めたら、目標に向かって具体的な行動を起こすことが重要。そのためにCOは、目標を達成するための具体的な行動計画を立て、それを実行することを援助する。この段階では、行動療法が協調する「目に見える変化」が鍵であり、日常生活の中で起こる変化に注目していく。つまり、援助は日常活動に言動の変化が現れるようになることを中心に行う

(6)カウンセリングの終結

  • 理想的なのは、CLとCOが問題の解決に満足し、合意のうえでカウンセリングが終わること。しかし、終結の合意は得られないこともあり、いつも合意によって終わるとは限らない。つまり終結には、順調な終結とやむをえない終結がある。
  • CLもCOも喜び、不安両面的な気持ちを率直に味わい、分かち合いつつ、カウンセリングの終結という別れの作業をする。それはCLにとっては、人生において避けることのできない、他者との貴重な別れの体験であり、別れの後の新たな出発の体験となるだろう。

3.教訓

特に、インテーク、カウンセリングの滑り出しのところにページが多く割かれていて、信頼関係の構築(ラポール形成)のためには、聴いているだけでなく、伝え返しが重要であることが繰り返し説明されています。

  • クライエントに対して積極的関心を持ち、まず、共感的理解をしようと努める。しかし、それがクライエントに伝わらなければ意味がない。
  • カウンセラーは、聴いたことを言語化して伝える。カウンセラーは、非言語的な態度と短い反応だけでなく、意識して共感的言葉かけをし、共感を言語化する。つまり、共感をより積極的に伝える。
  • カウンセラーがクライエントの言うことを邪魔しないで聴くことは非常に重要であるが、ただ黙って聴いていたりだけでは、クライエントは不安になることがある。カウンセラーがクライエントの言ったこと、感じていることをどう受けとめたかを返すと、不安を取り除くことができ、共感や理解が伝わりやすくなる。

関係性が十分できたところで、自己探索を促していく。その過程では、抵抗や防衛が出てくることもある。ただし、それが変化に対する不安や恐れを感じてしまう、人間として自然な反応であって、そこも前に進むには必要なプロセスとして大切なこと。

そういったカウンセリング全体の流れがよくわかる、まさに「カウンセリングとは何か」についての理解が進む良本でした。カウンセリングだけでなく、友人や同僚との関係性構築でも活きる内容だと思います。