管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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いつでも会社を辞められる自分になる 黒田 真行 著

1.はじめに

会社の近くの紀伊國屋書店で、新刊コーナーに平積みされていました。

今、絶対に会社を辞めてやるとも、定年まで勤めあげるとも、どちらかに振り切っているわけでもない中、「いつでも辞められる」というタイトルがとにかく印象に残って購入しました。

そして帯の表紙側には「会社に都合よく使われるな。」と、また裏表紙側には「何歳からでも新しい自分になれる」と書かれています。

結論から言うと、今の会社を辞めるのも、新しい自分になるのも、誰でもそんな簡単にできるものでもないだろう、という印象を持ちました。ただ、可能性はゼロではないし、意識を持ち続けていかないと、じっとしていても何も変わらない、ということはよく理解できました。

以下では、特に印象的だったところに焦点を当て、引用していきたいと思います。

2.内容

(1)35歳からの転職のリアル

  • 45歳以上になると、リストラの引き算の論理が働いてきて、転職はますます難しくなる。これが45歳の断崖絶壁労働力人口の減少によって、40代・50代での転職成功者は徐々に増えてはいるが、組織の年齢ピラミッドは基本的に変わっていないので、この傾向は根本的に大きく変化していない。
  • 45歳を過ぎると、とりわけ50歳以降は、キャリアの「オワコン化」との闘いになる可能性がある。自身の経験資産に需要が少なくなり、社内プレゼンスが低下していく下り坂との戦いが、45歳の絶頂期から始まる。つまり40歳を超えた段階からは、常にスキルをアップデートしながら、仕事との向き合い方や人との付き合い方などを厳しく見直して、傾斜をいかにゆるやかにするか考える必要がある。
  • 過去の成功体験はできるだけ忘れたほうがいい。ゼロから棚卸しできる人のほうが、その坂道をゆるやかなものにできる確率が高まる。
  • 日本の企業の多くは、定年ギリギリまで前向きに頑張ってもらえるよう、淡い夢を抱かせ続ける仕組みになっていることは、多くの人が知っておいたほうがいい。せめて40歳で淡い夢がなくなったことに気づければ、そこから自分なりにキャリアのピークを維持するために、やるべきことを考えるようになれる。出世競争とは違う形で、いかに自分を成長させるかに頭を巡らせるようになれる。
  • 「自分を雇ってくれたら、これだけの得をする」ことを合理的に説明できるかどうか。これは、雇用されるだけでなく、独立・起業でも取引先に自分のスキルを売る場合にも同じように必要なスキル。そのためには、どんな価値を生み出せるかという、自分が提供できる価値を言語化しておかなければいけない。「幾らの報酬が欲しいか」という話は、基本的に成果を上げた後の話になる。
  • 採用が決まる人は、自分が入社すれば、どんな得があるのかを語れる。相手にとっての価値を語れる。たとえば、その仕事の中で、どんな課題があって、それに対して自分はどんな創意工夫をしたのか、ビフォーアフターで、どんな変化を生み出したのかを語る。これこそが価値証明
  • 「転職活動がうまく進まないのは年代的・経験的に当然のこと。あなたの責任ではないのでしょんぼりする必要は1mmもない」。そもそもどんな人であれ、ミドル世代の転職は簡単なものではない

(2)「いつ辞めてもいい人」はこんな人

  • 会社をいますぐ辞めても問題ない人は、端的に言うと今の会社でも成果を上げて満足度の高い仕事をしている人。中でも40代以降も市場価値を高め続けている方の共通点を5つ挙げる。
  1. 定量的な成果を生み出せる
  2. 採用市場で需要がある業界にいる
  3. 周囲の力を借りて5馬力、10馬力に変えられる
  4. 周囲を「巻き込んで」組織に好影響を与える
  5. 経営に近い目線で事業の存在目的を考えられる
  • 逆に40歳を過ぎているのに、言われた命題をこなすだけの人や、与えられた役割をまっとうすることだけを考える人は、事業環境や競合の変化に対応できない。企業が他社と差別化するためには、事業の存在目的を再設定する必要がある。
  • 会社名や役職名を取り払った自分は、どんな人間なのか。あるいは周囲の人から自分はどう見られるのか。それをつかむために習慣として始められるのは、新たな出会いや、これまで付き合いのなかった人と初対面で会う機会があったとき、社名や役職を明かさずに自分を紹介し、付き合いを始めていくこと。
  • 役職は「一時的な借り物」。自分自身の価値を、永遠に示すものではない。そして、評価されることを目的化しないこと。評価されることを目的にするのは、自分のプライシング=値付けを他者に委ねること。そうではなく、自分が自分を評価する
  • 短期的に速く走ることができたとしても、そのあとが続かないのでは、長い仕事人生うまくはいかない。大事なことは、最大瞬間風速を狙ってとにかく「速く走る力」ではなく、「走り続ける力」。継続性が求められる。
  • 必要なのは、自分は未完成と常に認識し続けること。未完成の自分だと受け止められるからこそ、謙虚になれるし、成長も追い求められる。実際、簡単に完成する人などいない。ならば、未完成を認めたほうがいい。
  • 世代の違う人の見方や考え方は自分の知見に幅を持たせてくれる。そうした感覚を持っていれば、新しい関係性も作りやすいし、その感覚は間違いなく仕事にも転職にも活かせる。

(3)「自分」と「スキル」を見極める

  • ポータブルスキルと言えるものは多様にある。「若手人材の育成」「ロジカルシンキング」「データを分析する力」などもその一例。バーティカルな仕事の中のホリゾンタルな部分を見つける。これが、次のステップに進む、大きなヒントになりえる。
  • なりたい自分に近づくための第一段階は、現在の自分となりたい自分とのギャップを認識すること。ギャップがわからないと、見方を変えられない。実態について理解ができていれば、その差分をどう埋めればいいのか、という思考になっていく。
  • 自身のキャリアを考える際、実はとても大事なことが抜け落ちているのではないかという印象を持つことがあるのは、そもそも、私はなぜ働き、どう働こうと思っているのか、それがはっきりしていない、ということ。スキルの棚卸しはしても、「なぜ働くか」「どう働くか」ということについて考えていないと、仕事で成果が出ても、納得感が得られない場合もある。
  • 仕事やキャリアについての迷いは、自分の心の中の「働く目的」を自己把握できていないことに起因することが多いと感じている。
  • 自分は何がしたいのか。どんな価値を作り出したいのか。世の中にどう役立ちたいのか。まずはそれを考え、決めること。もしそれが決まったなら、旗幟鮮明にする。そうすれば仲間も情報も集まってくる。巻き込もうと思っていなくても、多くの人が巻き込まれていく。こういう循環を作るためにも、「これがやりたい」「自分は何屋だ」と定めることには意味がある
  • そして、公言する。せっかく「これがやりたい」があるのに、黙っていては誰にも伝わらない。それでは前に進んでいかない。「こんなふうになりたい」「こんなふうにしたい」でもいい。それが明確にあるなら、世の中にアピールしていくこと。そこからいろんな機会が広がっていく。

(4)「理想的な転身」をかなえるために

  • 重要なことは、「自分ならではの価値」があるかどうか。異動経験は、他の人にはできない「掛け算のスキル」を自分の中に作ってくれている可能性がある。
  • 自分の代わりが「世の中」にどれだけいるのか。そこに目を向けること。自分に何ができるのか、の前に、世の中には同じようなことができる人がどのくらいいるのか、に目を向けてみることは、実は競争力のあるキャリアづくりの第一歩。
  • 職務経歴書は職務をただ羅列するものではない。言わなければいけないのは、「私があなたの会社に入社したあかつきには、これだけの役に立ちます」ということ。したがって、職務経歴書もこれが想像できるものになっていなければならない。任されていた役割の話と、役割の中で生み出した価値の話はまったく別。だからその成果はいかにして生まれたかという再現性を説明する意味が出る。
  • 経験や役割という観点で見ると、自分が価値を提供できる仕事は間違いなくある。いや、複数あるはず。複数の選択肢を持つことで、仕事の選択の幅を広げることにつながり、ひいては余裕にもつながる。自分が経験してきたことを、「担当してきた役割」という観点で洗い出してみることには大きな意味がある。そうすることで、転職の選択肢を広げることができる。
  • どんな仕事でも必ず「ビフォーアフター」は生まれている。それを具体的に示すことで、自分の価値が明確になっていく。
  • 「これができます」といくらアピールしても、採用側が具体的に「利用シーン」をイメージできなければ、「わが社で役に立つ人材だ」ということにはならない。必要なのは、具体的に「こういうスキルを使って、御社のこういうところにお役に立つことができます」と言えるかどうか
  • 自分のスキルを使って、「マイクロ起業」ができるかどうか。そのニーズは果たしてあるのか。それを知る際に、副業プラットフォームが役に立つ。それこそ副業というよりも、「本業化のトライアルを行う本業化実験」と捉えてもいい。副業禁止は現実逃避の言い訳にしているだけ。「収入を得ると副業になる」というなら、最初は少しずつボランティアで腕試しをさせてもらうという方法もある。
  • 次の仕事を選べるようなポジションにはなく、ひとまず会社は出ないほうがいい、今はじっとしていたほうがいい、と判断した場合は、ここから数年で時間をかけて会社から出られるような取り組みを考えていく必要がある。じっとしていても、状況が変わることはない
  • 過剰な期待を持って転身するのは危ない。むしろ転身で環境を変えるというより、環境を変えることによって自分自身を変える。そんな覚悟を持っておいたほうが、その後、うまく成功し、満足度高く働ける人が多い印象がある。

(5)「雇われない」で生きていく

  • 「株式会社じぶん」とは、自分を1つの会社と捉え、在籍している会社を「取引先」と見なして、この株式会社を経営していく、という考え方。報酬を得るために、常に自分の能力を客観的に評価し、コストをかけてスキルアップに励む。「株式会社じぶん」の考え方は、単なる転職戦略ではなく、自分のキャリアを主体的にコントロールする1つの方法と言える。
  • 「なぜそこまで人に雇用されたいのですか?」私がこう問いかけるのは、働くとは採用されること、という古い常識に疑問を持ってほしいから。自分で事業を始めるという選択肢を持つ。そのためにも、まずは「株式会社じぶん」の発想を持つことで、自分自身のキャリアと人生に対する姿勢を変えてほしい。
  • 「自分はこんな価値が提供できる/できそうだ/したほうがいいんじゃないか」といった評論家的な言い方ではなく、当事者として、「自分は誰にどんな価値を提供したいのか」をはっきり言える。これは最初の重要なポイント。問われてくるのは、意思としての自分の能動的な思い。これが、「株式会社じぶん」を動かす最大のモチベーションになるから。
  • 何歳になっても、可能性は存在する。眠っている可能性がどこかにあって、それを開花させることができる。「50歳までこの仕事をやってきたから、もうこれしかできないだろう」という固定観念や諦めの気持ちを持っている人も少なくないが、それはあまりにもったいないこと。いざというときに覚悟を決めれば、人間は思わぬ力を発揮できる。
  • 「業種」×「職種」のプロとして、明日、経済誌の記者突撃取材を受けた時に自分なりの論や説を語ることができるか? あなたの所属業界の課題や展望を教えてくださいと言われて、どんな予測を語れるか? 自分の業界や仕事の領域での課題や展望をしっかり語れる人は、プロとしての専門性を売れる可能性がある。
  • 40代にもなっていれば、知らず知らずのうちに経験は積み重ねられているはずで、持論を形作る材料は、豊富にあるはず。それを日々の訓練としてアウトプットしているかが、差を作る
  • 30代、40代になって、これまで20年もやってきて、今さら花が開くことなんてあるのか、と思う人もいるかもしれないが、諦めてはいけない。手を抜いてはいけない。自分の得意を手放してはいけない。それを続けていれば、いつか日の目を見ることができる。

3.教訓

本書を読んで、誰でも会社を辞められる自分になれるか、というと、そうでもないという印象を受けました。

というのも、現実的に、40代後半になって、今の会社や仕事に流されることなく、「株式会社じぶん」として、自身のキャリア・これまでの成果・今後やりたいこと・貢献できることを言語化できている人は、そこまで多くないのではと推察したからです。

そういう自分も、「これは簡単な話ではない」と直感しました。少なくとも、今のままではいけない、と思いました。今すぐ辞められる人とは、今の会社で出世コースに乗っていて、上にも行けるし他社にも行けるという、既に選択肢を多く持っている人だと認識しました。

では、その他大勢は何もできないか、というと、それもまた違うと思います。それぞれに築いてきたキャリアがあり、再現できることがあるはずです。それが通用するのかどうかは副業によって実験することができ、副業が禁止なら無償で腕試しをすればいい、ということは、少し励みになりました。

自身でも「株式会社じぶん」としてスキルアップを図り、何らか動き出したいと考えるきっかけにしたいと思います。