1.はじめに
本書の特徴は、タイトルは「定年後」となっていますが、定年してからでなく、現役時代から長ければ20年ほど、同一人物を追いかけてインタビューしていることです。
定年や役職定年を機に、再雇用・転職・フリーランス・NPOなど、それぞれの道を選んだ経緯やその後について、各テーマで3名の成功・失敗双方の事例が描かれています。また、キャリアコンサルタント資格を取得し活かしている事例も出てきます。
その他、第5章では、1986年の男女雇用機会均等法の施行当時に入社した「均等法第一世代」の女性についての光と影についてにも触れられています。
自身も社会人後半戦に突入して、そこまで遠くない世界として、現実感を持ちたくて拝読しました。以下では、特に印象が強かった第1章の再雇用の部分と、最後のまとめ部分に絞って、中でも印象に残った部分を引用し紹介していきます。
2.内容
(1)再雇用は「価値観の転換点」
①ケース1:再雇用にプライドの壁
- 「再雇用では権限のない単純作業で、かつての部下に顎で使われるなど、本当につらい毎日でした…。起業への挑戦よりも、管理職として権力にあぐらをかいていた結果が、このあり様です」
- 年収は役職定年後も1,000万円近くあったが、定年後の再雇用では6割減の約400万円に減った。ただ、再雇用の労働を「つらい」と感じる背景には、悪化した処遇や企業への挑戦を断念した無念さもさることながら、「権力にあぐらをかいていた」日々のプライドが邪魔をしているようにも思えた。
②ケース2:”負け組”の底力
- 「定年後の再雇用は、価値観の転換点。働く意味を問い直す必要があります。社内の上下関係や役職に囚われず、1人の働き手として、これまで長年培ってきた経験やスキルを活かし、会社のために働くことに意義がある。そこにはもはや、偉くなって周囲から評価されたい、といった野心はありません。まぁ負け組の底力とでもいうんでしょうか、そうした現役時代と180度異なる価値観へと、難なく転換することができたのではないかと思っています」
③ケース3:リカレント教育で65歳後の準備
- 「NPOでの取組にどんどん興味が湧いてきましてね。民間企業のキャリア支援サービスよりも、社会貢献活動としての意義がありますし、人の役に立てているという実感があるんです。ここでの活動は会社員生活の長い自分にとっては、目から鱗。本来あるべき働く意味を教えてくれるんですよね」
- 激変する職場環境を受け入れられるかどうか。すれはすなわち、プライドを捨てられるかどうかにもかかっている。部長など上位の管理職についていた人ほど、定年後の再雇用で壁にぶち当たるケースが少なくない。処遇の悪化に対して不満を募らせ、働くモチベーションが低下する傾向が強いことが、筆者の継続インタビューからも明らかになっている。具体的には、「管理職になれるまで育ててやった元部下に、顎で使われるのが我慢ならない」「定年まで必死に積上げてきた実績を否定されたようで仕事への熱意が湧かない」といった声がよく聞かれた。
- 自身が仕事、働くことに抱く意味、価値観を、現役時代の社内ポジションや報酬といった外部からの働きかけによる外発的に動機づけられた労働から、定年後再雇用ではやりがいや達成感など内部から沸き起こる内発的に動機づけられた労働へと転換できれば、自己効力感を高めることにもなるだろう。
(2)終章:シニア人材戦力化に向けて
- いずれの働き方においても重視して向上させるべき能力が、業種や職種が変わっても持ち運びできる、つまりどの会社でも通用する業務遂行上のスキルである「ポータブルスキル」である。主なものを挙げると、
- 現状把握のための情報収集・分析力
- 課題設定・計画立案能力
- 社内外の対人関係・コミュニケーション能力
- 社会人であれば経験を積む中で誰でも身につけているスキルに見えて、実際には職務を遂行する過程で勤務する会社でしか通用しない「ファーム・スペシフィック・スキル」に上書きされているケースが少なくない。それには、部署間の調整能力、いわゆる「根回し」力や、自社の事業、商品の説明能力などが該当する。
- 再雇用に限らず、転職やフリーランスになるとなおいっそう汎用性のある職務遂行能力が求められる。現在、事業主に継続雇用などが義務づけられた年齢である65歳を過ぎても働き続けられる企業は少なく、就業を継続したければ、雇用されるか事業者になるかにかかわらず、自分で職を探さなければならない。その求職の際、ポータブルスキルは必須条件となる。
3.教訓
それぞれの働き方があるなか、全体で共通するのは、以下の3点と認識しました。
- 現役時代の単純な延長線上にある甘い世界ではないこと
- 不純な動機で進路を選択すると後々の後悔につながること
- 現役時代からスキル向上のために努力を重ねることが重要であること
現時点で自身の進路を明確に定めているわけではありませんが、そうは言ってもそこまで遠くない期間内に、自身が選択する時がやってきます。
その日を漫然と迎えるのではなく、目的を持って準備して迎えたいと考えさせられる良書でした。
